LOST ウェイトターン制TRPG


TRPGリプレイ 輝くもの天より墜ちイメージ

08.輝くもの天より墜ち

GM:
 そして時間は進み、やがて真夜中になります。6時間以上の休憩が取れたことになるので、耐久値にダメージを受けている人は1点回復させておいてください。

アルフォンス:
 よし、これで耐久値が全快した。

GM:
 しんと静まり返った山林にフクロウの鳴き声だけが響く中、ひとりで見張り番をしていたレイモンドが、出し抜けにあなたたちの身体をゆすって順番に起こしていきました。

レイモンド(GM):
「おい、お前たち、起きろ!」

メイジー:
「うーん、なんなんですか?」

レイモンド(GM):
「目をあけて空を見てみろ。珍しいものが見られるぞ」

GM:
 そう言うレイモンドの声は、珍しく興奮しています。
 その言葉に促されてあなたたちが夜空を見上げてみると、そこには天にきらめく星や月よりもさらにまばゆい光がひとつ、北側にそびえる山頂から南の方角に向けてゆっくりと流れていくのが確認できました。その速度はとてもゆるやかであるものの、まるで流れ星のようです。
 じっと目を凝らしてその小さな光の軌跡を追っていると、やがてそれが翼を羽ばたかせて飛行する金色の竜であることがわかりました。

エリオット:
「うわー、すごーい!」

フェルナンド:
「あれは……クレメンタインか?」

メイジー:
「キラキラ輝いていて、綺麗だね」

GM:
 相当高いところを飛んでいるのか、その光はかなり低速で移動しているように見えますが、おそらくゆうに時速50キロ以上の速度がでていることでしょう。
 そのような輝く光を眺めながら、レイモンドはこう口にしました。

レイモンド(GM):
「そうか、クレメンタインはもう100歳になるんだったな。となると、子を産み育てるために、竜の楽園を目指して飛んでいくところなのかもしれないな」

GM:
 ここで“竜の楽園”という言葉が出てきたので、INTによる知識判定をおこなってみてください。目標値は16です。

一同:
(コロコロ)

フェルナンド&エリオット:
 成功。

アルフォンス:
 大成功、キター! (コロコロ)36で成功!

フェルナンド:
 アルフォンスはずいぶんいい目だな。

メイジー:
 きっと、自分の興味のあることだけは詳しいんだよ(笑)。

アルフォンス:
 はっはっは。ドラゴンマニアだってことがばれちまったか(笑)。

GM:
(そのわりに、クレメンタインのことは知らなかったけれどね 笑)
 ならばアルフォンスは、竜の楽園が南方の海に浮かぶ無人島であることを知っていました。足の速い帆船であれば、風向き次第で港町ポートレッジから片道2日で到達できるくらいの距離にあるそうです。しかし、その近くまで船を出す漁師はいるものの、竜の楽園と呼ばれる島の周囲には常に激しい渦潮が生じており、これまで無事に上陸できた者はいないとされています。

アルフォンス:
「たしか、竜の楽園のまわりには激しい渦潮があって、実際に上陸できた人間はいねぇって話だったな……」と、その情報をみんなにも教えておく。
「しかし、竜か……。一度くらい背中に乗ってみてぇもんだな……」

GM:
 さて、そのようなことを呟きながら竜を眺めていたあなたたちですが、ここでDEXによる目標値19の知覚判定をおこなってみてください。

一同:
(コロコロ)

メイジー:
 成功したのはワタシだけかな?

GM:
 ならば、ほかの者にはただ金竜が羽ばたいているだけのように見えていたのですが、メイジーだけはいち早く金竜の様子がおかしいことに気がつきました。メイジーの目には、なにやら金竜の羽ばたきがときおり乱れ、ふらついているように見えます。

メイジー:
「あれ……? あの金竜、なんだかふらついてない?」

エリオット:
「え? ボクには、そうは見えないけれど……」

アルフォンス:
「ただの見間違いじゃねぇのか?」

メイジー:
「馬鹿にしないでよ。ワタシ、目はいいんだからね!」

GM:
 では、ほかの者もメイジーの言葉に促されて金竜の動きを注視していると、たしかにその動きが不自然であることに気がつきました。少しすると、その動きに急下降や急旋回が加わり、それが通常の飛行ではないことがはっきりとわかります。

アルフォンス:
「ん? なんだありゃ?」

GM:
 さらに観察を続けていると、やがて金竜のまわりに巨大な黒い鳥のようなものが何匹もまとわりついているのが確認できました。どうやら、金竜はその黒い鳥たちと戦っているようです。
 鋭い牙や爪を唸らせ、または口から炎を吐くなどして、金竜はまとわりつく鳥を追い払おうとしています。ですが、それだけで数多くいる鳥のすべてを倒しきることは困難でした。
 すると、このままではらちが明かないと判断したのか、金竜はいったん攻撃の手を止めてじっと力を蓄えるような動きを見せ、一呼吸おいたあとでその全身から眩い閃光を放ちました。その目もくらまんばかりの閃光に、黒い鳥たちの姿はひとつ残らず掻き消えていきます。
 こうして、金竜はなんとかすべての鳥を撃退することに成功しました。しかし、戦いが終わったころには、鳥たちの執拗な攻撃によって金竜の翼もズタズタに引き裂かれており、その巨体を中空に保つことができなくなった金竜は、きりもみしながら地上へと落下していきます。

エリオット:
「あーッ!」

アルフォンス:
「金竜が……落ちてくるッ!?」

GM:
 金竜が落ちていこうとする地点は、あなたたちが現在いるところからさほど離れていない場所でした。

メイジー:
「こ、こっちに来るよ!」

フェルナンド:
「大変だッ!」

GM:
 次の瞬間、巨大な落下物が大気を切り裂く音が、あなたたちの間近を通り過ぎていきました。そして続けざまに、その落下物が切り立った崖の壁面に叩きつけられる際に生じた重々しい音が、辺り一帯に響き渡ります。そのあまりにも大きな衝撃音に、木々の枝にとまって翼を休めていた鳥たちも一斉に羽ばたき、真っ暗な空へと飛び去っていきました。

輝くもの天より墜ち

GM:
 そのようにして金竜が落下した場所は、キャンプ地点から徒歩で5分と離れていないところでした。

アルフォンス:
「あっちだッ! あっちに落ちたぞッ!」
 オレはすぐさま駆け出そうとする。

メイジー:
「行こう!」って、ワタシも興味津々なんだけど、行ちゃっていいのかな?

GM:
 レイモンドは全員の安全を優先すべく考えを巡らせていたのですが、アルフォンスとメイジーのふたりが積極的に金竜の落下地点へ向かおうとしたことで、その意思を固めました。

レイモンド(GM):
「そうだな。お前たちももはや見習いではないというわけか……。ならば、行くとしよう!」

GM:
 こうして、あなたたちは金竜が落下したであろう切り立った崖の下まで向かって行ったのでした。


GM:
 あなたたちがその場所に近づいていくと、目の前に金色の塊が見えてきます。しかし、そこに見えた金竜の腕や翼、そして片脚はあらぬ方向に曲がっており、幾本かの太い骨が頑強な鱗を突き破って露出していました。また、金竜の身体から流れ出た大量の血液が、その巨体の周囲に、まるでどしゃ降りの雨のあとのようなぬかるみをつくっています。

エリオット:
「うわぁぁぁ……」

GM:
 無残な姿となったクレメンタインではありましたが、竜の生命力というものは凄まじく、なんとかまだ息のある状態ではあります。

クレメンタイン(GM):
「……」

アルフォンス:
 でかいんだよな?

GM:
 クレメンタインの頭部の高さだけで、あなたたちの身長くらいあります。全長50メートル級ですね。

アルフォンス:
「うおおおぉぉぉ! で、でけぇ!」

エリオット:
「急いで傷を治してあげないと……」

GM:
 あなたたちがさらに近づいていくと、金竜は薄っすらと目を開きました。そして、まるで威嚇するかのような咆哮を響かせます。

クレメンタイン(GM):
「グウォーンッ!」

GM:
 全員、VITによる目標値12の精神判定を試みてください。失敗すると怖気づいてしまいます。

一同:
(コロコロ)

エリオット:
 ごめん、失敗しちゃった。
「ひぃーッ! 金竜さん、傷に障るから、そんなに動かないで……」と言いつつ後ずさる。

GM:
 咆哮を終えると、口を閉じた金竜は鼻から熱い蒸気を発しました。それはまるで、あなたたちがそれ以上近づくのをけん制しているかのようです。

メイジー:
 「わッ! アチチ……」

GM:
 あなたたちの歩みがとまったことを確認すると、続いてクレメンタインは目を閉じ、グッと息を止めて力むような動きをみせました。次の瞬間、ズルリと音を立てて、クレメンタインの下腹部から直径1メートルほどある光輝く球体が排出されます。どうやら、それは金竜の卵のようです。
 クレメンタインは、残りわずかとなった力を振り絞ってその首を持ち上げると、下腹部のほうに頭を運び、卵を愛でるように鼻先を擦りつけます。そして、しばらくそうしたあとで、輝きを放つ卵をあなたたちの目の前に押し出してきました。

メイジー:
「アルフォンス、薬! まだ薬が残ってたでしょ!?」

アルフォンス:
「え? これか? これ、飲むのか?」

GM:
 癒しの魔法を使うことができるフェルナンドは、このメイジーとアルフォンスのやり取りを耳にしたところで直ぐに察することができるのですが、ここまで巨大な生物に対して、人間の怪我を癒す程度の行為は焼け石に水ですね。せいぜい、鱗一枚が治る程度でしょうか。

フェルナンド:
 まあ、そうだろうな。
「無駄だ、やめておけ」

メイジー:
「そんなぁ……」

GM:
 クレメンタインは、じっとあなたたちのことを見つめています。まるで、その巨大な赤い瞳が、あなたたち一人ひとりのことを直視しているかのように感じられることでしょう。

フェルナンド:
「まさか、この卵を俺たちに委ねるつもりなのか?」

クレメンタイン(GM):
「ギュワァーンッ!」

GM:
 それがフェルナンドの問いに対する答えであるかのように、クレメンタインはひときわ甲高い鳴き声を上げます。
 しかし、その鳴き声を最後に、金竜はかろうじてもたげていた首をドサリと大地へと落とすと、それ以降、身じろぎひとつしなくなってしまいました。

アルフォンス:
「オイ! しっかりしろッ! オマエ、この卵を残して逝っちまうつもりかよッ!?」

GM:
 もはやどんな言葉を投げかけようとも、クレメンタインの亡骸がそれに応じることはありません。

エリオット:
「し……死んじゃったの……? どうしよう……。ねぇ、レイモンド先生。ボクたちいったいどうすれば?」

GM:
 さすがのレイモンドも、目の前で起こった現実離れしたできごとに茫然としています。

レイモンド(GM):
「すまない。俺にとってもこんなことははじめてで、すぐには考えがまとまりそうにない……」

メイジー:
「と、とにかく、クレメンタインはなにかに襲われてたみたいだし、せめて卵だけでも守らないと……」

GM:
 では、そのようなところで、DEXかINTのいずれかを用いた知覚判定をおこなってください。目標値は17で、互助可能です。

メイジー:
 ワタシはDEXで判定。
(コロコロ)あらら、14で失敗。

フェルナンド:
 INTで判定。
(コロコロ)11で失敗。

アルフォンス:
 オレもINTで判定。
(コロコロ)ダメだ、15で失敗。

エリオット:
 もちろん、INTで判定。
(コロコロ、コロコロ、コロコロ)

フェルナンド:
 なんか、変なことしてる奴がいるんだが(笑)。

エリオット:
 2回大成功して、51(笑)。

メイジー:
 さすエリーッ!

フェルナンド&アルフォンス:
(笑)

GM:
 きっとエリオットは、さきほどクレメンタインの咆哮に怖気づいて後ずさり、ほかの人より少し離れたところにいたため、周りをよく見ることができたのでしょうね。
 もし、今回の判定に失敗した人がいたら、その人の1ラウンド目のイニシアチブ値は0ということで戦闘を開始する予定だったのですが、いち早くその気配に気づくことができたエリオットは、全員が十分に備えられるだけの警戒を促すことができそうです。

エリオット:
 余剰分が34点もあるからね(笑)。

GM:
 ではエリオットは、周囲に黒い霧が立ち込め、それがいくつかに別れて徐々に密集していき、とある2種類の姿を形作ろうとしていることに気がつきました。その姿のひとつは、先ほど上空でクレメンタインと戦っていた黒い鳥を小さくしたようなものであり、もうひとつは人間のような手足をもった黒いなにかでした。名称がないと不便なので、仮に“闇鴉”と“闇人”と呼ぶことにします。
 そんな空を飛ぶ2羽の闇鴉と、二足歩行する3体の闇人の姿となった合計5つの闇の塊が、いままさにあなたたちに襲い掛かろうとしていました。

エリオット:
「みんな、気をつけてッ! なんか、周りに黒い霧がッ!」

フェルナンド:
 エリオット、達成値をくれ!

メイジー:
 エリオットさーん、ざっくり10点くらいちょうだい!

アルフォンス:
 オレにも!

エリオット:
 仕方ないなぁ。それじゃあ、全員に10点ずつあげるね(笑)。

アルフォンス:
「ホントだッ! なんかいたーッ!」

レイモンド(GM):
「どうやら、卵をどうするかを考えるよりも先に、まずはこいつらをなんとかしなければならないようだな」

GM:
 そう言うと、レイモンドは腰から直剣を引き抜きました。それは、よく手入れされたレイモンドの愛剣〈武器:STR+2〉です。

メイジー:
 すごーい!

エリオット:
 さすがに、いいもの持ってるね。

レイモンド(GM):
「来るぞッ! これは実戦だ、集中しろッ!」

フェルナンド&メイジー&エリオット:
「はいッ!」

アルフォンス:
「ハッ、言われるまでもねぇッ!」




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