LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(13)

GM:
 一方でギルガメ亭に残ったエルドはどうしますか?

エルド:
 うーん。ここは無難に団体行動を取ったほうが良いんでしょうね。単独で王都に向かってしまおうかとも思ったんですけど……。

GM:
 強制はしませんけど、単独での旅路はかなり危険ですよ。だからこそ隊商が組まれるわけですし。

エルド:
 そうですよね。単独で旅した場合、途中で野生動物に食べられそうな嫌な予感もしますし……。
(少し考えてから)
 僕のような人間でも護衛として雇ってもらうことはできるんでしょうか?

GM:
 あなたが戦力になることを証明できれば雇ってもらえるでしょうね。

エルド:
 仮に隊商の同行者として護衛への支払いを折半することになったら、どれくらいの金額を支払うことになりますか?

GM:
 そうですね……。傭兵への日当の相場は100銀貨として、護衛人数分を残りの人数で割った値が1日で支払う金額です。どれくらい人が集まるかは実際に集まってみないことにはわかりませんね。カルカヴァンまではだいたい1週間の行程です。

エルド:
 うーん。それでは、お昼を済ませたら商人ギルドに行って、カルカヴァン方面に向かう隊商の話について聞いてみることにします。

GM:
 では、午後になってエルドが商人ギルドの寄り合い所を訪れると、そこにはシシュマンとアルの姿がありました。

シシュマン(GM):
「いらっしゃい! 商人ギルドに何かご用かな?」

エルド:
「すみません。カルカヴァン方面に向かう隊商の話を伺いたいんですが」

シシュマン(GM):
「それだったら、ちょうどいま人を集めているところだ。早ければ3日後にはイスパルタを離れる計画だが……」

エルド:
「いまのところどれくらい集まっているんですか?」

シシュマン(GM):
「そうだな。いまのところ……」(指折り数えて)「15人ってところだな。だが、ちょうどいま、カルカヴァン方面からこっちに向かってきてる隊商があって、その往復組みと合流する手はずだから、もう少し増えるはずだ」

エルド:
「そのうち護衛はどれくらい居るんです?」

シシュマン(GM):
「今のところは3人だが……。お前さん、もしかして護衛として参加するつもりなのか?」

エルド:
 うーん。どうしましょうね……。
(少し考えてから)
 その往復組みの情報って入ってこないんですか?

GM:
 到着しないことにはわからないでしょうね。

エルド:
 それじゃ、極端なことをいうと、護衛の割合が半数を超えるということも?

GM:
 それはないでしょうね。護衛希望者がある一定人数集まったら、それ以降は商人ギルド側が断るでしょうから。逆に商人側の人数が少なすぎて護衛の割合が高くなるような状態であった場合、商人の数が集まるまで隊商の出発を延期することになるでしょう。

エルド:
 商人が20人集まって、護衛が10人付いた場合……1日50銀貨の支払いですか。

GM:
 それ以外にも食事代などの諸経費は、各自が自腹を切ることになります。

シーン外のアゼル:
 やっぱりそれなりの費用が掛かるんだな。普通の人が旅をしようと思ったら結構たいへんなんだ。

GM:
 そうですね。商人たちにしてみれば、1回の移動で数十万から数百万銀貨の儲けが出るわけですから、その商材を守るための護衛費用くらいは惜しまないわけです。

エルド:
(しばらく考えてから)
「そうですね……。もしそうしてもらえるのであれば、護衛として雇ってもらえますか?」

シシュマン(GM):
 シシュマンは、「そういうことであれば、彼と話をしてくれ」と言って、奥に居たアルを呼び寄せます。

アル(GM):
 シシュマンの呼びかけに応じて、革鎧を装備した男が近づいてきます。エルドのほうが身長が高いので、あなたを少し見上げるような形になりますね。
「護衛に加わりたいってのはキミか? 俺はアル。護衛のまとめ役をやることになっている」

エルド:
「エルドと言います」

アル(GM):
 アルはエルドのことを値踏みするように見たあとで、「単刀直入に聞くが、キミは何ができる?」とたずねてきました。

エルド:
「黒魔法を少々と、ちょっとした偵察とかなら……」

アル(GM):
「黒魔法の使い手なのか? そいつは助かる。下手な剣士が数人いるより、魔法使いがひとりでもいるほうが役に立つからな。なにせ、戦わずして戦闘を終わらせることができる」

エルド:
「そう言ってもらえると、こちらも助かります」

アル(GM):
「よろしく頼む」と言って手を差し出します。

エルド:
「こちらこそ、よろしくお願いします」

アル(GM):
「で、キミはどこに泊まっているんだ?」

エルド:
「ギルガメ亭というところです」

アル(GM):
「ああ、あそこか。それじゃ、出発の日取りが決まったら連絡する。もしくは、昼の間なら俺はここに居るから、訪ねてきてもらっても構わない。水と食料以外の旅道具は各自で準備することになっている。出発までに支度を整えておいてくれ。他に何か聞きたいことはあるか?」

エルド:
「んー、そうですね……」
(しばらく考え込む)

アル(GM):
「俺は25歳。まだ独身だ。彼女はいない。女の好みは――」

エルド:
「僕は16歳です(笑)」

アル(GM):
「だいたいそれくらいだろうと思っていた。しかし、年のわりには背が高いな」

エルド:
「それくらいしか取柄がないので」

アル(GM):
「いやぁ、黒魔法が使えるってだけでも大したもんだ」

エルド:
「そんなことありませんよ。魔法使いから見れば、戦士として前線で戦える人のことがどんなに羨ましいか」

アル(GM):
「あー。ちなみに断っておくが、俺も黒魔法は使える。こう見えても魔法剣士だからな」

シーン外のアゼル:
 そうだったんだ? すげぇ……。

エルド:
「すごいじゃないですか」

アル(GM):
「いまはたまたま隊商の護衛についてるが、俺の本業は聖域の探索なんだ。探索者を名乗るなら、魔法のひとつくらい使えないとな。で、俺はカルカヴァンに到着したら本業に戻るから、護衛として隊商につくのはそこまでだ」

エルド:
(GMに対して)カルカヴァンの近くに聖域があるということは知っていていいんですか?

GM:
 カルカヴァン周辺に限らず、聖域がある場所は広く知られています。ウォーベックという黒魔法の第一人者がカルカヴァンの近くに研究所を構えていたため、その周辺が聖域探索者にとっての主要土地となっていることは特に有名です。ただし、聖域の中の特定の遺跡の場所という意味では知られていないもののほうが多いですが。

エルド:
「カルカヴァンの近くには聖域があるんですか?」

アル(GM):
「ん? ああ。あそこの聖域にはまだ手付かずの遺跡がいくつも残されてる。それに、王都から遠いから仕事もしやすいんだ」

エルド:
「王都から近いと、何か不都合でもあるんですか?」

アル(GM):
「……キミは国の事情には疎いみたいだな?」

エルド:
「そうですね……生まれが生まれなので……」

アル(GM):
(エルドの黒い肌の色を確認して)「南方の生まれか?」

エルド:
「はい。こっちには奴隷として連れて来られたので、あまりそういった事情を知らないんです」

アル(GM):
「そうか……」
(眉の端を指で掻いてから)
「次代の王になろうっていうヤウズ王子は、聖域に残された神の遺産はすべて国のものだと主張している。だから、聖域を荒らす俺たち探索者の存在を快くは思ってない。ゆくゆくは、探索者の財産没収もあるんじゃないかって話だ」

エルド:
「そうなったら、聖域で手に入れたものはすべて国王へ献上することになるんですか?」

アル(GM):
「まあ、そういうことになるんだろうが、大人しくそれに従う探索者なんているもんか。ヤウズ王子が王位について、本当にそんな命令を出したりしたら、探索者は根こそぎこの国を離れるだろうさ」

エルド:
「探索者もいろいろたいへんなんですね」
(少し考えてから)
「……ヤウズ王子は聖域を探索している人たちからは、あまり良く思われていないんですか?」

アル(GM):
「まあ、そうなるな。……だが、傭兵稼業をやっている奴らには結構人気があるみたいだぞ」

エルド:
「どうしてですか?」

アル(GM):
「そりゃ、ヤウズ王子の指揮官としての名声は遠方の国にまで届くほどだし、どうせつくなら優れた指揮官の下につきたいと思うのは当然だろ? それに、ヤウズ王子は国土を広げようとする野心を持った人物だって話しだからな。傭兵にとっては、戦争がなかったらおまんまの食い上げだ。実際、先代のアゼル王の治世せいで、職にあぶれた傭兵崩れが野盗化したって話しはよく耳にするしなぁ」

エルド:
「そういえば、中央広場に立てられていた看板を見たんですが、ヤウズ王子は近々戦争でも起こす気なんでしょうか?」

アル(GM):
「ああ、あの直属兵募集の看板な。それが直接関係するかは知らないが、ヤウズ王子が戦争を起こす気でいるのは間違いないんじゃないか? それは皆が噂している」

エルド:
「なるほど。この国もどこへ行こうとしているのかわかりませんね……」

シーン外のアゼル:
 そうか? わりと明確なんじゃ?

エルド:
 内部分裂しそうな感じがするって意味ですよ……。
「それでは、僕はこれから買出しに行ってくるので、これで失礼します」そう言って、街へ買い物へ出かけます。




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