LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(21)

アル(GM):
「それじゃ、俺は戦いに備えて、剣の手入れでもしておくとするか……」

アゼル:
「俺は師匠のところにいって、手助けしてもらえるように頼んでくる。イーサ。暇なら一緒についてきてくれないか?」

イーサ:
「ん? 俺?」

アゼル:
「うまく説明できそうにないときにはフォローしてくれ」

イーサ:
「まあ、いいが……」

GM:
 それでは、アゼルとイーサの二人はイスパルタ市壁の外に出ると、ジャナンの家を訪れました。

イーサ:
 知らない人の家なのに、なんか訪問しちゃってるよ……。

アゼル:
 ゴンゴン、と家の戸を叩いた。
「師匠!」

ジャナン(GM):
 すぐに扉が開いてジャナンが姿を見せました。
「おお、アゼルか。どうした?」

アゼル:
「実は、たいへんなことになってしまいまして……」

ジャナン(GM):
 ジャナンの目線はアゼルの隣にいるイーサのほうへと向けられます。

イーサ:
「どうも」

ジャナン(GM):
「そちらの方は?」

アゼル:
「まずは状況の説明から――」

イーサ:
 俺のこと聞かれてるのに紹介してくれないのかよ(苦笑)。

GM:
(苦笑)

ジャナン(GM):
「……まあ、立ち話もなんだ。とりあえず入ってくれ」

GM:
 ジャナンに促されて家の中に入ってみると、一目でその貧しい生活ぶりが見て取れます。飾り気のある物は一切置かれておらず、年季の入った机や椅子はボロボロで、乱暴に力を加えたら壊れてしまいそうです。

ジャナン(GM):
「何も出せるものがなくてすまんな」

イーサ:
「いえ、お構いなく……」(アゼルの方を向いて)「なあ、アゼル。ひとまず、俺のことを紹介をしてくれないか?」

アゼル:
「あ、ああ。彼は隊商の……仲間になったイーサで……えーと。あー」
 うまく説明できんッ!

イーサ:
(ため息をついて)「自分は、イスパルタからカルカヴァンに向けて出る予定の隊商で彼と一緒に護衛を務めることになったイーサです」

ジャナン(GM):
「ほう。隊商の護衛か。俺は、こいつとセルダルに剣を教えている。ジャナンだ。セルダルは俺の息子なんだがな。で、お前たちの用件というのは、さっき、セルダルが慌てて出て行ったことと関係があるのか?」

アゼル:
「そうなんです! 野盗がでて、隊商が襲われて……」
 えー、何て説明すればいいんだ?
「それがどうやら、アスラン商会絡みなのですが……」
 だめだ、複雑すぎるッ!

イーサ:
 アゼルって最初からそんなお馬鹿っぽい感じだったっけ?

アゼル:
 違う! 違うんだが……。もう、アゼルはプレイヤーの影響で完全に馬鹿路線に突入しちまってる(苦笑)!

イーサ&シーン外のエルド:
(苦笑)

アゼル:
「とにかく、師匠の手を貸して欲しいんです!」

ジャナン(GM):
「まあ、おちつけ。……とりあえず、俺に一体何をして欲しいのか具体的に言ってみろ」

アゼル:
「野盗退治の戦力として協力してください!」

ジャナン(GM):
「野盗退治?」

イーサ:
「イスパルタ周辺に野盗が出没し、カルカヴァン方面から向かってきていた隊商を襲ったんですよ。その野盗のせいで、俺たちが護衛を務めるはずの隊商の出発も延期されそうになっていて……。隊商の参加者たちは、その大部分が出発延期の決定に賛同したんですが、ひとりだけ猛反対した商人がいまして、なんでもある期日までに荷物を運べないと破産するそうなんです。その商人を助けるために、野盗を退治して、さっさと出発しなくちゃならないって話になってるってわけで」

アゼル:
「――そういうことです!」

ジャナン(GM):
「だったら、城塞騎士団に討伐依頼をだしたらどうだ?」

アゼル:
「それが、どうもアスラン商会絡みらしくて……。さっき言った商人はアスラン商会から莫大な借金をしていて、野盗を裏で操ってるのはアスラン商会らしくて……」

ジャナン(GM):
「あー」(要領を得ない説明に頭を押さえつつ)「つまり、野盗にアスラン商会の息がかかっているなら、同じくアスラン商会の息がかかった城塞騎士団も動きはしないだろうという話だな?」

アゼル:
「そうです! そうなんです!」

ジャナン(GM):
「だから、お前たちは自分たちだけで野盗を倒すことに決め、その頭数として俺の協力も仰げないかと考えたわけだ」

アゼル:
「はい! はい! はい! さすが、師匠ッ!」
 判ってくれる師匠でよかった。
「そしてですね。今、セルダルともうひとりのエルドという男が野盗たちの偵察にでているんです」

ジャナン(GM):
「ふむ……」
 話を聞いたジャナンは、少し考えてからこう聞き返します。
「その野盗退治、お前たちだけでは難しそうなのか?」

アゼル:
「野盗は20人以上いるようなので……」

ジャナン(GM):
「こう言うのもなんだが、俺にも生活がある。お前も判っているだろうが、この土地で暮らしていくのに、アスラン商会を敵に回すというのは賢い選択とは言えない。アスラン商会に楯突いたことが噂にでもなれば、日雇いの仕事もまわして貰えなくなるだろう。かといって、この年になってよその土地で暮らすというのもな……」

アゼル:
「そうですね……」

ジャナン(GM):
(肩を落とすアゼルをしばらく見てから)
「……だが、お前たちの力になってやりたいとは思う。お前たちがその野盗の討伐に向かうのはいつごろだ?」

アゼル:
「偵察に出ているエルドとセルダルが戻ってくるのは明後日ということになっています。彼らが戻ってきてから対策を練るので、それ以降になるかと……」

ジャナン(GM):
「そうか……それならば……俺自身が力を貸してやることはできないが、野盗討伐までの間に、知り合いに声をかけておこう。そいつを明後日、商人ギルドの寄り合い所に向かわせればいいか?」

アゼル:
「ぜひ、よろしくお願いします!」

ジャナン(GM):
「直接力を貸してやれなくて済まないな」

アゼル:
「いえ、こちらも自分勝手なお願いをしていることは重々承知しています。ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ありません」

GM:
 ということで、何とかジャナンの知り合いの協力を取り付けることができました。

アゼル:
 早速、寄り合い所に戻って、アルさんにこのことを報告しておくか。……それにしてもグダグダになってしまった。

イーサ:
 本当にな(苦笑)。




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