GM:
それでは、この戦闘はどちらかが参ったをしたら、その時点で戦闘終了としましょう。通常どおり、生命点が0点以下になったら生死判定を行い、それに失敗してしまうと死亡扱いとなりますので注意してください。もしもの場合には“可能性”を使ってくださいね。
“可能性”というのはPCに与えられる英雄の資質を具体化したものです。これを消費することで会心の一撃を繰り出したり、致命傷を紙一重で避けるなどの効果が得られます。
セルダル(GM):
「ニルフェルちゃん、しっかり見ててな!」と言って、セルダルは両手剣をブンブン振り回しています。
アゼル:
「おい、セルダル! 軽口を叩くな!」
GM:
戦闘マップは基本的に1マスの1辺が3メートル、段差は1段ごとに50センチとなります。
アゼル:
今は鎧を着てないと考えて、移動力や回避力を計算していいのか?
GM:
そうしてください。LOSTのキャラクターシートには、鎧ごとの移動力と回避力を記入しておける欄があるので、そこに鎧を装備していないときのデータも記入しておくことをオススメします。今後、街中などで鎧を着けずに行動することもあるでしょうからね。
LOSTでは装備している鎧の種類によって敏捷度が大きく変化します。この鎧の影響を加えたあとの敏捷度は実質敏捷度と呼ばれ、文字通りこの値が大きければ大きいほど機敏に行動できるようになります。頑丈な鎧を装備することで身を守るか、それとも俊敏な動きで攻撃をかいくぐるのか、PCの戦闘スタイルが顕著にあらわれる部分でもあります。
GM:
それでは、まず戦闘開始時に視認できる範囲で、互いの装備を確認します。それと、戦闘処理用に実質敏捷度の値を教えてください。
アゼル:
武器は右手にバスタード・ソード……。両手持ちにしようかな?
(少し考えてから)
まあ、今回は試しってことで片手でいいか。あと、鎧はクロース(布の服)装備で実質敏捷度は14。
GM:
了解です。セルダルは普段の装備が革鎧なので、稽古中に装備していてもおかしくないでしょうが……差をつけるのもなんなので、同じくクロースにしておきますか。武器はトゥーハンド・ソードです。普段の稽古の様子などから互いの力量を判断すると、総合力ではアゼルが勝りますが、セルダルのほうが若干素早いです。
次にイニシアチブ値を決定します。《1D》を振ってください。
イニシアチブ値と実質敏捷度の値、それにキャラクターの修得している技能による修正が加わって、戦闘の初回行動タイミング(初期ウェイト)が決定します。この場合、サイコロの目が高いほど早く行動できることになります。
アゼル:
(コロコロ:サイコロを振る音)1。
セルダル(GM):
(コロコロ)それでは、セルダルが先手を取りました。
“迎撃移動”でアゼルと一足一刀の間合いまで移動します。消費ウェイトは2です。
「さあ、かかって来いよ。アゼル」
GM:
つづいてアゼルに行動手番が回ってきます。
アゼル:
それじゃ、こっちも移動して接敵するか。“迎撃移動”すればいいのか?
GM:
はい、ではここで移動に関するレクチャータイム! LOSTには大きく別けて次の4つの移動方法あります。状況にあわせて移動を使い分けましょう。
“小移動”
最大3メートル移動します。移動後につづけて他の行動を行えます。
“迎撃移動”
防御行動が行える状態を保って移動します。隣接した相手に対して接敵状態を発生させられます。
“通常移動”
移動距離は迎撃移動より伸びますが、ディフレクトが行えなくなります。また、隣接した相手に対して接敵状態を発生させることもできません。
“全力移動”
現在向いている方向に対して一直線に全力疾走します。防御行動は一切行えなくなりますが、固定回避値を持ちます。また、隣接した相手に対して接敵状態を発生させることもできません。
アゼル:
それなら、“小移動”でセルダルに隣接する。それに“武器攻撃”を併用してバスタード・ソードで攻撃!(そう言ってサイコロを振ろうとする)
GM:
ストップ! 判定をする前に、消費ウェイトを教えてください。
先ほどから何度か登場している「ウェイト」とは、LOSTにおける戦闘時間の単位のことで、キャラクターがなにか行動をするたびに行動ごとに定められたウェイト値が蓄積されていき、戦闘に参加しているキャラクターの中で最もウェイト値が低いキャラクターが行動順を得るという仕組みになっています。
このウェイトこそがLOSTの肝となる部分ですので、消費ウェイトの宣言は正確に行う必要があります。
今回のアゼルの場合、“小移動”は消費ウェイト1、バスタードソードによる“武器攻撃”は消費ウェイト4なので、合計消費ウェイトは5となります。
アゼル:
消費ウェイトは合計5。
GM:
では、“小移動”分の移動をしてください。
アゼル:
(戦闘マップ上に置かれた自分のユニットを、セルダルのユニットに隣接させる)
GM:
次に、バスタードソードによる“武器攻撃”の処理を行います。「攻撃処理の流れ」にしたがって解決していきますね。
GM:
まず攻撃対象と、攻撃するときにオプション効果を発動させるかを宣言します。オプション効果というのは“可能性”や“ブレス”の効果などですが、とりあえず今回使うことはないと思いますので省きますね。
アゼル:
攻撃対象はセルダル。
GM:
その次は第三者による攻撃支援です。たとえば、ニルフェルがセルダルの動きを観察していて、隙を見つけていたとしたら、彼女がアゼルに対してアドバイスすることで、命中値やダメージ値にボーナスが加わったりします。もちろん、今回はないのでこれも省略します。
次は防御側の回避宣言です。LOSTでは敵の攻撃を回避する方法として大きく別けて2つの行動が用意されています。
“回避”
体捌きで攻撃を避ける行為です。金属鎧などを装備していると避けにくくなります。《回避力+2D》で算出される回避値が敵の命中値以上であれば回避成功となります。
“ディフレクト”
手に持っている剣や盾などを使って、敵の攻撃を弾く行為です。自分の手番が回ってくるまでのあいだ、得物ごとに1回しか行えません。《ディフレクト力+2D》で算出されるディフレクト値が敵の命中値以上であればディフレクト成功となります。
セルダル(GM):
セルダルはディフレクト力よりも回避力のほうが高いので、“回避”を選択します。
GM:
ここで、回避行動に関してもオプション効果を発動させるかを宣言できるのですが、これも今回はないので省略します。
それでは、アゼルの攻撃の命中値を決定しましょう。《命中力+2D》で命中値を算出してください。
アゼル:
よし! ここは男として、負けるわけにはいかない! (コロコロ)おおッ! 凄い! 16!
GM:
良い値ですね。一応、ここで“可能性”や“プレアー”などの効果で判定をやり直すこともできますが……。
アゼル:
もちろん、振り直すわけない(笑)。
GM:
では、今度は回避側の判定です。回避側は攻撃を避けるために16以上の回避値を出さなくてはなりません。
セルダル(GM):
(コロコロ)回避値は14で、アゼルの出した命中値より低いため回避失敗です。
GM:
アゼルのセルダルに対する攻撃は命中しました。もしセルダルが“可能性”や“プレアー”を使えれば、ここで回避値の振り直しも行えますが、残念ながら行えません。では、ダメージ値を決定します。
アゼル:
よっしゃぁ……いけッ! (コロコロ)おおッ! クリティカルヒットッ!
GM:
あ……(汗)。
アゼル:
さらにーッ! (コロコロ)惜しいッ! 出目は9で、19点ダメージ!
セルダル(GM):
……今のセルダルの装備はクロースなので、防御値の2をダメージから引いて、17点のダメージが通りました。……残生命点マイナス突入……。これは死んでしまうかもしれませんね(苦笑)。
アゼル:
えッ!?
セルダル(GM):
瞬きひとつの間に振るわれたアゼルの鋭い一撃を、セルダルはまともに食らってしまいました。その一撃によってセルダルの肩口から鮮血がブワッと飛び散ると共に、セルダル自身もその場に崩れ落ちました。
アゼル:
待ってッ! ちょっと待ってッ! 急展開過ぎるだろッ!?
セルダル(GM):
さて、運命の生死判定は……。(コロコロ)……地面に倒れたセルダルはピクリとも動きません。
アゼル:
やばいッ! やばいってッ! キャンペーン開始早々でいきなり殺伐としてきたッ!
「セルダルゥゥゥッ!」
まずいことになったと思いながら駆け寄った。
ニルフェル(GM):
ことの成り行きを見ていたニルフェルは、声も出せずに青ざめています。
シーン外のイーサ:
(呆れ顔で)これだから熱血男は……。時と場合を考えずに本気になりすぎなんだよ。
ジャナン(GM):
ジャナンも慌てた様子でセルダルに駆け寄ると、セルダルの口元に耳を寄せて呼吸音を確認します。
「……息は……ある」
セルダル(GM):
ということで、生死判定にはなんとか成功して昏倒状態です。
アゼル:
危なかった~! 両手持ちにしておかなくてよかった!
GM:
ニルフェルに良いところを見せようと張り切っていたセルダルだったのですが、良いところを見せるどころか、逆にやられて生死を彷徨うことになってしまいました。
アゼル:
なんで、こんなときにクリティカルが出るかな(苦笑)。
シーン外のイーサ:
いや、ついさっきまでやる気満々でクリティカル出して喜んでたのは誰だよ。そのあとも9の目を出して、「惜しい」って悔しがってたし……。
ジャナン(GM):
ジャナンがセルダルに“手当て”を行います。
LOSTでは生命点にダメージが1点でも通ると傷を負った状態となり、そのままにしておくと流血が続いたとして追加でダメージを受けたり、再度生死判定を行わなくてはならなくなってしまいます。そのような傷を負った状態を止血などの応急処置を行って治す行為が“手当て”です。
なお、白魔法などで生命点を回復させた場合、その時点で傷を負った状態からも回復します。
アゼル:
それ、ランド・ウォーカー技能でできる?
GM:
可能です。手当て判定の基本目標値である7に、セルダルの現生命点である-5の絶対値を加算して、目標値は12となります。《ランド・ウォーカー技能レベル+知力ボーナス+2D》で目標値を上回れば“手当て”は成功で、それ以上傷が悪化するのを止められます。プレイヤー側の行動を優先させるので、先に判定していいですよ。
ここでの“手当て”の目標値算出方法は誤っていたので補足しておきます。セッション中に誤って算出していたのは生死判定の目標値であり、正しくは、セルダルの負っているダメージ17がそのまま“手当て”の目標値となります。
アゼル:
(コロコロ)残念、11だ。
GM:
その値では失敗ですね。止血できずに血が流れ続けています。
ジャナン(GM):
続けて、ジャナンによる“手当て”は――(コロコロ)なんとか成功しました。
アゼル:
ふう、よかった。とりあえず、セルダルを担いで家の中に。
GM:
では、意識を失ったままのセルダルを担いで、彼の部屋の寝台まではこびました。
開始早々に思わぬアクシデントで主要ノンプレイヤーキャラクター(以下NPC)をひとり殺してしまうところでしたが、すんでのところで難を逃れました。後悔先に立たずではありますが、模擬戦では木剣や刃引きした武器を使わせるべきでした。
一応、“手加減”という、与えるダメージなどを減らせる行為もあるのですが、アゼルは“手加減”を修得していませんでした。“手加減”はプレイヤーにとってあまり魅力的な行動ではなく、これまでのセッションでも修得されないケースがほとんどでした。このセッション後、今後も同様の事故が起きるのを避けたかったので、“手加減”は全キャラクターが最初から使える行動とすることにしました。