LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(14)

GM:
 では、荷馬車の応急修理が終わる19時まで時間を進めます。天気は曇りのままです。荷馬車を動かせるようになると、一行は30分ほど離れた場所に移動し、そこに野営地を設置しました。それから夕食をとって落ち着いたのは20時を過ぎた頃になります。
 さて、野営のシーンを進めていく前に、見張りの順番を決めておきましょうか。

アゼル:
 了解。イーサは精神点をかなり消費した状態なんだよな?

イーサ:
 残り精神点は6点。まあ、魔法を生撃ちすることがなければ大丈夫だ。

エルド:
「イーサさん、今日こそ休んでください。これまで休ませてもらっていた分、僕が働きますから」

イーサ:
「いや、特別休ませてもらわなくても、6時間眠れれば十分だ。護衛の務めは果たさないとな」

アゼル:
「なら、イーサには先休んでもらって、明け方を担当してもらおう。俺は昨日までと同じく、最初と最後の見張りにつく」

エルド:
「じゃあ、僕がアゼルさんと一緒に最初の見張りをやって、アルさんとセルダルさんには中番をやってもらうということでいいですかね」

 こうして見張り番が決定すると、3日目の野営がはじまりました。

GM:
 さて、その晩も寝る前にニルフェルが“演奏”を行います。(コロコロ)これで環境ランクがひとつ良くなりました。

イーサ:
 それじゃ、早速休ませてもらうか。

アル(GM):
「イーサ。休もうとしてるところにすまないんだが、ちょっと来てくれるか?」

イーサ:
「ああ。構わないが、どうした?」

GM:
 アルはそのままシシュマンたちの使っているテントの中へと入っていきます。そこにはシシュマンとサブリの姿がありました。

シシュマン(GM):
「時間をとらせてすまないな。お前さんに来てもらったのは、明日の出発前に相談しておきたいことがあるからなんだ」

イーサ:
「相談しておきたいこと?」

シシュマン(GM):
「ギズリに応急修理してもらった荷馬車のことなんだが……どうにもこれまでどおりの速度を維持するのは難しそうなんだ。修理そのものは上手くいったんだが、それを引く馬のほうが問題でな。捻挫してる馬を使わざるを得ないから、その分どうしても速度を落とすことになる。ここからは、1日20キロ、無理して30キロ進めるかどうかってところだろう」

イーサ:
「ふむ……」

シシュマン(GM):
(行軍計画の記された地図を広げてから)
「あと110キロほど。衛星都市のカラーラまでなら90キロ。水と食料の残りは4日分といったところだ」

アル(GM):
「これ以上アクシデントが発生しなければ、水や食料はなんとか足りるだろうが、仮に砂嵐でも発生して足止めを食らったときには……」

イーサ:
「馬の捻挫といい、荷馬車の脱輪といい、不運なアクシデントが続いているからな……。この先、順風満帆で進めればいいが、楽観的に考えるのは危険か」

アル(GM):
「実は、そのことなんだが……。いま、こうやって、ここにいる4人だけで相談してるのは、荷馬車の脱輪が人為的な事故だったんじゃないかっていう疑いがあるからなんだ」

イーサ:
(少し驚いた様子で)「それは、何か根拠でもあるのか?」

アル(GM):
「実は、ギズリが荷馬車の修理をしているあいだ、俺は周囲に散らばった荷馬車の部品を回収しておこうと事故現場周辺を見回っていたんだが、車軸に車輪を固定しておくための軸止めだけがどこにも見つからなかったんだ。壊れて紛失したのならいい。だが、車軸と車輪のどちら側にも、軸止めが破損するほどの衝撃を受けた形跡は見当たらなかった。あれは自然に抜け落ちるようなものじゃない……。となると、軸止めはもともとついてなかったと考えるのが妥当なんじゃないか?」

イーサ:
「どういう意味だ?」

アル(GM):
「つまり、誰かが故意に軸止めを抜き取った可能性があるってことだ」

イーサ:
(しばらく考えてから)
「たしかに、こうアクシデントがつづいては、その可能性を疑いたくなるのもわかる……。だが、そんなことする奴がこの隊商の中にいるとは思えないが……」

アル(GM):
「もちろん、隊商長であるシシュマンがそんなことするはずはないだろう。1日も早くクゼ・リマナに荷物を届けなけりゃならないサブリもそうだ。俺の視点から見る限り、マーキ・アシャスからここまで行動を共にしていたお前も除外される。で、俺自身については、お前に保証してもらう。まあ、もし護衛長である俺が犯人だとしたら、そのときは諦めてもらうしかないけどな(笑)」

イーサ:
「それはないな。俺が保証しよう。隊商の妨害をしても、俺たちにとっては何のメリットもない」

アル(GM):
「ああ、そうだな。だが、それ以外の奴らのことについてはわからない」

イーサ:
「ここにいる4人以外の誰かが犯人だと?」

アル(GM):
「勘違いしてもらいたくないが、その可能性があるってだけで、もしかするとただ不運が重なっただけなのかもしれない。だが、もし人為的な妨害であったなら、これ以上の邪魔を許すわけにはいかない。だから、今後、馬や荷馬車の管理はこれまで以上に厳重に行っていこうと思う」

GM:
 その言葉に同意するようにシシュマンとサブリはうなずきました。

シシュマン(GM):
「それでだ。いまのアルの話を踏まえたうえで、ワシらは先に進むか、あるいは来た道を戻るかを決定せねばならん。先に進むことに対して妨害が行われているなら、戻ることには支障はでんだろうし、イスタス跡地までなら荒れた道は少ないうえに70キロしか離れとらんからな」

イーサ:
「人為的な妨害がなかったとしても、悪天候に見舞われたら残りの水と食料だけでは厳しいしな。そこまで急いで先に進む必要がなければ、いったん戻って出直すのがいいのかもな……」

サブリ(GM):
「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょっと待ってくれッ! 急いでるんだよッ! 知ってんだろッ!? 俺は急いでんだッ!」

一同:
(爆笑)

サブリ(GM):
「行くも戻るも、ほとんど距離は変わらねぇんだぞ。だったら進んだほうがいいに決まってる! 戻って日数を掛けちまったら、かえって妨害する輩が増えるだけかもしれねぇぞ? ほら、あんたら、カダって奴を逃がしちまったんだろ?」

イーサ:
「ふーむ。距離はどっちも同じくらい……か?」

サブリ(GM):
「そうさ。進もうが、戻ろうが、四捨五入すればどっちも100キロ。これはもう同じと言っていい!」

一同:
(爆笑)

イーサ:
「そのちょっとの違いが明暗を分けそうなんだが。なにせ、先に進んだ場合、水と食料がギリギリだからな。妨害があることを考えれば、少しでも余裕があるほうが……」

サブリ(GM):
「ぬぅ……。そ、そうだ! あれこれ悩むくらいなら、妨害する犯人をさっさと捕まえちまおう!」

イーサ:
「犯人を捕まえるねぇ……」

サブリ(GM):
「たとえばだ、あのエルドって小僧、怪しくねぇか? あの黒い肌。ありゃ、奴隷あがりだろ?」

シーン外のアゼル:
 そうだよな。エルドは怪しいよな(笑)!

シーン外のエルド:
 疑われたって大丈夫です。僕には、いざとなったら自分の身の潔白を証明できる切り札がありますから。

サブリ(GM):
「それに、ギズリとジェザの2人だって怪しいもんだ。そもそも、俺は以前からギズリは気に食わない野郎だと思ってたんだ。あいつは、金持ちばかり相手に商売しやがって、少し調子に乗ってるところがあったからな」

GM:
 サブリはこんなこと言ってますが、ギズリの扱っている商品は珍しい調度品ばかりなので、収集癖のある金持ち相手の商売になるのは当然のことなのですけどね(苦笑)。

イーサ:
「たしかに、ギズリは別にしても、ジェザは得体の知れない男だな……。サブリさんやシシュマンさんは、ジェザって奴が何者なのか知らないのか?」

サブリ(GM):
「これっぽっちも知らねぇよ。ギズリの奴は相棒だって言って連れて来たが、あのひげ面……怪しいったらありゃしねぇ」

シシュマン(GM):
「ワシも、ジェザとはこの間ギルドの寄り合い所で会ったのが初めてだ」

サブリ(GM):
「あと、アゼル、ニルフェル、セルダルの3人組も怪しいぞ。なんせ、クルト一族は財政難で窮地に陥ってるって話だ。もしかすると、最初から俺たちの積荷を奪うのが目的で隊商に参加したのかもしれねぇ」

シーン外のアゼル:
 もちろん、そんなことないけどな(笑)。

サブリ(GM):
「よくよく考えてみりゃ、あのハージって女だって怪しいもんだ!」

イーサ:
「そりゃ、疑いの目で見れば、誰だって怪しく見えてくるさ……」
(しばらく考えてから)
「じゃあ、明日の出発までに人為的妨害を行った犯人を突き止めることができれば先に進む。もし、できなかった場合には、来た道を引き返すってのはどうだろう?」

シシュマン(GM):
「ふむ。ワシはそれでも構わんが……。皆、イーサの提案に異論はないか?」

アル(GM):
「ああ。俺は異論ない」

サブリ(GM):
「そういうことなら、なんとしても犯人を見つけ出してやる!」

シーン外のエルド:
 でも、その流れだと、翌朝まで何も起こらず来た道を引き返すことに……ってのも十分ありえるパターンですよね(苦笑)?

イーサ:
 少なくとも、犯人は昨日の馬の捻挫と今日の荷馬車の脱輪の2日連続で妨害してることになるだろ。あと一押しすれば、カルカヴァンへ進むことを断念させられそうなんだから、今晩も仕掛けてくると思うが。

シーン外のアゼル:
 馬が捻挫したのも妨害工作なのか? そもそも、捻挫するような状況って人為的に作り出せるものなのか?

GM:
 ルール的に言うと、疲労が30点以上溜まったときに疲労影響表を用いた判定を行い、その結果によっては捻挫します。さらに運が悪いと骨折したり、混乱して暴れ馬化したり、あるいは絶命したりします。

シーン外のアゼル:
 ってことは、馬を一晩中休ませなければ、疲労が溜まって捻挫することもあるわけか……。

イーサ:
 とは言っても、一晩中馬を寝かせないようにするのって結構たいへんなんじゃないか?

シーン外のアゼル:
 興奮する薬を飲ませておく……とか?

一同:
 うーん……。

 さあ、こうして始まった犯人探し。はたして犯人は本当に存在するのか? もし犯人が存在するとしたら、いったい誰が犯人なのか? そして物語は意外な方向へと……。

犯人はこの中にいる!?



誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。