LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(10)

GM:
 情報交換から戻ってきたシシュマンによると、あちらの隊商は、カルカヴァンからここにくるまでに、ジャッカルやライオンなどの野生動物を目撃することはあったものの、襲われることはなかったとのことでした。

アゼル:
 うわッ。ライオン居たのかよ。やばいな、それは。

GM:
 遠目に見ただけなので、街道を進む限り、よほど運が悪くなければ大丈夫だろうという話でしたよ。ただし、あちらの隊商に比べると、こちらは半分以下の規模なので、襲われない保証はありませんけどね。

シシュマン(GM):
「よし、それじゃそろそろ出発するぞ。皆、準備はいいな?」

一同:
 オッケー!

GM:
 昼休憩をとったので疲労を1点回復させておいてください。天気は晴天です。遭遇判定をどうぞ。

エルド:
(コロコロ)遭遇せず。NS地点まで到達しました。

GM:
 それでは、ここで《スカウト技能レベル+知力ボーナス+2D》の判定を目標値10でどうぞ。

エルド:
(コロコロ)12で成功です。

GM:
 ならば、馬車の右手側に居たエルドは、再び後方を気にしているジェザの姿に気がつきました。

エルド:
 もうイスパルタなんて影も形も見当たらない場所ですし、いったい何を気にしてるんでしょう?

GM:
 しばらく進んでは、後方をチラッ。またしばらく進んでは、後方をチラッ。その姿はまるで何者かの追跡を気にかけているようにも見えますね。

エルド:
 とりあえず、気に留めておきましょう。

GM:
 ちょうどエルドがジェザの動きを気にしているころ、隊商の中央、サブリとニルフェルが乗る荷馬車のほうから「ヒヒンッ、ヒヒヒーンッ!」と大きな馬のいななき声が響き渡ります。皆が何事かとそちらに目を向けると、馬の一頭がガクンと膝を折ってその場に倒れこんでしまいました。

アゼル:
「おや?」

サブリ(GM):
「どうした!?」
 サブリはあわてて御者台から飛び降りると、膝をついた馬に駆け寄ります。

シシュマン(GM):
 前を進んでいたシシュマンも馬を止めると、「どうかしたのか?」と声を上げました。

サブリ(GM):
「ああッ! こいつはッ!」
 馬の脚に手を当ててなぞっていたサブリが落胆の声を上げます。
「どうやら脚をやっちまったらしい。これは捻挫だな」

アゼル:
「ほほう。それは困ったな」

サブリ(GM):
 サブリはシシュマンのところへ歩み寄ると、「あの脚で荷台を引かせ続けるのは無茶だ。下手すると一歩も動けなくなっちまう……」と言って深いため息をつきました。

シシュマン(GM):
「そいつは困ったな……」

アゼル:
 馬に白魔法を掛けて治すことはできないのか?

GM:
 馬にも白魔法は掛かりますが、捻挫や骨折などの症状を即座に完治させるためには“ヒーリング”や“リプレニッシュ・ヘルス”などの魔法が必要になります。これは捻挫や骨折が単なる生命点ダメージではなく状態異常として解釈されるためで、人間であっても同様です。

アゼル:
 誰か“ヒーリング”か“リプレニッシュ・ヘルス”を使える奴は居ないのか?

イーサ:
 できるわけないだろ。俺たちはまだレベル2なんだから。

 “ヒーリング”はレベル5白魔法、“リプレニッシュ・ヘルス”はレベル3白魔法です。

エルド:
 トドメを刺すことならできますよ。

アゼル:
 それはダメだ(苦笑)。

一同:
 ……。

 こういったトラブルが発生したときに、PC側から解決案が提示されると話が盛り上がってくるのですが、朝食のいざこざのときと同様に、残念ながらここでもPCたちは傍観する側にまわってしまいました。

アル(GM):
「仕方ないな。警戒が疎かになってしまうが、捻挫した馬の代わりに俺が使っている馬に荷を引かせよう。それでいいか、シシュマン?」

シシュマン(GM):
「うーむ……。いたしかたなかろう。そうしてくれ」

GM:
 こうして、周囲を警戒するためにアルが使っていた馬がサブリの荷馬車を引くこととなり、捻挫した馬はアルが引いて連れて行くこととなりました。

アゼル:
 こうなると、俺たちもより気を引き締めて周りを警戒していかないとな。

サブリ(GM):
「しかし、頑丈そうな馬を選んでつれてきたってのに、たった2日で捻挫なんて、まったくついてないぜ」

ニルフェル(GM):
「今朝、野営地を出発したときから、あの子、少し疲れていたみたいでしたよね?」

アゼル:
 そういえばそんなこと言ってたな。

サブリ(GM):
「畜生。さては昨晩、休まずに起きてやがったな。そのわりには静かだったが……」

エルド:
(サブリの発言の意図を誤解して)
 なるほど、そういうことですか。そりゃ、牡馬の中に牝馬を紛れさせちゃダメですよ。

GM:
 荷馬車は基本的に牝馬で引くものなので、この場合は逆ですね。もしエルドの想像通りだとすれば、牡馬が紛れていたんでしょう。
 さて、時刻は13時になりました。天候は晴れのままです。行軍処理を続けましょう。

 シシュマンが話していたとおり、お昼を過ぎたあたりで一行は街道とは名ばかりの未舗装の荒れた道へと足を踏み入れました。荷馬車が大きな音を立ててゆれ始めます。事前に馬を代えていなければ、捻挫した馬は進めなくなっていたことでしょう。その荒れた道の影響を受けるのはなにも馬だけでなく、自らの足で歩いている面々にかかる疲労も大きくなってきました。

エルド:
 ジェザさんはまだ後方を気にしていますか?

GM:
 エルドは先ほどからジェザを注視しているみたいですね。ならば、《スカウト技能+知力ボーナス+2D》の判定をしてみてください。目標値は10です。

エルド:
(コロコロ)11で成功です。

GM:
 では、ジェザが相変わらず後方を気にかけた素振りをしているのがわかります。さらににエルドはジェザの行軍速度が少し遅れ気味で、たまに小走りになって隊商の行軍速度に遅れまいとしていることに気がつきました。

エルド:
 ん、遅れてる? なんでしょう? とりあえず了解です。次の野営地についたら絡む切っ掛けにできそうですね。

 こうして、2日目はカルカヴァンからの隊商に行き会ったり、荷場が捻挫するなどあったものの、なんとか予定通り野営予定地点(MQ)までたどり着くことができました。
 目的地に到着すると、一行はシシュマンの指示のもとで設営作業をこなしていきます。そして、昨日と同じように見張りの順番を決めることとなりました。

アゼル:
(エルドのキャラクターシートをのぞいてから)
「エルドは随分と疲れているようだな。顔色が悪い。今晩もゆっくり休んでいた方がいいんじゃないか?」

エルド:
「たしかに疲れてはいますが、それは皆さんと同じことですから大丈夫です」

アゼル:
 じゃあ、アルさんにこう言っておこう。
「エルドはだいぶ疲れているようだ。明日の朝までは休ませてやりたいんだが」

アル(GM):
「ふむ。昨晩の6時間の睡眠だけじゃ足りなかったのか? 護衛として参加している限りは、その責務をはたしてもらわないと困るんだが……。とは言っても、魔法を使うことが仕事であるエルドが疲れのせいで魔法が使えないとあっては本末転倒だからな……。仕方ない。今回だけ特別に認めよう」

アゼル:
「いざというとき魔法が使えないんじゃ困るからな」

エルド:
「そういうことであれば」

セルダル(GM):
「んじゃ、オレは20時から2時まで見張りにつくわ」

アル(GM):
「ならば、俺は23時から2時までを担当する」

アゼル:
「そうなると、明け方は俺とイーサだな」

イーサ:
「了解した」

エルド:
 しかし、僕はジェザさんと会話してみるつもりだったのですが、こうなると無駄に起きているわけにもいきませんね……。

 昨日に続き、再びエルドに睡眠時間を多めにとらせようとするアゼル。彼なりの思惑があったのでしょうが、本当に睡眠が必要なのは別の人物であったことに一行が気づいたのは、もう少しあとになってからのことでした……。




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