LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 余談:はじめに

【01.序文】より

「加工しないTRPGリプレイ」

 「リプレイは読み物として加工しなくてはならない」ということが書かれたウェブサイトを見かけたので自己擁護しておきますと、わたしが今回のセッション内容をリプレイとして書き起こすときに必要最低限の修正しかしなかったのには以下の理由があります。

 ひとつ目の理由は、そもそも雑談・内輪ネタの少ないセッションであったということ。これは参加者のプレイスタイルに大きく依存するところではありますが、わたしがプライベートセッションを行う環境では雑談・内輪ネタというのは極端に少ないです。それはおそらく、参加者がTRPGをする場よりもTRPGによって作り上げる物語を楽しむことに比重を置いているからだと思います。そのため、最初から省くところが少ないのです。

 ふたつ目は、読み物として面白くしたいならリプレイではなく小説として書いているだろうということ。読み物として面白いリプレイを書くより、読み物として面白い小説を書くほうが容易い――と書くと語弊がありますが、小説として書けばいろいろな脚色ができることは間違いありません。

 そして三つ目は、わたしはあくまでプレイ風景を伝えたいためにリプレイとして書き起こしているので、加工してしまっては本末転倒だということです。読んでいる方に見てもらいたいのは物語の大まかな展開や登場人物のキャラクター性ではなく、与えられた情報に対して各プレイヤーがどう考えて、どういう発言をして物語を作っていったのか、またそれに対してGMがどのように対応したのかという細部なのです。

 そういった事情を踏まえて、このほぼ加工されていないリプレイを受け入れてもらえると幸いです。

 なお、試練以降の戦闘シーンにおいてのみ、処理のための発言が多すぎて収集がつかなかったため、プレイヤー発言の多くを省略しています。

「シーン制ではありません」

 このリプレイはシーン毎にページを別けて掲載していますし、頻繁にシーンという言い回しがでてくるので、このセッションはいわゆるシーン制を用いて行われたのかと思う人もいるかもしれませんが、特にそんなことはありません。

 もともとシーン制を導入したシステムが登場する以前から、ストーリーメインのセッションをプレイしようとすれば自然に必要なシーンだけを抽出してプレイしていたものです。

「ベースはソード・ワールドRPG」

 判定に2d6(六面体のサイコロを二つ振った合計値)を用いるソード・ワールドRPGは、他のシステムに比べると乱数性が低い部類のシステムであり、運よりも戦術によって戦局を左右させたいLOSTにとてもマッチします。また、高レベルになっても戦闘行動の選択肢が超人的にならないので等身大の戦記ものには最適です。

 ソード・ワールドRPGは国内で最も遊ばれているシステムであるというところも、多くのソード・ワールドRPG経験者に対して基本的なルールを説明する手間が省けるという点で助かります。そもそも判定方法が基本的に二種類しかなく、共にダイスを二個振るだけなので、初心者にもわかりやすいシステムです。また、ルールブックも安価な文庫本であるため、参加者全員が所持できます。

 これら諸々の利点から、わたしが最もプレイ経験を積んでいる他のシステムを差し置いて、LOSTのベースシステムとしてソード・ワールドRPGを用いることにしました。

 ソード・ワールドRPGは、前述した乱数性の低さとレベル差による戦闘力の格差が大きいということが相まって、戦闘の結果に紛れが発生しにくい性質を持っています。そこは一長一短があるところですが、LOSTでは戦術で勝ればレベル差を覆せるようにカスタマイズしています。また、ソード・ワールドRPGでは均衡した勝負がファンブルによって望まぬ決着を迎えてしまいがちであるということも、私の望む方向性ではなかったため、その部分にも手を加えています。クリティカルによる決着であれば華となりますが、ファンブルによる決着では興をそがれてしまいます。

 (補足)後日、ソード・ワールド2.0のシステムに触れる機会を持ったことで、LOST用カスタマイズに近い部分が多々あることを知りました。鎧によるダメージ減少の固定化や、ダメージ魔法を抵抗された場合のダメージ半減化などなど……。ソード・ワールド2.0で採用されている乱戦エリアを用いた戦闘やレベル上限の増加、HPの増加などを見る限り、目指す方向性は異なるようですが、それでも旧システムに比べて改善された箇所がいくつもあったので、周囲のプレイヤーからソードワールド2.0の評判の良い部分を聞き集めてLOSTにも可能な範囲で追加実装しました。

 なお、LOSTは戦術シミュレーション方向に舵を取っており、ユニットを育てる楽しさよりも、ユニットを運用する楽しさに比重を置いています。実際にプレイヤーの方からも「戦闘がとても楽しい」との評価を得ており、狙い通りの効果を上げられているようで嬉しい限りです。

【02.準備】より

「複雑な処理を必要とするルール」

 ウェイトターン制を用いたり、装備の重さを行動に反映させたり、部分ヒットポイントを導入してみたり……などの複雑な処理をTRPGに持ち込む行為は、TRPGのシステムを自作しようとした人の多くが一度は通った黒歴史でしょう。そして、ようやく出来上がったオリジナルシステムを用いて、多くて一回セッションした後に気がつくのです。はっきり言って、処理速度が遅くなる複雑なシステムはTRPGには不要だ。システム処理に時間を割くくらいなら、一分一秒でも長くプレイを楽しむべきだ……と。

 しかし時代は変わりました。人間の手では膨大な時間が掛かる処理も、パソコンを用いれば一瞬で完了します。そして、そのパソコンも、数種類のシステムや数本のゲームソフト購入を見送れば、簡単に手に入ってしまう時代なのです。わたしの使ってるノートパソコンも、中古なら二万円以下で入手できます。TRPGにパソコンを持ち込むなど邪道だという意見もあるでしょうが、わたしは有効利用できるものは何でも活用してみようというスタンスです。そこにかつて敗れた夢があり、それを求めるプレイヤーがいて、実現する手段があるのならば、これを実行しない手はありません。

 幸い、LOSTの戦闘処理に掛かる時間は本家ソード・ワールドRPGとほぼ変わりなく、プレイヤーたちにも好評です。しかし、ファンタジーものよりもメカもののシナリオをやってくれと言われるのが悩みのタネです(笑)。

【03.世界】より

「基本的な遊び方」

 LOSTはソード・ワールドRPGの戦闘部分における戦術性を特化させたものです。当然、一番楽しんでもらいたい部分は戦闘です。戦闘バランスがよりよくなるように、攻撃力や防御力、そして魔法の効果などが現在進行形で細かく調整されています。このセッションが終了した後にも何度かルールが改定されました。主に“ラック”とか(笑)。

 このセッションはストーリー主体でプレイしていますが、「遺跡の中に巣食うモンスターたちと戦いつつ奥へと進み、魔法の武具や呪文書などの遺産を手に入れて、自分のPCをどんどん強化していきましょう」といった単純なダンジョン探索こそ、わたしの想定しているLOSTの基本的な遊び方です。実際のセッションでも六時間未満のダンジョンネタを多くプレイしています。もちろん、PCと共に成長したプレイヤーに対してはもう少し視野を広げたシナリオを用意しますが、まだしばらくかかりそうですね。

【04.国家】より

「レイフィールドV世・VI世」

 レイフィールド王国の周辺を舞台としたシナリオは聖域の守護者が初めて作ったものであり、レイフィールド国王の名前は導入とエンディングくらいにしか出てこないので、安易に命名してしまいましたが、国名と国王のファーストネームが同じというのも微妙です。

 このセッションの後にプレイした話ではレイフィールドVI世のファーストネームとしてジョシュアという名前が登場し、正しい名前はジョシュアVI世・アルベルト・エリック・レイフィールドとなりました。とりあえず、レイフィールド王国何代目の国王であると解釈してもらえれば間違いないです。

【05.人物】より

「各PCだけが知っている裏情報」

 以下に各PC毎の裏情報を公開します。プレイヤーたちは参加者全員に公開されている表情報とこの裏情報をもとにキャラクターを作成しました。本編のキャラクター説明のあとに続けて読むと、各キャラクター設定を掴みやすくなるはずです。この内容を把握したうえでリプレイを読むと、また違ったものが見えてくるかもしれません。

■ウィル

 特になし。

■ゼオル

 「解放」と冠していても奴隷上がりは所詮奴隷あがり。市民権を得ていないゼオルには、参政権、相続権などが認められていない。また、市民権を持つ者から解放奴隷と見下されることも多い。

 騎士の叙勲を受ければ同時に市民権を得ることができるため、貧しい生活の中で父親がなんとか学費を捻出し、ゼオルを騎士養成学校に通わせた。その想いに応えるべく、ゼオルは父親譲りの剣技とひたむきな努力により騎士養成学校内の主席を争うほどの好成績を維持し続けた。しかし、ゼオルの卒業を待たずして父親は他界。さらに追い討ちをかけるように養成学校の卒業を迎えてもゼオルが騎士の叙勲を受けられることはなかった。

 その後、全うな仕事に就くことが困難であったゼオルは、日雇いの仕事を転々とすることとなる。

 そんなゼオルの前にベネット伯が現れる。彼は騎士養成学校の頃からゼオルに目に留めていたようで、身分の差を越えてゼオルと接してくれた。そして、ベネット伯は騎士の叙勲を見返りとして、聖域侵攻の片棒を担いで欲しいという話をゼオルに持ちかけてきた。ベネット伯がゼオルに依頼したことは、穏健派として聖域に住むクローネの民に取り入り、深淵の力を使うことができる能力者を突き止め、その者を無力化してその旨をベネット伯まで報告するということ。ベネット伯の話では、その任務はギルモア王国の侵略の手からレイフィールド王国を守るために必要なことだという。ベネット伯は任務遂行のためにと、ゼオルに強力な毒薬を渡した。

■クラウス

 師匠のもとですでにある程度の実力を身につけたクラウスは、師匠からも一人の研究者として認められて専用の研究室を与えられており、ときには師匠と対等な立場で魔法に関して論議するほど黒魔法と白魔法についての知識を有している。

 また、吟遊詩人としての腕前を持つクラウスは、方々を旅する他の吟遊詩人たちから世界各地の神々や遺跡に関する情報を聞き集めており、外国では勢力の小さな神の聖域侵攻、および遺跡発掘が進んでいるということや、クローディアの聖域を守るクローネの民は、まだ人間が実用化できていない黒魔法を自由自在に操ることができ、これは他の聖域の守り手に比べても強大な力であるということを知っている。

 それ以外にも、穏健派の旗手であるカーライル女男爵が他の利権を得ようとする者たちに祭り上げられてその立場にいることや、オルコット大公がブラック・ナイトと称される四人の手練を秘密裏に従えていること、また、ベネット伯が自らの師匠と交友を持っていることなどを知っている。

■アンリ

 アンリは御子として神の残した深淵の力をその身に宿しており、それを示す魔法陣のような形の封印の痣が身体のどこかに浮かび上がっている。深淵の力を解放することによって人知を超えた力を行使することができると教えられているが、力を解放したあとは徐々に深淵に精神を乗っ取られてしまい、すべてを破壊する者と化してしまうという。また、御子が死ぬと、その瞬間に別のクローネの民が深淵の力の新たな宿主となると聞かされている。

 御子は自身を守るため、そして力を解放した後に介錯してもらうための守護者を指名する権利を持つ。守護者に指名された者が正式な守護者になるための試練を乗り越えれば、その者は守護者としての力を手に入れるらしい。守護者を得ないうちに深淵の力を解放させると暴走を止められない恐れがあるため、エルモ長老からは早く守護者を選ぶようにと言われている。しかし、アンリは何らかの理由で守護者を選ぶことを拒み続けてきている。

 なお、アンリは御子として聖域内に点在する遺跡の入り口の場所や入り方をほぼすべて把握している。




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