LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(07)

GM:
 さて、昼も過ぎたころのイスパルタの街に場面を移します。そろそろエルドにも登場してもらいたいところですが……。

エルド:
 ん~。酒場あたりで出て行くつもりですが、アゼルたちの行動を見て決めます。

GM:
 了解です。登場タイミングはお任せします。
 では、アゼルはセルダルの背中を追うように東門を抜けて、イスパルタ市内へと入ってきました。城塞都市として名高いイスパルタは、その市街が二重の市壁によって守られています。その市壁を抜けるための門がある通りはとても狭く、馬車がすれ違うのにも一苦労といったほどです。

イスパルタ市街地図

GM:
 セルダルは慣れた足取りで通りを抜けて、街の中心部へと進んでいきます。そして、中央広場まで足を運んだところで、そこに100人規模の人だかりができていることに気がつきました。いつも活気のある中央広場ですが、これだけの人だかりができているところを見たのは初めてです。

アゼル:
「おい、セルダル。何かあったのかな?」

セルダル(GM):
「さあ、なんだろーな?」

GM:
 人だかりの中心には看板が立てられているようです。看板に書かれた内容を見るためには、人ごみを掻き分けて近づく必要がありそうです。

アゼル:
 じゃあ、少し中に入っていって見よう。

エルド:
 そのあたりで登場したいんですけど、いいですか?

GM:
 構いませんよ。

エルド:
 それでは、フードをかぶった10代半ばの少年がアゼルの横に近づいてきて、「あなた、あの看板に何が書いてあるか見えますか?」と聞いてきます。
 その少年は肌の色が黒く、ローブ越しでも細い身体のつくりが見て取れます。

アゼル:
「俺も、何が書いてあるかわからないんだ。ここからじゃちょっと遠くて読めないしな」

エルド:
「目を凝らして見れば、見出しくらいは読み取れるのではないですか?」

アゼル:
 目を細めて看板を見てみるが、何か読み取れるか?

エルド:
 そのタイミングでアゼルに対して“スリ”を行います。

 泥棒を登場させてアゼルの所持品を奪い、それを捕まえる手伝いをエルドにさせることで合流させようと目論んでいたGMでしたが、エルドに先を越されてしまいました……。

GM:
 了解です。スリ判定ですね。では、盗む側は《スカウト技能レベル+器用度ボーナス+2D》、盗まれる側は《スカウト技能レベル+知力ボーナス+2D》を用いた判定を行ってください。その判定で盗む側が4以上の差をつけて勝った場合、スリは成功です。逆に同値以下だった場合には、スリを試みたことに気づかれてしまいます。今回は人ごみの中ですので、盗まれる側の判定に-4のペナルティを与えます。あと、必要な技能を持っていない判定を試みる場合には、サイコロの目に-2のペナルティが発生します。つまり、サイコロの目が4以下の場合は1ゾロでなくとも自動失敗となってしまい、反対に6ゾロを出したとしても自動成功とはならないわけですね。

アゼル:
 ぬお~! これは難しいな。技能がないからペナルティ-2で、人ごみの中だからさらに-4か。
 判定の前に確認しておきたいんだが、いま全財産が銀貨1,780枚分ある。これは普通に持ち歩けるものなんだろうか? あと、それがどれくらいの価値なのかも知りたい。

GM:
 銀貨で持っているとすればかなりかさ張りますが、金貨や大金貨であれば小銭袋で持ち運べないこともありません。金貨1枚は銀貨25枚に相当します。また、現実の金銭に換算した場合、目安として1銀貨100円の価値があるとして考えてみてください。

アゼル:
 ってことは、セルダルのために使った薬ってかなり高価だったんだな。まあ、命が10万円で買えたって考えれば安いほうだけど……。
 さて、どれくらいの金を持ってきてるかな。

GM:
 剣の稽古の後に家に戻らずに直接来たとすれば、持ち合わせが少なくても不自然ではないでしょう。(エルドに対して)アゼルの所持金が少なければ、その代わりに別の所持品を盗もうとしたことにしても良いですよ。

エルド:
 何もなければ、ズボンの留め金でもいいです(笑)。もしくは、失くすと困るものとかだといいですね。

アゼル:
 それじゃ、母親の形見の聖印とかどうだろう? ネックレス状のものを小銭袋に入れて腰につけてる。その袋の中に小銭も一緒に入れておこう。銀貨3枚くらい。

エルド:
 その聖印が失くすと困るものだというのであれば、それで良いです。それじゃ、判定します。(コロコロ……)13。

アゼル:
(コロコロ……)5。

GM:
 それでは、エルドはアゼルに気づかれることなく、聖印の入った小銭袋を盗むことに成功しました。

エルド:
 取るだけとってその場をあとにします。

アゼル:
 立て看板をじっと見てから、「ん~、やはり見えないな」と言って少年の居たほうを見るんだが……。
(キョロキョロと周りを見渡して)
「あれ? いない。どこに行ったんだ?」

セルダル(GM):
 挙動不審なアゼルに対して、セルダルが声をかけてきます。
「どーしたんだ、アゼル?」

アゼル:
「いや……。いま、隣にいた奴は……? ま、いいか」

セルダル(GM):
「……? それより、看板に何て書いてあんのかわかったのかよ?」
 セルダルは文字を読めません。

アゼル:
 字を読むにはもう少し近くに寄らないとな。
「ちょっと通してくれ。悪いな」と言いながら人ごみを掻き分けて、看板の内容が読める距離までさらに近づく。

GM:
 看板の文字が読み取れるくらいまで近づいてみると、看板にはこのような文字が書かれています。

 来たれ勇士よ!
 新王の戴冠式に伴い王直属部隊を新設する。ついては部隊員として50名をここに急募する。所属を希望するものは、宮国暦47年8月末日までに王都カドゥン王国騎士宮殿まで来られたし。
 身分・性別・年齢などは一切問わず、求められるは戦いの腕前と新王への忠誠のみ。
 採用者へは支度金として金貨1,000枚と武具一式を支給。給金は月に金貨500枚。それ以外に、任務毎の特別報酬あり。

アゼル:
 それを声に出して読み上げた。

セルダル(GM):
「おおッ? おおおッ!? おおおおッ! すげぇ! すげぇよ、アゼル!」(興奮気味に)「これだよ! こーゆーのを待ってたんだよ、オレは!」

アゼル:
「たしかに凄いな。俺たちのこれまでの修行も無駄にならないかもしれない……」

セルダル(GM):
「まったくだ。ヤウズ王子万歳! ヤウズ新国王万々歳だ!」

アゼル:
「でもな……。ヤウズ王子に関しては悪い噂も聞く。冷徹な人物みたいだしな……」

セルダル(GM):
「それをゆーなら、いい噂だっていっぱい聞くぜ? 最小の被害で最大の戦果を上げる稀代の知将だってな。まあ、実際に会ったことがあるわけでもねぇし、噂話だけじゃ判断できねぇさ。だがよ、身分を問わずにこんなチャンスを与えてくれるなんざ、嬉しいじゃねぇか。オレはヤウズ王子はいい王になると踏んだね」

アゼル:
「まあ、たしかに噂話だけじゃ判断できないんだが、火のないところに煙は立たないとも言うしな……」

セルダル(GM):
「んーっ!」(身体を震わせて)「こーしちゃいられねぇ。酒場に行くのは中止だ。オレ、帰るわ!」
 セルダルは、いても立っても居られないといった様子で「ごめんよ。ごめんよ」と言いながら人ごみを掻き分けていきました。

アゼル:
「ちょっ、待てよ」と言いながら追いかける。

エルド:
(ボソッと)さて……聖印、売りに行きましょうかね……。

アゼル:
 聖印が盗まれていることにはまだ気づけないだろうな……。気づくかなぁ? 気づいたほうが良いのかな? いや、そのままセルダルを追いかけるだろうな……。

エルド:
 では、さっきの少年が後から声をかけてきます。
「あの。さっきの場所にこれが落ちてましたけど、もしかしてあなたのものではないですか?」

アゼル:
「おや?」(小銭袋がなくなってることに気がついて)「おおっ、すまない、すまない」と言って小銭袋を受け取る。
「すまないな。これは母の形見が入っている大切なものだったんだ。ありがとう」と爽やかに礼を言う。
「そうだ。お礼にこれを」と言いながら、小銭袋の中から銀貨を取り出して――

エルド:
 小銭袋の中は空ですよ。聖印も入ってません。

アゼル:
「あれ? 聖印がない。いったい、どこに落としたんだ?」と、周りを見渡す。

セルダル(GM):
 先を歩いていたセルダルは、後ろを振り返ると、立ち止まっているアゼルに対して、「おい、どーしたんだよ、アゼル? お前も帰るんじゃねぇのか? さっさと行くぞ」と声をかけます。

アゼル:
「いや、それが……母の聖印がないんだ」

セルダル(GM):
「はぁ? 落としたのか? あの人だかりの中で? あの中から探すのは一苦労だぞ?」そう言って、セルダルは今まで居た人だかりのほうに目を向けます。

エルド:
「小銭袋の中身がなくなっていたのですか? 僕が拾ったときには、それらしいものは見当たりませんでしたが……」
(少し考える素振りを見せて)
「そうだ、僕はしばらくこの街に滞在するつもりなので、もしその間にそれらしいものを見かけたら拾っておきますよ」

アゼル:
「そうか。すまない。そういえば、まだ名乗ってなかったな。俺はアゼル。もし、聖印を見つけてもらったとして、そのときはどうやって受け取ればいい? 俺の家は街の外だから届けてもらうのもたいへんだろうし……。そうだ、泊まっているところを教えてくれないか?」

エルド:
(GMに対して)この街で一番安い宿泊施設の名前を教えてください。あと、そこはいくらくらいで泊まれます?

GM:
 名前は自由に決めてもらって構いませんよ。
 城塞都市イスパルタは、カーティス王国でもっとも傭兵が集う街ですから手ごろな宿泊施設はいくつもあります。その中で最も安い宿となると……。(ルールブックを確認してから)食事をつけて、1泊30銀貨ほどですね。

エルド:
 それでは、ギルガメ亭で。
「僕はこの街で一番安いギルガメ亭に泊まっています」

アゼル:
「わかった。もし聖印を見つけたら、よろしく頼む」と言いつつ、人ごみの中に入って聖印を探し始めた。

セルダル(GM):
 セルダルは、そんなアゼルを見てため息をつきました。
「まったく、しゃあねぇな。手伝ってやるか」

GM:
 こうしてアゼルとセルダルの2人は、人ごみの中で聖印探しを開始しました。

エルド:
 その姿を確認してからその場を後にします。




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