LOST ウェイトターン制TRPG


TRPGリプレイ 輝くもの天より墜ちイメージ

21.腐食都市

GM:
 さて、次のシーンからは、途中から見学していたプレイヤーEさんにも参加してもらうことになります。よろしくお願いします。

プレイヤーE:
 よろしくお願いします。

GM:
 では、早速ですが、プレイヤーEさんにもキャラクターを作ってもらうとしましょう。ただし、途中参加ということで、キャラクターの設定についていくつかの条件を付けさせてもらいます。それらを満たしたうえでキャラクターを作成してください。

プレイヤーE:
 了解。

GM:
 まず、あなたはレイモンドと深い親交のあったウォーラム城塞騎士、いわゆるお役人です。そして、所帯を持っていることにしてください。
 ウォーラム男爵は、城塞騎士の人員整理を行うにあたり剣技に劣る者から解雇していったのですが、あなたは妻帯者として唯一その解雇リストに加えられることになりました。しかし、あなたとその家族が路頭に迷うことを忍びなく思ったレイモンドは、あなたの代わりに自ら職を辞してウォーラム城をあとにしています。
 こうしてレイモンドがいなくなると、ウォーラム男爵はますます乱心していくことになり、城塞騎士に対して刃傷沙汰に及ぶまでになってしまいました。そんな傍若無人なウォーラム男爵に不満を感じつつも、意見できずに役人仕事を続けているのが、現在のあなたです。
 そんなあなたの力量は、ほかのPCたちとあわせてレベル6とします。ちなみに、レイモンドはレベル10でした。

レイモンドはレベル10
 山の民としてPCたちと戦ったときのレイモンドは手加減しており、レベル8として扱っていました。ですがそれはシナリオ的には後付けです。もともとは山の民としてもレベル10として登場させ、お供の精霊は1体だけにする予定だったところ、パーティー人数の増加にあわせて敵の強さを調整した結果そうなったのでした。
 4本の棒のエピソードでもわかるように、もともとこのシナリオは3人パーティー用だったのです。それが、まさか5人パーティーになろうとは(笑)。

プレイヤーE:
 わかった。じゃあ、その条件でキャラクター作成していくぞ。

プレイヤーB(メイジー):
 あ、初期値をいじって能力値を偏らせると、凄いキャラクターが作れるよ(笑)。

プレイヤーE:
 なるほど。つまり、こっちの能力値を下げれば、こっちはここまで伸ばせるわけだ。それなら、こんな感じでどうだ?

プレイヤーA(フェルナンド):
 まだいけますね。この値もこっちに寄せて……。

プレイヤーE:
 じゃあ、これならどうだ?

プレイヤーA:
 いや、さらにもっとこう寄せて、初期値を余らせた分を成長値にまわせば……。

プレイヤーB:
 いっちゃう? そこまでいっちゃう(笑)?

プレイヤーE:
 だったら、いっそのことこうしたらどうだ?

プレイヤーA&プレイヤーB:
 キター(笑)!

GM:
(なんだ、こいつら……笑)


プレイヤーE:
 できた。
 名前はイハーサ、男性、38歳。

イハーサ

イハーサ(プレイヤーE):
 デスクワークをメインにしている、いかにもな小役人風の男。
 SPDが1なのは、以前ウォーラム男爵に片足を切り落とされたからで、義足をつけていることにする。

GM:
 えーと……かなり偏った能力値になりましたね(苦笑)。

かなり偏った能力値
 初期値の極端な変更を前提とした能力値の特化は、ゲームバランスを崩してしまうのでできる限り控えたほうがいいと思いますが、それを引き換えにしても参加者が楽しめるというのであればということでこの時は認めました。
 しかし、得意な能力値でイハーサに大きく水をあけられてしまうことになったエリオットのことを考えると、GM側でもう少し配慮するべきだったと、あとになって反省しました。そのため、このあたりのことは最新版のルールでいくぶん改善されています。

GM:
 SPDが低いのは事情が事情なのでまだしも、STRとDEXが人並み以下なのに城塞騎士をやっているとか、ウォーラム男爵が解雇しようとしたのもわからなくはありませんね(苦笑)。

 この後、NPCの口からPCたちに伝えるはずだった情報をイハーサだけに教えて、セッションを再開しました。ですが、それらの情報についてここで書いてしまうと、このあとの内容と重複してしまうため省いておきます。


GM:
 では、新たなPCとしてイハーサを加え、セッションを再開します。
 魔女スカーレットとの対峙から2日後の正午前、あの日以来一路西へと進んできた一行は、ようやく城郭都市ウォーラムへとたどり着いたのでした。

ギルモア王国東部地図

GM:
 城郭都市ウォーラムは、もともと地方の防衛拠点として建造された砦に過ぎなかったのですが、次第にその周辺に人々が集まって暮らすようになり、やがて都市機能を備えるまでに成長していったという歴史があります。しかし、ここ数年のあいだ荒廃の一途をたどっており、市壁内の建物などはかつての繁栄を示すかのように密集して建てられているものの、空き家となっているところも珍しくなく、なかには無法者たちが根城にしているような建屋もあります。
 また、人目をはばからずゴロツキたちが街中をうろついており、そういった者たちが街の外から入ってきたあなたたちに対して鋭い視線を向けていたり、なにやらコソコソと小声で言葉を交わし合ったりしているような姿も目に入ってきました。とくに、紅一点のメイジーは強く実感するところでしょうが、年頃の女性がひとりで外を歩くにはいささか危険な雰囲気が感じられます。

アルフォンス:
 オレたちは、これまで大人たちの手伝いかなんかで、この街に来たことがあってもいいのか?

GM:
 そうですね。あなたたちのほうから大人たちに街まで連れて行って欲しいとせがんだことがあるのであれば、フェルナンド以外はその機会を得ていたかもしれません。ただし、これまでレイモンドがこの地を訪れようとしてこなかったため、フェルナンドは来たことがないでしょう。
 なお、もし来たことがあるとすれば、それはおそらく税の徴収のために村を訪れた城塞騎士が帰還するのにあわせて、村の大人たちが街まで買い出しに来たときに同行して――ということになるはずです。村では手に入らない物資などの買い出しは、そのような機会にまとめて行われていました。

アルフォンス:
 じゃあ、2年くらい前にうちのジジイについて街まで来たことがあることにしておく。
「前に来た時と比べると、だいぶしけた街になっちまったなぁ。そこかしこでたむろしてんのは兵隊崩れか? どいつもこいつも目をギラつかせやがって」

フェルナンド:
「ひどいありさまだな……」

GM:
 あなたたちがそんなことを口にしながら目抜き通りを歩いていると、人買いの馬車とすれ違うことになります。

アルフォンス:
 どんな奴らが乗せられてるんだ?

GM:
 以前街道ですれ違った人買いの馬車と同じような品揃えですよ。レイフィールド王国民とおぼしき人たちの姿が目につきます。あなたたちよりも白い肌をしていて、金色の髪をした人が沢山乗せられていました。

アルフォンス:
 それを確認して「チッ」と舌打ちした。

メイジー:
「なんだか、いやな雰囲気の街だね」

アルフォンス:
「メイジー。オマエ、あんまフラフラすんなよな。油断してると、オマエもあの商品に仲間入りさせられちまうぞ。……まあ、オマエみたいながさつな女じゃ商品にならねぇかもしんねぇけどな」

エリオット:
「アルフォンス。冗談でもそんなこと言っちゃダメだよ」

アルフォンス:
 エリオットの指摘に、無言で頭をかいた。
「さてと……。そんで、これからどこに向かうかなんだが……」

メイジー:
「どこって、あそこでしょ? スカーレットっていう魔女は、ウォーラム男爵に仕えてるんだよね?」
 そう言って、おそらく街の中で一番高いであろう城郭部分を指さした。

アルフォンス:
「バカかオマエは! いきなりそこに行ってどうすんだよ!」

エリオット:
「男爵とその配下にある者たち全員がボクたちの敵であるのか、それとも味方になってくれるのかはまだわからないからね。だから城に行くのは後回しにして、まずは先生が話していたイハーサさんのことを探してみようよ」

メイジー:
「でも、イハーサさんも騎士なんだったら、この時間はお城のほうにいるんじゃないの?」

アルフォンス:
「だからって、男爵のところに直接乗り込んでいけるわけねぇだろうがよ!? バカ! ホント、バカ! まったく、イライラさせやがるぜ……。こういうときはだな、とにかく人の集まりそうなところだ。そういうところで、できるだけ目立たないように情報を集めるんだよ」

フェルナンド:
「だったら、とりあえず中央の広場にでも行ってみるか?」

アルフォンス:
「ああ、そうだな」

GM:
 では、あなたたちは中央広場へと向かいました。中央広場についてみると、そこにはボロボロの露店を出している者たちと、それを冷やかし半分で眺めている者たち、あるいは取るに足らない理由で喧嘩をしているゴロツキたちの姿などがあります。

フェルナンド:
「中央広場でもこれか……」

エリオット:
「どこに行っても活気がないね」

フェルナンド:
 警備にあたっているような兵士の姿を探してみるが、見つからないだろうか?

GM:
 辺りを見渡してみても、警備をしているような兵士の姿は見当たらないですね。一応、鎧を身につけている騎士風の二人組が話しながら歩いている姿などは目に入りました。ですが、とても見回りをしているといった雰囲気ではありません。

アルフォンス:
 じゃあ、眉間にシワを寄せた状態で、しなびた果物とかを売ってそうなしけた露店に顔を出して、「オイ、アンタ。こいつとこいつを売ってくれ」と、できるだけアウトローな感じを装って話しかけてみる。

GM:
 では、煙草をふかしていた店主が、対応してくれます。

露店の店主(GM):
「それとそれなら、銀貨4枚だよ」

アルフォンス:
 じゃあ、懐から銀貨を15枚くらい出して、商品の前に置いてみせた。
「ちょっと聞きてぇんだが、城勤めしてるイハーサって奴の居所を知らねぇか?」

露店の店主(GM):
「さあ? 聞いたこともないな」

アルフォンス:
 置いた銀貨のうち5枚を回収して、それを手の中に握り込んだまま、「誰ならわかる? どこにいけばわかる? わけがあって、男爵のところには顔を出したくねぇんだよ」と続けた。

露店の店主(GM):
「……城塞騎士の連中だったら金もあるだろうから、酒場のひとつやふたつには顔を出してるんじゃないか? まあ、そのイハーサって奴の行きつけの店がどこかってことまでは知らんがね」

GM:
 店の主人は煙たがるような顔をしながらそう答えて、商品の前に残された硬貨をガッとつかみ取りました。

アルフォンス:
 背中を向けて「ありがとよ」って言って、手を振って店から離れた。

フェルナンド:
「どうだった?」

アルフォンス:
 眉間に寄せていたシワを伸ばしながら、いま聞いた話を報告する。
「店主はイハーサのことを知らなかった。ただ、城塞騎士の連中がたむろするのは、たいてい酒場とかそういったところらしい」

GM:
 では、そろそろ街の雰囲気は十分に伝わったころだと思いますので、ここからは情報収集の判定をおこなっていきましょう。
 ざっくばらんに言ってしまうと、あなたたちは代表者による目標値15のINTを用いた情報収集判定に成功しさえすれば、イハーサの情報をつかむことができます。また、もしあなたたちがバラバラに行動するというのであれば、チーム単位で判定を試みることもできます。
 ただし、この判定に失敗した場合、ゴロツキたちに絡まれることになります。つまり、少人数に分かれて情報収集することによって判定機会を増やし情報獲得の確率を上げるか、情報獲得の確率が低くなることは覚悟のうえで集団で行動して、ゴロツキたちに絡まれても撃退できるようにするかということですね。

エリオット:
「じゃあ、二手に分かれて探そうよ」

フェルナンド:
「そうだな。このまま4人で固まって探していても無駄に時間を食うだけだろう」

メイジー:
「でも、どう分かれるの? アルフォンスは慣れてるみたいだけど、ほかのみんなはこの街のことにあまり詳しくないし……」

アルフォンス:
「いや、オレだってジジイに連れてこられて、2、3回来たことがあるってだけだぞ」

エリオット:
「ボクはどうもこういうところが苦手なんだよね……」

メイジー:
「ワタシも」

アルフォンス:
「フェルナンドはどうなんだ?」と言いつつ、メイジーとエリオットのことをチラチラと見ている。
 オレとフェルナンドが引率役として分かれるとして、こいつらのうちどっちを相棒に選ぶよ?

フェルナンド:
 どっちも頼りになりそうにはないな(苦笑)。とはいえ、選ばないわけにはいかないか……。
「俺もこの街にきたのははじめてなんだが……。そういうことなら、俺はメイジーと組むことにする。魔法を使える者がそれぞれにいたほうがいいだろ?」

アルフォンス:
「ああ、たしかにそれは一理あるな」

GM:
(アルフォンス、キミだって魔法使いの端くれだろうに……苦笑)

アルフォンス:
 オレはエリオットの顔を見て少しげんなりしてから、「んじゃ、行くぜ」と声を掛けた。

エリオット:
「あ、うん。なんだかゴメンね」と言って、アルフォンスの袖をつかんだ。村と違って知らない人が多いので、ちょっと不安になっている。
「アルフォンスって凄いね。こんなに知らない人がいっぱいいるところでも、あんなに物怖じせずに話とかできてさ。ボクはここにいるだけでも怖いよ」

アルフォンス:
「いつまでもガキじゃねぇんだぞ! もう少ししっかりしろよ!」
 思わずエリオットの頭に拳固をくれようかと拳を握りしめたんだが、以前より成長したオレはそれをグッとこらえ――

エリオット:
「ねぇ、ぎゅっとしていい?」

アルフォンス:
 殴ったッ!

フェルナンド&メイジー:
(笑)

GM:
 せっかくアルフォンスが成長したところを見せようとしていたのに(笑)。

アルフォンス:
「ったく、どうにかこっちが我慢してやったってのに! オメェはよーッ!」

エリオット:
「い、痛いよぉ。なにするんだよぉ……」

アルフォンス:
「クソッ……」
 そう呟いて、小さくため息をついた。
「いいから、離れるんじゃねぇぞ」

エリオット:
「う、うん!」




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