GM:
では、さらに時間を進めて翌日。イーサがイスパルタの街に到着してから5日目、商人ギルドの隊商が当初イスパルタを出発する日程として予定していた日の昼前になります。
アルはイーサを連れて商人ギルドの寄り合い所へ向かいますが、皆さんはどこにいますか?
アゼル:
旅支度も終わったし、連絡が来るまでは自宅で待機してる。
エルド:
僕は商人ギルドの寄り合い所に顔をだしておきます。
GM:
了解です。エルドが寄り合い所に行ってみると、20人近くの人が集まっています。まだ、カルカヴァンからの隊商は到着していないようで、その到着の遅れを心配する声も聞こえます。
そんなところにアルがイーサのことを連れて入ってきました。
エルド:
「こんにちは、アルさん。散歩がてらにちょっと寄ってみました」
アル(GM):
「おう、エルド」
アルはエルドに軽く挨拶すると、寄り合い所を見渡します。
「この様子だと、まだ隊商は到着してないようだな」
イーサ:
「アル。こいつと知り合いなのか?」
アル(GM):
「ああ。紹介しておく。彼はエルド。黒魔法使いだ。俺たちと同じ隊商に護衛として参加することになってる」
イーサ:
「なるほど、黒魔法使いとは頼もしいな。俺はイーサ。よろしくな」
エルド:
「こちらこそ、よろしくお願いします」
シーン外のアゼル:
このパーティには黒魔法使いが3人もいるんだな。
エルド:
え? 3人います? 僕とアルさんと……。
イーサ:
俺がブラック・マジシャン技能をレベル1で取得している。それに、ホワイト・マジシャン技能がレベル2。
シーン外のアゼル:
イーサは良く言えば多彩だが、悪く言えば器用貧乏だな。
GM:
あなたたちが挨拶している間に、アルはシシュマンのところへ行って、何か話をしています。
アル(GM):
「イーサ、こっちに来いよ。隊商長を紹介する」と言って、アルはイーサを呼び寄せます。
シシュマン(GM):
「ワシは隊商長を務めるシシュマン・セレンギルだ。お前さん、護衛としての参加を希望してるんだってな?」
イーサ:
「イーサです。よろしくお願いします」
アル(GM):
「実力は俺が保証する」
シシュマン(GM):
「ふむ。これで護衛は5人だな。ちょうど良い数だ」
GM:
そうやって、一通りの顔合わせを済ませたタイミングで、バタンッと荒々しい音を立てて寄り合い所の扉が開かれました。そこにはボロボロになった商人風の格好をした男が立っていて、肩で大きく息をしています。彼はシシュマンの姿を見つけると慌ただし駆け寄って来ました。
ボロボロの商人(GM):
「ハァッハァッ……。た、たいへんだッ、シシュマン! 南アルダ街道沿いに……野盗が出やがった! 馬に乗った連中にあっという間に包囲されちまって……護衛は降伏した者も含めて……皆殺しだ……。荷物も……根こそぎかっさらわれちまった……」
シシュマン(GM):
「なんだってッ!?」
ボロボロの商人(GM):
「奴ら、荷馬ごと荷物を奪ってすぐに姿を消しちまったから……命だけは助かったんだ。それに、襲われた場所がイスパルタまであと20キロほどだったのも……不幸中の幸いだった。もっと離れてたら、こうやって街にたどり着けたかどうか……」
アル(GM):
「20キロか……。さほど離れてないな……。なあ、あんた、野盗はどれくらいの規模だったか覚えてるか? 全員馬に乗ってたのか?」
ボロボロの商人(GM):
商人は、一度息を整えるとアルに対してうなずきます。
「野盗は……たぶん、全部で20人くらいだったと思う。全員、馬に乗っていた」
アル(GM):
「他には? 奴らの装備とか、魔法を使っただとか……わかることは全部教えてくれ」
ボロボロの商人(GM):
「たしか、片手剣に革鎧ばかりだったと思う……。魔法は……わからない。あとは……あとは……」
(しばらく考え込んでから)
「そうだ……たしか、野盗の頭は『カダ』って呼ばれていた」
アル(GM):
「カダ……?」
アルは商人から聞き出したその名前を口にすると、口元に拳を当ててなにやら考えはじめました。
シシュマン(GM):
「こいつはたいへんなことになっちまったな……」シシュマンが神妙な顔でそうつぶやきます。
急転直下、野盗事件の発生です。いよいよ物語が動き始める……かも?