LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(02)

GM:
 ではセッションを開始する前に、事前知識の説明です。まずは、「いつもの前置き」を――

アゼル:
 そこは飛ばしていいよ。永井一郎バリの声が出せるようになったら、そのときにまた読み上げてくれ。

GM:
 そんな無茶な(笑)。
 では、世界設定の紹介は省略して、次に今回の舞台を説明しておきます。今回の舞台はクレアーレ島の南西に位置するカーティス王国です。というわけで、カーティス王国の地図をドンッ!

カーティス王国周辺地図

GM:
 カーティス王国の気候は比較的温暖、ところによっては亜熱帯で、南部には砂漠が広がっています。この国では、肌の浅黒い人種がマジョリティであり、白人・黒人の多くは下層民です。
 カーティス王国は建国から50年に満たない新興国ですが、この時代のクレアーレ島において3番目に強大な軍事力を有するとされています。

イーサ:
 聖域から発掘した遺産を軍事転用してるから強いんだよな。神の留守中に土足で家にあがりこんで、盗みを働くんだから、まさに神をも恐れぬ所業ってわけだ。対してほかの国は信仰心が厚いぶん、聖域に足を踏み入れることにためらいがあると……。

GM:
 はい。カーティス王国はクレアーレ島の中で最も早く聖域探索に着手した国家であり、黒魔法の研究も他国より数段進んでいます。現在ではいくつかの中枢都市に黒魔法の教育機関がつくられ、上層民の中には黒魔法を習得する者も現れはじめました。そのため、カーティス王国には他国にみられるような黒魔法に対する偏見は存在しません。ただし、黒魔法を学ぶためには非常に高額な学費が必要となるため、中層民以下で黒魔法を学ぶ機会を得る者は稀です。

イーサ:
 俺は裕福じゃないが黒魔法を使える。例外のひとりだな。

エルド:
 僕も例外ですね。例外が多いようですけど(笑)。

GM:
 費用をかけずに黒魔法を学ぶためには、聖域から遺産を取ってきて、それを元に独学するか、あるいはすでに黒魔法を修得している者に教えを請う必要があります。自分の住んでいる土地を離れて冒険にでようとする特殊な人の中には、そのようにして黒魔法を修得する人が比較的多いんですよ。
 さて、そんなカーティス王国では半年ほど前の宮国暦46年末に大きな事件が起こりました。近年、病床に伏せがちだった3代目国王アゼルが、ついに崩御したのです。
 建国以来、初代メーメット王と二代目アルダ王という武勇に富んだ人物が、戦いに次ぐ戦いによって領地を拡大してきたカーティス王国でしたが、一転して3代目アゼル王は内政に才能を発揮し、勢力拡大の中、多民族・多人種国家となったカーティス王国において「民族融和」を推し進め、「実力主義による官人採用」「国教の制定」「異なる部族間での婚姻の奨励」などの施策を次々と打ち出していきました。
 長く続いた戦乱に疲れていた多くの国民は、これまでのような「武」ではなく「文」によって出世できる平穏な治世を歓迎し、アゼル王を“賢王”として称えていました。

アゼル:
 惜しい人物を亡くしたもんだ。それで、アゼル王亡き後は嫡子であるヤウズ王子が次の王になるんだよな?

GM:
 そうです。現在は亡き王に代わり、第一王子であるヤウズ王子が践祚し、先王崩御の喪が明ける今年の冬に即位式が予定されています。

アゼル:
 たしか、ヤウズ王子は好戦的な人物で、稀代の戦略家だって評判なんだよな。そんな奴が王位についたら、また戦争が始まって血で血を洗う時代に突入しちゃうんじゃないか?

GM:
 たしかに、ヤウズ王子が王位についたら、また戦争が始まるのではないかという噂はよく聞かれます。実際、アゼル王が病床に臥せ、ヤウズ王子が執政を代行していた際に、隣国との領土争いでもめていた内海に浮かぶロイド島において、カーティス王国軍が自衛権を名目として武力を行使し、他国勢力を排除したこともあります。これは第二次ロイド戦役として広く知られる戦いです。

エルド:
 なんだかキナ臭いですね。

GM:
 だからこそ、あなたたちのような戦いに秀でた者たちが活躍できるネタも生まれつつあるわけですけれどね(笑)。
 そのようなわけで、ときは宮国暦47年の春。ヤウズ王子の即位式が半年後に迫ったところから物語は始まります。




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