GM:
それでは、アゼルとセルダルが寄り合い所に到着するまで時間を進めます。到着したアゼルとセルダルは、すでに使いの者から「野盗が現れたので隊商の出発が延期されることになりそうだ」という話を聞かされています。
セルダル(GM):
「なんか動きがあったんだって? それも悪い方向で」
アゼル:
「詳しい話が聞きたい」
イーサ:
(アルに対して)「こいつらが一緒に護衛をするはずだった奴らか?」
アル(GM):
「そうだ。こっちがアゼルで、そっちがセルダル」
イーサ:
「アゼル?」(鼻で笑って)「それは、また大層な名前だ。賢王と同じ名前だなんてな」
エルド:
(失笑)
GM:
これまでほかのキャラクターたちがあえて触れずにスルーしていたことを(笑)。
アゼル:
まあ、親がつけた名前だからなぁ。なんとも返しようがないが……。しかし、俺はいずれ賢王に並び称される男だ!
エルド:
色んな意味で幸せそうな人ですね……。
アゼル:
(アルに対して)「アル。こちらは?」
イーサ:
「おれはイーサだ。アルと一緒に隊商の護衛をしてここまで旅してきた」
アゼル:
(イーサを一瞥してから)
「しかし、隊商の出発が大幅に遅れるとなると……困るな」
セルダル(GM):
「そーだなぁ。オレは少しくらい遅れても構わねぇが、肝心のニルフェルちゃんが困るよな」
エルド:
「アゼルさんたちは何か急ぎの用事でもあるんですか?」
アゼル:
「ツレをなるべく早く王都に連れて行ってやりたいんだ」
俺は王直属部隊に加わるつもりはないから、自分としてはそんなに急ぐ必要はないけどな。
イーサ:
「ツレが居るのか……。王都での用事ってのはなんだ?」
アゼル:
「まあ、ちょっとした野暮用だ」
わざわざ説明することでもないから、そう言っておく。
エルド:
「セルダルさんは、王直属部隊に興味があったんですよね?」
セルダル(GM):
「ああ。あの条件だ、興味を持たねぇ方がどーかしてるだろ? 月の給料は金貨500枚以上! それも王直属と来たもんだ! そこらの騎士より格上待遇だぜ?」
エルド:
「美味しい仕事ってやつですね」
アゼル:
「まあ、たしかに魅力的ではあるんだよな……。仕送りもできるようになるし」
セルダル(GM):
「これからこの国は周辺国との戦乱の時代に突入していくはずさ。そんとき王直属部隊にいりゃ、いい思いできんのは間違いねぇぜ! それに、国のために働けるってのもロマンがあっていいじゃねぇか」
イーサ:
少し冷ややかな目をセルダルに向けた。
「俺の求める浪漫とは、また別のロマンだな……」
エルド:
「まあ、人それぞれ、いろいろな目的がありますよね」
イーサ:
「しかし、その王直属部隊にしても召集期限は4ヶ月後、まだ先の話だ。無理にこの商人の護衛について、みすみす命を危険にさらす必要があるのか?」
セルダル(GM):
「ん? アゼルが野暮用って言ったのは王直属部隊への志願のことじゃねぇよ――」
アゼル:
(セルダルの言葉をさえぎって)「アスラン商会に協力を呼びかけてみるのはどうだ? アスラン商会も野盗がでてたら困るだろ? 協力して退治できるかもしれない」
シシュマン(GM):
(イーサたちに親指を向けて)「さっきも、こいつらには話したんだが、十中八九、野盗の裏で糸を引いてるのはアスラン商会だろうさ。お前さんがアスラン商会に足を運ぶってなら止めはせんが、おそらく、アスラン商会はこの野盗騒ぎが収まるまで隊商を出すことはないと思うぞ」
アゼル:
「そうなのか? じゃあ、アスラン商会に手を借りるわけにもいかないな……」
サブリ(GM):
やりとりを聞いていたサブリがアゼルにすがりつきます。
「頼むよ。俺の店と妻と娘が懸かってるんだ! 1ヶ月以内にクゼ・リマナに荷物を運ばないと破産しちまうんだ! 頼む! 報酬だったら1万銀貨は払う!」
セルダル(GM):
(アゼルに対して小声で)「1万銀貨だってよ。太っ腹だな」
アゼル:
「うーん……。手は貸してやりたいが……」
(少し考えてから)
「そうだ! 城塞騎士団に相談してみるのはどうだ?」
シシュマン(GM):
アゼルの提案に対し、シシュマンは首を横に振りました。
「アスラン商会と総督との癒着の噂は、お前さんも耳にしたことがあるんじゃないか? 総督の配下にある城塞騎士団に息が掛かっていないとは考えにくい」
アゼル:
そうだった……。
「そうか……。だが、いくら商売敵とは言っても、野盗をけしかけるというのは、だいぶあくどい話じゃないか」
シシュマン(GM):
「ああ。しかし、裏で何をしていたとしても、アスラン商会や城塞騎士団が、公に野盗との繋がりを認めることは絶対にないだろうな。もちろん、わしらとしては、すでに野盗に襲われたという事実がある以上、これを城塞騎士団に訴え、早急に対応してもらえるように掛け合う。だが、動いてくれるのは、おそらく――」サブリの方に目を向けてから「――手遅れになってからだろうさ」
アゼル:
それは悩ましいな……。アゼルは、泣きついてきた商人のことを思って、親身になって悩んでる。
「俺個人としてはこの商人に手を貸してやりたいが、俺ひとりで20人を相手にするのはさすがに無理だ……。ここにいる5人でも、20人はさすがに……。なんとかならないものか……」
セルダル(GM):
「ん? アゼル。まさか、お前、真正面から戦うつもりで考えてんのか?」
アゼル:
「いや、さすがにそれは無理だということくらいわかってる。せめてこちら側にもう少し戦力があれば……」
セルダル(GM):
「いや……。もう少し戦力があれば、とかじゃなくてよぉ……。もうちっと頭をつかって、夜襲をかけるだとか、敵を分断させるだとか……なんでそーいう風に考えねぇんだ?」
アゼル:
「夜襲!? そんな卑怯な真似はできん!」
イーサ&エルド:
(失笑)
エルド:
戦術云々を語る以前の問題ですね(笑)。
アゼル:
「生粋の戦士はそんなことしてはいけない。戦いの前には名乗りをあげなければ!」
イーサ:
本当にそんなこと言うのか?
アゼル:
もちろん!
セルダル(GM):
(呆れ顔で)「あー。それじゃ、きっと頭数揃えても勝てねぇわ。ホントにお前の頭はお勉強ができるだけで、肝心なところじゃ役に立たねぇのな」
アゼル:
「いや、どの物語を読んでも、本物の戦士は名乗りをあげているぞ!」
GM:
あの……。本当に書物に目を通しているのであれば、戦略・戦術についての知識も多少はあると思うのですが。たとえば、堅固な市壁を前に兵糧攻めを行うことなども、アゼルにとっては卑怯な行為ということになってしまうんですか?
アゼル:
どうなんだろう? 通常で考えたら卑怯だとは思わないのか? じゃあ、夜襲するのは気が進まないくらいにしておくか。
セルダル(GM):
「まあ、野盗と正々堂々と戦おうってなら、ここに居るだけの人数で20人を相手にすんのは無謀だわなぁ」
エルド:
「夜襲というのは面白そうですけどね」
アゼル:
そういえば、イスパルタは傭兵たちが集まる都市なんだよな。
「傭兵を募るってのはどうだ?」
サブリ(GM):
「そうか、その手があったな! よし、そうしよう!」
アゼルの提案にサブリはかしわ手を打って立ち上がりました。
シシュマン(GM):
しかし、そんなサブリの意気を挫くように、シシュマンが冷静な口調でこう言います。
「そいつは勧められんな。総督府に雇ってもらうためにここに集まってる傭兵達が、総督とつながりのあるアスラン商会に楯突くようなことをするとは思えん。それに、仮に協力してくれる者がいたとしても、そいつがアスラン商会に取り入るためにこっちの動きを流さないとも限らんぞ」
GM:
一応、断っておきますが、傭兵を雇ったり、要塞騎士団に野盗討伐をお願いしたりすることが不可能だというわけではないですよ。ただ、それを行った場合に発生しうるリスクを念頭において行動してくださいということです。
エルド:
「アルさん。たしか野盗の頭のことを知ってるって言ってましたよね? 頭を倒したら、野盗はどうなりますか? それで散り散りになりませんかね?」
アル(GM):
「ああ。カダのことだな。もし、そいつが俺の知ってるカダだとしたら、20人規模の野盗をまとめるだけのカリスマ性があるとは到底思えないんだよな。もしカダが頭であったとしても、それは雇われ頭に過ぎないんじゃないのか?」
エルド:
「ということは、カダを倒したとしても、その場で野盗が散り散りになることはないと……?」
アル(GM):
「そればかりは、やってみないことにはわからないが……」
アゼル:
「もし本当に裏で糸を引いてるのがアスラン商会だとしたら、野盗を討伐してもいろいろ問題が発生するんじゃないか?」
アル(GM):
「まあ、その場合、裏でどんな嫌がらせを仕掛けてくるかはわからないが、そもそも今回の件そのものが相当な嫌がらせだからな(苦笑)」
GM:
ここでいったん整理しましょう。
いま考えられる選択肢としては、まず、出発を1ヶ月延期するということ。それによって受けるペナルティは、ニルフェルの教育期間が1ヶ月減るということと、商人サブリが破産するということ。あと、必ずしも1ヶ月で野盗が消えるとは限らないというところにも注意が必要ですね。
次に考えられるのが、20人からの野盗を正面切って倒すという方法。PCにアルとセルダルを加えた5人で挑む場合、かなり厳しい戦いとなることが予想されます。かといって、傭兵を雇ったり、城塞騎士団に討伐を依頼するのには、こちらの動きがアスラン商会に筒抜けになるかもしれないといったリスクが伴います。なお、NPCが20人を越える戦闘処理はGMにとって苦行ですので、そのあたりは汲んでください(笑)。
もちろん、夜襲などの策によって野盗を倒していくという方法もあります。この場合、誰かが作戦を立てて、それを実践する人員を適材適所に割り当てる必要があります。
あと、ここまでの会話の中には出てきませんでしたが、野盗を避けてカルカヴァンを目指すという選択肢もありますね。当然、街道を離れて進んだ場合、野生生物と遭遇したり、遭難したりする危険性が高まりますが……。
さあ、そろそろ結論を出しましょう。