今回のセッションで使っている汎用TRPGシステム『Plain D20』のキャラクター作成はとても簡単です。
『Plain D20』に登場するキャラクターの力量は、SPD、STR、DEX、INT、VITという5つの能力値で表されており、レベルに応じてこれらの能力にポイントを振り分けていきます。
各能力はそれぞれ次のような意味合いを持ちます。
SPD | 敏捷性を表し、主に行動順や移動速度の判定に用いられます。 |
---|---|
STR | 力の強さを表し、筋力によって解決される判定に用いられます。 |
DEX | 器用さと知覚力を表し、精密な動きやアクロバティックな運動、感知・捜索などの判定に用いられます。 |
INT | 知的能力全般を表し、思考力や記憶力、とっさの判断力を求められる判定、そして魔法の行使判定にも用いられます。 |
VIT | 肉体的、および精神的な耐久力を表し、心身に負荷がかかるときの判定に用いられます。また、VITの値はそのまま耐久値の最大値となり、この耐久値が0になると戦闘不能状態となります。 |
成人を迎えたキャラクターは、レベル0の時点で27点の成長ポイントを持ち、このポイントを消費して、1~5の範囲内で各能力の初期値を決定します。このとき、SPDを上昇させるためには1点、STR、DEX、INT を上昇させるためには2点、VITを上昇させるためには3点の成長ポイントを消費する必要があります。
たとえば、一般的な人間は次のような初期能力値を持ちます。
SPD:3、STR:3、DEX:3、INT:3、VIT:2
そして、キャラクターのレベルが1つ向上するごとに、追加で成長ポイントを4点獲得することができます。
レベルアップ後の成長ポイントは各能力の成長値に自由に割り振ることができます。ただし、成長値が一定値(VITは3の倍数、それ以外の能力値は10の倍数)を超えるごとに、能力値を上昇させるために必要となる成長ポイントのコストが1つずつ増えていきます。
なお、初期値の決定においても同様ですが、成長ポイントを使い切る必要はなく、次のレベルアップのために余らせておいても構いません。
今回はレベル5のキャラクターを作成するので、初期の成長ポイントに加えて、20点の成長ポイントを割り振ることになります。
キャラクターの行動の成否は、このようにして定めた能力値に《D20》の出目を足して求めた達成値が、GMの定めた目標値以上となるか否かで判定されます。このとき用いる能力は、行動の内容に応じてGMが決定します。
ちなみに、今回のような魔法が存在する世界設定で遊ぶときには、バリアントルールとして、戦闘以外のシーンで発生した判定に限り、魔法を行使したことにして、本来判定に要求される能力にかかわらず、INTの値を用いて判定を試みることができるようになっています。
たとえば、潜伏者の存在の有無を確認するために聞き耳を立てる場合、本来DEXの値を用いて判定することになるわけですが、感知系の魔法を使ったなどの描写を入れることで、DEXの代わりにINTで判定することが可能となるわけです。
ただし、その場合には追加で《D20》のロールをおこない、そこで5以下の目が出た場合には耐久値を1点減らさなければなりません。
このようなバリアントルールを組み込むことで、「ファンタジーもの」「メカもの」「ホラーもの」などのジャンルや世界観の特色を出しやすくなります。ですが、『Plain D20』はシンプルかつ手軽であることを特長のひとつとするシステムですので、あまり複雑なルールは組み込まないほうがよいでしょう。
能力値を決定したら、続いて次の12種類の特殊行動の中から得意技をひとつ選択します。
【先制】 | 自分のイニシアチブ値を向上させる。 |
---|---|
【かく乱】 | 任意対象のイニシアチブ値を下げる。 |
【ガード】 | 敵が仲間に襲い掛かってきたときに、代わりに戦う。 |
【誘いだし】 | 複数の敵を引き付ける。 |
【一騎打ち】 | 任意対象と一対一で、激しい攻防を行う。 |
【妨害】 | 敵味方の攻撃手段を抑制する。 |
【追加攻撃】 | 自分の攻撃力を向上させる。 |
【鉄壁防御】 | 自分の防御力を向上させる。 |
【カウンター】 | 防御成功時に敵にダメージを与える。 |
【執念】 | 自分の耐久値がなくなっても戦闘を続行する。 |
【入れ替わり】 | 自分と仲間との立ち位置を入れ替える。 |
【無効化】 | ほかの特殊行動の効果を無効化する。 |
セッション中に戦闘が発生した場合、プレイヤーたちはこれら12種類の特殊行動が記されたカードによって構成された山札から、レベルに応じた枚数のカードをドローすることになります。こうして手札としたカードを消費することで特殊行動を用いることができるわけですが、得意技として設定された特殊行動のカード1枚は、ドローの内容とは別に常にプレイヤーの手札として加えられます。
特殊行動カードは戦闘ごとにドローし直すことになるので、温存する必要はありません。また、得意技は戦闘ごとに使えるようになるので、キャラクターの個性を演出するためにも積極的に使っていきましょう。
なお、山札の内容は「12種類のカード×PCの人数-PCたちの得意技」となります。
ここまでキャラクターを作ることができたら、仕上げとしてクラスを設定します。
クラスは、「戦士」でも「魔法使い」でも「踊り子」でも「酒場の主人」でも、プレイヤーが自由に決定できます。これまでのセッションでは「スライム」というものもありました。レベルに応じて複数のクラスを設定することもできます。
クラスは主にフレーバーとして用意されているものですが、戦闘時以外の判定で悪いダイス目がでてしまったときに、もしその判定を得意とするクラスが設定されていたのであれば、キャラクターのレベルと設定したクラス数に応じて得られるリカバリポイントを消費することでダイスの出目を最大で20まで引き上げることができるようになっています。これも得意技と同様に、キャラクターの個性を表現するためのものです。
あとはキャラクター名と性別、年齢、必要であれば所持品や所持金をキャラクターシートに書き込めば、『Plain D20』のキャラクター作成は完了です。
ここで触れた内容以外の詳細なルールについては、リプレイ本編にて随時解説していきます。あるいは、マニュアルを参照してください。
GM:
では、キャラクターも出来上がったようなので、ひとりずつ自己紹介していってください。
プレイヤーA:
はい。名前はフェルナンド、男性、16歳。
フェルナンド(プレイヤーA):
サットン村の生まれではなく、両親に連れられて旅をしていたところ、野盗に襲われて両親が死亡。自分ひとりだけ助かったところをサットン村に帰郷する途中のレイモンドに拾われ、そのままサットン村で暮らすことになった。
現在はレイモンドの従者的な立ち回りをしている。
剣と白魔法を使うことができるが、一般人と比べて敏捷性と器用さに劣っている。
また、すでにそこそこの実力は身に付けているんだが、自分としてはまだまだ修行が足りないと感じている。
この年齢にしては大人びていて真面目な感じ。
GM:
いきなり、一般人よりも劣る能力値を持った人が登場しましたね。
フェルナンド:
最初は隻腕にして、もっと極端な能力値にしようかとも考えていたが、やめておいた。
GM:
それはよかった(苦笑)。
セッション中は、一般人に劣る能力の描写を忘れずにお願いしますね。
GM:
次の人どうぞ。
プレイヤーB:
メイジーです。16歳の女性です。
メイジー(プレイヤーB):
ワタシは村で生まれ育ちました。
猟師の娘で、攻撃手段は弓。とにかくすばしっこくて、活発。性格もやんちゃで、なにか嫌なことがあってもそれを引きずることのない刹那主義者です。
母親よりは父親の血を色濃く継いでおり、城塞騎士たちのリストラが行われて戦力として頼ることができなくなると、「ワタシが自警団員になって村を守ってみせるよ!」と一念発起して、自警団員を志すようになりました。ただ、父親よりもレイモンドのほうが弓の扱いに優れていたので、レイモンドに師事して現在に至ります。
GM:
メイジーも、一般人より劣る能力値があるんですね。まあ、女性ということでSTRの値が低いのはわからなくもないのですが、おバカなわけですか……。
メイジー:
バカじゃなくて、アホです。アホガールなんです!
GM:
了解です(笑)。
そして、メイジーの設定により、レイモンドは弓も巧みに扱えることになりました。レイモンドはなかなか優秀な戦士のようですね。
では、3人目の方。
プレイヤーC:
アルフォンス、男性、16歳。
アルフォンス(プレイヤーC):
サットン村の普通の農家の子として生まれて、両親も健在。
農家の一人息子として畑仕事を手伝わされたりもするんだが、土臭いのは嫌いで、「オレには剣の才能がある! だから、そのうち王国騎士になって、モテモテの大金持ちになってやる!」なんて軽口を叩いてる。基本的にお調子者タイプ。
武器は身の丈に合わないほど大きな両手剣。クラスとして“白魔法使い”を選択してあるが、自分の肉体を強化するタイプの魔法しか使えない。
GM:
ようやく、一般人並みの初期能力値を持つ人が登場しましたね。これが普通なんですよ(笑)。
肉体強化系の魔法しか覚えていないというのは、キャラクターの色付けとして面白そうです。
それでは、パーティー最後のキャラクター紹介をどうぞ。
プレイヤーD:
エリオットです。男性、16歳。
エリオット(プレイヤーD):
村生まれの村育ちです。母親にベッタリで、よく家事の手伝いなどをしていたため、女子力は高めです。
父親は腕っぷしが強く、元は自警団員でした。ですが、害獣駆除などで城塞騎士を頼ることができなくなったことで、自警団だけで狼の群れを追い払わなくてはいけなくなり、それに参加していた父親は、自らの脚では歩けなくなるほどの深手を負ってしまいました。
エリオットは、そんな父親に代わって自分が村を守らなければと思い、自警団員を目指すようになりました。
剣は扱えませんが、風の精霊と会話することができます。
GM:
もしかして、男の娘ってやつですか?
エリオット:
女子力は高いけれど、一応男です。女装もしていません。
GM:
了解です。
パーティー全体としてはバランスが取れた構成となりましたね。
では、お互いのキャラクターが確認できたところで、レイモンドを含めたキャラクター間の感情を決定していきましょう。まずは、暫定値をダイスロールで決めていきましょうか。
一同:
(コロコロ)
フェルナンド:
俺に対する全員の感情が「無関心」なんだけど、どういうこと(笑)?
メイジー:
完全に無視されてる感じ(笑)。
エリオット:
まあ、ダイス目の結果とはいえ、フェルナンドはよそ者ってことだからわからなくはないよね。
GM:
そう言うエリオットは、フェルナンド以外の全方位に喧嘩売ってますし、全体的にみてやけにネガティブな感情が多くなりましたね(苦笑)。
アルフォンス:
現状、オレたち交流できてない! だが、ここから成長して、いずれ協力するようになる!
GM:
そうですね、まずはマイナスから始まるほうがやりやすいかもしれません。あと、これは暫定値なので、キャラクター設定にあわせて変更しても構いませんからね。しばらく時間を取りますので各自調整してください。
一同:
了解。
(それぞれ相関関係を調整)
GM:
さて、それでは暫定値から変化を加えたうえで、それぞれに抱いている感情を教えてください。
フェルナンド:
レイモンドに対する感情を「嫉妬や対抗心」から「好意や敬意」に変更した。彼のことは名前を様付けで呼ぶほど尊敬している。
ほかの感情に変化はないが、自分より剣技で勝るアルフォンスと魔法で勝るエリオットに対して、表には出さないもののそれぞれ嫉妬心を抱いていることにする。
メイジー:
ワタシは、アルフォンスに対する感情を「愛情」から「嫉妬や対抗心」に変更。アルフォンスの上昇志向を凄いなと思ってはいるんだけど、それが今のところ愛情とはならず、対抗心を抱く要因になってる。いわゆる喧嘩友達的なポジション。
それと、エリオットに対する「嫉妬や対抗心」は「好意や敬意」に変更。頼りないエリオットのことを、お姉さんとして面倒見てあげないといけないなと思ってます。
あと、フェルナンドに対する感情は「無関心」のままにしておくね。チョイスできない「無関心」は貴重なので(笑)。
フェルナンド:
俺の好意は一方的なものなんだな(苦笑)。
GM:
続いて、アルフォンス、どうぞ。
アルフォンス:
レイモンドについては、事情はよく知らねぇが、アイツは上昇志向を持たずに田舎に逃げ帰ってきた脱落者なんだって思い込んでいて侮蔑してる。
フェルナンドに対してはとくに興味なし。
メイジーは野暮ったくて乳臭せぇなってことで敬遠してる。オレは、もっと垢抜けた都会っ娘が好みなんだよ。
エリオットに対してだけ、感情を「嫉妬や対抗心」から「嫌悪や侮蔑」に変えておく。ナヨナヨして気持ち悪い奴だって思ってるからな。
GM:
全方向に喧嘩売っていくタイプですか(笑)。
エリオット:
そんなぁ、ボクは別にナヨナヨなんてしてないよぉ……。
アルフォンス:
その言い方がイラッとする(笑)。
GM:
では、そんなエリオットが周囲の人たちに抱いている感情はどうなりましたか?
エリオット:
レイモンドに対しては逆恨みになるんですが、仕事を放棄した城塞騎士たちのせいで自分の父親が負傷したのだといった考えが捨てきれず、嫌っています。
フェルナンドに対しては「無関心」のままです。貴重だから(笑)。
メイジーに対しては「嫌悪や侮蔑」を「好意や敬意」に変えておきます。彼女だけはボクに優しくしてくれるので(笑)。
そのうえで、アルフォンスのことは嫌っています。「メイジーは、なんであんなやつのことを気にかけてるんだよぅ……」って感じで。
一同:
(笑)
GM:
蚊帳の外のフェルナンド、唯一好感度の高いメイジー、嫌われ者のアルフォンス、好き嫌いがわかれたエリオットと、ずいぶん特色がでましたね。GMとしては、レイモンドに好意的な人がふたりもいるので一安心です。
ここを出発点として、いい関係を築いていけるように頑張りましょう。