LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(24)

GM:
 さて、セルダルと別行動を取ることとなったエルドは、再びイスタスの市壁へと取り付きました。夜の暗闇の中、廃墟となった街の中心に松明のものらしき灯りが3つ浮かび、時折、馬のいななきが聞こえてきます。市壁近くに人の気配は感じられません。

エルド:
 市壁を乗り越えて、身を隠せるような建物の影に移動します。(コロコロ)“潜伏”の達成値は9です。

GM:
 特に問題なく建物の影に移動できました。

エルド:
 この街の建物はどれくらい原形をとどめているんですか?

GM:
 イスタスの街並みで現在も残っているのは石と土で作られた建物であり、例外なく風雨による侵食の跡が見られます。また、中には天井が崩れてしまっているものもあります。身を隠すために選ぶ建物は、基本的に崩れ落ちていないものだと考えてください。

エルド:
 では、街の中心方面に向かいながら、昼夜潜伏していられそうな建屋を探します。

GM:
 市壁内は建物が密集しているため、身を隠せそうな建物はいくつも見つかります。中心部からどれくらい離れた建物に潜伏しますか? その距離によって得られる情報量と隠れる難易度を設定します。

エルド:
 夜間、100メートル先を見通すことはできますか?

GM:
 さすがにそれは難しいです。もちろん、100メートル先に明かりがついていればそのことには気づけますが、それでもそこで誰が何をしているかということまでは見えません。ちなみに、松明で照らせる範囲は12メートルです。

エルド:
 なるほど。それなら、ここは攻めてみましょう。中央の建物から50メートル範囲で潜伏できる場所があるかを探して見ます。

GM:
 おッ! 結構厳しいところまで詰め寄ってきますね。それくらい街の中心部に迫ってくるのであれば、その分建物も密集していますから潜伏に適したところもみつかることでしょう。そのかわり、その建物の中に隠れるまでに発見される確率も高いですからね。そこに行くまでに何か魔法を使っておきますか?

エルド:
 うーん、あまり効果的なものがないので魔法は控えておきます。

GM:
 了解しました。ならば、潜伏判定を行ってください。ここからは、周囲を警戒している相手の存在が明らかなので、目標値を先に明示しておきます。(コロコロ)目標値は10です。

エルド:
(コロコロ……出目は1ゾロ)うッ!

シーン外のアゼル&イーサ:
 あちゃー!

GM:
 ここで1ゾロですか(苦笑)。では、スカウト技能の累積経験点に10点を加えておいてください。

シーン外のアゼル:
 今日はダイスの神様に嫌われてるなぁ。

エルド:
 これ、見つかってしまいますよね?

GM:
 もちろんです。もし見つかりたくなければ、“可能性”を消費して再判定を行うしかありません。

エルド:
 うーん、仕方ないです。ここで見つかってしまっては情報収集できなくなってしまいますから。“可能性”を使って判定をやり直します。(コロコロ……出目は6ゾロ)自動成功!

一同:
(爆笑)

GM:
 極端だなぁ(笑)! 今度はスカウト技能の累積経験点に50点加算してください。

エルド:
 バンバン経験点が増えていきますね(笑)。

GM:
 そうすると、エルドはちょうど潜伏するのに良さそうな建物を見つけました。そして、その建物の中に入ろうとしたエルドは運悪く瓦礫に足をとられて転倒しそうになったのですが、とっさに猫のように身を回転させることで物音なく着地すると、そのまま建物の中に飛び込んでいきました。その軽やかな動きにより、エルドの存在が野盗の見張りたちに気取られることはありませんでした。

エルド:
 さすがは6ゾロの動き!

 このシーンではインパクトのある数奇なダイス目でしたので、GM側で動きを補足してみました。ここではGMが描写しましたが、もちろん本来であればPCの動きはプレイヤーが描写するものです。印象的なシーンが発生したのであれば、そこに描写を入れることで、さらに参加者全員のイメージ共有を図れます。プレイングに余裕がでてきたら、テンポを乱さない程度にPCの行動描写を試みてみましょう。

エルド:
 無事に建物の中に入れたなら、街の中心部を観察しやすい場所を探して移動します。

GM:
 あなたが入り込んだ建物は2階建てで、2階の部屋の窓からは中央にある建物が良く見えます。中央にある建物はこんな感じです(と言って戦闘用マップを公開する)。

イスタス中央砦戦闘用マップ

GM:
 その外観は砦と称したほうがふさわしいかもしれませんね。高台の上に建てられたこの街一番の大きさを誇る建造物です。先ほどから見えていた松明の光は、その砦の屋上に居る3人の見張りが掲げたものでした。また、見張りのうちひとりは弓のようなものを手に持っているようです。

エルド:
 街の中心部から聞こえていた馬のいななきは砦の中から聞こえてきているんですか?

GM:
 いいえ。砦自体ではなく、その周辺から聞こえてきます。どうやら、一箇所からではなく、いくつかの場所から聞こえてくるようです。

エルド:
 馬のいななきの方向を特定して、その近くまで移動することは出来ますか?

GM:
 馬のいななきはハッキリと聞こえるので方向の特定に判定は必要ありません。そこにたどり着けるかどうかは、潜伏判定の結果次第ですね。ただし、先ほどと同じく判定に失敗したら、野盗の見張りに見つかってしまいますよ?

エルド:
 かまいません。馬の居るところまで向かってみます。

シーン外のアゼル:
 凄いな。そこまでの危険を冒すか。

シーン外のイーサ:
 まあ、それが斥候の役目だからな。

GM:
 では……。(コロコロ)目標値は9です。

エルド:
 さっきよりは楽ですね。(コロコロ)達成値10で成功です。

GM:
 ならば、エルドはもっとも近くにある馬が入れられた建物の陰まで移動することに成功しました。その建物は馬小屋というわけではなく、昔は普通の民家として使われていた建物のようです。

エルド:
 その建物の周囲に見張りは居ますか?

GM:
聞き耳判定を(コロコロ)目標値6でどうぞ。

エルド:
(コロコロ)達成値は9です。

GM:
 建物の中からは、ゴシゴシゴシという音と、「どーどー」という人の声が聞こえました。

エルド:
 その建物に窓があれば、そこから中を覗き込んでみます。

GM:
 それは中に居る人物に気がつかれないかどうかの潜伏判定が必要ですね。(コロコロ)目標値は5です。

エルド:
(コロコロ)達成値は9です。

GM:
 エルドが建物の中を覗き込むと、馬が4頭とその世話をしている人がひとり確認できます。馬の世話をしている人は、薄汚れたボロボロの布をまとっています。馬の世話をするのに集中しているようで、あなたが覗いているのには気がついていません。

エルド:
 周囲から聞こえてくる馬のいななき声からすると、ほかにも同じような建物がある感じですか?

GM:
 そうですね。おそらく、ひとつやふたつではないでしょう。

エルド:
 さすがに全部回るのは難しそうですね。仕方ないですから、先ほどの潜伏場所に戻ります。

GM:
 いま直ぐ戻りますか?

エルド:
 ……? 直ぐ戻ります。

GM:
 ならば、潜伏判定を目標値(コロコロ)9でどうぞ。

エルド:
(コロコロ)達成値は13です。

GM:
 では、エルドは再び闇夜に乗じて無事に潜伏場所まで戻ってきました。

エルド:
 ここからは腰をすえて野盗たちの行動を監視することにします。

GM:
 現在は午後9時ごろですが、監視のスケジュールはどのようにしますか? 途中で3時間の睡眠をとっておかないと疲労度が累積してしまいますけど。

エルド:
 では、日が変わるまでの3時間監視を続けたあと、次の3時間で睡眠をとって、後は撤収するまで監視を続けることにします。

GM:
 了解です。ならばまず、3時間の睡眠をとったことによる精神点の自然回復判定を行っておきましょう。環境ランクは馬小屋レベルの3ですね。

 LOSTでは、3時間以上の睡眠をとることで精神点が、6時間以上の睡眠をとることで生命点が自然回復していきます。ただし、その回復速度は睡眠をとる場所の環境によって増減します。もちろん、馬小屋程度の環境では大した回復は期待できません。ですので、ここでの睡眠はあくまで疲労の蓄積を抑えるためのもの……だったはずですが。

エルド:
 精神点の回復量は……。(コロコロ)なんでここで6ゾロなんですかね(笑)。

GM:
 では、精神点を2点回復させてください。この環境で熟睡できるとは、エルドはなかなかず太い神経の持ち主のようですね(笑)。
 続いて、《スカウト技能レベル+知力ボーナス+2D》で、潜伏期間中にどこまで情報を収集できたかの判定を行います。目標値は10・12・14の3段階で、達成値が高いほど詳細な情報を得られたことにします。

エルド:
(コロコロ)達成値は14です。

GM:
 素晴らしい働きですね! ならば、まず夜間に確認できたことをお伝えします。どうやら、見張りは3時間ごとに交代しているようです。見張りの人数は常に3人で、重戦士と軽戦士と弓兵で構成されていました。

エルド:
 見張りの交代時、警戒は疎かになりませんか?

GM:
 なっているでしょうね。あと、先ほど馬の面倒を見ていた者と同じような格好をした者が合計5人、その手に木の桶やブラシや布切れを持って、高台の階段を行き来していました。

エルド:
 馬の世話をしているんでしょうが、馬小屋代わりの建物も5つなんでしょうかね?

GM:
 さあ、どうでしょう?
 続いて昼間に確認できたことですが、軽戦士と弓兵が2人1組で3組ほど砦から出てくると馬に乗ってイスタスの外へと出て行きました。その後、この者たちが3時間ほどで戻ってくると、それからさらに1時間ほどの間を置いて別の2人組みが出て行くといった流れを繰り返しているようでした。また、それとは別に重戦士の2人組みが水袋を大量に括りつけた4頭の馬を連れてイスタスの外へと出て行き、こちらは2時間ほどで戻ってきて、入れ替わりに別の2人組みが出て行くようでした。

エルド:
 周辺の偵察と水の補充ですかね……。

GM:
 あと、昼間に数度、偉そうに声を荒げて、べらんめえ口調でほかの野盗たちに命令を飛ばす男の姿も確認できました。遠目ではありますが、心なしか鼻が曲がっているように見えます。

エルド:
 あれが、鼻曲がりのカダですか……。それに対するほかの野盗の反応はどんな感じですか?

GM:
 頭をペコペコ下げて服従しているように見えますね。
 加えて、それら定期的に行われていることとは別に、あなたが潜伏している間に発生した出来事があります。それは潜伏を開始して2日目の夜のことです。夜間、砦の屋上に立つ見張りの3人とは別に、正面入口から2人の人物が外に出てきました。そして、ちょうどエルドが潜伏している建物の近くまで歩いてきます。2人のうち、一方は金属鎧を装備しており、かすかながらも金属のぶつかる音が聞こえます。ここで目標値12の聞き耳判定を行ってみてください。

エルド:
(コロコロ)達成値は11です。

GM:
 それでは、壁の向こうにいる2人が小声でなにやら話し始めたのですが、あなたにはところどころしか聞き取れませんでした。

野盗の声(GM):
「……ダットさん。……は……っすよ」

ダットと呼ばれた男の声(GM):
「まあ、そう言うな。いずれ……だ」

野盗の声(GM):
「……から、頼みますよ。ダットさん。俺ら……」

ダットの声(GM):
「任せておけ。……の……は……だからな」

野盗の声(GM):
「ダットさんが……なら……の件は……しやす」

GM:
 そのような会話をしばらく続けると、2人は再び砦の中へと戻っていきました。

エルド:
 うわぁ。失敗しましたね。いまの会話は聞いておきたかったところでした……。

GM:
 あなたが潜伏中に得られた情報は以上です。そして、3日目の午前2時をまわり、脱出予定の時間となりました。すぐに撤収しますか? それともしばらく待ちますか?

エルド:
 待つって何をですか?

GM:
 まあ、ここまで来たらはっきり言ってしまって構わないでしょう。見張りの交代タイミングまで待ちますか?

エルド:
 あー(納得)。それでは、交代のタイミングを見計らって撤収します。

GM:
 了解です。潜伏判定に成功すれば、気づかれることなく撤収できます。交代のタイミングを見計らうということなので、見張り側には-2のペナルティを与えて……。(コロコロ)目標値は9です。

エルド:
 えー! せっかく、交代タイミングまで待ったのに、これまでとさして変わらないじゃないですか(笑)。納得いきませんねぇ。(コロコロ)達成値は10!

GM:
 ほら、見張りの交代を待って正解だったじゃないですか。交代を待っていなければペナルティがなくなって目標値11で判定に失敗していましたよ(笑)。
 こうして、なんとかエルドは野盗に見つかることなく、無事にイスタスの外まで出ることができました。

エルド:
 そのまま、セルダルさんとの合流地点まで向かいます。で、目印の岩場まで来たところでクサビを2つ取り出し、それを打ち鳴らして金属音を響かせます。

セルダル(GM):
 そうすると、隠れていたセルダルが姿をみせ、「終わったか?」と声を掛けてきました。

エルド:
「はい。とりあえず、イスパルタに急ぎましょう」

GM:
 こうしてイスパルタへと帰還するのですが、イスパルタまでの距離は20キロ。この3日間、天候は変わらず晴天。行軍速度はどうしますか?

エルド:
 最速の疾走で向かいます。

GM:
 疲労の蓄積でペナルティが発生しますけど、よろしいですか? それに、疾走でイスパルタに向かうとなると、市門が開く前に到着して待たされることになりますよ?

エルド:
 ああ、市門が開いてからじゃないと街の中に入れないんですね……。では、通常速度でイスパルタに向かいます。到着予定時刻は、午前9時ごろですね。

GM:
 了解です。街道沿いを20キロ。イスパルタに向けて進みます。遭遇判定を2回行ってください。

エルド:
 (コロコロ)遭遇せず。

セルダル(GM):
 移動中、セルダルが話しかけてきます。
「そっちの首尾はどーだった?」

エルド:
 知り得た情報をすべて伝えます。

セルダル(GM):
「そーか……。オレのほーは偵察に出てくる奴らを確認した。街道を東と西、あと南の砂漠方面に、それぞれ2騎ずつ出てた。それ以外にも水袋を大量にぶら提げた馬を4頭連れて北上する奴らも見かけてな。あとで足跡をたどってみたら、北に5キロほど進んだところに泉があった。どーやら、奴らはそこで水を補給してるみてぇだな」

エルド:
「なるほど。情報収集の成果としては十分でしょう」

GM:
 はい。というわけで、以上がエルドとセルダルの2人による偵察の全容でした。

シーン外のアゼル:
 なんだかんだで上手くいったな。身を隠すのに失敗したところで、セルダルあたりはお亡くなりになるかと思ってたんだが。

エルド:
 あそこで見つかっていたとしても、戦って倒すだけなら十分いけたと思いますよ。ただし、その場合は戦闘直後に帰らざるを得なくなって、情報をほとんど入手できていなかったでしょうけどね(笑)。




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