LOST ウェイトターン制TRPG


聖域の守護者イメージ

聖域の守護者 余談:おまけ

 実は、このリプレイで書き起こしたものは、GMにとって聖域の守護者の三回目のセッション内容です。GMは違うプレイヤーに対してこれ以前に二回セッションを組んでいます。その内容について紹介して欲しいという要望がありましたので、簡単な流れだけ書いておきます。本当は各キャラクター名が異なりますが、イメージしやすいようにこのセッションの名前を用いて紹介します。

一回目のプレイ

 ウィルは二十代半ばの設定で、カーライル女男爵に惚れている。ウィル目線では、カーライル女男爵は姫で、自分はその騎士。カーライル女男爵はそれを知ってか知らずでか、常にウィルを頼りにしており、魔性の女的な存在となっている。

 ゼオルはベネット伯に捨て駒として利用されているのではないかと最初から警戒しており、そこに信頼関係は皆無。ベネット伯にナイフを投げられたときには、ついに消されるのかと思ったとはプレイヤーの弁。って、それは明らかに勘違いですから! まさか、ゼオル自身がミスディレクションにはまってしまうとは……。

 クラウスは大人しい優男。自己主張は常に独り言で、表向きはウィルの言うことに追従する。困ったときには師匠頼み。師匠の力を頼るために聖域から王都に戻ろうとすること三回。

 アンリはこのセッションのように自身の考えで積極的に行動することはなく、周囲の出来事に怯えて小刻みに震える小鹿のような娘。自分の中に宿る深淵の力をとても恐れている。

 アルトはベネット伯を大切な人の仇とライバル視している超ストイック男。エルモ長老の世話役サンディに思いを寄せられていたりするが、過去の想い人への気持ちを断ち切れないでいる。

 パーティーのイニシアチブは終始ウィルが取る。その英雄像を追う姿はこのセッションのウィル以上に真っ直ぐ。どうやら、カーライル女男爵のために働いているということで張り切っていたらしい。その傍目からは騎士道精神ともとれるウィルの言動にあてられたアンリは、ウィルに対して自己実現の対象としての憧れの念を抱く。そして、その憧れは次第に恋心へと変化していく。

 迷子イベントでアルヴィを助けたゼオルは、休息日の間にアルヴィと二人でクロリス捕りのために森に入り、偶然アンリの入浴シーンに遭遇するも、女性の裸を除き見るのは失礼だと目をそむける純朴さを見せる。深淵の力を宿す者のもつ痣を見つける使命はどうした?

 試練を乗り越えて守護者になったウィルたち。アンリは自分の死を目前にして、その事実を伏せながらもウィルに勇気づけて欲しいと一対一で話をする。その話の中でウィルはカーライル女男爵に対しての想いを明らかにする。この段階でアンリの恋心は潰え、自分は御子としての役目を全うするしかないのだと一人心を閉ざす。

 深淵の力を解放しての最終決戦。アンリの絶対的な力で強硬派を圧倒。首尾よくオルコット大公が戦死したところでベネット伯が降伏し、ことの真相を告げる。ウィルたちはこれで聖域の戦いが終わるのだと一安心する。しかし、その中でアンリだけは、ベネット伯の筋書き通りに進められた茶番のために自分は深淵の力を解放してしまったのかと絶望に陥る。

 狂乱したアンリは、ウィルに対して自分をそそのかしたのはお前だと責め立て、お前の大切なものをすべて破壊してやると言って深淵の力を行使しようとする。ウィルたちに対してベネット伯はアンリを殺すように促すが、ウィルたちにその覚悟はなく、深淵の力によってベネット伯が死亡。その後、深淵の力の及ばないウィルたちはアンリを気絶させ、拘束して監禁した。

 アンリの拘束から数ヶ月か数年後。独房内で手足と口を拘束され、動物のようにもがくことしか許されないアンリのもとに食事を運ぶウィル。拘束されている間、ずっと面倒を見ていたようで、口の拘束具を外すと食事をとらせようとする。それに対して獣のような奇声と罵声を投げかけるアンリ。苦悶の表情を浮かべ、自らの剣に手をかけるウィル。しかし、思いとどまると、ウィルはアンリの叫び声を後にして独房から去っていった。

 一回目のプレイのドロドロ感は凄かったです。もがけばもがくほどはまり込む感じで、最終シーンのあとの救いようのない沈黙がまた……(苦笑)。ちなみに、参加者からの評判は良かったですよ。個人の好みもあるでしょうが、食傷ぎみにならなければ、たまにはダークな内容も美味になるということでしょうかね。

 なお、一回目の段階では、まだ心の試練はありませんでした。このときのプレイでアンリを犠牲にすることに対しプレイヤーが拒否反応を示したので、事前に一歩踏み出させようと考え、心の試練が生まれました。

二回目のプレイ

 特徴的だったのはゼオルがイニシアチブを握っていたこと。その影響でウィルとクラウスの影が薄い。聖域への助力進言、アルヴィ救出、アンリの御子特定、アンリ誘拐、アンリ死亡阻止など、まさにゼオル無双。主に展開が異なった中盤以降のあらすじを……。

 守護者の試練を終え、皆が神殿で休みを取る間に、ゼオルは毒薬ブラッディ・アップルでアンリを眠らせ連れ去り、ベネット伯に首尾を伝える。しかし、ウィルたちを裏切ったことを心の中で悔やむゼオル。そんなゼオルに対して眠りから目覚めたアンリは自分が死ぬ運命にあることを伝える。自分の身を犠牲にしてまで仲間を守ろうとしているアンリの姿に心を打たれ、悔い改めるゼオル。

 深淵の力を失ったクローネの民に対して、殲滅戦を開始する強硬派。絶体絶命のウィルたちの前に、深淵の力を解放させたアンリとゼオルが駆けつける。

 オルコット大公たちとの決戦から数日後、聖域の奥にある守護者の試練の遺跡内部にて、死の決意を固めるアンリに、自分たちを信じられるかと問いかけるゼオル。その問いにほほえみ答えたアンリに対し、ゼオルは必ず深淵の力の呪縛から解放してみせると約束し、規定量を超える毒薬ブラッディ・アップルを用いてアンリを仮死状態にする。そして、恒久の眠りに落ちたアンリを寝台に横たえると、ゼオルたちは深淵の力の解除方法を突き止めるため、世界各地の聖域を巡る旅路についた。

 二回目のプレイでは一回目と相対するように、ハッピーエンドっぽい話になりました。プレイ次第でウィル以外も主人公になれるということの好例でしょう。ゼオルとアンリ以外のキャラクターの影が薄くなってしまったのは残念でしたが、物語としては良い流れだったと思います。

 なお、二回目の段階では、まだ酒場のシーンや日常シーンはありませんでした。全体的に暗いイメージがあったので、この後に緩急をつけるために明るめのシーンを付け加えました。




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。