LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(12)

GM:
 さて、3日目です。天候は晴天。朝6時の出発となります。

シシュマン(GM):
「サブリ。今日こそ馬の調子は大丈夫だろうな?」

サブリ(GM):
「ああ、問題ない。バッチリだ。さすがに昨晩は大人しく休んでくれてたらしい」

GM:
 野営地を離れるときに、そんな2人の会話が聞こえました。

エルド:
 では、LQ地点を目指して行軍処理を行いますね。遭遇は……(コロコロ)ありません。

GM:
 了解です。隊商は荒れた道を一路北西へと進みます。その行軍の途中で、《スカウト技能レベル+知力ボーナス+2D》の判定を目標値12で行ってください。

イーサ:
(コロコロ)オレが一番高くて11だ。

GM:
 あらら……。それでは、誰もその異変に気がつきませんでした。というか……そのことにあなたたちが気がついたときには、すでに手遅れでした。

アゼル:
 ん? 一体何が起きたんだ?

GM:
 隊商の側面についてるのは、アゼルとエルドでしたね。どちら側で発生したかはランダムに決定します。(コロコロ)どうやら、エルドのいるほうだったようですね。

エルド:
 僕のほうですか。損害を被るのはご免なんですが……。

GM:
 エルドの視界には、次のような光景が映ります。サブリとニルフェルが乗る荷馬車の右側の前輪が突然ぐらついたかと思うと、次の瞬間には脱輪して、車輪が勢いよくあさっての方向へと転がって行きました。

一同:
 えーッ!?

GM:
 車輪をひとつ失った荷馬車はバランスを崩して大きく傾きます。

イーサ:
 おいおい、どうにかならないのか?

GM:
 手を出す暇もありません。あれよあれよという間に、荷馬車は大きく斜めに傾いて、地面に底部を引きずらせます。荷台に積んであった木箱が一気に片側に寄ってしまい、その重さで荷馬車はさらに傾き、そのまま横転。御者台に座っていたサブリとニルフェルは地面に投げ出されてしまいました。

アゼル:
「おい、ニルフェル! 大丈夫かッ!?」

GM:
 そうですね……。右側に傾いていったことで、サブリが先に投げ出され、ニルフェルはその上に落ちたため軽い打ち身程度で済んだようです。そのかわり、サブリは頭部と肘から血を滴らせています。

サブリ(GM):
「痛ぅーッ」
 サブリは切れた額を手のひらで押さえてうめいています。

アゼル:
 ニルフェルのことを助け起こそう。

イーサ:
 サブリじゃないのか?

アゼル:
 サブリさんは別にどうでもいい。

エルド:
 つい数日前に自分の危険をかえりみず、サブリさんの荷運びを手伝おうとした人のものとは思えない発言ですね(苦笑)。

アゼル:
 なんとでも言え。プレイヤーとキャラクターの発言は別物だ。

 プレイヤーとキャラクターの発言が別物だという言い分はもっともなのですが、アゼルの行動自体からもサブリの身を案じる様子が感じられないことは問題です。プレイヤーとキャラクターは別物と言いながら、プレイヤーの感想をストレートに口にしているうちに、無意識にキャラクターがプレイヤーに侵食されてしまっているのです。アゼルのプレイヤーがほかのセッションでもキャラブレを起こしてしまっているのは、どうやらこのあたりに原因がありそうです。

 この問題の改善策のひとつとして、プレイヤーとして感じたことよりも、キャラクターとして感じたことを優先して表現するという方法があります。感情をコントロールするのではなく、2つの感情のどちらを言葉に出すかの選択を変えるだけなので、あらかじめ意識しておけばそんなに難しいことではありません。キャンペーンが進むにつれて、アゼルのプレイがどう変化していくかもこれからの見所のひとつです。

アゼル:
 あ、そういえば、俺はランド・ウォーカー技能を持ってるから怪我の手当てができるのか?

GM:
 はい。サブリは生命点に1ダメージ受けている状態とします。止血くらいはできますね。

アゼル:
 しかたない。それなら治療してやるか。(コロコロ)とりあえず止血した。
「サブリさん、大丈夫か?」

サブリ(GM):
「す、すまねぇ。それよりも、馬は大丈夫か……?」

アゼル:
 馬のほうを見るが、もう誰かが馬の状態を確認したりしてるか?

GM:
 あなたがサブリの手当てをしている間に、隊商の面々が集まってきています。ちょうど、シシュマンが馬の状態を確認しているのが目に入りました。

シシュマン(GM):
 シシュマンはアゼルの視線に気がつき、首を大きく横に振ります。
「ダメだ……。脚が折れてやがる」

アゼル:
「折れてる!?」

シシュマン(GM):
「この様子じゃ、もう荷馬車を引くどころか、歩くのも無理だ……。まさかこんなところで脱輪するとはな……」

アゼル:
「こういうことはよくあるのか?」

シシュマン(GM):
「そうそうあってたまるか!」

アゼル:
「ふーむ。荷馬車を直せたとしても、馬が居なければ先に進めないな」

シシュマン(GM):
「……こうなったら、昨日捻挫した馬に無理やり引かせるしかないな……。だが、はたして荷馬車のほうが使い物になるかどうか……」

GM:
 そんな話をしていると、脱輪した車輪を拾いに行っていたアルが車輪をもって戻ってきました。

アゼル:
「アルさんは荷馬車を直せるのか?」

アル(GM):
「いや、俺には無理だ」

アゼル:
 やっぱり、クラフトマン技能とか持ってないと直せないよな……。
「誰か直せないのか?」

ギズリ(GM):
「本職ってわけじゃないんだが、オレがちと見てみよう」
 ギズリは荷馬車の状態を一通り確認した上で、「応急処置くらいならオレでもできそうだ。しかし、専用の工具がないから、ざっと10時間はかかっちまうだろうな……」と告げます。

アゼル:
 10時間もかかるのか。それも、こんなところで……。
「どうするんですか、シシュマンさん?」

シシュマン(GM):
「どうするもこうするも、直さない限り身動きが取れんからな」

イーサ:
「やれやれ。当分、ここで足止めか……」

アゼル:
「しかし、何が原因で脱輪したんでしょうね?」とギズリに聞いてみる。

ギズリ(GM):
「老朽化……にしては、造りはしっかりしてるみたいだがな。車軸、車輪のどっちにも腐った形跡や錆なんかは見当たらない」

アゼル:
 まあ、考えても仕方ないか。
「では、ギズリさん。修理をお願いします」

GM:
 ちなみに、ギズリが修理するのは底部を引きずったことで破損した荷台と車軸の接合部分と車軸であって、車軸と車輪の接合部分ではありません。先ほどのギズリの発言にもあったとおり、車軸と車輪の接合部分に特に目立った破損はなかったようです。

アゼル:
 なるほど。

 こうして、ギズリによる荷馬車の応急修理が始まりました。

 脱輪というイベント発生に伴い、馬の骨折と荷馬車の故障というペナルティを与えたわけですが、あとで思い返すと、ギズリの荷馬車にも大量の水樽が積まれていたわけなので、さらに水樽の破損もあったほうが、その後の緊張感が増して良かったかもしれません。

ヤナダーグ・プラト地方地図

エルド:
 修理が終わるのは何時ごろになりますか?

GM:
 そうですね……現在地点はLQ、脱輪したのは9時とします。修理が完了するのは19時ごろですね。皆さんのほうで特に行動がなければ、修理が完了するまで時間を進めてしまいます。

一同:
 進めてオッケー。

GM:
 では、19時までの時間経過による遭遇判定を行っておきます。(コロコロ)

エルド:
 ちなみに、12時以降の天気はどうなりますか?

GM:
 12時から18時は曇りです。

アゼル:
 む。天候予測を外したか……。

エルド:
 18時以降は?

GM:
 18時になる前に何者かとの遭遇が発生したので、天候の確認の前にそちらの処理を行います。時間帯はあなたたちが昼食をとっているころにしましょう。せっかくですから、遭遇対象とその反応を決定する判定はプレイヤーにやってもらいましょうか。

 GMの説明にしたがってプレイヤーがダイスを振っていきます。判定の結果、一行は1頭のチーターと遭遇しました。一行がその存在に気がついたとき、チーターとの距離は72メートル。その段階でチーターは遠巻きに一行のことを観察しているようでした。

GM:
 チーターは体長1メートルちょっとで、スマートかつ大きな猫といった姿をしています。

アル(GM):
 食事の手を止めて、アルが言葉を発します。
「おい、お前ら、気づいてるか?」

アゼル:
「ああ。どうする? 追い払うか?」
 俺自身はチーターを知らないので、大口を叩いている。

アル(GM):
「チーター1頭ならやれないこともないだろうが……こちらから動いてやぶ蛇になるのもな……」

イーサ:
「雌なら単独行動だろうからいいが、雄だと群れをなして縄張りを持ってるから厄介だな」

エルド:
「こちらからつつかなければ大丈夫なんですか?」

イーサ:
「それはわからないが、雄の群れの1頭に手を出すと、他の雄も襲ってきかねない」

アゼル:
「じゃあ、警戒しつつ様子をみるか」

GM:
 では、そのまま時間を進めます。この段階でのチーターはあなた達の様子を観察しているだけで、襲い掛かってはきませんでした。チーターのその後の反応を決めるので、誰かダイスを振ってください。

 しばらく一行の周りをうろついていたチーターでしたが、再判定の結果、敵対反応をしめしました。

GM:
 うーん、空腹をこらえきれなかったのか、あるいはあなたたちを格下だと判断したのか、チーターは数で勝るあなたたちに対して、攻撃を仕掛けようと身構えました。では、戦闘の準備を行います。

アゼル:
 チーターは、魔法の光とかを恐れて逃げたりするのか?

イーサ:
 火を怖がるとかはあるかもな。

エルド:
 チーターに“ダークネス”をかけたら面白そうですよね。そうしたら、時速何十キロっていう速度で暗闇が動き回るんですよ。

アゼル:
 夜目利くだろうからなぁ……。それだと逆にこっちが不利にならないか?

GM:
 データを見落としているようなので補足しておきますが、チーターは夜行性ではありませんよ。事前に行った動植物知識で明らかになったデータを再度確認してください。

イーサ:
 あ、本当だ……。猫科なのに珍しい。移動速度が桁外れに速いだけだな。

GM:
 では、戦闘の準備をしましょう(と言って戦闘マップを公開する)。皆さんのユニットを配置してください。

イーサ:
 オレは馬車の後方に居よう。

アゼル:
 俺はアルさんと並んでチーターのいる側に居よう。

エルド:
 僕はアゼルさんのうしろにいます。

南アルダ街道

GM:
 では、初期配置が終ったところで、行軍開始してからはじめてとなる戦闘を開始しましょう。




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