LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(08)

GM:
 一方、少し日が西に傾き始めたころ、南アルダ街道を進むイーサの目に、半日前にみたイスタスの土壁とは比べ物にならないほど巨大で堅固な市壁が飛び込んできました。

イーサ:
「今度こそ、イスパルタか? これでやっと休めるな。もう喉がカラカラだ」

GM:
 イーサの目に映るのは、二重の壁です。堅固な市壁に守られた城塞都市イスパルタは、カーティス王国の東の国境に最も近い軍事上重要な拠点であり、その国境線の向こうには、カーティス王国とはあまり友好的でないサイラス王国が広がっています。

アル(GM):
 アルは市壁の近くまで来ると、馬を下りてイーサに目配せしました。
「市内に入るための手続きは隊商長に任せて、それまでは少し休ませてもらうとしよう」

イーサ:
「賛成だ。まったく、こうも暑いとさすがにこたえる」

アル(GM):
 アルはイスパルタ市内へ続く市門から少し外れた壁際に手ごろな日陰を見つけると、馬を引いてそこまで歩いていきます。そして、馬に背負わせていた荷物を地面に置くと、その上に腰をおろし、フードを降ろして顔を出しました。
 彼の見た目は20代半ばといったところで、肌は日に焼けて随分と黒くなっていますが、黒人ではありません。髪の毛はギリギリつかめる程度の短髪です。目の上、眉毛の縁のあたりには鋭い傷痕があり、その戦歴を物語っています。
 アルは腰に提げた水袋を解き取ると、その中に残された水で大きく喉を鳴らしました。
「ふーっ! 一息ついた!」

イーサ:
 アルについて行って、同じようにフードを取る。イーサの肌の色は日に焼けた褐色で、髪型は前髪が目に掛からない程度の長さのツンツンしたウルフヘア。20代前半の男。

アル(GM):
「カルカヴァンからここまで続く南アルダ街道は、カーティス王国内で最も行程が過酷な街道だと言われているんだが、噂にたがわずさすがにここまで来るのは骨が折れたな」

イーサ:
「なるほど。それじゃ、これから先、もうこんな過酷な道を旅するようなことはないわけだ。……いや、まてよ。ここから戻るときも同じ道を通るしかないのか……」

アル(GM):
「まあ、そうなるな。あとは街道を外れて、もっと厳しい旅をするって選択肢もあるが――」

イーサ:
「北は山、南は砂漠に挟まれてるのに街道を外れようなんて、問題外だな。まだ街道を通った方がマシだ」

アル(GM):
「そりゃそうだが、俺みたいに、聖域の探索を生業にしたら、街道だけを進んでってわけにはいかないからな」そう言って軽く笑ってみせます。
「それで、イーサ、お前はこの先どうするつもりだ? 隊商の金払いが思いのほか良かったからここまで護衛を引き受けたが、俺は数日ゆっくりしたらカルカヴァンに戻って、そこで本業に勤しむつもりだ」

探索者
 100年前に消失してしまった神々が暮らしていた領域のことを聖域と呼びます。そして、その聖域内に残された神々の遺産(魔法のアイテム)を手に入れようとして聖域を探索する者のことを探索者と呼びます。なお、聖域探索者や遺跡探索者などと冠を付けて呼称されることもあります。

イーサ:
「俺はここで数日過ごしてみて……特に面白いことがなければ、来た道を戻って北上するかな。俺は故郷で探索者に剣の使い方を教えてもらったんだが、そいつが話していたような翼の生えたトカゲとか、民家よりも大きな巨人なんかを見てみたいんだ」

アル(GM):
「そういう手合いのやつは聖域の中じゃないとお目にかかれないな。聖域を探索したいってなら、探索者が集まるカルカヴァンで仲間を募るのが手っ取り早いが……。まあ、とりあえず、イスパルタの街を見てから決めるんだな」

イーサ:
「そうだな。もし面白いことがあったらこの街に滞在することになるかもしれないし、そうならなけりゃ、カルカヴァンまで行って、そこでまた考えることにする」

GM:
 2人がそのような話をしていると、そこに1人の男が近づいてきました。それは、今回護衛していた隊商の長を務めていた商人です。

アル(GM):
「さて、それじゃ、市内に入って宿探しでもするか」そう言って、アルは立ち上がり、荷物を手に取ろうとするのですが――

隊商長(GM):
 隊商長は、荷物を取ろうとするアルを手で制すると、こう言います。
「疲れているところすまないんだが、市内に入るまでにはもう少し時間がかかりそうなんだ。何でもこれから王室の使いの馬車が市門を通るってんで、しばらくの間一般人の市門付近への立ち入りは規制されるらしい。悪いが、もうしばらくここで休んでいてもらえるか?」

イーサ:
「そういうことじゃ、しかたない。ほかにできることもないしな……」そう言って再び腰を下ろすとしよう。

アル(GM):
「そうだな。せいぜい、日が暮れる前に入りたいもんだが」アルは雲ひとつない空を見上げて、ため息混じりにそう呟きました。




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