LOST ウェイトターン制TRPG


TRPGリプレイ 輝くもの天より墜ちイメージ

01.事前説明

 しばらくゲームマスター(以後GM)からの説明が続きますが、プレイヤー視点でセッションを楽しみたい人は飛ばさずにお読みください。読み物として物語を楽しみたい人は「第1章 03.試練の朝」からの閲覧をおすすめします。

GM:
 さて、プレイヤーの皆さん、本日はお集まりいただきありがとうございます。これから、『Plain D20』を用いたTRPGのセッションを行います。参加者全員が最低1回はプレイしたことのあるシステムですので、細かいシステムの説明については割愛しておきます。GMが必要だと感じたときには都度説明していく予定ですが、もし疑問に思ったことがあれば随時質問してください。

一同:
 はーい。

『Plain D20』
『Plain D20』は、固有の世界設定を持たない、オリジナルの汎用TRPGシステムです。とてもシンプルなシステムなので、はじめて触れる人であっても30分あれば十分理解できるかと思います。また、このリプレイを最後まで読み終えれば、そのままプレイに臨むことができるようになっているはずです。
(その効果に期待して、システム紹介のためにこのリプレイを書いています)
 システムはこちらのページからダウンロードできます。
 なお、本セッションは「2017.10.03版」を用いてプレイしています。

GM:
 今回は「LOST」の世界設定を利用して、『輝くもの天より墜ち』というタイトルのシナリオで遊びます。有名SF小説のタイトルを拝借していますが、内容に関連性はありません。むしろ、オーソドックスなファンタジーシナリオです。

プレイヤーA:
 了解。

「LOST」
「LOST」はオリジナルのファンタジー世界です。今回の物語を読むのに必要な舞台設定はリプレイ中に説明されていますが、とりあえずオーソドックスな中世ファンタジー世界をイメージしてもらえれば十分です。

GM:
 セッションを開始する前に、今回の物語のテーマを明言しておきますので、セッション中はテーマを意識してプレイするように心がけてください。
 まずは「交流」、続いて「成長」、そして「協力」。今回の物語はこの3本柱をテーマとした冒険活劇となります。

プレイヤーB:
 それって、週刊少年ジャンプでいうところの「努力」「友情」「勝利」みたいなもの?

GM:
 そう受け止めてもらって構いません。
 あと、冒険のスタートは辺境の小さな村からとなりますが、物語のスケールは一領地の命運に関わる程度には広がる予定ですので、あらかじめそれを想定しておいてください。

一同:
 はーい。

GM:
 続いて冒険の舞台を説明します。今回の物語の舞台は、100年前まで神と呼ばれる高位の存在が実在していた世界になります。
 いにしえの昔より、神々は人間たちを慈しみ、滅多に人々の前に姿を現しはしなかったものの、神事を執り行う者を通じて、いくつもの先進的な技術や“白魔法”と呼ばれる生命に働きかける魔法を授けてくれていました。人間たちはそのような神々を崇めたてまつり、それぞれの神のもとで神事を取り扱う者を首長とした勢力を作り上げると、世界の覇権をめぐってほかの勢力と争いを繰り広げるようになりました。この神事を取り扱っていた者たちが世代を重ね、やがて“王”と呼ばれる存在へと変化していくことになります。
 そして、今から100年ほど前、勢力同士の争いが1000年以上続き、おのおのの勢力が国家レベルまで拡大したころ、神々は突如として人間たちの前からその姿を消してしまいました。

世界地図

GM:
 神々を失った人間たちは、しばらくの期間、停滞の時代を過ごすこととなります。しかし、世代が替わるとふたたび歴史は動き始め、他の勢力との争いを再開する者たちが現れはじめました。それと同時に、これまで人間が足を踏み入れることのなかった、かつて神々が暮らしていた“聖域”と呼ばれる土地に入り込む者も現れはじめます。
 聖域に足を踏み入れた者たちは、落命の危険と引き換えに、神々が遺した“遺産”と呼ばれる強大な力を秘めた品々や、神々が人間たちに授けることのなかった“黒魔法”と呼ばれる物質や空間に働きかける魔法を発見したりしました。そのようにして聖域から持ち帰られた遺産や黒魔法の力は、これまでの常識を覆すほど強大でした。そのため、多くの国々が聖域の探索に乗りだし、そこで手に入れた力を戦争へと投入するようになるまで、さして長い時間を要しませんでした。かくして、世界はふたたび戦乱の時代へと突入していきます。
 こうした歴史を経て、今まさに交戦状態にあるふたつの王国があります。ひとつは内海の東に位置するレイフィールド王国、そしてもうひとつはその南に隣接するギルモア王国です。

プレイヤーA:
 レイフィールド王国はいつも戦争ばかりやってるなぁ……。

レイフィールド王国はいつも戦争ばかり
 今回利用している世界設定は結構長く使っているものなので、参加者の中には過去や未来のできごとについてある程度知っている人もいます。ですが、今回の話にそれらの知識はほとんど影響しません。

GM:
 そうは言っても、今回は降りかかる火の粉を払いのけようとしているだけなんですけどね(苦笑)。
 レイフィールド王国は技術力に長けた国であり、神々が消失したのちに興った新興国になります。ここ50年のあいだに近隣の小勢力を平定し、その領土を広げつつありました。
 一方、ギルモア王国は建国より500年の歴史を誇る大国ですが、神々の消失以降、王権が弱まりつつあり、相対的に力を強めた諸侯たちのあいだで幾度か内戦が繰り広げられていました。そのような事情もあり、諸侯たちの目を国外に向けさせるためにも、ギルモア王国にとって他国との戦争は必ずしも歓迎されぬものというわけではありませんでした。
 そして、しばらくにらみ合いを続けた両国が交戦状態に入ったのが昨年の秋口のこと。その後、戦局的にはギルモア王国がいくぶん優勢に立った状態で、一年が経過しようとしていました。
 そのような背景の中、ギルモア王国の辺境――コンラッド山脈の南方に広がるウォーラム男爵領内にあるサットンという名の村が今回の物語のスタート地点となります。

ギルモア王国東部地図

GM:
 サットン村はコンラッド山脈の麓にあり、牧羊と麦の栽培を主な産業とする人口200人程度の小さな村です。戦争の影響で例年よりも多くの年貢が取られるようになったものの、それ以外には遠く離れた戦場の余波などさして届かず、秋の収獲を無事に終えて、明日からは多くの村人たちが待ち望んでいた三日三晩続く収穫祭が催されようとしています。
 ただし、村人の中には祭りのはじまりを緊張した面持ちで迎える者たちもいました。それこそが、あなたたち見習い自警団員の4人です。
 あなたたちは、収穫祭の初日と二日目にかけて、正式な自警団員となるための昇格試験に臨むことになっています。それに合格することができれば、収穫祭の最終日に村人たちの前で、晴れて一人前の戦士としてお披露目されることになります。そうすれば、間違いなくその日のヒーローとして村人たちから熱い祝福を受けることでしょう。しかし、不幸にも夢かなわず不合格になってしまったのであれば、その日は劣等感と敗北感に苛まれる憂鬱な一年のはじまりの日となってしまうかもしれません。

一同:
(苦笑)

GM:
 そのような試験を控えて、収穫祭初日の朝を迎えたところからセッションスタートとなります。
 この段階でなにか質問があればどうぞ。

プレイヤーA:
 ギルモア王国の宗教について教えて欲しい。

GM:
 ギルモア王国ではベルトサールという神様が信仰されており、各都市にその教会が置かれています。多くのファンタジー世界に登場する宗教のように、やるべきことが明確に示されているわけではありませんが、もし宗教観で迷った場合には、キリスト教をベースに考えてもらえればだいたいのところは問題ありません。

プレイヤーB:
 自警団に参加するのは義務だったりする?

GM:
 いいえ、義務ではありません。あなたたちは望んで自警団員になろうとしています。

プレイヤーC:
 試験に落ちたときは、また来年試験を受けることができるのか?

GM:
 はい、それは可能です。

一同:
 ……。

GM:
 現時点での質問はこれくらいですかね。
 では続いて、セッション開始時点であなたたちが知っているであろう主要ノンプレイヤーキャラクター(以後NPC)について紹介しておきます。
 まずはレイモンド。39歳の男性です。彼はあなたたちの指導役を務める自警団員であり、団長を凌ぐ実力者です。というのも、彼は生まれこそサットン村ではありましたが、幼少のころにウォーラム城塞騎士の小姓として引き立てられ、その後、順調に出世して城塞騎士にまで上り詰めたという経歴を持っていました。ところが、3年ほど前に解雇されてしまったため、現在は生まれ故郷であるサットン村に戻ってきているというわけです。そんなレイモンドの剣の腕前は、城塞騎士の中でもかなり抜きんでたレベルです。そのため、彼から最長3年間に渡り修行を受けているあなたたちは、村人とはいえかなりの実力を有しています。

プレイヤーD:
 レイモンドはなんで解雇されたの?

GM:
 その理由については、このあとの説明で判明するので、もうしばらく聞いていてください。

プレイヤーD:
 了解。

GM:
 2人目はソフィア婆さん。すでに80歳を超えていると言われている女性で、村の最年長者であり語り部的な存在となっています。村の子供たちに対して読み書きや簡単な算術などを教えており、おそらくあなたたちも、幼少のころにはソフィア婆さんのもとで勉学に励んでいたことでしょう。村やその周辺のことでなにか疑問に思うことがあったときには、ソフィア婆さんに尋ねてみればだいたいのことには答えてくれます。また、彼女は簡単な白魔法と黒魔法を行使することもできますので、もしあなたたちの中で魔法を使いたいという人がいれば、その技術に関してはソフィア婆さんから教えてもらったことにするといいでしょう。
 続いて、3人目はウォーラム男爵。本名はエルドレッド・ナサニエル。36歳の男性です。彼はギルモア王国獅子騎士団の元団長でした。下層民の家に生まれながら、数々の武勲を立てて王国騎士団団長の座まで上り詰めたという経歴があり、その勇猛果敢な戦いぶりから“戦場の黒獅子”というふたつ名で呼ばれています。そして、4年前にはこれまでの功績を称えられ、国王からウォーラム男爵位を授けられました。それに伴い、獅子騎士団団長の座を後進に譲り、辺境の守護と開拓に専念するよう命じられています。ところが、ウォーラム男爵は自領の統治にあまり積極的ではなく、叙勲から1年後には税の徴収に必要となる最低人員だけを残して城塞騎士たちの多くを解雇してしまうと、自身は城内に引きこもり、公の場に姿を見せなくなってしまいました。

プレイヤーD:
 なるほどね。それでレイモンドが解雇されたってわけか。

GM:
 あと、直接シナリオには関係のない話なので聞き流してもらっても構いませんが、今回の冒険の舞台となるウォーラム男爵領は、4年前までギルモア四公爵のひとりであるバロウズ公爵が統治する一地方に過ぎませんでした。しかし、バロウズ公爵が他の公爵と銀山の所有権をめぐる内乱を引き起こした際、ことの鎮静化をはかったギルモア国王が、銀山の所有権をバロウズ公爵に認めるかわりに、その領地の一部を召し上げて男爵領とする裁定をくだしたという経緯があります。

プレイヤーA:
 つまり、大手企業ギルモアグループの関連会社であるバロウズ株式会社の一事業部がウォーラム株式会社として子会社化されて、そこにギルモア本社の敏腕営業マンが社長として赴任。しかし、その新社長は子会社の経営には興味がなく、もともといた事業部のスタッフを大部分リストラして現在に至ると……。

プレイヤーB:
 それに振り回されたレイモンドさんがかわいそう(笑)。

プレイヤーC:
 レイモンドは解雇されたことに対してどう思ってるんだ? たとえば、ウォーラム男爵のことを恨んでるとか……。

GM:
 その質問について今答えてしまうのはもったいないので、ここでは答えないでおきます。セッション中にキャラクターとしてレイモンドに質問してみてください。ただ、少なくともこれまでサットン村の人たちが公の場でレイモンドにその手の質問をすることはありませんでしたし、レイモンドも自ら積極的に話題にしたりすることはありませんでした。

プレイヤーC:
 了解。

GM:
 なお、城塞騎士たちの解雇は、彼ら当人たちだけでなく、あなたたちのような領地内の民衆にも少なからず影響を与えています。というのも、本来であれば領地内に野盗や害獣が出没した場合、その討伐のために城塞騎士が派遣されることになっていたのですが、現状、そのような活動は行われなくなってしまいました。そのため、自分たちの身は自分たちで守らなければということで、領地内の集落はそれぞれが自警団を新たに組織、あるいは強化するなどの対策を講じています。

プレイヤーB:
 まあ、そうだろうねぇ……。

プレイヤーA:
 いやな領地だ(苦笑)。

GM:
 最後にもうひとり……というかもう1体、クレメンタインを紹介しておきます。クレメンタインはコンラッド山脈南端付近を縄張りとする金竜であり、伝承がたしかであれば、もうすぐ誕生から100年を迎えようとしています。なお、クレメンタインが人間たちの前に姿を見せることは滅多になく、数年に一度の割合で遥か上空を飛行しているところを目撃されることがあるくらいです。

プレイヤーA:
 キャラクターの知識として、竜ってどういった存在なんだ? ソフィア婆さんが教えてくれる範囲で構わないんだが……。

GM:
 翼をもった巨大なトカゲとして認識されています。口から火を吹くこともあるそうです。神様が乗り物として使役していたというような話しを聞いたこともあるでしょう。さらに詳しいことについては、セッション中に知識判定を求めるシーンが予定されているので、現時点では説明しないでおきます。

プレイヤーC:
 とりあえず、オレたちとしては山神みたいなイメージを持ってればいいのか?

プレイヤーD:
 あるいは山神様の使いみたいな感じかな?

GM:
 そうですね。それでいいと思います。
 それと、これはキャラクター作成のあとの話になりますが、キャラクターの作成がひととおり終わったら、セッションスタート時点でのレイモンドを含めたプレイヤーキャラクター(以後PC)間の感情を、ロール・オア・チョイスで決定していきます。感情の種類は「嫌悪や侮蔑」「嫉妬や対抗心」「無関心」「好意や敬意」「愛情」の5つです。
 ただし、「無関心」だけは任意にチョイスできないものとします。互いの感情が「無関心」ばかりだと面白くありませんからね。
 ちなみに、レイモンドからあなたたちに対する感情はすべて「愛情」となります。

プレイヤーD:
 ラヴ……。

プレイヤーB:
 師弟愛ってことでしょ(笑)。

GM:
 なお、このPC間の感情設定は、決してPC同士の戦いを促すためのものではありません。あくまで短時間でPCの関係性を強めるための補助的なものであり、セッション中、互いに抱いている感情をポジティブな方向に変化させていくことを推奨しておきます。

プレイヤーC:
 了解した。

GM:
 最後に、敵を倒したときに入手できるドロップアイテムの処理について説明しておきます。
 本来、『Plain D20』では、敵を倒したときにドロップアイテムが手に入ることになっているわけですが、今回のセッションでは、倒した敵が落としたアイテムとしては扱いません。ドロップアイテムの処理は通常どおり行いますが、アイテムが出た場合は一旦GM側でプールしておき、その後のしかるべきタイミングであなたたちの手元に渡るようにします。

プレイヤーD:
 たしかに、そのほうが現実味あるもんね。

GM:
 さて、それではそろそろPCの作成をはじめてもらいますか。今回はレベル5のキャラクターを作成してください。キャラクターの年齢は16歳以上、20歳以下を推奨します。また、初期アイテムとして、〈速さの秘薬+1〉、〈力の秘薬+1〉、〈技の秘薬+1〉、〈知恵の秘薬+1〉、〈奇跡の秘薬+1〉、〈治療薬〉の中から自由に2つ選択しておいてください。

一同:
 了解。

レベル5
 レベル5は、小さな村の自警団では実力者となりえますが、まだまだ駆け出しといったレベルです。地方の城塞騎士であればレベル6以上、中央の騎士ともなればレベル10以上の実力を有しているものと設定しています。
 ただし、『Plain D20』のレベル差はそこまで絶対的な力の差とはならず、人数差のほうが強く影響します。具体的にはレベル10の一匹狼とレベル1の3人組みが戦った場合、後者の勝率のほうが若干高くなる程度です。



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