GM:
では、闇の中から何者かの鋭い一撃がアゼルを襲ってきたところから戦闘処理として解決していきます。現在アゼルたちがいる場所は、ちょうどたき火の明かりと暗闇との境界になるので、命中力に-2、回避力・ディフレクト力に-1のペナルティが発生するものとします。こちらの命中値は、(コロコロ)7です。
アゼル:
あまり高い命中値じゃないが、こっちの回避力も2しかないからな。(コロコロ)よしッ。8で回避成功。
「あぶない!」
GM:
ギリギリその攻撃を回避したアゼルの目には、体長が1.5メートルほどもある大きな赤黒い蟻の姿が映ります。放たれた一撃は、牙によるものでした。
アゼル:
自分の手番、腰に下げていた剣を2本抜いて構える。
イーサ:
「こいつは……ジャイアント・カタグリフィス!」と言って“小移動”しつつダガーを引き抜く。
GM:
つづいて、闇の中からさらに2匹目の巨大砂蟻が姿を見せました。さて、どちらに攻撃しましょうか……。ここはダイスの神様に委ねて、(コロコロ)アゼルに攻撃が集中します。
攻撃の命中値は、(コロコロ)8です。
アゼル:
方向転換で新手に正面を向けて、その攻撃を“回避”する。(コロコロ)おおッ! 8でギリギリ回避成功。
GM:
上手く避けましたね。ですが、それで終りではありませんよ。さらにもう1体が闇の中から現れて、(コロコロ)こちらは“迎撃移動”でイーサに隣接して行動終了です。
イーサ:
次は俺の番だな。俺に対して側面を向けてる巨大砂蟻Aに向かって攻撃!
「アゼル、やられる前にやるぞ!」
GM:
巨大砂蟻Aの回避値は、(コロコロ)10です。
イーサ:
命中値は、(コロコロ)11で命中! ダメージは、(コロコロ)4点。
GM:
4点ですか……。では、イーサの一撃は巨大砂蟻の鈍く光る甲皮の前に、乾いた金属音を立てて弾かれてしまいました。その程度の攻撃ではこいつらには通用しませんね。
アゼル:
やっぱり堅いなぁ……。俺のほうはまだしも、イーサの短剣程度でダメージを与えられるのか?
GM:
つづいて巨大砂蟻Cがイーサの側面から巨大な顎牙で攻撃してきます。命中値は、(コロコロ)9です。
イーサ:
方向転換して正面を向けてから、(コロコロ)回避値12で避けた。
GM:
さすがにイーサは素早いですね。
次は巨大砂蟻Aによるアゼルへの攻撃です。側面からの攻撃で、命中値は、(コロコロ)6。
アゼル:
うげッ! さっき方向転換したばかりで、次の方向転換が間に合わない。横から受けると回避力0かよ。こりゃ、厳しいな……。(コロコロ)よしッ! よしッ! 11で超回避!
シーン外のエルド:
あのー、喜んでいるところに水を差すようですけど、いつまで2人で戦っている気ですか? さっさと叫ぶなりして僕たちのことを呼んでくれないと、救援に駆けつけられないのですが……。
アゼル:
あ、そうか! GM、叫ぶのは自分の手番じゃないとダメ?
GM:
いえ、それくらいなら自分の手番以外に行っても構いませんよ。
アゼル:
それじゃ、大声で叫ぶ。
「皆、起きてくれッ!」
GM:
では、エルド、アル、セルダルの3人はここからイニシアチブを振って戦闘に参加することになります。次に自分の順番が回ってきたら、テントの中から登場させてください。
エルドの助言のおかげで、ようやくアゼルが仲間に助けを求めてくれました。それがなくても、もうしばらくしたらエルドたちに騒音で目が覚めるかどうかの判定をしてもらう予定でしたが、アゼルが叫び声を上げたので無条件で戦闘参加できることにしました。
アゼルとイーサの戦闘レベルは巨大砂蟻と同じく2なので、2対3の戦闘では明らかに不利です。ソード・ワールドRPGで登場するモンスターのレベルは、基本的に同レベルのキャラクターが1対1で倒せる相手であることを示すものですが、LOSTの場合は同レベルのキャラクターとほぼ同じ強さであるいう意味であり、タイマン勝負をするには相当な覚悟がいります。
アゼル:
俺は叫び続けながら、そのまま巨大砂蟻Bに攻撃する。(コロコロ)命中値は8。
GM:
巨大砂蟻Bの回避値は……(コロコロ)1ゾロで自動失敗。ダメージをどうぞ。
アゼル:
「唸れッ! クルト・ソード!」
(コロコロ)物理ダメージで10点ッ!
GM:
10点ですか。ならば、その一撃は巨大砂蟻の甲皮にほんの少しだけ傷をつけました。おめでとうございます。初ダメージです(笑)!
イーサ:
通るには通ったみたいだが……あまり効果なさそうだな(汗)。
まだ大した破壊力を持っていない低レベル帯のキャラクターが高い物理防御力を誇る相手にダメージを与えるためには、物理ダメージを向上させる行動オプションや補助魔法を用いたり、魔法ダメージを与えることができる攻撃手段などを用いる必要があります。しかし、すでに接敵しているイーサに魔法を唱える余裕はなく、一方のアゼルも防御特化型の設定であるため、よほどの幸運に恵まれなくては大ダメージを見込めません。逆に、時間の経過とともに数で勝る巨大砂蟻の攻撃が当り始め、2人の生命点は徐々に奪われていきました。そして――
GM:
巨大砂蟻Cがイーサに攻撃します。(コロコロ)命中値は10。
イーサ:
“全力回避”を選択。(コロコロ)うわッ! ここで1ゾロかよ……。
GM:
ダメージは物理で10点です。
イーサ:
危なッ! あと1点通ってたら士気判定が必要だった(汗)。
アゼル:
「やばいッ! 誰でもいいから早く来てくれーッ!」
GM:
つづいて巨大砂蟻Aがアゼルの側面から攻撃してきます。(コロコロ)おや? 巨大砂蟻の調子が上がってきたみたいですね。命中値は14です。
アゼル:
ぐはッ! それは6ゾロを出さないとかわせないな……。(コロコロ)ダメだ……8で失敗。
GM:
では、ダメージですが……(コロコロ)ここでクリティカルが発生! 16点の物理ダメージです!
アゼル:
うおおおおおッ! 9点抜けた! やばいッ! やばいッ! 生命点が半分切った!
GM:
残り生命点が半分を切ったのであれば、《戦闘レベル+精神力ボーナス+2D》で目標値12の士気判定を行ってください。この判定に失敗すると、戦意喪失して撤退行動、あるいは消極的防御行動を取らなくてはならなくなります。
アゼル:
(コロコロ)うわぁー、11で士気判定に失敗。終わったなこれは……(落胆)。
イーサ:
これ、撤退するとなると戦闘フィールドの外に逃げることになるのか?
GM:
いえ、戦闘フィールド内外にかかわらず、安全な場所へ退避することになります。今回のケースではテントの中に逃げ込むということにしておきましょうか。野営地から離れてしまうと、かえって危険ですからね。
シーン外のエルド:
(ボソリ)“可能性”を使って士気判定をやり直せばいいのに……。
アゼル:
そ、そうだな。ここは“可能性”をつかって振りなおしておこうか……。俺が撤退しちゃうと、残されたイーサが死んじゃうもんな。
イーサ:
まあ、俺が死ぬかどうかはわからないが、とりあえずここでアゼルが「うわぁーッ!」って言いながら逃げる姿は見たくないなぁ(苦笑)。
アゼル:
よし、“可能性”を使って士気判定をやり直す! 次こそはいい目を出すぞ! (コロコロ)あーッ! また、1足りない。今度こそ戦意喪失した。
「うわぁーッ!」
イーサ&シーン外のエルド:
(爆笑)
盾役として敵の攻撃を食い止めるはずのアゼルが早々に戦意喪失してしまい、いきなりの大ピンチです。さらに、アゼルはまだ2匹の巨大砂蟻に接敵されている状態であり、無事に撤退できる保証すらありません。
GM:
そのようにしてアゼルの絶叫が響き渡るとほぼ同時に、騒ぎを聞きつけたセルダルがテントの中から飛び出してきました。
セルダル(GM):
「敵の襲撃かッ!?」
テントを出たセルダルは、状況を確認すると弾かれたようにアゼルたちのほうへと走り出します。
アゼル:
「助けてくれーッ!」
あわわ……あわわ……。
シーン外のエルド:
セルダルさんはこの情けないアゼルさんの姿を目にして、どう思っているんでしょうね(苦笑)。この調子だと2人の立場が逆転する日も近いんじゃありませんか?
まったくいいところなしの状態が続くアゼル。得意の盾を装備せずに二刀流を選択しているところからすると、この戦闘を演出重視のものだと誤解していたようです。アゼルが盾を装備していたのであれば、“ディフレクト”を用いて“回避”よりも基本値が1つ高い状態で、かつ側面からの攻撃にもペナルティを受けずに防げていたはずでした。敵戦力の冷静な分析は今後の課題ですね。
この後、巨大砂蟻との激戦はさらなる佳境を迎えます。はたしてアゼルはこの失態を拭い去り、威厳を回復できるのでしょうか? そもそも、無事に生き延びることができるかどうかも微妙なところではありますが(苦笑)。