LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(22)

アゼル:
 出発前に、念のため天候推測をしておこう。(コロコロ)11。

GM:
 それだと、昼頃から小雨になるだろうと推測できます。

エルド:
 天候と同じく、隊商の雲行きも悪くなってきましたね。ギクシャクした感じがたまりません。

GM:
 いったい、どこでボタンの掛け違いが発生してしまったんでしょうね。

エルド:
 アゼルさんが血まみれでテントの中に駆け込んだときからですかね(笑)。

アゼル:
 いやいや、もっと前からだ! ハージさんが勝手に水を使ってしまったころだろ。

イーサ:
 あのときに上手くフォローできていれば……。

アゼル&エルド:
 ……。

GM:
……さて、気を取り直して行軍を再開しますよ。
 シシュマンの荷馬車は元気な馬2頭が、サブリの荷馬車は元気な馬1頭と捻挫している馬1頭がそれぞれ引いていきます。あと、ジェザが昨日までの行程で足首を痛めたらしく、今日からはロバに乗った状態で進むことになりました。護衛を務める人たちは全員徒歩ですね。捻挫した馬に荷馬車を引かせているため、移動ランクが5(4時間/10キロ)まで落ちた状態で地図上のLP地点まで進みます。行軍の途中、《スカウト技能+知力ボーナス+2D》で目標値8の判定を行ってください。

エルド:
(コロコロ)成功です。

GM:
 ならば、エルドは今日もうしろを気にかけるジェザの姿を確認しました。

 午前の行軍中、ジャイアント・シカリウス(巨大砂蜘蛛)を間近に見かけることがあったものの、ちょうどジャイアント・ジャービル(巨大砂鼠)を捕獲している途中であったこともあり、戦闘することなく進むことができました。そして、昼休憩にはギズリによって朝さばいた馬肉が振舞われました。

ギズリ(GM):
「そら。馬肉のステーキだ。たんまりあるから腹いっぱい食えよ」

アゼル:
 馬肉って普段からよく食べるものなのか?

GM:
 いえ、イスパルタ周辺では馬肉を食べる習慣はありません。

アゼル:
「ほう。馬肉を食べるのは初めてだ」
 さばきたてだから馬刺しだな。

イーサ:
 いやいやいや、ステーキだって言ってるだろ(笑)。どんだけ馬刺しが食べたいんだよ!

GM:
 出された馬肉は、味付けもなにもないただ焼いただけのものだったので、あまり美味しくありませんでした。それも、食用に飼育されたものではありませんからね。

エルド:
 それでも僕は気にせずに食べます。育ちが育ちですから。

アゼル:
 せっかくだし、食事中にギズリさんに話しかけようかな。

GM:
 ギズリは相棒のジェザと2人で少し離れたところに座って食事をしています。ギズリとジェザ、シシュマンとサブリ、そして護衛の5人という3つの集まりがそれぞれ少し距離をあけて座り、その中央にニルフェルとハージの2人組みが位置取っています。

アゼル:
 ジェザさんと一緒にいるならやめておくか……。離れてるなら探りを入れようかと思ったんだが。

エルド:
 なら、そのかわりに僕からアゼルさんにひとつ報告をしておきましょう。
「今日もジェザさんはうしろを気にしているみたいです」

アゼル:
「いったいなにをそんなに気にしてるんだろうな?」

エルド:
「さあ、なんでしょうか。普通の警戒とは違うような気がします」

アゼル:
「なるほど……」
 アルさんのほうにも話を振ってみよう。
「ジェザさんがやたらと後方を気にしているのはどうしてだと思う?」

アル(GM):
(小声でボソリと)「少しは自分で考えろ……」

イーサ&エルド:
(爆笑)

GM:
 さすがのアルも今朝のやり取りでピリピリしているようですね。それを察したセルダルが場を和ませようと口を挟んできます。

セルダル(GM):
「実のところジェザの奴は野盗の回し者で、うしろからちゃんと仲間がついて来てっかどーかってのを確認してんじゃねぇか? なーんちゃって」

アゼル:
「仲間? 仲間か……」
(腕組みして考え込む)

セルダル(GM):
「いや、じょーだんだよ。じょーだん」

イーサ:
「まあ、ただ臆病なだけなのかもしれないし、これ以上気にしたところで仕方ないだろ」

セルダル(GM):
「どっちにしたって、先を急いだほーがいーのさ。何者かがオレたちのあとをつけてきてるとしても、振り切っちまえば関係ねー。だから、あんまり難しく考えんなって」

アゼル:
「そうだな。なんでも気にしすぎるのは俺の悪い癖だ。すまない」

セルダル(GM):
「まあ、それでなんか答えを見つけてくれるってゆーならいーんだけどな。オマエの場合、散々引っ掻き回した挙句、身動き取れなくなって終っちまうからなぁ」

イーサ&エルド:
(爆笑)

アゼル:
「そ、そんなことはないぞ!」

イーサ:
 俺たちの中では知力19のアゼルが一番賢いはずなんだけどな……。

アゼル:
 まあ、実際その知力の高さを発揮できてないんだよな(苦笑)。

 アゼルが知性派としてその本領を発揮するまでには、まだしばらく時間が必要なようです。

 この後、アゼルの“天候予測”は外れて昼過ぎになっても小雨が降ることはなく、一行は予定通り地図上のKO地点まで進むと、そこで野営することにしました。野営設置から見張り番の決定など、ルーティンワークにも慣れはじめてきたようで、GMの指示がなくてもそつなく進んでいきます。

GM:
 では、2番目の見張り番が終わって、見張り番を務めていたアルとセルダルがテントに入ってきます。

セルダル(GM):
 セルダルがイーサとエルドを起こします。
「おい、見張り交代の時間だぞ。少し前に、そう遠くないところから遠吠えが聞こえてきたから注意しろよ」

GM:
 セルダルの言葉が終わったところで、ちょうど犬の遠吠えのような声が聞こえてきます。

エルド:
「イーサさん。この遠吠えはなんの声だかわかりますか?」

GM:
 イーサはすでに動植物知識判定に成功しているので、その遠吠えがジャッカルのものであるとわかりますよ。

イーサ:
「おそらくジャッカルだ。距離も近いし、警戒しておいたほうがいいな」

GM:
 ジャッカルは単体の戦闘力こそ大したことありませんが、十頭前後の群れで狩りをします。得物の群れを何日もしつこく追跡して、弱って群れから脱落した個体を狙ってくる習性があり、死肉を食らうことから、旅人の中にはジャッカルのことを死を招く者として恐れている者もいます。

シーン外のアゼル:
 面倒な相手だな。

イーサ:
 とりあえず、外に出て見張りをはじめる。

エルド:
 僕もテントの外にでて、たき火の前に座ります。
「そういえば、イーサさんにはまだ聞いていませんでしたよね? イーサさんは、どこまで、なにをしに行くんですか?」

イーサ:
「ん? 俺か? まあ、物見雄山がメインだからどこが目的地だってこともないんだが、旅に出た動機のひとつは人探しだな。とは言っても、手がかりなんてほとんどないから、旅のついでに見つけられればって話だが……。そいつと最後に会ったのはずいぶん昔のことだし、もう死んでるかもな」

GM:
 え? その設定、初耳なんですが(汗)?

イーサ:
 いや、まだ設定を考えてるところで、まとまりきってないんだ。

 思わぬところで明らかになったイーサの旅の目的。すでに公開されている情報と矛盾しないように上手くまとめてもらいたいところです。GMとしてもこの設定を上手くシナリオに組み込めるように考えなくてはなりませんね。しかし、イーサの探し人とはいったいどのような人物なのでしょうか?

エルド:
「探している人って、昔の恋人とかですか?」

イーサ:
「恋人? まさか(笑)。この俺にそんな相手がいると思うか?」

エルド:
「どうでしょう? でも、いろんなところを旅していれば、そういう相手の1人や2人くらいできるのでは?」

イーサ:
「アゼルの奴にも勘違いされてたみたいだが、俺はそんなに長く旅を続けているわけじゃないぞ」

エルド:
「そうなんですか。ずいぶん旅慣れているように見えたんですが……」

イーサ:
「そういうエルドのほうこそ、どんな目的で旅をしてるんだ?」

エルド:
「目的というか……ちょっとした小間使いですよ。知り合いから頼まれていることがありまして……」
 そんな身の上話をしつつ、時間が過ぎていくということで。

GM:
 了解です。2人が見張り番をしているあいだ、ジャッカルの遠吠えが絶え間なく聞こえていたのですが、特に襲撃を受けることもなく、朝の4時を迎えました。一行はまだ薄暗い中で準備を整えると、5時には野営地を出発します。

 さて、夜が明けて南アルダ街道の旅を再会した一行でしたが、そんな彼らのあとを一定の距離を置いてついてくる者たちの姿がありました。一度狙った獲物を執拗に追い回す、死の使者ジャッカルです。

GM:
 ジャッカルたちは、あなたたちの後方150メートルくらいのところを、付かず離れずついてきています。その数は10頭程度といったところでしょうか。

アゼル:
 足早にアルさんのほうへと走っていく。
「さっきから、ずっとジャッカルがついてきている。10頭近くいるみたいだ」

アル(GM):
「わかっている。昨晩からつきまとっている奴らだな……」

アゼル:
 イーサとエルドにも同じことを伝えておこう。あとは自分の配置について、ジャッカルの動きに警戒しておく。

 ジャッカルの追跡に警戒しつつも、14時頃に地図上のJN地点まで到着した一行は、そこで少し小休憩をとることにしました。ここまで、ジャッカルの動きに大きな変化は見られませんが、このまま進むとジャッカルの追跡を受けたまま夜になってしまいます。休憩中、アルは護衛の面子を集めると、ジャッカル対策についての相談を始めました。

アル(GM):
「皆も気になっているだろうが、ジャッカルが完全に俺たちのことを付け狙っている。ジャッカルそのものに後れを取るようなことはないだろうが、万が一、ほかの野生動物と挟まれる格好になると厄介なことになる。それだけは注意しないとな」

アゼル:
「たしかにそれは怖いな。かといってジャッカルを追い払える方法を思いつきもしないんだが……」

エルド:
「チーターのときのように暗闇の魔法で追い払う……わけにはいきませんよね?」

アル(GM):
「ジャッカルは夜行性だからな。そんなことをしたら逆にこっちが不利になりかねない」

アゼル:
「もう少し進めば整備された街道に出るし、そこまでは様子を見ないか?」

エルド:
「でも、夜になってからジャッカルに襲われたら、ちょっと面倒じゃありませんか?」

アゼル:
「なら、魔法をぶち込んで1、2頭倒して追跡を諦めさせるか?」

イーサ:
「ジャッカルがその程度で諦めるとは思えないが……」

GM:
 システムとしては、勢力を半数以下にまで減らせば士気判定が入ります。

アゼル:
 まあ、ジャッカルは戦闘レベル1だし、その程度の敵だったらいつ襲ってきても構わないけどな。

GM:
 戦闘レベル2の蟻から逃げ出した人が、ずいぶんと強気な発言ですね。

イーサ&エルド:
(爆笑)

アゼル:
 いや、あれは不意打ちされて出鼻を挫かれたからであって……。

エルド:
 まあ、明かりを持たずに闇の中で戦えば、そういう結果にもなりますよね(笑)。
「もし戦うのであれば、おとり役はアゼルさんにお願いします。ジャッカルたちがアゼルさんに群がっているところを、遠くから魔法で狙撃しますから」

アゼル:
「たしか、ジャッカルは弱った個体を狙ってくるんだろ? 俺は一番ガタイが良いし金属鎧を装備してるから、ジャッカルには狙われないんじゃないか?」

アル(GM):
「……言っておくが、誰がおとりになろうが、単調に距離をつめようとしても無駄だぞ。あっちに攻める気がないときに近づいて行っても間合いを取られるのがオチだ。もしやるっていうなら、シシュマンから馬を借りて、俺が囲い込みをかけよう」

アゼル:
「おお! それが可能なら、日のあるうちにジャッカルと戦おう!」

アル(GM):
「そうすると、前後から挟み撃ちにするような格好になるわけだが、俺のほうにも何か攻撃手段があったほうがいいな。エルド。俺の馬の背に乗って魔法で狙撃してくれるか?」

エルド:
「わかりました。任せてください」

 こうして、夜になる前に、ジャッカル掃討作戦が決行されました。馬に乗ったアルとエルドがジャッカルの後方に回り込み、前方で身構えるアゼル、イーサ、セルダルと挟撃する形での戦闘です。

 この戦闘の結果はあっけないものでした。チーター戦で動きは速いが防御力はあまり高くない敵に対して“エネルギー・ボルト”が有効であることを学んでいたエルドは、早速それを活かしました。アルが馬を操って“エネルギー・ボルト”の射程距離ギリギリにジャッカルを捉えて移動し続けたおかげもありますが、着実にジャッカルを仕留めていき、8頭いたジャッカルのうち半数の4頭をひとりで倒してしまいます。残りのうち2頭をセルダルが、1頭をアゼルが仕留め、イーサが仕留めそこなった1頭だけがほうほうのていで逃げていきました。

アゼル:
 ジャッカル程度を仕留められないなんて、イーサはだらしないなぁ(笑)。

イーサ:
 お前にだけは言われたくない! それに、俺の相手してた奴だけ、妙に動きが良かったんだよ!

GM:
 まあ、そこはダイス目次第なので……(汗)。

 この後、一度野営を挟むと、翌日から再び整備された街道上を進むこととなり、そこから一行は強行軍で衛生都市カラーラへと入ったのでした。

 こうして一行がカラーラに到着したのは、イスパルタを出発してから7日目の夕方。そのころになると、数日前に抱いた隊商の中に妨害者がいるかもしれないという疑念も、すっかり薄れていたのでした……。

ヤナダーグ・プラト地方地図



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