LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(20)

エルド:
 偵察に出る前に、黒魔法の入れ替えを行いたいんですけど、構いませんか?

GM:
 いいですよ。“スペル・ムーブ”を使って精神点を消費しておいてください。

 LOSTの魔法はスペルリングと呼ばれる記憶媒体の中に保存しておくことで利用できます。しかし、スペルリングの容量には限りがあるため、収まりきらない魔法に関しては、スペルブックの中に保存しておくことになります。“スペル・ムーブ”の魔法を使うことで、このスペルリングとスペルブックの中に保存されている魔法を入れ替えることができるのです。

 なお、白魔法と黒魔法では、異なるスペルリングとスペルブックを用いる必要があり、それぞれホワイトとブラックを冠して称されます。

エルド:
 それでは、ブラック・スペルリングから“バインディング”を外して、代わりに“プロテクション”と“エネルギー・ボルト”を記憶させておきます。これでブラック・スペルリングの容量制限ぴったりです。

アゼル:
 魔法使いはたいへんだな。俺は何もないから楽チンだ。これが戦士系一本伸ばしの良いところ。

イーサ:
 それは自慢げに言うことでもないだろ(苦笑)。

エルド:
「あの……。もし僕たちが3日で帰ってこられなかった場合にはどうなりますか?」

アル(GM):
「そのときには、最悪の事態になったと判断して諦める」

エルド:
 え(汗)? 何か救出行動を起こしてもらえるわけではないんですね(笑)?

アゼル:
 もしものときには、エルドとセルダルは死んだと思えってことか……。

アル(GM):
「残った俺たちだけではどうしようもないからな。そのときには、城塞騎士団が動いてくれるのを待つほかない。悪いがそのつもりで、くれぐれも深入りして敵に捕まらないよう気をつけてくれ」

エルド:
「……わかりました」

セルダル(GM):
「結構厳しそうだな。せいぜい慎重に行こーぜ!」そう言ってセルダルはエルドに真剣な眼差しを向けました。

エルド:
「そうですね。ですが、時間が限られています。あまり慎重になりすぎては、得られるものも得られなくなってしまいますので、そこら辺は兼ね合いを見て的確に行動しましょう」

セルダル(GM):
「オッケーだ。んで、出発前に聞いておきてぇんだがよ、具体的にはどんな手を使って情報を集めるつもりなんだ?」

エルド:
「そうですね。アジトの特定はセルダルさんにお任せするとして、場所さえ特定できれば、そのときは僕がひとりで潜入してきますよ」

セルダル(GM):
「中に潜入するだって!?」
 セルダルは目を剥いてエルドを見ました。

エルド:
「ええ。変装して野盗たちの中に入り込んでみるつもりです」

アゼル:
 そこまでやる気なのか。凄いな。

セルダル(GM):
「それって、かなりやべぇんじゃねぇか?」

エルド:
「頼まれた情報を短期間で集めようとすれば、多少の危険はやむを得ないですからね」

セルダル(GM):
「そりゃそーだけどよ。変装するったって、20人そこらの数なら、奴らも互いに顔がわかってんじゃねぇか?」

エルド:
「ええ。ですから新入り希望ということで正面から入ってみようかなと」

アゼル:
「……それはさすがに難しいんじゃないか?」

アル(GM):
「ふむ。そういうときは、相手の立場にたって考えてみるんだな。お前たちが20人の部下を率いる一団の頭だったとして、突然見知らぬ奴が新入りとして仲間に加えて欲しいといってきたらどうする?」

アゼル:
「まあ、ある程度の身辺調査はするだろうな……。ましてや野盗の一団なら、なお慎重にするんじゃなかろうか?」

アル(GM):
「そうだな。もし俺がその立場だったら、新入りの身包みを剥いだ状態で、数ヶ月は誰かしらの目が届く範囲で下働きをさせるだろうな。もちろん、魔法の発導体を持たせておくなんてもってのほかだ。その後しばらくして、信用できそうな奴だと十分に判断できたなら、そこでようやくほかの連中と同様に扱い始める」

アゼル:
「やはり、仲間の紹介もなしに入り込むのは難しいんじゃないか?」

エルド:
「うーん。イーサさんはどう思います?」

イーサ:
「……野盗の戦力と行動パターンを探るだけなら、奴らの仲間になったふりをしなくてもなんとかなるんじゃないか? だいたい、そこまで命懸けでやる義理もないだろ」

アゼル:
 ちなみに、変装ってどこまでのことができるんだ?

GM:
 自分の正体をごまかすことはできますが、特定の誰かに成りすますことはできません。魔法の中にはそういった効果があるものもありますけどね。

エルド:
「わかりました。では、直接接触するのは避けることにします」

セルダル(GM):
「まぁ、そうしたほーがよさそーだな。だが、人は見かけによらねぇな。オマエが斥候任務に長けてるなんて――」

エルド:
「まあ、いろいろとあるんですよ……。それよりも、セルダルさん。あなたが良ければ早速出発しましょう」

セルダル(GM):
「そーだな」そう言ってセルダルはいったん商人ギルドの寄り合い所をあとにしようとするのですが、何かに気がついてアゼルの方を振り返えりました。
「あっ、そーだ。忘れるとこだった。アゼル。オマエ、さっき傭兵を雇えないかとか言ってたよな?」

アゼル:
「ああ。それがどうかしたか?」

セルダル(GM):
「ひとつ、いいことを思いついたぞ。オレたちが偵察に出てる間に、今回のことをオヤジに話してみてくれ。もしかすっと、オヤジだったら他言無用で協力してくれんじゃねぇかな?」

アゼル:
「なるほど! そうかもしれないな! わかった。そっちは任せろ」

GM:
 こうして、エルドとセルダルは野盗の情報を集めるべく、商人ギルドの寄り合い所をあとにしたのでした。




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