LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(03)

GM:
 カーティス王国の南部、乾燥地帯であるヤナダーグ・プラト地方に、カルカヴァンとイスパルタという2つの城塞都市を結ぶ、南アルダ街道と呼ばれる街道があります。その街道上を南東方向、イスパルタ方面に向かって進む中規模隊商(キャラバン)がありました。
 南アルダ街道の大部分は人や馬が踏み固めただけの道に過ぎず、舗装されてはいません。街道の周りに草木は少なく、時折吹く乾いた風が砂埃を巻き上げます。季節はまだ春の中ごろですが、雲ひとつない空には太陽がさんさんと輝き、街道上には逃げ水が揺らめいています。

シーン外のアゼル:
 ヤナダーグ・プラト地方は砂漠も含んでいるのか? それとも、砂漠までが領地なんだろうか?

GM:
 砂漠も領地に含みます。地図上では明確な境界線が引いてありますが、実際はあやふやなものです。現在のように、詳細な座標を知る手段もありませんしね。
 さて、隊商の先導役を務める2頭の馬のうち一方に跨る乗り手が、深く被ったフードの奥から、少ししゃがれた声を出しました。彼の名前はアルと言います。

アル(GM):
「まったく、いまが春真っただ中とは思えないほど日差しが強いな。イーサ、大丈夫か?」そう言って、アルは隣の馬上の人物のほうへチラリと視線を向けました。

イーサ:
「さすがに半年も旅を続ければ、これくらいのことは慣れた……と言いたいところだが、正直なところこうして移動してるだけでもかなりきつい。中原に比べると、このあたりは随分と土地が枯れているな」

アル(GM):
「そりゃそうさ。もう少し南下すれば砂漠だからな。この暑さだっていうのに、空気が乾きすぎてて汗もかきやしない」アルはそうぼやくと、手の甲で額を拭ってみせるのですが、言葉通りそこには汗ひとつありません。
「だからといって、あまり水を飲みすぎないほうがいいぞ。かえって疲れるからな」

イーサ:
「そうは言っても、もう喉がカラカラだ。早く街に入りたいな」

GM:
 そんなことを言っていると、遠方に土壁のようなものが連なっているのが見えてきました。

イーサ:
「おっ、あれは――街じゃないか?」

アル(GM):
 その声につられて、アルはイーサの見ているほうへと目を向けました。しかし、その影を確認すると首を横に振ります。
「残念だが、あれはイスタスだな。目的地のイスパルタじゃない。平定戦争が起こる前にイスパルタの衛星都市として栄えた街だ。今はもう無人の廃墟だけどな」

GM:
 ここで言う平定戦争とは、20年ほど前まで続いていた、カーティス王国が周辺部族を支配下に置いて現在の国境線を整えるまでの戦争のことを指します。ヤナダーグ・プラト地方には名立たる城塞が多くあり、篭城戦によってカーティス王国軍を苦しめたという記録が残されています。

イーサ:
「なんだ。やっと落ち着けるかと思ったのに……」

アル(GM):
「イスパルタまでは、あと半日ってところだ。まあ、この調子で行くと日が沈む前には到着できるだろう。だが、あまり遅くなると市門の外に閉め出されちまう。なんとか今日のうちに街に入りたいところだが……」
 アルは同意を求めるかのようにイーサのほうへと顔を向けました。

イーサ:
「そうだな。もう、野宿は遠慮したい。少し急ごう」

アル(GM):
 イーサの同意を得ると、アルは後ろに続く隊商の本隊に向けて、移動速度を速めるように手で合図を送りました。

GM:
 こうして、ヤナダーグ・プラト地方の広大な荒野を隊商が進んでいきます。

シーン外のアゼル:
 イスパルタ周辺では、日差しが強いから金属鎧は身に着けないようにするとかあるのか?

GM:
 好んで金属鎧を身につける人は少ないですね。金属鎧を装備するときには、日差しを避けるためにさらに上から布をまといます。そうしないと、季節によっては日に照らされた金属部分が目玉焼きを焼けるほどの熱を持ちますから、火傷することもあります。

シーン外のアゼル:
 よし、それじゃ俺は金属鎧を使って朝食用に目玉焼きを作るぞ!

シーン外のエルド:
 なんか、ここにひとり頭の足りなそうな人が居るんですけど……。この人とパーティーを組むかと思うと、先行きが不安です(苦笑)。




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