LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第1話(31)

GM:
 それでは、イスタス中央砦への強襲戦を開始します。

 まずは敵弓兵に見つからない場所で、イーサとアルによる補助魔法の付与が行われました。そして必要な補助魔法を一通りかけ終えると、アゼルたちは作戦通り一列縦隊を組んで、中央砦に向かって全力移動を開始しました。

アゼル:
「うをおおぉぉぉ! 突撃!」

 金属鎧を身にまとったアゼルが雄たけびを上げて正面突破を試みたのですから、当然、見張りにたつ弓兵たちにはすぐさま発見され、警戒を呼びかけられてしまいます。

弓兵A(GM):
「襲撃だーッ! 敵の数は5……いや、6人ッ!」

カダ(GM):
「やっと来やがったか。返り討ちにしてやるぜ。ケッケッケ……」
 見張りの声に、砦の中でくつろいでいたカダが、笑みを浮かべながら腰を上げます。

 敵襲を知らせる叫びに応じて、砦の中から次々と野盗たちが姿を現しました。カダも砦の上に姿を見せると、早速、2人の弓兵と共に走るアゼルに矢を射掛けます。しかし、金属鎧を装備したアゼルに対して有効な一撃を加えるには至りませんでした。

カダ(GM):
「ちッ、ひとり鬱陶しい奴がいるな……。おい、ダット、オマエ向きの仕事だぞ! 先頭にいる鎧の奴を潰せッ!」

ダット(GM):
「了解だ」そう言って、金属鎧に身を包んだダットが砦の入口から姿を現します。

 砦から出てくる野盗は後を絶たず、アゼルたちが砦に到達するころには計10人の敵が姿を現していました。

イーサ:
 おいおいおい……。ぞくぞく出てくるな(汗)。

アゼル:
 水汲みに人員を割いてるはずなのに、予想よりもかなり多い。やっぱり下働きの奴らも戦闘要員だったんじゃないか?

 残念ながらアゼルの予想はハズレています。エルドを取り逃がしたあと、ダットは自分たちの動きが監視されていると考え、下働きを含む10人に騎馬隊を装わせ、水汲みに向かわせることで、手薄になった中央砦にアゼルたちが攻め入るように仕向けたのです。

 実際のところ、アゼルたちはイスタス周辺の監視をしておらず、カダの誘いに乗って中央砦に攻め入ったというより、エルドが帰還しなかったためになし崩し的に襲撃することになってしまったわけですが、結果的にはカダの思惑通りにことが進んでしまったと言えるでしょう。

 高台を登り始めたアゼルたちに野盗たちが次々と襲い掛かります。先頭に立っていたアゼルが野盗たちに包囲され、危うく孤立しそうになりましたが、すんでのところで後を追っていたアルがアゼルの背後に立って身構えます。

アル(GM):
「アゼル、お前は目の前の敵だけに集中しろッ! 後ろは任せておけッ!」

 アルのサポートに応えるように、アゼルが立ちふさがる重戦士に繰り出した攻撃はクリティカルヒット! 見事に一刀両断で仕留めました。一方で、イーサもアゼルの後方へ回り込もうとする軽戦士と切り結び、戦意を喪失させることに成功します。

軽戦士B(GM):
「ヒィッ! こいつら、強えぇ……」

 泉の戦いで証明されたとおり、アゼルたちの腕前は野盗たちのそれを遥かに凌駕していました。そして、雑兵たちを相手に実力を遺憾なく発揮するアゼルの前に、ついに金属鎧を身に着けた男・ダットが立ちはだかります。

ダット(GM):
「どうやら、少しは骨がありそうだな。雑魚相手では物足りないだろう? この俺が相手になってやる!」

 それまで容易く敵を切り伏せていたアゼルでしたが、ほかの野盗たちに比べて頭一つ飛びぬけた実力を持つダットを前に苦戦を強いられます。戦闘は高台の上り口付近で激化。脚の止まったアゼルたちに、砦の上からカダと弓兵2人が狙い定めた矢を放つ展開となりました。

 ちなみに、各人が奮闘する中、ガス欠状態のエルドはずっと遮蔽物の陰に隠れて戦いの行方を見守っていました(笑)。そのかわり、エルドのプレイヤーには、アルとナンの行動を担当してもらっています。

GM:
 雑魚が徐々に減ってきましたね。パーティにも結構ダメージを与えているはずですが、補助魔法の差で押し切られそうです。

イーサ:
 よし、このまま押し切るぞ!

セルダル(GM):
 では、雑魚が減って出来たダットの背後のスペースにセルダルが回りこみます。
「アゼル! こいつをぶっ倒すぞッ!」

アゼル:
「よしッ! 任せておけ!」

ダット(GM):
 さすがに挟まれた状態はまずいので、ダットとしてはここでアゼルを仕留めておきたいところです。
「この一撃、貴様に耐えられるかッ!?」と言いつつアゼルに渾身の一撃を放ちます。(コロコロ)命中値は15!

アゼル:
 ディフレクト値は(コロコロ)9。ダメだ、食らってしまった。

ダット(GM):
 物理ダメージ12点です。

アゼル:
 うおー! やばい、やばい。あと1点で士気判定に突入するところだった(汗)。

重戦士D(GM):
 安心するのはまだ早いです。続けざまに重戦士Dがアゼルの側面から攻撃!

アゼル:
 小移動で方向転換して重戦士Dの攻撃を正面から回避!

重戦士D(GM):
 命中値は(コロコロ)10。

アゼル:
(コロコロ)12で回避!

重戦士D(GM):
 さすがです。……しかし、ここでアゼルの方向を変えさせたことに意味がある!

セルダル(GM):
 続いてセルダルがダットの背後から攻撃しようとするのですが――

ダット(GM):
 アゼルが方向転換したことで、ダットは“範囲支配”の影響下から逃れられましたからね。ここは方向転換してセルダルの攻撃を正面から回避することにします。

セルダル(GM):
 セルダルの攻撃は(コロコロ)命中値9。

ダット(GM):
 ダットは(コロコロ)12で回避成功!
「舐めるなよ、小僧どもッ!」

イーサ:
「こいつの実力は本物だな……」

 さすがにダットはほかの野盗たちとは一味違います。こうして、しばらくの間、一進一退の攻防が続きました。

アゼル:
 それじゃ次は俺の番。ダットが背中を向けてる今がチャンス! “小移動”で再びダットの方を向いて――

重戦士D(GM):
 重戦士Dは“範囲支配”を取得してないので、それを阻止できません。

アゼル:
 よしッ! ダットの背後からアターック!

イーサ:
(ボソッ)アゼルは敵の背後から切りつけるような男だったんだな。

エルド:
(ボソッ)汚い男ですね……。

アゼル:
 なんとでも言え(笑)。背に腹は変えられん!

ダット(GM):
「むぅッ! これは間に合わん……ッ」というわけで背面回避しかできず(コロコロ)回避値は8です。

アゼル:
「死ねーッ!」
(コロコロ)15で命中して、ダメージは(コロコロ)13点!

ダット(GM):
「ぐはッ! よくも……やってくれたなッ!」
 ダットは背中から深く斬りつけられたものの、まだ生きてます。

アゼル:
「生きている……だと……?」
 ……いやッ! ダットがこの程度で死ぬはずないと俺は信じてた! だから、いま背後から斬りつけたことは卑怯な攻撃にはあたらない!

イーサ&エルド:
 ……(アゼルに対して冷ややかな目線が向けられる)。

GM:
 いや、思いっきり「死ね」って口にしてましたし(苦笑)。

 言行不一致のアゼルではありましたが、とにかくこの一撃が決定的でした。この後、雑魚を片付けて参戦してきたイーサの素早い斬撃の前に、奮戦を続けていたダットはついに崩れ落ちます。

イーサ:
(コロコロ)命中! ダメージは(コロコロ)振るわず、6点。

ダット(GM):
 6点? うーん、それは……。
「ぐわぁぁぁぁッ!」
 ダットはイーサの一撃を受けて大きく吼えると、そのままゆっくりと地面に倒れました。

GM:
 ここでちょうど敵の戦力が半減しましたね。残っている者たちが戦意喪失しないか、士気判定を行います。(コロコロ)

弓兵A(GM):
「お、おしまいだ……」
 弓兵Aは戦意喪失しました。

重戦士D(GM):
「カダのお頭ぁー、助けてくだせぇー」
 重戦士Dも耐えられませんでした。

カダ(GM):
「オ、オマエら、なに怖気づいてやがるッ! 戦え! 戦え! 戦えーッ!」

 部下たちに徹底抗戦を命じるカダですが、もはやカダの命令に従う者はひとりもいませんでした。野盗たちは一目散に逃亡を開始します。

重戦士B(GM):
「うわぁぁぁ、助けてくれぇぇぇ」

カダ(GM):
「クソッ! この腰抜けどもがぁ……」
 踏み止まる者が居なくなった今、さすがにカダも諦めたのか、矢をつがえるのをやめました。

アゼル:
「もう終わりだ! 大人しく投降しろッ!」

カダ(GM):
「コノヤロウ……」
 カダは怒りに身体を震わしながら言葉を発します。
「テメェら……顔は覚えたからな。オレの邪魔をしたこと、後で必ず後悔させてやる……。必ずだッ!」そう捨て台詞を吐くと、カダは中央砦の北側に走り、7メートルの高さがあるはずの屋上から躊躇せずに飛び降ります。ほどなくして、馬のいななき声と、それに続いて、遠ざかっていく蹄の音が聞こえました。

アゼル:
 最後はいかにもな小悪党っぷりだったな。

GM:
 カダが逃走してしまうと、後に残されるのは、退路を失った野盗4人と昏倒したダット、あとは戦死した者たちの亡骸となります。それ以外の野盗は散り散りに逃げていってしまいました。退路を失った野盗たちは中央砦の中で身を寄せて震え上がっています。

野盗のひとり(GM):
「頼む! 命だけは助けてくれ! 俺たちはカダの野郎にそそのかされただけなんだ。もう悪さはしねぇよ」

アゼル:
「そうか。じゃあ……」

一同:
 ……。

GM:
 じゃあ……なんですか? 何するつもりですか!? その沈黙はなんですか!?

一同:
(笑)

アゼル:
「じゃあ……見逃してやる。行けッ! だが……だが、しかしッ! また俺たちの前に姿を現したら、そのときは判ってるな!?」と、脅しつける。

GM:
 野盗たちはアゼルの言葉に何度もうなずくと、あなたたちの横を震えながら通り抜けて逃げ去っていきます。その逃走の途中で、彼らはダットに息があることに気がつくと、ダットも連れていってしまいます。

エルド:
 ダットも逃がしてしまうんですか? いろいろ聞きたいこともあったんですけどね。

一同:
 ……(特に反応せず)。

GM:
 野盗たちが去ったあとの中央砦には、保存食がつめられた樽や、交易品などが残されています。おそらく、交易品は隊商を襲って奪い取ったものでしょう。ただ、水が蓄えられていたであろう樽や瓶は、ひとつ残らず空になっていました。

イーサ:
「とりあえずは一段落だな。これで、やっとイスパルタから出発できるわけだ」

アル(GM):
「いいや、まだやることは残されてるぞ。もう少しすれば、水を汲みに行った奴らが戻ってくるはずだ」

アゼル:
「よし、そいつらを待ち構えよう」

GM:
 では、あなたたちがその場に残っていると、9人……ではなく、11人の馬に乗った野盗たちが戻ってくるのですが、あたりの惨状をみて慌てています。

野盗のひとり(GM):
 少し離れたところで馬の足を止めると、野盗のひとりが声を張り上げます。
「お頭ぁ! 戻ってきましたぜ! このありさまは、なんかあったんですかい!? 無事なら顔を見せてください!」

アゼル:
 そいつらが見える場所まで出て行って、剣を抜いて声を張り上げた。
「カダは――」

GM:
 姿を見せたのが、カダではない見知らぬ者だとわかると、野盗たちは蜘蛛の子を散らすように逃げていきました。

アゼル:
「あ……」

イーサ&エルド:
 ……。

アゼル:
 剣を収めた……。

イーサ&エルド:
(爆笑)

 こうして、鼻曲がりのカダ率いる野盗たちとのイスタス跡地での戦いは決着を迎えたのでした。




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