LOST ウェイトターン制TRPG


TRPGリプレイ 輝くもの天より墜ちイメージ

12.ヒナ鳥との戯れ

百代の子(GM):
「あー、あー」

メイジー:
「あ、目を覚ましたみたい」
 百代の子の顔を覗き込んで、「大丈夫?」と声を掛けてみるけど、言葉は通じるのかな?

百代の子(GM):
「目を覚ましたみたい。大丈夫?」と、少女はメイジーが口にした言葉を繰り返しました。

アルフォンス:
「え? まじかよ!?」

百代の子(GM):
「え? まじかよ!?」

アルフォンス:
「こいつはヤベェ……」

百代の子(GM):
「こいつはヤベェ……」

一同:
(笑)

メイジー:
「ちょっと、アルフォンス!」

百代の子(GM):
「ちょっと、アルフォンス!」

アルフォンス:
「いやいやいや、そこでその言葉は教えちゃまずいみたいな反応はおかしいだろ?」

百代の子(GM):
「いやいやいや、そこでその言葉は教えちゃまずい――まずいの? 教えちゃダメ?」

アルフォンス:
「あ、いや、ダメじゃない。むしろいい」

エリオット:
「ひょっとして、その子、ボクたちの言ってることわかるの?」

百代の子(GM):
「ボクたちの言ってることわかるの?」
 そんなことを口にしながら少女はベッドから這い出すと、自分の足で立とうとします。しかし、まだ手足にうまく力が入らないのか、その動きは頼りなくふらふらしています。

フェルナンド:
「危ない」

アルフォンス:
 じゃあ、ふらつく百代の子の両脇を抱えてベッドに座らせた。

メイジー:
 ボディーランゲージを交えながら、百代の子に向かって「まだ寝てなきゃダメだよ」と言います。

百代の子(GM):
 では、百代の子はなにやら口をパクパクと動かしながら、その口をメイジーの口元へと寄せてきました。

メイジー:
 うん? なんだろう? とりあえず、さっき飲ませそこねた薬湯を飲ませてみる。まず自分で水差しから薬湯を飲んでみせて、それを真似るように誘導してみるけど……。

GM:
 メイジーが薬湯を飲ませようとして百代の子の口元に水差しを持っていくと、彼女は大きく首を振ってそれを拒み、そのかわりに口をパクパク動かし続けます。そして、そんな彼女の腹部から、グーとお腹の鳴る音が聞こえてきました。

フェルナンド:
「お腹が空いてるんじゃないか?」

メイジー:
「どうやら、そうみたいだね。でも、なにが食べられるのかな? ソフィアお婆ちゃん、金竜ってなにを食べるの?」

アルフォンス:
「やっぱり、ここはアレだろ。お……」

フェルナンド:
「お?」

アルフォンス:
「お……おお、おおお――」

エリオット:
「おっぱい?」

アルフォンス:
「言うなよ! 恥ずかしい!」

一同:
(笑)

ソフィア婆さん(GM):
「お前さんらねぇ……。まさか、親竜が自分の子に母乳を与えるとでも思っているのかい?」

エリオット:
「そんなこと言われたって、わからないよぉ。でも、ミルクがダメならいったいなにを食べるのさ」

ソフィア婆さん(GM):
「うーん、そうだねぇ……。竜に近しい生き物と言えばトカゲとか鳥とかかねぇ。だとすれば、肉を与えてやるのがいい気もするけれど……」

メイジー:
「お肉? だったら、うちにいっぱいあるはずだから取ってこようか?」
 うちは猟師の家だから、きっとジビエがあるはず……。

フェルナンド:
「そのあいだ、誰がこの子の面倒をみるっていうんだ?」

GM:
 百代の子はメイジーにベッタリくっついていて、それを引き離そうとすると嫌がります。

アルフォンス:
「肉だったらオレのうちにもあるはずだ。ちょっと待ってろよ。今すぐ取ってくる!」

メイジー:
「じゃあ、お願いね」

GM:
 では、アルフォンスは自分の家に食べ物を取りに戻りました。


アルフォンス:
「オラッ! ジジイ! ババア! ミルクと肉をだせッ!」

アルフォンスの父親(エリオット):
「誰がジジイだ!」
 ゴンッ!

アルフォンス:
「ぐぁッ! いてぇ……」

アルフォンスの父親(エリオット)
 このように、シーンを演出するため、突発的にプレイヤーがNPCを演じることもあります。もちろん、GMが許す範囲でということになりますが、ときにはあえてPCたちの不利になるようにNPCを演じて、シーンを盛り上げようとすることも……。

GM:
 ――とまあ、アルフォンスの家ではそのようなやり取りがあるようなので、彼が肉を持って戻ってくるまでにはしばらく時間がかかります。
 そのあいだに、なにかやっておきたいことがある人はいますか?

フェルナンド:
「まずは、薬湯を飲ませて魔力を回復させてやるべきなんじゃないか? メイジー、もう一度薬湯を飲んでみせろ。そうすれば、そのうち真似るかもしれん」

エリオット:
「いや、それよりも口移しするほうがいいんじゃない?」

メイジー:
「え? 口移し……?」

エリオット:
「うん、口移し」

メイジー:
「……オッケー。やってみる」
 じゃあ、まずはもう一度、普通に薬湯を与えてみる。

GM:
 百代の子は首を横に振りました。

メイジー:
 わかった。それじゃ、次は口移しで飲ませてみる。

GM:
 口移しで薬湯を飲ませてみると、一応それは飲みました。しかし、百代の子は薬湯を飲んだだけでは満足しなかったようで、また口をパクパクさせてあなたの口元に顔を寄せてきます。

メイジー:
 うーん、なにをあげれば喜ぶんだろう?

GM:
 では、そんなことをやっているとアルフォンスが戻ってきます。

アルフォンス:
 目の周りに青あざを作って帰ってきた(笑)。
「肉とミルクを取って来たぜ!」

エリオット:
 肉って、加工してあるものだよね? 生肉じゃないよね?

アルフォンス:
 まあ、取ってきたのは羊の干し肉だろうな。

メイジー:
 干し肉は食べるかな?

GM:
 どのようにして食べさせますか?

メイジー:
 干し肉を細かくほぐして、まずそれをひとつまみ自分で食べてみせてから、「美味しいよ。これならいい?」と言って、百代の子の口元に運んでみます。

GM:
 うーん。そのような感じで食べさせるのであれば、百代の子はかなり抵抗しました。しかし、しばらくすると渋々ながらそれを口にします。あまり好ましくない方法で食べさせられたといった感じですね。

メイジー:
 えー? じゃあ、どうやって食べさせるのがいいんだろう?

アルフォンス:
「ミルクも飲ませたほうがいいんじゃねぇか?」

GM:
(なぜそこで振り出しに戻す? わたしは食べさせ方の問題だと言ったぞーッ! 笑)

メイジー:
 ミルクは飲む?

GM:
 どうやって飲ませるんですか?

メイジー:
 木のお椀にミルクを注いで、それをワタシが飲んでみせてから、あとはそれを真似て飲んでもらう。

GM:
(また離れてしまった……苦笑)
 そうすると、百代の子はあなたが手にもったお椀に顔をビチャッとつけて、ペロペロとミルクを舐めるのですが、すぐに口を離してしまいました。どうやらミルクでは満足していないようです。

メイジー:
「ミルクもあまり好きじゃなさそう。いったいなにが好きなんだろう?」

エリオット:
「もしかして、生肉を塊のまま食べるんじゃないのかなぁ? だって、トカゲみたいなものなんでしょう?」

メイジー:
「……そうかもね。生肉だったら、うちにあるかな……」

エリオット:
「じゃあ、ボクがメイジーの家に行って取ってくるよ」

GM:
 はい、ではそのあたりのくだりは省略して、用意した生肉を百代の子に与えようとするわけですが、どういった方法で与えます? 生肉でも干し肉でも、反応は同じです。どうやら、食べ物に対して選り好みしているのではなく、食べ方が問題のようです。
 もう一度説明しておきますね。現在、百代の子はメイジーの口元に自分の口を寄せていき、その口をパクパク動かしています。

メイジー:
 つまり、口移しがいいってこと?

GM:
 まあ、ありていに言えばそういうことです。どうか速やかに食べさせてあげてください(笑)。

メイジー:
 えー。生肉を口移しするのは嫌だなぁ。

GM:
 いえ、生肉じゃなくていいので……(苦笑)。

メイジー:
 わかった。じゃあ、アルフォンスが持ってきた干し肉を口移しで食べさせてみよう。

GM:
(やったー! 紆余曲折あったけれど、なんとか作りたかった絵に到達できたぞ。万歳ー!)
 メイジーが干し肉を百代の子に口移ししてあげると、彼女は美味しそうにそれを食べ始めます。そして、口に含んだものを数度咀嚼してからゴクンと飲みこみ、間髪入れず次のお肉をせがむように口をパクパクと動かしました。

メイジー:
「これ、口が疲れるんだけど……」

フェルナンド:
「がんばれ」

メイジー:
 それじゃ、百代の子が満足するまでそれを続けます。

GM:
 では、しばらく口移しによる食事を続け、人間の大人にとって一食分になるくらいの干し肉を与えると、百代の子は満足したようで、口をパクつかせる動作をやめました。

口移しによる食事
 親鳥とヒナのような関係を強調すべく用意していた課題だったのですが、そのことをなかなか察してもらうことができず、誘導するのに苦労しました(苦笑)。
 なお、実際の動物との口移しは感染症の原因となりますので、くれぐれも気をつけましょう。

アルフォンス:
「それにしても、これはあれか? さっきの伝承の詩になぞらえるとしたら、連れてかなきゃいかんってことか?」

メイジー:
「連れていくって、安息の地へ?」

アルフォンス:
「そう、その安息の地とやらにさ」

メイジー:
 そして、囁き、謳い、祈り、念じればいいわけ? そうすると、灰からなにかが復活するみたいな(笑)。

一同:
(笑)

フェルナンド:
「そういうことは、レイモンド様や村長たちが判断することだ。俺たちだけで話しても無意味だろう。
 それよりも、百代の子に大人しく寝ててもらうことはできないのか? 試しに一緒に寝てみたらどうだ、メイジー」
 俺は百代の子のことについては、あまり興味がない。

エリオット:
 そうだよね。百代の子が懐いてるのはメイジーなんだしね。

GM:
 たしかに、百代の子はメイジーのことを見てこんなことを口にしています。

百代の子(GM):
「マーマ。マーマ……。マンマ。おまんま!」

メイジー:
 な……!?

フェルナンド:
「もう腹が減ったのか!?」

アルフォンス&エリオット:
(笑)

メイジー:
「じゃあ、あとの面倒はワタシがみるから、みんなは先に休んでていいよ。ワタシ、できるかぎりやってみる。体当たりでぶつかってみる!」

アルフォンス:
 ちなみに、メイジーのうちって両親は健在なんだっけ?

メイジー:
 健在だよ。

アルフォンス:
 なら、こうしておこう。
「ソフィア婆さん。この子のことを、しばらくこの家に泊めてやってくんねぇか?」

ソフィア婆さん(GM):
「そうだねぇ……。この子の面倒までみろって押し付けられるのはごめんだけれど、ここに置いておくだけっていうんだったら、そのことについてはなんら問題ないよ」

メイジー:
「本当? ありがとう、お婆ちゃん!」

アルフォンス:
「それと、婆さん。村の連中にこいつのことを見せるのはまずいと思うか?」

ソフィア婆さん(GM):
「まあ、村の者がこの子の髪の色を見たら大層驚くだろうし、この子は得体のしれない魔法の力を宿しているようだから、なにかあったときには困るかもしれないね」

メイジー:
 じゃあ、しばらくのあいだはここで百代の子とコミュニケーションを取って、幼い子供にする情操教育ができるのかとか、そういったことを体当たりでやってみようと思う。

GM:
 ならば、百代の子はものの数時間も立たないうちに、メイジーの言うことを次々と理解して覚えていきます。もし、あなたがそうするのであれば、ナイフやフォークの使い方もすぐにマスターしてしまいます。

メイジー:
 もの凄く頭いいんだ!?

GM:
 そして、いつのまにか、あなたたちが教えていない言葉すら、使えるようになっていきました。

メイジー:
 え……? それって、どういうこと?

GM:
 しばらく百代の子のことを観察していると、たまに彼女が空中に視線を泳がせてなにやらブツブツと独り言を呟いたりすることがあることに気がつきます。それは、猫などが時折見せるしぐさに似ており、まるで彼女の目にはほかの者には見ることができないなにかが映っているようにも感じられました。

メイジー:
 じゃあ、そのことに気づいて、もの凄くビックリした。

GM:
 さて、そのようなことをして、その後しばらくソフィア婆さんの家で過ごしていると、そこに浮かぬ顔をしたレイモンドが戻ってきました。
 家の中に入ってきたレイモンドは、あなたたちに向かってこのようなことを言います。

レイモンド(GM):
「皆すまないんだが、これから集会所までついてきてくれるか? 少し面倒なことになった……。村長があの子のことを――」

GM:
 そこまで口にしたレイモンドでしたが、百代の子が起きて話を聞いていることに気がつくと、そこから先の言葉を飲み込んでしまいました。

フェルナンド:
 百代の子へと視線を向けて、「この子のことも連れていくんですか?」と確認した。

レイモンド(GM):
「いや、まずは俺たちだけのほうがいいだろう」

エリオット:
「じゃあ、メイジーはお留守番だね」

メイジー:
 キョトンとしてから、「まあ、しかたがないか」と首を縦に振った。
「レイモンド先生。この子、ワタシに懐いているみたいなので、ワタシはここでこの子と一緒に留守番しててもいいですか?」

レイモンド(GM):
「そうなのか? ならばしかたないな。集会所へは残りの者だけで行くとしよう」

GM:
 状況をうまく飲みこめていないレイモンドではありましたが、あなたたちがそう言うのであれば、無理強いはせずにそれを了承します。
 こうして、メイジーと百代の子をソフィア婆さんの家に残して、ほかの面々は集会所へと向かったのでした。


フェルナンド:
 集会所に向かうあいだに、ソフィア様の家であったことをレイモンド様にも説明しておく。

GM:
 ならば、レイモンドも百代の微睡みの詩については知っており、フェルナンドの説明を聞いてようやく合点がいったという顔をしました。

レイモンド(GM):
「なるほど、百代の子か……」

アルフォンス:
「……そういや、オッサン。さっき『面倒なことになった』とか言ってたけど、なんかあったのか?」

レイモンド(GM):
「うむ……。実は、村長たちがあの子のことを村の外に捨てて来いと言ってるんだ」

アルフォンス:
「オイオイ、事情は全部話したのかよ?」

レイモンド(GM):
「ああ、ひととおりのことは話した。俺にはその義務があるからな」

アルフォンス:
「……まあ、そりゃそうか」
 んじゃ、少し覚悟して集会所へと向かった。




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