LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(26)

GM:
 さて、一行は水汲みの泉へ向かうわけですが、野盗にその動きを察知させないために、街道を離れて進むことになります。移動速度はどうしますか?

アゼル:
 疲労は溜まるが、駆け足で向かおう。多少の疲れは泉に到着してから休憩して回復させればいい。

GM:
 了解しました。では20キロ移動する分の遭遇判定をどうぞ。

アゼル:
(コロコロ)遭遇せず。

GM:
 では、野生生物と遭遇することなく、14時過ぎには泉に到着することができました。あと、問題なのは野盗側の水汲みのタイミングです。野盗と鉢合わになる可能性もあるわけですからね。野盗の水汲みのタイミングは1Dを振って決めましょう。1の目がでたら鉢合わせ。目がひとつ違う毎に30分のズレが発生するものとします。

アゼル:
 疲労が溜まったまま戦闘になるのは困るな……。1以外で! (コロコロ……出目は3)セーフ!

GM:
 そうすると、あなたたちが泉に到着してから1時間後に水汲み部隊が現れます。それまで休憩を取ったことにして、疲労を2点回復させてかまいません。ちなみに、泉周辺はこんな感じです(と言って戦闘マップを公開する)。

泉周辺戦闘用マップ

 無事に泉に陣取ることができた一行は、少し離れた草むらの陰(戦闘マップの左上)に潜伏して野盗の水汲み部隊を待ち伏せすることにしました。そうとは知らない水汲み部隊が泉へと近づいてきます。

GM:
 馬の蹄の音を響かせて野盗が姿を現しました。(コロコロ)どうやら、あなたたちが隠れていることにはまだ気がついていないようです。馬にまたがる男2人はどちらも重戦士のようで、硬革鎧を身に付けていて、腰からは大振りの片手剣を提げています。

重戦士A(GM):
「はぁ……。水汲みに来るのも楽じゃねぇな」

重戦士B(GM):
「そうは言っても、あの廃墟にずっと居るよりはマシだろ? あそこにいると息苦しくてたまんねぇよ……。せっかくだ、息抜きに軽くひと泳ぎしてくか?」

アゼル:
 おお、そいつは好都合!

重戦士A(GM):
「いや、やめとこう――」

一同:
(爆笑)

アゼル:
 しまった。余計なことを言うんじゃなかった(笑)。

重戦士A(GM):
「戻るのが遅れると、またカダの野郎にどやされる」

重戦士B(GM):
「ああ。それもそうだな」

GM:
 野盗たちは馬から下りると、馬4頭を泉のほとりに並べて水を飲ませ始めました。そして、自分たちは馬の背から括り付けられた水袋を外し、それに水を汲み始めます。

重戦士A(GM):
「しっかし、この陽気じゃ、何度水汲みに来たってすぐに底をついちまうな」

重戦士B(GM):
「まったくだ。雨でも降ってくれりゃ、少しは楽になるんだがなぁ……」

アゼル:
(仲間たちにだけ聞こえるように小声で)「よし、奴ら、完全に油断してるな。いまがチャンスだ! 一気にカタをつけるぞ!」

エルド:
「あの……僕は後方に控えていますからね」

アゼル:
「うーん、そうだな……。間違っても、あいつらを逃がすわけにはいかないからな。それじゃ、もしものときのフォローを頼む」

アル(GM):
「それならば、俺も退路を絶つ役目につこう」

ナン(GM):
 ナンもアルの言葉に付き合うとばかりに自分を指差してうなずきます。

GM:
 アルとナンがあなた達の出番を奪ってしまっても面白みに欠けますから、今回の戦闘では後方待機させてもらいます。かなり一方的な戦力比の戦闘なんで、本当は勝ったことにして戦闘処理を飛ばしてしまっても構わないのですが、これまでまだ戦闘らしい戦闘もしてこなかったので、ここはチュートリアルの意味合いも兼ねて戦闘してみましょう。

アゼル:
 了解。
「では、うしろは任せた!」

 潜伏状態から敵を強襲したことで不意打ち判定が適用され、この判定に成功したアゼルたちは敵に気づかれることなく包囲網を展開し、敵の背後から攻撃を仕掛けることができました。不意打ちの効果中であれば、敵に気づかれることなく、背後から致命的な攻撃を加えることができます。数でも勝り、楽勝ムードが漂う戦闘ですが、アゼルとセルダルにとってはこれが始めての実戦です。せっかくなので、初陣を飾る若者の初々しさを演出することにしました。

セルダル(GM):
 では、先陣を切ってセルダルが敵の背後に走りよろうとするんですが、その際つい雄叫びを上げてしまうかも知れませんね。ダイスの神様に委ねてみましょう。2Dで7以下が出てしまったらたら昂ぶる気持ちを抑えられなかったということで……。(コロコロ)
「うおぉぉぉッ!」

一同:
(爆笑)

重戦士A&重戦士B(GM):
 その雄たけびを耳にして、野盗たちは襲撃を察知しました。

 初陣で浮き足立っていたセルダルは、背後から斬り付ける絶好の機会を潰してしまいます。しかし、セルダルもただの素人ではありません。不意をつくことには失敗してしまったものの、攻撃そのものでは見事クリティカルヒットをたたき出し、一撃で重戦士Bを戦意喪失させることに成功しました。

 なお、LOSTでは、現生命点が最大値の半分未満になるか、友軍戦力が最大数の半分以下になると士気判定が必要となり、それに失敗すると戦意喪失してしまうといったルールを採用しています。

重戦士A(GM):
 早速ひとりが戦意喪失してしまいましたが、もうひとりは徹底抗戦の構えです。
「き、貴様ら何者だッ! 来るなら来て見やがれッ! 返り討ちにしてやるッ!」

イーサ:
「無駄な抵抗は止せ。抵抗しなければ殺しはしない」

アゼル:
 俺も隣接して剣先を突きつけて睨みつけよう。

重戦士A(GM):
「ふざけるなッ!」と叫びつつ正面に立っているアゼルに斬りつけます。(コロコロ)命中値は13。

アゼル:
 やれやれ。勝負は決してるんだけどな……。“ディフレクト”で防御。(コロコロ)あッ……。防御失敗(汗)。

重戦士A(GM):
 肝心のダメージは7点です。

アゼル:
 お、セーフ。それはチェイン・メイルで防ぎきった。

イーサ:
「抵抗しても無駄だということはわかっただろう!? 武器を捨てて投降しろッ!」

アゼル:
「そうだぞ! 降参する気がないのなら!」そう言って刃を見せて警告するが……。

 圧倒的に有利な立場にあると感じたアゼルとイーサは攻撃することをためらい、このあとも敵に何度か攻撃する機会を与えてしまいます。幸いにも野盗の攻撃が2人を傷つけることはなく、已む無く反撃したアゼルとイーサの前に野盗はアッサリと倒されてしまいましたが、戦意喪失しておらず、かつ攻撃手段が健在な相手に対して、この判断はちょっと甘かったかもしれません。

GM:
 イーサの攻撃によって重戦士Aが倒れたところで戦闘終了です。

アゼル:
 なんというか、まるで手ごたえがなかったな(苦笑)。

GM:
 まあ、カダの配下に甘んじる程度の、ただのならず者ですからね。ジャナンから10年以上も剣の指導を受けてきたアゼルの敵ではありませんよ。

アゼル:
 たしかにそうなんだろうけど、だったら、俺たちのこれまでの警戒はなんだったんだろうって……。

イーサ&エルド:
(苦笑)

GM:
 好意的に解釈すれば、これまで実戦経験がなかったために自分たちの力量を計りかねていた……といったところでしょうね(苦笑)。

重戦士B(GM):
 さて、戦闘が終わると、早々に降伏した重戦士Bが命乞いしてきます。
「命だけは助けてくれ……。馬が欲しいならくれてやる。好きなだけもっていってくれ……。だが、馬以外に金になりそうなもんは、ここにはねぇ」

イーサ:
「なるほど、金目のもんか……。実は、俺たちは商人に護衛を依頼されててな――」

アゼル:
(イーサの言葉に割って入って)「俺たちの情報を教えてやる必要はないだろ。それよりも、こっちの質問に洗いざらい答えてもらおう」と言って剣先を突きつける。

重戦士B(GM):
「わかった。だが、まず倒れてる仲間を助けてやってくれ。それとも、もう死んじまったのか?」

イーサ:
 重戦士Aは昏倒してるだけだよな。“キュア・ウーンズ”で癒してやろう。(コロコロ)生命点を4点回復。

アゼル:
 一応、野盗2人はロープで縛り上げておくぞ。
「さて、それじゃ質問だ――」

重戦士B(GM):
「いいだろう……。いったい何が知りたい?」

重戦士A(GM):
 目を醒ました重戦士Aが情報をリークしようとしている重戦士Bを制止しようとます。
「よせッ! 言うんじゃないッ!」

アゼル:
 じゃあ、重戦士Aを拳で殴りつけて黙らせよう。

イーサ:
 えッ? 脅すのはいいが、殴るのはアゼルのキャラクター性としてどうなんだ? こういう尋問とかは俺のほうで担当するぞ。

アゼル:
 うっ……。たしかにその通りだな……。じゃあ、代わりに頼む。

イーサ:
 なら、俺がアゼルのかわりに重戦士Aを殴って黙らせた。
「それじゃ、あらためて聞かせてもらおう。お前たちはイスタスを根城にしている野盗だな?」

重戦士B(GM):
「……そうだ」

イーサ:
「お前たちの仲間は何人いる? その戦力を教えてもらおう」

重戦士B(GM):
「全員で25人だ。重戦士が7人、軽戦士が7人、弓兵が6人、下働きが5人……」そう言って男は目線を地面へと落としました。

イーサ:
「お前たちの頭はカダという男だな?」

重戦士B(GM):
「そうだ……」

イーサ:
「それと、ダットという男がお前たちの中にいるな? その男はどんな奴だ?」

重戦士B(GM):
「ダットという名の男はいるが……どんな奴だとは? お前らはダットのことを知っているのか?」

エルド:
「まあ、名前を耳にしたことがあるもので……。あなたたちの中で、金属鎧を着ているのはダットさんだけですよね?」

重戦士B(GM):
「たしかに俺たちの中で金属鎧をつけているのはダットだけだが」

エルド:
「あなたの仲間にそのダットさんと特に仲の良い人はいますか?」

重戦士B(GM):
「……いったい何の話だ?」

エルド:
 手に持った杖で野盗の顔を殴りつけます。

アゼル&イーサ:
 !?

エルド:
「もう一度伺います。ダットさんと仲の良い人物の心当たりはありませんか?」

重戦士B(GM):
「そ、そんなこと言われても、知らねぇもんは知らねぇよ!」

エルド:
 口のききかたがわかっていないようなので、もう一度殴りつけます。

重戦士B(GM):
「ぎゃッ!」(怯えた様子で)「わからねぇ……本当にわからねぇんだよ……」

アゼル:
「どうやら嘘はついてなさそうだ。質問を変えよう。お前たちの雇い主は?」

重戦士B(GM):
「雇い主? 頭をはってるのはカダだが……」

アゼル:
「そのカダの後ろについてる組織があるだろ?」

重戦士B(GM):
「……なんのことだ?」

アゼル:
「じゃあ、カダとお前たちのつながりは?」

重戦士B(GM):
「とくにつながりなんてもんはねぇ。隊商を襲って一儲けしようって誘われただけさ」

アゼル:
「ほかの奴らも、みんな同じか?」

重戦士B(GM):
「ただのならず者の寄せ集めなんだ。ほかの奴らのことなんてそこまで詳しく知らねぇよ」

アゼル:
 んー。聞きたい情報は大体こんなところかな。あとは、イスタス中央砦付近の見取り図でも描かせるか?

イーサ:
 ん? こっちから攻め入るのには反対だったんじゃないのか?

アゼル:
 いや……さっきの戦闘の手ごたえで、ちょっと気が変わった。このあと、偵察部隊を各個撃破すれば、あとは正面からイスタスに乗り込んでもいける気がする。

GM:
 臨機応変と言えば聞こえは良いですが、見事な手のひら返しですねぇ。

一同:
(苦笑)

エルド:
「さて、質問はもう十分ですね。では、こいつらを始末しましょうか」

アゼル:
「まて。殺す必要はないんじゃないか?」

エルド:
「生かしておく必要もないでしょう?」

セルダル(GM):
「あのよぉ……。できればあとでこいつらのことを城塞騎士団に突き出してぇんだが、ダメか? 王直属部隊に志願するのにも野盗討伐の実績がありゃあ、少しは箔が付くからな。それでよけりゃ、ことが済むまで木に縛り付けとこーぜ」

エルド:
「そういうことなら了解しました」

セルダル(GM):
(野盗たちに対して)「ってわけで、よかったなオマエら。首の皮一枚で助かったぞ。あとは干上がる前にオレたちが仕事を終えることを祈ってろよな。で、アゼル。これからどーするよ? 実際のところ、オレたちは結構やれるみてぇじゃないか」そう言って、セルダルは両手剣を振るうと型を決めてみせました。
「やっぱ、オレは隠密みてぇなチマチマしたのよりか、こーいったズバッとしたことのほーが得意なんだよな!」

イーサ:
「さっきの戦いぶりからすると、戦力を2つに別けて偵察部隊を2組は倒せそうだな。砦にいる奴らも倒さなくちゃならないんだ。少しでも敵の戦力は減らしておきたい」

アゼル:
「戦力を分散するのは危険じゃないか?」

イーサ:
「偵察部隊は軽戦士と弓兵の2人組み。戦力を分散しても十分やれると思うが……。まさか、まだビビッてるのか? やつらが警戒する前に、少しでも数を減らしておいたほうがいいことくらいはわかるだろ? 全員一緒に行動してたら、偵察部隊を1組しか倒せなくなるぞ」

アゼル:
「うーん……」

エルド:
 さっきから、何をアゼルさんはずっと便秘で苦しんでるような顔をしてるんですか?

アゼル:
 うーん。自分でもどうしたらいいのかわからないんだよな。いまいち、まだキャラクター性が固まってなくて……。

アル(GM):
 アルがアゼルのそばに近づいてきました。
「今後どうするか悩んでいるのか? もし何か気にかかっていることがあるなら、こういうときはその直感に従ったほうがいいぞ。俺の経験からすると、大概、その勘は当っている」(と言いつつ、アゼルにダイスをひとつ渡す)

アゼル:
 よし、わかった(笑)。このダイスを振って3以下の目が出たら偵察部隊の撃破に行く。4以上の目がでたら、この場で待機して敵の出方を伺う。

 てっきり、アゼルは戦力を分散するかしないかで悩んでいたものと思っていたのですが、そもそも強襲するか否かで悩んでいたようです(苦笑)。

アゼル:
(コロコロ……出目は2)
「よし、偵察部隊を撃破しに行こう!」

イーサ:
「決まりだな。それじゃ、戦力を2つに別けるぞ。偏りがでるのはまずいから、均等にな……」

 結局、野盗の偵察部隊3組のうち2組を倒すことに決めた一行は、戦力を2つに分散しました。アゼル、アル、イーサの3人は街道を東方面に、残りのエルド、セルダル、ナンの3人は街道を西方面に進み、それぞれ野盗の偵察部隊を討伐することに成功したら、日が沈む前に中間地点となるイスタスの南側で合流する手はずです。また、野盗から取り上げた4頭の馬は、移動の足としてそれぞれ2頭ずつ使うことにしました。




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