GM:
それではシーンを再開します。
精霊たちが自然へと還っていくと、その場には膝をついている山の民だけが残されます。そんな山の民へとあなたたちが目を向けていると、戦いの最中に衝撃が加えられていたのか、彼が被っている仮面に亀裂が入り、ふたつに割れて足元へと落下しました。そして、山の民の顔が明らかになります。
エリオット:
まさか……?
GM:
なんと、仮面の下から現れたのはレイモンドの顔でした。
エリオット:
やっぱり。
レイモンド(GM):
「見事だ。よくもまあ、これほど容易く倒してくれたものだな」
アルフォンス:
「まあ、オレ様にかかればざっとこんなもんよ!」
メイジー:
「なんでアナタが偉そうにしてるの(笑)? 凄かったのはエリオットでしょ?」
レイモンド(GM):
「はっはっは、ずいぶんと大きな口を叩いてくれたものだな。しかし、これだけの実力を見せられては、認めざるを得ないか……。おめでとう、合格だ。それも文句なしにな」
GM:
そう言うと、レイモンドは腰に提げた袋の中から4枚のメダルを取り出し、それをあなたたちに手渡しました。
フェルナンド:
「ありがとうございます。レイモンド様」
エリオット:
「やったーッ、ボクたち試験に合格したんだね!」
メイジー:
「やったねッ!」
メイジー&エリオット:
ハイタッチ(笑)!
エリオット:
アルフォンスのところにも近寄っていってハイタッチしようとするけど、してくれる?
アルフォンス:
「あー、うっとうしいッ! いちいち絡んでくんじゃねぇよ! こんなのはな、まだまだ序の口に過ぎねぇんだよ!」
エリオット:
「でも、みんなが協力したからこそ達成できたことじゃない」
フェルナンド:
いや、ほぼエリオットひとりで達成した感じだったな(笑)。
メイジー:
うん、エリオット無双だったよねぇ(笑)。
レイモンド(GM):
「さてと……。怪我を負っている者はいるか?」
フェルナンド:
「アルフォンスだけです」
アルフォンス:
「うぐッ……。こんなもんは、ツバつけときゃ大丈夫なんだよ」
残り耐久値は1点だけどな(苦笑)。
フェルナンド:
「それよりも、レイモンド様のほうが……」
そう言って、レイモンド様に癒しの魔法を掛けようとするが、いまの俺の癒しの魔法はただのフレーバーだ(笑)。
レイモンド(GM):
「ああ、心配無用だ。どちらが勝つにしても負傷者がでることはわかっていたからな。ソフィア婆さんに作ってもらった薬を持ってきている」
GM:
そう言って立ち上がると、レイモンドは近場に置いてあった荷物袋の中から3本の薬瓶を取り出します。そして、自分の分の薬を飲むと、残りをアルフォンスの前に置きました。
アルフォンスは〈回復の秘薬〉を2つ、所持品に加えておいてください。
一同:
おおーッ!
レイモンド(GM):
「ちなみに、さっきお前たちが倒した精霊も、ソフィア婆さんが半年がかりで用意してくれたものなんだぞ」
エリオット:
「どうりですごく強かったはずだよ」
フェルナンド:
炎の精霊を1ラウンドで倒しておいて、そう言うのもなんだけどな(苦笑)。
メイジー:
ちょっと空気読めてない発言だよね(笑)。
エリオット:
ゴメンね。風の精霊がボクの周囲に壁をつくっちゃってるから、まわりの空気が読めないんだ。
アルフォンス:
まったく、罪作りな精霊だな(苦笑)。
レイモンド(GM):
「どうした、アルフォンス。さあ、薬を飲め。薬が十分に効いたら、すぐにここを出発だ。日のあるうちにキャンプ地点まで戻りたいからな」
アルフォンス:
「お、おう……」
メイジー:
薬を飲めとは言われたけど、〈回復の秘薬〉は貴重だから温存しておきたいよね(笑)。
フェルナンド:
1本飲んで、もう1本は取っておくとかな。
アルフォンス:
そうだな。じゃあ、〈回復の秘薬〉を1本だけ飲んで、もう1本は荷物袋の中にしまった。
「よし、大丈夫だ」
GM:
では、傷を癒したあなたたちは、まだ日のあるうちにキャンプ地点まで戻ることになりました。このあと長時間の休憩が取れるので、下山時の判定は省略しておきます。
GM:
キャンプ地点まで戻ると、レイモンドは焚き火跡の土を掘り起こし、そこから香草で包んで蒸し焼きにした羊肉を取り出しました。それは牧羊が盛んなサットン村の名物料理「羊肉の香草焼き」であり、お祝いの席などでよく出されるものです。
こうして、あなたたちは西の地平線へと沈んでいく太陽を眺めながら、レイモンドの作った料理に舌鼓を打ちつつ、試験に無事合格したことの余韻を味わうことになったのでした。
メイジー:
宴だーッ!
レイモンド(GM):
「酒も持ってきてあるんだが、やるか?」
エリオット:
ボクたちって、年齢的にお酒を飲んでも大丈夫なの?
GM:
大丈夫ですよ。この時代のギルモア王国には、飲酒の年齢制限がありません。むしろ、お酒は神様の恵みと言われていることもあり、宗教的な意味合いで年端もいかない子供がお酒を口にすることも珍しくありません。
エリオット:
「いいんですか?」
レイモンド(GM):
「もちろんだとも。試験に合格したお前たちは、これで晴れて正規の自警団員になったんだ。少しくらいは羽目を外して、その喜びを噛みしめておきたいだろ?」
フェルナンド:
「では、いただきます」
GM:
そうすると、レイモンドは人数分のカップを用意して、そこにワインを注いでいきました。
一同:
「乾杯ー!」
エリオット:
「わぁ、これがお酒なんだね。ボク、お酒飲んだのはじめてだよ」
フェルナンド:
「俺もはじめて飲んだが、なかなか美味いものだな」
メイジー:
「ワタシは何度か飲んだことあるよ」
アルフォンス:
皆が楽しそうに飲んでる中、エフォード岳でひとりだけ〈回復の秘薬〉を飲むはめになったことを気にして、少しバツが悪そうにそっぽを向いてる。
「ちくしょう……」
GM:
こうして夕食の時間が過ぎていき、やがてあなたたちがいつになく美味しく感じられる食事を一通り堪能し終えたところで、レイモンドがこんなことを切り出してきました。
レイモンド(GM):
「そうだ。せっかくだから、この場でお前たちに、自警団員を志した動機や今後の抱負などについて話してもらうことにするか。どうせ村に戻ったら、嫌でも皆の前で発表しなければならないんだ。今のうちに練習しておいたほうがいい。そうすれば、ぶっつけ本番でやるよりもいくらか格好がつくだろう?」
メイジー:
「ふぇ?」
ワタシは肉の最後のひとかけを口に頬張りながら、急に話題を振られたことにキョトンとしてる。
レイモンド(GM):
「積極性があるということも自警団員にとって大切なことだぞ。さあ、誰から発表する?」
エリオット:
「じゃ、じゃあ、ボクから言わへてもらいますぅ」
そう舌足らずな声を上げると、ボクはその場で立ち上がった。手に持ったカップの中の慣れないお酒に、すでに酔っぱらっています。
「ボ! ボクは最初、レイモンド先生のことが嫌いでしたぁ! だって……だって……レイモンド先生がもっと早く村に来てくれていれば、お父さんが怪我をすることもなかったから――」
そこで、カップの中の液体を一気に飲み干した。
フェルナンド:
「おい、飲み過ぎだぞ、エリオット」
エリオット:
「それに、先生の厳しい特訓も、正直、凄くイヤだったんです! でも……でも……結局それは全部ボクたちのためだったんですよねぇ? ありがとございまふぅ。レ、レ、レイモンド先生!
あと、ボクはみんなのことも誤解してたみたいだ。ボ、ボク……。ボク、みんなのことが大好きだよ!」
全員への感情が「好意や敬意」に変わりました!
一同:
(笑)
アルフォンス:
いくらなんでも、ちょろすぎるだろ(笑)。
エリオット:
いや、あんまり対立関係を引っ張っても、お互いにプレイしにくいかなと思って……。
GM:
では、エリオットの話の途中からレイモンドの表情がこわばり、少し暗い顔つきになったことが、エリオット以外の者には感じられたかもしれません。それは、「レイモンド先生がもっと早く村に来てくれていれば」という言葉の辺りでした。
エリオット:
「これからは、ボクたちが村を守らなければならないんだ! だから、みんなで、みんなで協力ひて、協力ひておるおろおらぁ……」
そこまで言うと、ボクはその場にへたりこんだ。
フェルナンド:
寝たのか?
エリオット:
座り込みはしたけれど、一応みんなの発表は聞いていたいから、まだ起きているよ。
レイモンド(GM):
「エリオット、大丈夫か? 水を飲め、水を」
エリオット:
「ハァ……ハァ……。はい……」
メイジー:
じゃあ、ワタシは少しほろ酔いの状態で、エリオットのあとを引き継いだ。
「これからはワタシたちが村を守っていかなきゃならないってのは、エリオットの言ったとおりだよね。
ワタシは頭悪いから、あんまり深いところまで考えられてないかもしれないけど、それでも自分がこの村のためにできることをしなくちゃって考えて、自警団に入ることに決めたんだ。だから、これからも村のためになることをしていきたいと思う。
まあ、お母さんはワタシが自警団員として活動することに、あまりいい顔はしてないけどね。
……って、こんな感じでいい?」
エリオット:
パチパチパチパチ。
アルフォンス:
メイジーの話が終わったところで、自分の荷物袋の中から風よけ用のフード付きマントを取り出すと、フェルナンドのほうに投げて顎でエリオットにかけてやるように合図した。
フェルナンド:
なら、そのマントをエリオットにかけてやる。
アルフォンス:
「じゃあ、次はオレだな。まあ、抱負とかいっても、オレ様は王国一の騎士になる宿命を背負ってるからな。自警団はちょっとした腰かけだ。こんなしけた村なんかとっとと出ていって、王都で一旗揚げてやるんだ。そんで、王国騎士団の団長になって、いずれ“戦場の黒獅子”を超えるくらいの英雄になってやる」
メイジー:
「そのためにはもっと強くならないとね(笑)」
アルフォンス:
「オレはもう十分に強えぇよ! ……それに、これからもっともっと強くなってみせる!」
エリオット:
パチパチパチパチ。
「アルフォンスならきっとなれるよ!」
アルフォンス:
そのエリオットの声を聞いて、昼間の試験で歯がゆい思いをしたことを思い出すと小さく舌打ちした。
「ほら、最後はオメェだぞ、フェルナンド」
フェルナンド:
アルフォンスに話を振られると、俺は少し押し黙ってから、レイモンド様に向かってこう切り出した。
「俺は将来的には騎士になりたいと思っています。今は自警団員として己を磨き、いずれ周囲の者に認められたのであれば、俺もアルフォンスと同様に騎士を目指すことになるでしょう……。
ただ、レイモンド様が城を離れたあとの城塞騎士たちの評判を聞いていると、この領地の騎士というものが本当に俺の目指しているような存在なのだろうかと、疑問に感じることがあるのです……」
そこで一旦言葉を切ると、意を決してからレイモンド様にこう質問を投げかけてみた。
「レイモンド様は今の城塞騎士たちのことを、どう思われているのですか?」
GM:
その言葉を受けたレイモンドは、あきらかに表情を曇らせました。
レイモンド(GM):
「今の城塞騎士たちに対して思っていることか……。フェルナンド、すまないが今の俺は――」
メイジー:
そこで、レイモンド先生の言葉を遮るように、「フェルナンド、なにお堅い質問しちゃってるの? そういう話はまたあとにして、もうちょっと飲もうよ!」と言って、フェルナンドに無理やりお酒を飲ませた。
GM:
では、メイジーが割って入ったことで、フェルナンドとレイモンドの話は途切れてしまいました。レイモンドは、フェルナンドとメイジーのやり取りを眺めて乾いた笑いを浮かべると、それ以上フェルナンドからの問いかけに触れようとはせず、しばらく間が空くことになります。
そして、ある程度落ち着いたところで、レイモンドはあらためてそれぞれの動機と抱負についての総括を口にしました。
レイモンド(GM):
「さて、これで4人の発表は出揃ったな。今聞かせてもらったお前たちの言葉は、どれも素晴らしいものだった。騎士になるにしても、そうでないにしても、きっとお前たちであればひとかどの人物になってくれる、それだけの資質をお前たちは持っている――と俺は信じているぞ。
それじゃ、お前たちが聞かせてくれた言葉へのお返しと言ってはなんだが、俺からもひとつお前たちに言葉を贈っておこう」
GM:
そこでレイモンドは一度咳払いをしました。そして、いつになく真面目な顔をすると――
レイモンド(GM):
「どうか、10代のうちは村のことを考え、いずれ来たるときのために自分を磨いてくれ。そして、20代になったらこの地方、ウォーラム男爵領のことを考え、30代になったらギルモア王国のことを、それ以上になったら世界へと目を向けて欲しい」
GM:
――と、なにやら幕末の偉人のようなことを言いだすわけです。
メイジー:
それ、短命のフラグだから言っちゃダメ(笑)。
一同:
(笑)
フェルナンド:
「世界……ですか……。これまで考えたこともありませんでした……」
レイモンド(GM):
「お前たちの中に眠っている可能性はそれほどまでに大きい――と俺は思っているんだがな……。
しかし、これでお前たちも晴れて自警団員か。お前たちがいてくれるのであれば、サットン村もしばらくは安泰だな」
メイジー:
「まかせといて! とくに今日のエリオットは凄かったもんね」
アルフォンス:
「だいたいアイツひとりでやっちまいやがったからな……」
フェルナンド:
いつまでひがんでるんだよ(笑)。
GM:
さて、そのような感じで夕食の時間が過ぎていき、やがて就寝の時間が迫ってきます。
レイモンド(GM):
「さてと、それじゃ見張りは俺に任せて、お前たちはそろそろ横になって休んでおけ。明日は早めにここを出発するからな」
フェルナンド:
「はい」
メイジー:
「はーい」
GM:
では、あなたたちは焚き火のそばで横になり、明日の下山に備えて眠りにつくことになります。そんな中、先ほどのフェルナンドの言葉があとを引いているのか、レイモンドはいつになく真剣なまなざしを、焚き火の炎へと向けていたのでした。