LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(29)

GM:
 野盗たちの動向を探るべくイスタスに潜入したエルドでしたが、逆に包囲されてしまいました。使うかどうかはわかりませんが、一応、戦闘マップを出しておきましょうか。(そう言って戦闘マップを広げる)。

イスタス廃墟

GM:
 ちなみに周囲の建物の高さは4メートルです。
 さて、エルドは顔が見える格好ですか? そうであれば「ボウズ」と呼んで会話を続けたいのですが。

エルド:
 いえ、フードを深く被って、顔がはっきりとは見えないようにしています。

GM:
 ふむ……。それならばこうしましょう。

カダ(GM):
 カダは、値踏みするような視線をエルドに向けています。
「オレの部下を可愛がってくれたのはオマエか? これからたっぷりと礼をさせてもらう前に、まずは名乗っておこうか。オレが頭目のカダだ」そう言うと、カダは偉ぶってふんぞり返りました。
「さて、次はオマエが名乗る番だ……」

エルド:
 では、一言……。
「アゼルだ」

シーン外のアゼル:
 おい(笑)!

カダ(GM):
「アゼル~? アゼルだと?」そう言って、カダは大笑いしました。
「王の名を騙るたぁ、ふてぇ野郎だ!」

シーン外のイーサ:
 まあ、普通に考えたら賢王の名前を騙ったと思うよな(苦笑)。

カダ(GM):
「ケッケッケ……。まあ、いいだろう。それじゃぁ、アゼルとやらよ。痛い目にあいたくなけりゃ、おとなしく言うことを 聞いてもらおうか。オマエの……いやオマエらのせいで、こっちは水もろくに飲めねぇ目にあわされてんだ。代償はきっちりと返してもらわねぇとな」そう言うと、カダは隣にいる部下にエルドを縛り上げるように指示します。

エルド:
 建物の壁を登って上に逃げることはできそうですか?

GM:
 登攀判定を行うことで5ウェイト(約10秒)かけて数メートル登ることができます。建物の高さは4メートルありますから……よほど上手く登らないと、壁にしがみついているところを攻撃されることになりますね。

シーン外のアゼル:
「とうッ!」って言ってジャンプだ(笑)。

GM:
 LOSTでは4メートル垂直とびできるような超人的な身体能力を持った人間はいませんから(苦笑)。壁をよじ登るとしても、1回の行動で建物の上まで登りきるためには《スカウト技能レベル+実質敏捷度ボーナス+2D》で目標値16をクリアする必要があります。

エルド:
 スカウト技能レベルは1、実質敏捷度ボーナスは2……(苦笑)。ですが、6ゾロを出せばあるいは――

GM:
 さすがに無茶でしょう(笑)。

シーン外のアゼル:
 いや、“可能性”を使えば達成値を上げるなり振りなおすことができるぞ!

シーン外のイーサ:
 そんな無駄なことしなくても、もっと確実な脱出方法がありそうだけどな……。

カダ(GM):
「そんなに周りを見渡して、どうした? 逃げ道なんてどこにもねぇんだから、無駄な抵抗はよせよ。素直につかまって全部吐けば楽にしてやるぞ。楽に……な。ケッケッケ……」

エルド:
 野盗たちの配置と装備を教えてください。

GM:
 あなたを取り囲んでいるのは、カダを含めて合計8人です。それぞれの通路には片手剣に硬革鎧を装備した重戦士がひとりずつ、カダが居るところ以外の通路には片手剣に軟革鎧を装備した軽戦士がひとりずつ。カダ自身は弓を持っている以外に腰から短剣を提げていて、布の服を装備しています。

エルド:
 ふむ。それじゃ、覚悟を決めて一戦交えるとしましょう(と言ってダイスを握る)。

GM:
 その前に、もしまだ脱出手段を思いついていないのであれば、知力判定によって、いくつか脱出のヒントとなることを思いついたことにしても良いですけど……。ヒントを得たいのであれば、《知力ボーナス+2D》で判定してください。目標値は10・12・14の3段階です。

エルド:
 そういうことなら、一応、天の声を聞いておきましょうか。(コロコロ)11。

GM:
 それだと与えられるヒントはひとつだけですね。エルドは“ダークネス”を用いた脱出が可能ではないかと思いつきました。

エルド:
 “ダークネス”ですか。それは……まあ、そうなんでしょうけどね……。
 うーん。たとえば、闇の中で敵の横をすり抜けようとした場合、敵からの“範囲支配”とか“離脱阻止”は受けるんですか?

GM:
 ルール上、暗視などの能力がない者は、闇の中で“範囲支配”や“離脱阻止”を行うことはできません。ですが、進路上に敵がいた場合は敵とぶつかってしまい、転倒判定を行うことになります。敵側もあなたを逃さないように妨害してくるでしょうから、判定結果によっては進路を塞がれてしまいます。

シーン外のイーサ:
 魔法は“ダークネス”の効果範囲内でも使えるんだっけ?

GM:
 使えますよ。ただし、視界がない状態での魔法使用ということになりますので、自分自身、もしくは接触対象を起点として発動する魔法しか使えません。まあ、厳密にはほかの魔法もまったく発動しないというわけではないのですが、目標に上手く命中させることができないため、本来の効果は得られないものと考えてください。

エルド:
 では、後ろを振り向くと同時に自分自身に生撃ちで“ダークネス”をかけて、その後、走って逃走しようと思いますが、それだとどんな判定が必要になりますか?

GM:
 “ダークネス”をかけるまでは問題ないとして、その後は闇の中で敵の妨害をかわしつつ路地を逃走するわけですよね……。それを成し遂げるためには、まず闇の中で思う方向に走れたかどうかの判定。次に、“記憶術”で順路や道の距離を把握しているかの判定。最後に、敵側が闇の中でエルドに立ち塞がれたかの判定を行い、これらのすべての判定結果がエルドにとって都合の良いものとなれば、“ダークネス”の効果が切れるまでの30秒間、敵の妨害をすり抜けて逃走することができます。それでよければ初期ウェイトを決定して順番に解決していきましょうか。

 エルドがこの条件を受け入れたため、戦闘が開始されることとなりました。しかし、“ダークネス”を使って30秒間逃走したとしても、魔法の効果が切れたら追撃されることは間違いありません。なんとか余力のあるうちに、野盗たちを完全に振り切る策を思いついて欲しいところですが……。

エルド:
 では、“小移動”でカダに背を向けて、自分自身を対象に生撃ちで“ダークネス”を唱えます。(コロコロ)発動しました。

カダ(GM):
 魔法の詠唱を聞いたカダが「野郎、魔法がつかえるのか!?」と驚きの声を上げます。

 突然現れたドーム状の闇に驚く野盗たちでしたが、すかさずカダから闇を包囲するように号令が出されたことにより落ち着きを取り戻します。曲がりなりにも遺跡探索者として活動していたカダは、闇の魔法“ダークネス”の存在を知っていたようです。

エルド:
 次の自分の手番で逃走します。

GM:
 では、闇の中で思った方向に走れたかの判定ですが、これは比較的易しい行為だと思いますので、《スカウト技能レベル+実質敏捷度ボーナス+2D》の判定を目標値7で行ってください。

エルド:
(コロコロ)10で成功です。

GM:
 続いて、エルドが逃走ルートを暗記できているかの判定ですが、これは結構難しいでしょうから、記憶術を目標値13でどうぞ。

エルド:
 ここは“可能性”を使って達成値に+2のボーナスをつけておきます。(コロコロ)あっ、12……。失敗です。

GM:
 そうなると、仮に敵の横を上手くすり抜けたとしても、その先の壁にぶつかるまで曲がり角の場所がわからないということになりますね……。

 ここの処理は、先に記憶術判定を行わせて、それが実行可能であるかどうかを明らかにした上で実行に移すかどうかをエルドに委ねたほうが良かったかもしれません。処理の順番を逆にしてしまったために、記憶があやふやなまま闇に包まれたエルドは、手探りで逃走しなくてはならない状態に陥ってしまいました。

GM:
 最後に、南側の路地に居る重戦士と軽戦士がエルドの進行方向に立ち塞がることができたかの判定ですが、これは目標値10で(コロコロ)。軽戦士のほうがエルドの進行方向に立ち塞がりました。そして、走ってきたエルドとぶつかることになるので、お互いに《筋力ボーナス+2D》の対抗判定を行います。軽戦士側は(コロコロ)6です。

エルド:
(コロコロ)こっちも6です。

GM:
 同値の場合は受け手側であるぶつかられた方が勝ったこととなるので、移動者であるエルドが軽戦士の居るひとつ手前のマスで停止します。そして、目標値9の転倒判定をどうぞ。

エルド:
(コロコロ)転倒はしませんでした。

カダ(GM):
「闇に乗じて逃げるつもりだろうが、そうはさせねぇ。おい、オマエ(重戦士A)とオマエ(軽戦士C)、オレについて来い! 先回りして退路を断つぞ! 残ったもんは闇の周りに張り付いて包囲しとけ。離れんなよ!」カダはそう言うと、エルドの行く先に回り込むために駆け出しました。

エルド:
 うーん、こうなると手詰まりですね……。

GM:
 たしかに、このまま“ダークネス”の効果時間が過ぎてしまうとジリ貧ですね。エルド以外のプレイヤーも、この状況で上手く切り抜けられる方法がないか考えてみてください。その方法をエルドのプレイヤーに助言してもらっても構いませんからね。

 ここでいったん、ブレイクタイムを挟み、皆でエルドのキャラクターシートを確認しなおして、脱出可能な手段が残されていないかを検討することになりました。

シーン外のアゼル:
 うーん。“カメレオン”なんか良いんじゃないか? 闇の中で“カメレオン”を使っておけば、闇が晴れたときその場から居なくなってるようにみえるだろ。

エルド:
 最初からそうしておけばよかったかもしれませんが、すでに“ダークネス”の効果範囲ごと移動してしまいましたからね。その中心に僕が居るってことはバレてると思いますよ。

GM:
 たしかに、“カメレオン”は少しでも動くと効果が切れてしまう魔法なので、野盗が「ここに居たはずだぞ?」なんて言って移動してきて接触でもしようものなら、その段階でみつかってしまいますね。

シーン外のイーサ:
 それなら、今度は自分自身にではなく、空間を対象に“ダークネス”をかけるってのはどうだ? そのあと“ダークネス”の中心点から離れて“カメレオン”を使えばいい。

エルド:
 ふむ……。そうですね。その作戦でいってみましょう。

 他にもいくつかアイディアはでましたが、エルドはそれらを吟味したうえで、このイーサの提案を受け入れて実行することにしました。もはや精神点に余裕がないので、これがラストチャンスです。

 なお、LOSTの魔法は発動起点に届く音量で詠唱すれば発動するので、カメレオンの詠唱の声は野盗には聞こえないこととしました。

エルド:
 では、1度目の“ダークネス”が切れるタイミングにあわせて、今度は地面を起点にして2度目の“ダークネス”を唱えます。(コロコロ)発動。

GM:
 野盗側は闇を取り囲んで待機を続けます。カダが退路方向に回りこんでくるまでにはもう少し時間がかかりそうですね。

エルド:
 次の手番で建物の壁に向かって手が触れるまで進みますが、判定は必要ですか?

GM:
 それは必要ないでしょう。どうぞ移動してください。

 この後、エルドは闇の外で待ち構える野盗たちに悟られぬように壁伝いに歩き、建物の内部へと入り込みます。そして、仕上げとして――

エルド:
 “カメレオン”を唱えます。(コロコロ)成功。

GM:
 はい。途中の魔法詠唱で1ゾロでもでたらどうなるかと思いましたが、無事に準備が整ったようですね。では、それに対する野盗側の反応ですが……。2度目にエルドが唱えた“ダークネス”の効果時間が過ぎると、闇が消え去ります。しかし、その中にエルドの姿は見当たりません。

野盗のひとり(GM):
「い、いない!? さっきまでは確かに闇の中にいたはずだぞ? どこに行ったアイツ!?」

カダ(GM):
 少しすると、通りを迂回して先回りしていたカダたちもその場に駆けつけます。
「おい、どうした!? あの、アゼルっていうふざけた野郎はどこに居やがる!?

野盗のひとり(GM):
「お、お頭……。それが、綺麗さっぱり居なくなっちまいました」

カダ(GM):
「居なくなっただと? 馬鹿なッ! よく探せッ! 建物の中に潜んでるのかもしれねぇ。隅から隅まで シラミつぶしに探し出せ!」

GM:
 ――と、まあ、建物の中に隠れた可能性は当然疑うでしょう。カダの指示を受けた野盗たちが建物の中を探し始めます。彼らにはカメレオンの擬態そのものを見破る術はありませんが、せめて足跡をみつけるくらいならば……。

一同:
(ゴクリ……)

野盗のひとり(GM):
(コロコロ)……。
「お頭! ネズミ一匹見当たりません!」

一同:
(安堵)

カダ(GM):
「ちッ! 壁を登って上から逃げたか?」
 舌打ちしたカダは素早い身のこなしで建物の上に登ると、周囲に目を走らせます。しかし、当然エルドの姿は見当たりません。カダは苛立ちを込めた声を張り上げました。
「オマエら! このまま逃がしちまったらただじゃ済まさねぇからな! 死ぬ気で探せッ!」

GM:
 カダの脅し文句に、野盗たちはエルドの姿を探してイスタス跡地を駆けずり回ります。
 さて、エルドはこれからどうしますか?

エルド:
 もう魔法を唱えるだけの精神点の余裕がありませんから、しばらく動けそうにありませんね。日が落ちるまでここに潜んでいましょうか。

GM:
 了解です。では、そんなエルドにシーンをひとつ見せておきましょう。
 野盗たちによるエルド捜索開始からさほど間を置かずに、建屋の外に金属鎧のたてる音が聞こえてきました。

金属鎧の男(GM):
「何やら慌ただしそうにしてる様子が見えたから来てみたが、どうやらネズミを逃したらしいな」

カダ(GM):
「だったらなんだってんだ? ダット、オマエがネズミをとっ捕まえてきてくれんのか?」

ダット(GM):
「いや、そういったことは苦手なんで遠慮させてもらう」

カダ(GM):
「ふんッ。こっちもはなから期待してねぇよ。それよか、水の確保が先決だ。いま休んでる奴らが目を覚ましたら、早速、馬の用意をさせろ」

ダット(GM):
「了解した」ダットはそう答えると、その場を離れていきました。
 金属音が中央砦の方へと遠ざかっていきます。

カダ(GM):
(小声で)「ちっ。どうにもいけ好かねぇ野郎だ……」その呟き声を最後に、カダの足音も遠ざかっていきました。




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