LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話(27)

 鼻曲りのカダになすすべなくニルフェルとハージをさらわれたアゼルは、イーサと共に宿屋へと戻ると、一目散にシシュマンたちの部屋に飛び込んでいきました。そして、部屋にいたアル、シシュマン、サブリの3人に、ことの成り行きを説明します。

アル(GM):
「お前たちがついていながら、なんてことだ……」

アゼル:
「すまない……。頼む、アルさん。手を貸してくれ。なんとしてもニルフェルとハージさんを助けたいんだ」

アル(GM):
「そうは言っても、カダの出してきた条件を飲むわけには……」

アゼル:
 うーん。たしかに厳しい条件なんだが、どうにかして2人を助けないと……。
 そういえば、この場にエルドとセルダルはいないのか?

シーン外のエルド:
 僕は自分の部屋で寝ています。

GM:
 セルダルも隣の部屋ですね。朝の訓練が終わると、そのままもうひと寝入りしたようです。

アゼル:
 よし、起こしに行こう。
「おい、セルダル! エルド! 起きてくれ!」

エルド:
 熟睡していて反応しません。

アゼル:
「セルダルッ!」
 ゲシ! ゲシ!(そう言いつつ殴る仕草を繰り返す)

セルダル(GM):
「ぐぉッ! なにしやがる……。せっかく寝たばかりだったのによぉ」

GM:
 エルドのことは殴らないんですね。

アゼル:
 エルドとはそこまで親しくないから、さすがに殴りまではしないな。
「おい、起きろ、セルダル! ニルフェルとハージさんがたいへんなことに……」

セルダル(GM):
「なッ、なんだってッ!? オマエがついていながら、なにしてたんだよッ!」

イーサ&エルド:
 同じこと言われてる(爆笑)。

アゼル:
「すまない……。タコ殴りにされて、気絶してしまったんだ……」

エルド:
 やれやれ。これでますますアゼル株は下がっていくわけですね。

 こうして、エルドとセルダルを加え、再びシシュマンたちの部屋で今後の対応策を話し合うことになりました。

アゼル:
「頼む、みんな。2人を助けるために協力してくれ!」

サブリ(GM):
「そう言われても、そいつは無理な相談ってやつだな。俺の荷物を持たせてアルひとりで来いっていうんだろ? それじゃ、荷物は盗られ、アルは殺され、人質は戻らねぇよ」

アル(GM):
「そうだな……。俺ひとりを名指しってことは、昔年の恨みを晴らすつもりなんだろう。もちろん、生きて返すつもりは微塵もないだろうさ」

アゼル:
「まあ、そうかもしれないな……。だが、こちらもアルひとりで行かせるつもりはない。俺たちも隠れてついていく。荷物も偽物でいいだろう」

アル(GM):
「なにかいい策でもあるのか?」

イーサ:
「奴らの潜伏先を突き止めて、先にこちらから仕掛けられればいいんだがな」

アゼル:
「潜伏してるのは東の丘なんだろ?」

アル(GM):
「東の丘は周囲1キロ程度を見通せるほど見晴らしのいい場所だ。とても潜伏できる場所じゃない。おそらく、そこでは案内人と合流できるだけで、そこからまた別の場所に案内されるって感じなんじゃないか?」

アゼル:
「そうか。それじゃ、その案内人を締め上げて、奴らのアジトをはかせてそこに攻め込むというのはどうだ?」

イーサ:
「ずいぶんと乱暴な話だな。案内人に手を出して、人質が無事で済むと思ってるのか?」

エルド:
「案内人が予定の時間までに戻らなかったりしたらこちらの動きに気がつかれるでしょうし、案内人のほかにも離れた場所で見張っている者がいるかもしれませんよ」

アゼル:
「むむ……。それは困るな……」

エルド:
「アルさんのあとをついていくだけであれば、ひとつよい方法があります。僕は“サウンド・キャリー”の魔法を使えますからね」

アル(GM):
「なるほど。つまり、“サウンド・キャリー”で作った集音源を俺が所持しておき、それを使って進む先を逐一お前たちに伝え、そのあとをお前たちがついてくる……ってことだな。たしかに、それならば取引場所に皆で乗り込むことはできそうだ。しかし、肝心の荷物のほうはどうする? 途中で偽物だとばれたら元も子もないだろ」そう言って、アルの視線がサブリに向けられます。

サブリ(GM):
「ダ、ダメだぞ! 俺の荷物は貸さないからな!」

アゼル:
 じゃあ、サブリさんの前で土下座して頼み込む。
「必ず荷物は持ち帰る! だから、頼む、サブリさん! ニルフェルとハージさんの命がかかっているんだ!」

サブリ(GM):
「アゼル。そりゃ、俺だって、おまえの2人を助けたいっていう思いは十分わかってるつもりだ……。だが、俺が知りたいのはそんなことじゃねぇ。具体的にどうやって無事に荷物を持ち帰ってくるのかってことだ。……どんなに頼み込まれようと、確実に戻ってくる保証がなけりゃ、荷物は絶対に貸さねぇ。たしかに、2人の命は大切だ。大切だが……俺の荷物にも俺の大切な家族の命がかかってんだよ……」

エルド:
「あの……。カダはサブリさんの荷物の中身を知っているんですか? 同じ箱の中に適当に何か入れておけばごまかせるんじゃありませんか?」

サブリ(GM):
「さ……さあ、それはどうだろうな?」

アゼル:
「というか、サブリさん。あなたの運んでいる荷物はいったいなんなんだ?」

サブリ(GM):
「そ、それは企業秘密だ。口が裂けても言えない」

イーサ:
 きっと、相当な値打ちのものなんだろうな……。

アゼル:
「よし、それじゃ、その荷物は俺が買い取ろう!」

イーサ:
 いや、絶対無理だろ(苦笑)。

アゼル:
 舐めるなッ! 俺の手元には3,567銀貨あるッ!

サブリ(GM):
「おまえ、いますぐ10万金貨を用意できるっていうのか?」

アゼル:
「無理だッ!」

イーサ&エルド:
(爆笑)

アゼル:
「よし、その代わりにこのクルト・ソードを譲ろう!」

サブリ(GM):
「なんだ、この剣は? せいぜい200銀貨程度の代物に見えるが……」

アゼル:
「そんなことはない。実は100万金貨の価値がある! かつて英雄が使っていたという伝説の剣なんだ!」

サブリ(GM):
「嘘つくな! 俺がいったい何年商人やってると思ってんだ!」

アゼル:
「ぐぬぬぬぬ……」
 くそぅ。さすがにバレたか……。さて、どうしたもんかなぁ……。

イーサ:
 アゼルじゃ、サブリを納得させるのは無理だな。代わろう。
「俺たちは野盗を20人倒せるだけの力がある。カダのところまで皆でたどり着いて人質と荷物を交換したあとならば、あいつくらいわけなく倒せる。俺たちの力を信じて、どうか荷物を預けてくれないか?」

サブリ(GM):
「おまえらの強さはわかってるさ……。だが、もしもカダが人質ひとりと荷物を交換だと言ってきたら、おまえらはどうするつもりだ?」

イーサ:
「そうなったら、人質ひとりとの交換では荷物の半分しか渡せないと言うだろうな」

サブリ(GM):
「それじゃダメだ。あちらさんとしてはアルに荷物を持ってこさせさえすれば、そのあとの交渉は二の次なんだろうからよ。こっちからそんな条件を加えたら、まず間違いなく交渉は破断になる……。それで、そのまま斬りあいが始まればカダたちは必ず人質を盾にしてくるだろう。そのとき、『動いたら人質の命はないぞ』とカダたちが脅してきたとしても、おまえらはそれに構わずカダを倒してくれるのか? 人質の命を捨ててでも戦ってくれるのか? もし、いざというときには人質の命を捨てられると約束してくれるなら、俺も荷物を貸そう。だが、そうじゃないんだろ……?」

アゼル:
「人質よりも荷物を優先する! ……とでも言えば満足かッ! クソッ!」

イーサ:
 うーん。
(しばらく考え込んでから)
 サブリの荷物ってどんなんだっけ?

GM:
 1メートル立方のとても重い木箱が8つです。ニルフェルの推理によれば、中は鉱石のたぐいのようですが……。

アゼル:
 もう、サブリさんを説得するのは無理だ。似たような箱を用意して、石でも積めて持っていくことにしよう。

イーサ:
 箱の中身を確認されたらばれるんじゃないか?

アゼル:
 そのときはそのときで仕方ないだろ。

 その後も、話し合いは長々と続きましたが、結局サブリを納得させられるだけの案は出てこず、結局偽物の荷物を持って行くということでおちつきました。また、荷物の貸し出しについては断固拒否していたサブリでしたが、荷馬車だけは貸してくれることになりました。

イーサ:
「さてと……。エルドの“サウンド・キャリー”を使ってアルの乗る荷馬車を追いかけ、取引場所にまで向かう。荷物は偽物を用意して、ばれないことを祈る。そこまではいい。それで、あとはどんなタイミングで攻撃を仕掛ければいいんだ?」

アル(GM):
「人質交換が無事に完了したときか、交渉が決裂したときだろうな。そのとき、できるだけ早く強襲できるように近い場所に潜伏していてもらえると助かるが……」そう口にしてから、アルはチラリとアゼルのことを見ます。

イーサ:
「金属鎧の奴がいるからな……」

アゼル:
 よし、わかった。時間もあるし、革鎧を買ってこよう!

アル(GM):
「しかたない。カルカヴァンにたどり着くまで、俺たちはチームだからな……。アゼル、お前にはこれを貸してやろう」そう言って、アルは自分の指にはめていた指輪を外し、アゼルに渡します。

アゼル:
「これはいったい?」

アル(GM):
「合言葉を唱えることで、板金鎧と同等の防御力をもたらす指輪だ。神の遺産だよ。巨大砂蟻と戦ったときにも使ったんだが……。そういえば、あのときお前は見てなかったか……」

イーサ&エルド:
(苦笑)

GM:
 アルがアゼルに渡した指輪は、見えざる甲冑の指輪(フォース・アーマー・リング)という名前のマジックアイテムです。使用時に《2D》の発動判定を行い、出目が6以上であれば3分間ダメージ減少値が9になります。ただし、被クリティカル値は元のままなので注意してください。ちなみに、発動判定で5以下の目を振った場合には、指輪にかけられた魔法の効果が消滅してしまい二度と使えなくなります。

アゼル:
 そんなリスキーなものを使ってたのか。なんだか発動失敗する予感がするなぁ……。

GM:
 発動判定に失敗しても使えなくなるだけで副作用があるわけではありませんから、リスキーというわけではないでしょう(苦笑)。

 こうして方針が定まると、夜の人質交換に向けて、各自がそれぞれの準備を開始しました。

 当初、アゼルは革鎧を購入しようかと考えていましたが、散々悩んだ結果、指輪の力を信じて鎧は装備しないことにし、そのかわりにエクステンションの補助石が埋まった杖を購入して、それをエルドに渡しました。エクステンションの補助石は、持続魔法の効果時間を倍にする効力があるため、これでエルドの“サウンド・キャリー”の効果は4時間続くことになります。一方、イーサとエルドは6時間の睡眠をとり、可能な限り精神点の回復に努めます。

 そして、やがて日も暮れ、カダの指定した時刻が間近に迫ってきました。

GM:
 宿屋を出ていこうとするあなたたちを、シシュマンとサブリが見送ります。

シシュマン(GM):
「全員無事に戻ってくるんだぞ……」

サブリ(GM):
 サブリはあなたたちから視線をそらして、「すまねぇ……。すまねぇな……」と小声で繰り返しています。

アゼル:
 じゃあ、善人である俺は、サブリさんに対して「別にあんたが悪いわけじゃないさ……」と声をかけておこう。

GM:
 そうですね。どちらかと言えば、護衛に付きつつまんまと2人を連れ去られてしまった人の責任のほうが重いですよね(苦笑)。

アゼル:
 い、いや、俺は悪くない! もとはと言えばアルさんがカダに恨まれていたのが原因なんだから、悪いのはアルさんだ!

イーサ:
 そうやってすぐ他人のせいにするあたり、善人とは言いがたいよな……。

エルド:
 カダが悪いと言うならまだしも、アルさんとアゼルさんの比較であれば、どう考えてもアゼルさんの方に非があると思います……。まったく頼りにならない護衛ですよね。

アゼル:
 ぬわっ!




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。