GM:
では、あなたたちは通り沿いに掲げられた看板に書かれた店名を見ながらしばらく歩き、やがて「タスマン亭」と書かれた看板を見つけました。少し寂れた通りの中にあって、そのお店の看板だけは留め金が外れているようなこともなく、店の前もちゃんと掃き掃除されているようでした。
エリオット:
その雰囲気を察して、ボクはこの街に入って以来こわばらせていた顔を少しだけ緩ませた。
「ああ、よかった」
フェルナンド:
「なかなかよさそうな店じゃないか」
GM:
あなたたちが店の中へと入っていくと、カウンターの奥のほうから、ツルツル頭でモジャモジャの髭を生やした、いかつい体格の男が声を発しました。
タスマン亭の店主(GM):
「いらっしゃい」
GM:
店の中には、円卓に2組、カウンターの奥に1人の客の姿が確認できます。そして、偶然にもそのカウンターに座っていた客は、つい先ほどゴロツキに絡まれているところを助けてくれたあの城塞騎士でした。
メイジー:
「あ……」
イハーサ:
俺は食事に夢中になっていて、さっきの若者たちが店の中に入ってきたことにはまったく気がついていない。凄い嬉しそうな顔をして、ただひたすらフォークを口に運んでる。
GM:
本日のランチは「ウサギ肉のミートソース和え」です。
イハーサ:
じゃあ、そのランチを食いながら、「ああ、よかった……。今日この店に来て本当によかった……」とかひとりで呟いている。
メイジー:
なんだか、そこだけひとりグルメ漫画みたいな雰囲気になってるんですけど。
フェルナンド:
これだよこれ、みたいな(笑)。
アルフォンス:
ささやかな幸せを噛みしめてるってところが、いかにも小市民っぽいよな(笑)。
じゃあ、そんな光景を横目に見ながら、「おう、オヤジ、こっちにもランチを4つ」と言って、テーブル席に座った。
GM:
では、あまり待たされることなく、4皿のランチがあなたたちのテーブルに運ばれてきました。
タスマン亭の店主(GM):
「はいよ、ランチ4つお待ち」
アルフォンス:
そこで、正規の支払額に5銀貨上乗せした硬貨をテーブルの上に置いた。
「ちょっと人を探してるんだが、城塞騎士のイハーサって人に心当たりはないか?」
GM:
すると店主は、テーブルの上に置かれた硬貨から正規の金額分だけを手に取りました。
タスマン亭の店主(GM):
「さあ、知らないねぇ……」
GM:
それだけ言うと、店主はテーブルから離れていきます。
アルフォンス:
さて、本当に知らねぇのか、それとも知ってても教えられねぇってことなのか……。
GM:
(まあ、素性の知れない相手に常連の情報を金で簡単に売るような主人じゃ、まっとうな客商売はやっていけないだろうからね……)
カウンターの奥に戻った店主は、皿洗いをしているようなふりをして、イハーサにだけ聞こえるような小さな声でボソボソと呟きます。
タスマン亭の店主(GM):
「オイ、アンタのことを嗅ぎまわってる連中がきてるぞ」
イハーサ:
「お、俺?」
フェルナンド:
まったく心当たりがなくて、なんで俺?みたいな(笑)。
タスマン亭の店主(GM):
「面倒ごとだったらよそでやってくれよ」
GM:
そう口にした店主の視線が、さりげなく4人の若者が座っているテーブルへと向けられます。
イハーサ:
「あ、ああ。教えてくれてありがとう」
俺もチラリとそちらを見た。が、その動きはあからさまにぎこちない。
エリオット:
せっかく店主が気をきかせて小声で教えてくれたのに、挙動不審すぎる(笑)。
メイジー:
ワタシはそんなこと気にせず、ご飯を食べてるよ。
「わぁ、美味しー!」
エリオット:
「本当だ、すごく美味しいね」
イハーサ:
……とりあえず、俺は昼飯を食べ終えたらそそくさと店を出て、連中が出てくるのを隠れながら待つことにする。馴染みの店のマスターに迷惑をかけちゃいけない。なにをするにしても店の外に出てからにしよう。
アルフォンス:
いい人だ(笑)。
GM:
では少し時間を進め、サットン村の若者たちは昼食を食べ終えました。しかし、残念ながらその店では、イハーサという人物についての情報を得ることができませんでした。
フェルナンド:
「どうやら、客としては来ていなかったようだな。だが、家の場所もわかっているんだろ? なら、直接家を訪ねてみよう」
そんな話をしながら店からでてきた。
「で、イハーサって人の家はどこらへんにあるんだ?」
エリオット:
「あっちだよ」と言って、イハーサさんの家がある方向を指さした。
イハーサ:
「なッ!? あいつら、いま俺んちって言わなかったか……?」
アルフォンス:
このままだと家族が危ない(笑)。
一同:
(笑)
イハーサ:
そうだな。そうしたら、裏道を急ぎ足で歩いて少し先回りしよう。
エリオット:
義足なのに(笑)。
イハーサ:
で、店から少し離れたところで、横手の通りから前方に出て行って声をかけた。
「ちょ、ちょっと待て、お前ら……」
そこには、さっきのオッサンがハァハァ肩で息をしながら立っている。
一同:
(笑)
メイジー:
「あれ? さっきのオジサン?」
フェルナンド:
「先ほどはありがとうございました」
イハーサ:
「お、おう……。いや、それはもういいんだ。そんなことより、お前らいったいどこに行く気だ?」
メイジー:
「ワタシたちは、これからちょっと人に会いに行くところで……」
イハーサ:
「その相手っていうのは……もしかして、イハーサのことか?」
アルフォンス:
「まじぃ、ばれてたのかッ!?」
向こうからイハーサの名前を出されたことで、激しく気が動転した(笑)。
エリオット:
「でも、いまなら相手はひとり……」
アルフォンス:
「よしッ、だったら、ふん縛っちまえッ!」
GM:
(やーめーろー! 笑)
フェルナンド:
「待て、アルフォンスッ!」と言って、あいだに割って入った。
「少なくとも俺は、自分のことを助けてくれた人に手を上げることなんてできない」
アルフォンス:
「なにも殺しまではしねぇよ! 気絶させて縛り上げちまうだけさ!」
フェルナンド:
「話せばわかってもらえるかもしれないだろ?」
アルフォンス:
「なにをのんきなこと言ってやがる! もし、このオッサンがスカーレットに通じてたらどうすんだ!?」
まさか、イハーサがこんな義足の男であるわけがない(笑)。
メイジー:
あわわ、あわわわわ……。さすがにここでスカーレットの名前を出すのはまずいよって顔をしてる。
イハーサ:
「ん? スカーレット?」
その名前を聞いた途端、ついさっきまであたふたしていたはずのオッサンの目が、ずいぶんと厳しいものに変わった。
アルフォンス:
「ほらコイツ、やっぱスカーレットの手先だって! 力尽くでも黙らすしかねぇよ!」
フェルナンド:
「いい加減にしろ、アルフォンス!」
アルフォンスのことを制止してイハーサさんのほうを振り返ると、「失礼しました。俺の名前はフェルナンド。元城塞騎士であったレイモンド様にお仕えしていた者です」とあらためて自己紹介した。城塞騎士ならレイモンド様の名前に聞き覚えがあるはず……。
イハーサ:
「……レイモンドだと?」
フェルナンド:
「アルフォンス。剣を出せ」
アルフォンス:
「あ、ああ……」
渡しはしねぇけど、「ん」とレイモンドの剣をよく見えるように突き出した。
GM:
イハーサはその剣に見覚えがあります。それは、レイモンドが城塞騎士となったその日から大切に使っていた剣でした。
イハーサ:
「なるほど。ちゃんと証も持ってきているってわけか。たしかにそいつはレイモンドのもので間違いなさそうだ」
フェルナンド:
「俺たちは、レイモンド様の助言に従ってイハーサという名前の人物を探しているのですが、城塞騎士の方であればイハーサさんについてなにかご存じありませんか?」
イハーサ:
「ああ……。ご存じもなにも、そりゃ俺のことだ」
メイジー:
「えッ? アナタがイハーサさん?」
イハーサ:
「おう、そうだ。で、いったいこの俺になんの用だ? レイモンドからの手紙でも届けにきたのか?」
メイジー:
「えーと……」
驚いた顔をして、周りの面々をキョロキョロと見た。
アルフォンス:
「待てよ。こいつはオレたちのことをだまして、罠にはめるつもりなのかもしれねぇだろ……」
俺のイメージしてたイハーサ像とはかけ離れ過ぎてるから、まだ疑ってる(笑)。
エリオット:
「そ、そうだよ。軽々しく信用するわけにはいかないよ」
GM:
(どこまで悪ノリ――もとい、どこまで疑い深いんだ、君たちは……苦笑)
イハーサ:
「……あー。もし、お前らのあいだで作戦会議が必要だっていうんだったら、俺、少し離れておこうか?」
一同:
(笑)
メイジー:
じゃあ、お言葉に甘えて、少し離れたところで円陣を組んで相談することにする(笑)。
で、これからどうしようか?
エリオット:
魔法で嘘看破とかできないかな?
GM:
そんなことができるんだったら、まずヴェロニカと会った時に使っておけって話ですよ(笑)。
アルフォンス:
おっしゃる通り(笑)。
フェルナンド:
「皆は疑っているようだが、俺はあの人がイハーサでよかったと思っている。あの人は、この都市に着いてからはじめて俺たちによくしてくれた人だ。ほかの連中は皆、変な視線しか向けてこなかったからな」
エリオット:
「それを言ったら、あの魔女だって、最初は優しそうな顔をして酒をふるまってきたじゃないか。悪い奴ほど、人のよさそうなふりをして近づいて来るんだよ」
メイジー:
「でも、あの人ってほかに見かけた城塞騎士とは雰囲気違くない?」
イハーサ:
「あー、作戦会議中のところ済まないんだが、ちょっとだけいいか?」
メイジー:
「あ、はい」
イハーサ:
「悪いが、俺にはそれほど時間がない。昼休憩がもうすぐ終わっちまうんだ。だから、できるだけ早めに結論をだしてくれ。とりあえず、あと5分だけ待つからな」
それだけ言うと、さらにちょっと離れたところに移動して作戦会議がやりやすいように気を使った。
一同:
(笑)
メイジー:
「ほら、あの人、ワタシたちに気を使ってくれてるし、絶対にいい人だから。それに、このまま疑い続けてたって、らちが明かないでしょ?」
フェルナンド:
「俺は相談してもいい相手だと思っている」
エリオット:
賛成2人に懐疑的なのが1人。そしてボクは依存。
「どうするの、アルフォンス?」
アルフォンス:
「うーん……。わかった。だが、あのオッサンが少しでも妙な行動をとったら、力尽くでも黙らせる。それでいいか?」
フェルナンド:
「了解だ」
メイジー&エリオット:
「うん」
フェルナンド:
「イハーサさん、お待たせしてしまい申し訳ありませんでした」
イハーサ:
「おう。で、話しはまとまったのか?」
エリオット:
「こっちの話しはまとまったけれど、イハーサさんにはあまり時間がないんだよね?」
イハーサ:
「ああ、昼休憩が終わったら仕事に戻らなくちゃならないからな。なんだ? 長い話になりそうなのか?」
フェルナンド:
うなずいた。
イハーサ:
「ふむ……。お前ら、今日はどこに泊まる予定なんだ?」
フェルナンド:
「あ、いえ。まだ宿は用意していません」
イハーサ:
「そうか。そういや、さっきお前ら、俺んちのこと話してたよな? 俺んちがどこにあるのか知ってんのか?」
ここだけはちょっと眉をしかめて言った。万一のことがあったら許さんぞってニュアンスで。
フェルナンド:
「はい」
イハーサ:
「じゃあ、俺は16時過ぎくらいに今日の仕事を切り上げて家に帰る。だから、それから少したったくらいの時刻に俺んちに来るといい。そこでお前らの話を聞くとしよう。それでいいか?」
フェルナンド:
「わかりました」
イハーサ:
「あと、これだけは言っておくが、今後目立つ行動は避けたほうがいいぞ。俺を当てにしてきて、レイモンドとスカーレットの名前を出したんだ。つまりはそういうことなんだろ?」
アルフォンス:
「お、おおう……」
イハーサ:
「くれぐれもさっきみたいにゴロツキどもに絡まれないように注意しろよ。じゃあ、俺は仕事に戻るんで、またあとでな」
それだけ言うと、俺は城へと戻っていった。
GM:
では、ふたたびイハーサが去り、4人だけがその場に残されます。
アルフォンス:
「まあ、たしかにアイツが言った通り、これ以上街をうろつかないほうがいいだろうな。そうすると、さっきの店で時間を潰すのが一番安全か?」
フェルナンド:
「そうだな。指定された時刻までタスマン亭で時間を潰すことにしよう」
GM:
ならば、あなたたちはその後、約束の時間まで大人しくタスマン亭で時間を潰したのでした。