LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(16)

GM:
 さて、イーサもそろそろ休みますか?

イーサ:
 うーん。その前に、やはりアゼルだけでなく、エルドにも協力を求めておこう。2人とも野盗退治では命懸けで働いてくれたんだから、信じていいはずだ。
 意を決して、「実は……」と切り出した。

アゼル:
「ん? どうかしたか?」

イーサ:
「短い付き合いとはいえ、お前たちは信用できると思うから話すんだが……。今日の荷馬車の脱輪事故。あれは俺たちが先に進むことを妨害しようとする人為的な工作かもしれない」

エルド:
「そうなんですか?」

イーサ:
「シシュマンたちと相談してたのはそのことなんだ。それで、明日の朝までに、その妨害工作を行った犯人を捕まえることができなかったら、イスパルタに引き返そうという話になった」

エルド:
「それじゃ、天候によって進むか戻るかを決めるという話は……?」

イーサ:
「俺が考えたデマカセだ。あの場にいた全員を信用できるかどうかわからなかったからな」

アゼル:
「犯人の目星はついてるのか?」

イーサ:
「お前らとセルダルとニルフェルは白だと思っている。消去法で、ギズリ、ジェザ、それにハージさんの中の誰かが犯人……ということになるか……」

エルド:
「なるほど……。そういえば、イスパルタを出てからというもの、ジェザさんは道すがらやたらとうしろのほうを気にしていて、2日目からは疲れが溜まっているのか歩行速度も遅れてきてるようでしたよ」

イーサ:
「そうか……。しかし、いまさっきのギズリの様子だと、カルカヴァンへの到着が遅れると困るような感じだったが、その相棒であるジェザが先へ進むのを妨害するってのも変な話じゃないか?」

エルド:
「ギズリさんとジェザさんの目的が同じだとは限らないですけどね」

アゼル:
「で、それを俺たちに話して、具体的にはどうするつもりなんだ?」

イーサ:
「もちろん、犯人を捕まえるのを手伝って欲しい」

 こうして、犯人を捕まえる手段を話し合った結果、夜起き出した者の動きを監視すると共に、エルドが見張り番を務めるあいだは“サウンド・キャリー”をかけた小石を馬の近くにおいて、その周辺の物音に注意を払うこととなりました。そして、アルとセルダルが見張り番を務めるあいだは、イーサが寝た振りをして起き出す者の動向をチェックするといった計画です。

 計画が決まるとイーサは就寝し、エルドたちは“サウンド・キャリー”の準備を済ませて不審な行動をとる者が現れるのを待ち続けました。

“サウンド・キャリー”
 レベル2黒魔法。物体にマーキングを施すことで、1キロほど離れた場所からでもマーキングした物体が存在する地点の音を聴くことができるようになる、盗聴用の魔法です。なお、効果時間は2時間持続します。

GM:
 とりあえず、最初にかけたサウンド・キャリーの効果が切れるまでの2時間、特に変わったことはありませんでした。

アゼル:
 その間に用足しに起きた奴は居たのか?

GM:
 そうですね……。(コロコロ)セルダル、サブリ、アルの3人が用足しに起きたようです。

エルド:
「アゼルさん、あの……」

アゼル:
「ん? どうかしたか?」

エルド:
「すごく言いづらいんですけど、これ以上盗聴を続けるのは精神的にかなり堪えるんですが(苦笑)」

GM:
 ああ……なるほど。排泄音ですね。

一同:
(爆笑)

エルド:
「どうします? アゼルさんが続けろと言うなら、頑張りますけど……。これ、相手が女性の場合、完全に犯罪ですよね……」

アゼル:
「だが、リスクが少なく、確実に情報を得られる手段は他にないしなぁ」

エルド:
(ため息混じりに)「仕方ないですね。了解しました」
 誰も起きてこない間を見計らって、サウンド・キャリーを再度使っておきます。(コロコロ)発動。

GM:
 では、さらに1時間、特に何事もなく過ぎ、あなたたちの見張り時間が終わりました。

アゼル:
 じゃあ、アルとセルダルを起こして、見張り番を替わってもらおう。

エルド:
 僕もテントに戻ります。サウンド・キャリーの効果時間があと1時間残ってるので、その間は音を聴いておきます。

GM:
 了解です。サウンド・キャリーの残り効果時間内に用足しに行ったのは、(コロコロ)セルダルだけでした。

シーン外のアゼル:
 また、セルダルかよッ(笑)!

サウンド・キャリーで聞こえたセルダルの声(GM):
「やっぱ、あんとき食ったやつがマズッたかな……。見た目はまだいけそーだったけど、味はちと腐ってるっぽかったもんなぁ……」

一同:
(爆笑)

イーサ:
 アルとセルダルが見張り番をしているあいだ、起き出す奴がいないかを確認しておきたいんだが、隣のテントの動きまではわからないよな?

GM:
 まあ、物音に気づけるかもしれませんから、目標値12の聞き耳判定をしておきますか。

イーサ:
 “聞き耳”か……。対応する技能は持ってないんだよな……。(コロコロ)6で失敗。

GM:
 それでは、隣のテントの動きはまったくわかりませんでしたね。あ、ついでに今度は全員で別の聞き耳判定を行ってください。目標値は10です。

エルド:
(コロコロ)10で成功です。

GM:
 では、テントの外から「セイッ!」「ヤッ!」「ハッ!」という掛け声が聞こえました。外の様子を確認しますか?

エルド:
 どのみち“サウンド・キャリー”の音を1時間聴いていたので、精神点の回復に必要な睡眠時間は確保できませんからね。起きて、テントの中から外の様子をうかがいます。

GM:
 エルドがテントの外を見てみると、そこには剣の稽古をしているセルダルとアルの姿がありました。

エルド:
 前の晩に聞こえた音もこれだったようですね。それだけ確認したら、とくに何もせずに横になります。

GM:
 では、そのまま何事もなく最後の見張りの時間となります。最後はアゼルとイーサの番ですね。不穏な行動をとる者を見つけられぬままに、2人でたき火を囲むこととなりました。

アゼル:
「……俺のほうでは怪しい者は見つけられていないが、そっちはどうだ?」

イーサ:
「こっちもだ。ただの取り越し苦労だったのかもな。ひとまず、最後の3時間、警戒を怠らずにいよう」
 いまさらなんだが、犯人の目的が隊商のカルカヴァン到着阻止だったとして、次の朝までに犯人を見つけられなかったらイスパルタに戻ることになったってことが犯人の耳に入ったなら、犯人としては目的を達したことになるんだから何もしてこないよな。

アゼル:
 そうなったら、これ以上妨害する必要ないもんな(苦笑)。

イーサ:
 失敗した。犯人をあぶりだすつもりなら、なんで「先に進むことに決定した」って情報を流さなかったんだろう……。

GM:
 さて、ここで最後の見張り番の方は聞き耳判定を行ってください。目標値は10です。

アゼル&イーサ:
(コロコロ)失敗。

GM:
 では、2人はかすかに届いた音には気づかず、しばらくしてから周囲を照らす火の明かりの中に動くものが入ってきたところでその存在に気づきました。東側の警戒用の明かりにチラリと照らしだされたその小さな姿の動物は、馬の繋がれているほうへ進みつつあります。

アゼル:
「なんだ?」と言って追いかけよう。

GM:
 その小動物は、馬のほうへ数歩進んでから歩みを止め、くるりと身を翻して少し下がったあとに、再び馬のほうへ進むといった動作を繰り返しています。ちょうど明かりと暗闇の境界線あたりにいるので、その姿は見えたり見えなかったりします。すでに動植物知識の判定に成功しているエルドは、その小動物がラーテルであることが判りました。

イーサ:
 俺もアゼルのあとを追って、ラーテルのほうへ向かおう。

GM:
 ならば、ラーテルの近くへと歩み寄ってきたところで、再び目標値10の聞き耳判定を行ってください。

アゼル&イーサ:
(コロコロ)失敗。

GM:
 それでは仕方ないですね。不意打ち判定を行います。《ハンター技能レベル+知力ボーナス+2D》の対抗判定で、(コロコロ)こちらは闇の中から襲い掛かった分のボーナスを加えて、8です。

アゼル:
 うわっ! 何かに追われていたのか? (コロコロ)判定は6で失敗。

イーサ:
(コロコロ)ダメだ。俺も失敗。

GM:
 ならば、アゼルとイーサで《2D》の対抗判定を行ってください。出目の低かったほうが暗がりにより近かったとして、不意打ち攻撃を受けます。

イーサ:
(コロコロ)9。

アゼル:
 これは俺が受けたほうがいいだろうな……。低い目出ろ! (コロコロ)よし、5。

GM:
 では、闇の中にキラリと光りが走った次の瞬間、ジャキンッ!という音と共に、鋭い一撃がアゼルを襲いました。

アゼル:
「うわあああッ!」

野営地見取り図



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