LOST ウェイトターン制TRPG


TRPGリプレイ 輝くもの天より墜ちイメージ

16.エイルマーの森にて

GM:
 さて、サットン村を離れてから2日後、街道はウォーラム男爵領の北部一帯に広がるエイルマーの森へと入り、あなたたちは森の中で野営することとなりました。その流れで、レイモンドの指示のもと、あなたたちが野営準備に取り掛かっているところからシーンを開始します。

ギルモア王国東部地図

レイモンド(GM):
「今日の夕食の当番は誰だ? 頼むからうまい飯を作ってくれよ」

エリオット:
「あ、ボクです。料理だったら任せてください!」

GM:
 せっかくですから、DEX判定で料理の出来映えを決定しておきましょうか。

エリオット:
「よし、母さん仕込みの腕前をみせてやるぞ」
(コロコロ)18。

フェルナンド:
 おお、これは結構旨そうだ。

これは結構旨そう
 一般人のDEXの値は3なので、その期待値は13.5。18はかなりうまくできたと捉えて間違いないでしょう。さすエリ!

GM:
 では、ちょうどエリオットの手による料理が美味しそうな匂いを漂わせはじめたころ、あなたたちは西の方角からランタンの明かりが近づいてくることに気がつきました。その明かりは、あなたたちが囲んでいる焚き火のほうに向かって真っ直ぐ歩いて来ているようです。

エリオット:
「ん? なんだろう?」

GM:
 近づいてきたのはふたつの人影でした。その一方はどうやら修道服をまとった女性のようであり、もう一方は鎧を身に付けた男性のようです。

メイジー:
 西のほうから来たってことは、城郭都市から来たのかな?

アルフォンス:
 服や鎧に紋章とか入ってたりするか?

GM:
 紋章までは確認できませんが、修道服を着ていることからベルトサール教会の人間ではないかと思われます。
 その者たちは声が届くくらいの場所まで近づいてくると足を止め、そこで女性のほうが修道服のフードをおろし、このような言葉を発しました。

修道服の女性(GM):
「もし、旅のお方。わたくしはベルトサール教会の修道女ヴェロニカと申します。そして、隣の者はわたくしの従者であるサイモン。よろしければ、今晩そちらの野営にご一緒させていただくわけにはいきませんか?」

GM:
 ヴェロニカと名乗った人物は、長い黒髪といくぶん垂れ目がちで優しそうな顔が特徴的な女性でした。

サイモン(GM):
「……」

GM:
 その隣りにいるサイモンという男は、目深に兜を被っているためその特徴まではつかめません。

フェルナンド:
「少しのあいだ、こちらで相談させてもらってもいいですか?」

ヴェロニカ(GM):
「ええ、もちろん構いません」

フェルナンド:
「どうします? 断るのも不自然ですし……」と、レイモンド様に相談してみるが……。

レイモンド(GM):
「まあ、ベルトサール教会の関係者に対して援助を惜しむのは、この国に住む者としてはなぁ……」

エリオット:
 それはそうだよね(苦笑)。

レイモンド(GM):
「それに、お前たちは知らないかもしれないが、旅の教会関係者に協力したのであれば、酒とパンを振る舞ってもらえるかもしれないぞ。昔からそういった習わしがあるんだ」

メイジー:
「まあ、断る理由はないよね」

エリオット:
「悪い人には見えないしね」

アルフォンス:
「ああ。それに、あっちの姉ちゃんはなかなかイイ女じゃねぇか。オレはご一緒するほうに賛成だぜ」

フェルナンド&エリオット:
(笑)

GM:
(アルフォンスは年上の都会的な女性がお好みと……)

レイモンド(GM):
「まあ、もしいかがわしい者だったとしても、あちらは女と兵士がひとり」

フェルナンド:
 人数はこちらのほうが多い。

メイジー:
 人数の多さはこのゲームにおいて正義だもんね(笑)。

フェルナンド:
「クレアのことがあるので一応相談をと思いましたが、俺も受け入れること自体には賛成です」

レイモンド(GM):
「まあ、用心するに越したことはないからな。しかし、お前たちのうちの誰かがクレアの外見を変化させられる魔法を使えたのであれば、そういった心配もせずに済んだのにな」

メイジー:
「え? 魔法ってそんなこともできるの?」

アルフォンス:
「ああ。オレは一応、自分の顔を多少変えられるぜ」

GM:
 システムとしては、耐久値を消費するリスクを負ったうえであれば、戦闘時以外にもGMが許す範囲でさまざまな魔法が使えますので、お忘れなく。

さまざまな魔法
『Plain D20』には決められた魔法がないので、ほかの作品などを参考に自由に魔法を決定してください。ただし、シナリオ上好ましくない魔法については、GMの判断で存在しない、あるいはうまく効果を発揮しなかったものとして処理されます。

レイモンド(GM):
「とにかく、俺は彼らと共に野営することに反対するつもりはないぞ」

フェルナンド:
「なら、構いませんね」
 全員の確認が取れたら、修道女のほうに「お待たせしました。どうぞこちらに来て一緒に野営を」と声をかけた。

GM:
 では、フェルナンドからそう声をかけられると、ヴェロニカと名乗った女性は一度ペコリと頭を下げてから、あなたたちのそばまで歩み寄ってきました。

ヴェロニカ(GM):
「お招きありがとうございます。あら、ちょうどお食事をとられるところだったのですね?」

エリオット:
「よかったらご一緒にいかがですか?」

ヴェロニカ(GM):
「ありがとうございます。では、こちらからも、教会の者としての習わしがございますので、お酒とパンを振る舞わせていただきます」

GM:
 そう言ってヴェロニカがサイモンに合図を送ると、サイモンはコクリと首を縦に振って無言のまま動き出します。そして、彼は荷物袋の中から大きな白パンを2つ取り出して人数分に切り分けると、続けて液体の入った革袋を手に取り、それぞれのカップの中にワインを注いでいきました。

フェルナンド&メイジー&エリオット:
「ありがとうございます」

サイモン(GM):
「……」

GM:
 あなたたちに声を掛けられても、サイモンは無言のままです。

メイジー:
「えーと、それでヴェロニカさんは――」

アルフォンス:
「ヴェロニカさんは、どちらから?」と、メイジーの言葉を遮って質問した。

メイジー:
「……」

フェルナンド:
「まあ、待てお前たち。一方的に質問するのは失礼だぞ。まだこちらの自己紹介も済んでいないだろ」
 そう言って一旦ふたりを制してから、ヴェロニカさんたちに自己紹介しておく。
「俺はフェルナンド。俺たちはサットン村の自警団のものでして、故あってポートレッジに向かっているところです」

アルフォンス:
「オレはアルフォンス」

メイジー:
「ワタシはメイジー。で、こっちの子がクレア」

クレア(GM):
「……」

エリオット:
「ボクはエリオットって言います」

レイモンド(GM):
「俺はレイモンドだ」

ヴェロニカ(GM):
「ご丁寧なあいさつ、痛み入ります。
 先ほどアルフォンスさんがたずねられていた件ですが、わたくしどもは城郭都市ウォーラムより参りました。サットン村までベルトサール教会の書簡を届けに向かうところだったのですよ」

エリオット:
「へぇ、そうなんですか」

ヴェロニカ(GM):
「皆さんはサットン村の方ということですが、今の時季だとサットン村はちょうど収獲を終えたころなのでしょうね」

フェルナンド:
「ええ、先日収穫祭を終えたところです」

ヴェロニカ(GM):
「わたくしどもが出発する少し前に、城塞騎士が税の徴収のためサットン村に向かったとの話を伺っております。できればその方たちと同行したかったのですが、書簡を用意するのに少々手間取ってしまいまして。結果、サイモンとふたりだけで旅することになってしまったものですから、道中少し心細かったのですよ。そのようなときに、この暗い森の中であなたたちの焚き火の明かりを見つけたものですから、こうやって声をかけさせていただいた次第です」

フェルナンド:
「たしか城塞騎士の方たちとは途中ですれ違っていましたよね、レイモンド様」

レイモンド(GM):
「ああ、そうだったな」

GM:
 こうして、お互いの自己紹介がひととおり済んだところで、ヴェロニカはあなたたちから振る舞われた料理を口に運びました。

ヴェロニカ(GM):
「あら、とても美味しい。ねぇ、サイモン。あなたもそう思うでしょう?」

サイモン(GM):
「……」

GM:
 ヴェロニカがそう話を振ると、サイモンは無言のままコクリとうなずきます。

エリオット:
「ありがとうございます。料理の腕は母譲りなんです」

GM:
 食事の最中、クレアはワインの入ったカップを手に持つと、メイジーにこう尋ねます。

クレア(GM):
「ママ。これわたしも飲んでいい?」

メイジー:
 うーん、この国では子供の飲酒も認められてるってことだし、本人が飲みたがっている以上ワタシは止めはしない。
「じゃあ、ちょっとだけ飲んでみる?」

GM:
 許可が下りたのであれば、クレアはペロペロと軽くお酒を舐めて、こう感想を述べます。

クレア(GM):
「甘い! 美味しい! 今まで飲んだ飲み物の中で一番美味しいよ!」

GM:
 そして、コクリコクリとカップの中のワインを一気に飲み干してしまいました。

メイジー:
「あ、ダメだよ! そんなに一気に飲んだら。あんまり飲むと身体によくないから、少しずつにしてね」

クレア(GM):
「そうなの? じゃあ、今度は少しずつ飲むから、おかわり!」

メイジー:
「うーん、ちょっと待ってね。身体に影響があるかもしれないからね。ちょっと様子をみようね」

ヴェロニカ(GM):
「たしかにそちらのお嬢さんが飲むにしては、少し強すぎるお酒かもしれませんね。それはウォーラムで採れたブドウを使い、10年以上貯蔵していたものなんですよ。皆さんのお口にあうとよいのですが……」

アルフォンス:
 じゃあ、オレもカップの中身を一気に飲み干した。
「いやぁ、ホントにうまいっすねぇ。教会はこういうものの製造や流通なんかもやってるんすか?」

ヴェロニカ(GM):
「ええ、ワイン造りは盛んにおこなっております。あと、パン作りも。それらを恵まれない方たちに振る舞うのが、わたくしたちの活動のひとつとなっています」

アルフォンス:
「そいつは素晴らしい!」

ヴェロニカ(GM):
「もしよろしければ、もう一杯いかがですか?」

アルフォンス:
「ああ、じゃあ、ぜひ!」

ヴェロニカ(GM):
「教会では、望む者にはワインを3杯まで与えよと教えております。ですが、4杯目はいけません」

アルフォンス:
「へぇ……。それは戒律ってやつなんすか?」

GM:
(まあ、なんとなく雰囲気を出そうと思って即興で適当に言いだしたことなんだけれど、せっかくだし戒律ということにしてしまおう)

ヴェロニカ(GM):
「そうです。もし4杯以上飲んでしまった者は、悪魔に見初められてしまうと申します」

アルフォンス:
「そりゃ、怖い」
 ゴクゴクゴク!

フェルナンド:
「おい、アルフォンス。飲み過ぎには注意しろよ」

アルフォンス:
「プハーッ! 大丈夫、大丈夫、まだまだ平気。3杯までなら余裕でいけるって」

ヴェロニカ(GM):
「どうやらお口にあったようですね。では、3杯目をどうぞ」

GM:
 そう言って、ヴェロニカはアルフォンスのカップにワインを注いでいきます。
 さて、それでは確認しますが、ここでお酒を飲まなかった人はいますか?

フェルナンド&エリオット:
 はい。

エリオット:
「ボク、お酒飲むと風が乱れちゃうから……。よかったら飲んで」と言って、ほかの人に気づかれないように、アルフォンスの空いたカップと自分のカップを入れ替えます。試験のあとにお酒のんだとき、悪酔いしちゃったからね。

アルフォンス:
「チッ、しょうがねぇなぁ……。これじゃ4杯目になっちまうじゃねぇかよ。……でも、ま、いっか。オレ、別にベルトサールの信者ってわけでもねぇし……」
 ふへへへへ(笑)。

フェルナンド:
 こいつ、4杯飲みやがった(笑)。

エリオット:
 4杯目を飲んだことによって、なんか凄い不幸なことになったらゴメンね――と今のうちに謝っておくよ(笑)。

メイジー:
 えーと、ワタシは一応“レンジャー”の知識で酒の毒見はしておくよ。そのうえで問題なければ、話の流れもあったから1杯だけ飲んだ。

GM:
 ……とくに毒物が混入しているようには感じられません。
 そして、クレアは美味しそうに2杯目まで飲み干しました。

フェルナンド:
 俺は皆が酒を飲んでるのを見て「誰が見張りにつくんだよ」とぼやきつつ、もらったワインを水袋に移した。
 酒自体は嫌いじゃないんで、あとで飲むことにする。

メイジー:
「ごめんね。ちょっとしか飲まないでおくから」

フェルナンド:
「まあ、気にせず好きにするといいさ。今日は俺が先に見張りについてやる」

GM:
 さて、そのようにしてあなたたちは食事を終え、やがて就寝時間を迎えることになります。

レイモンド(GM):
「さて、それじゃ、今晩の見張り役のことだが……」

フェルナンド:
「今日は俺が先に見張ります」

エリオット:
「あ、ボクも」

フェルナンド:
 相性の悪い組み合わせだな(苦笑)。

レイモンド(GM):
「なら、悪いが俺は先に休ませてもらうぞ」

GM:
 そう言うと、レイモンドはマントにくるまり横になります。ワインを2杯飲んだクレアも、すでにウトウトと櫂を漕いでいる状態です。

メイジー:
 それじゃ、クレアと一緒にワタシも横になった。

アルフォンス:
 オレはべろんべろんに酔っぱらいつつ、しばらくはヴェロニカの姉ちゃんにクレアのことを自慢してる。
「それでですねぇ、そのクレアがまぁた、可愛いったらありゃしねぇんだけどぉ! ぬぁんかぁ、最近独り立ちしちゃってぇ。子供が育つのってぇ、ホントあーっというまっすねぇ!」
 で、急に静かになったかと思うと、いつのまにか爆睡してる。

一同:
(笑)

エリオット:
「もう、しょうがないなぁ」と言って、アルフォンスに毛布を掛けてあげた。

GM:
 アルフォンスが静かになると、ヴェロニカもすぐ横になります。一方、サイモンは横になることなく、先ほどからずっと片膝を抱えた格好を維持しており、どうやらこのまま見張りとして起きているつもりのようです。
 ――ということで、起きているのはフェルナンドとエリオットとサイモンの3人だけとなりました。

エリオット:
 フレーバーとして、ボクは風の精霊に周囲を警戒させておくね。

フェルナンド:
 見張りのあいだずっと黙っているのもなんだし、サイモンさんに声を掛けてみる。
「そちらの見張りはサイモンさんが?」

サイモン(GM):
「……」

GM:
 その問いかけに、サイモンは口を開くことなく、コクリとうなずきました。

フェルナンド:
 この男、もしかしてしゃべれないのか?

アルフォンス:
 昔はお前のような冒険者だったが、喉に矢を受けてしまってな……。

GM:
 それは、わりと致命傷(笑)。




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