LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第2話 ティータイム

 宮国紀行の第2話、「神様なんていなかった」がようやく終了しました。今回もまた、リプレイの書き起こしに随分と時間をかけてしまいましたが、これが常態化しないように次回以降は気をつけたいところです。本当は第3話をプレイする前に第2話の書き起こしを終わらせておきたかったのですが、実はこれを書いている時点で第3話のセッションも終了しています……(汗)。

 さて、今回はウィルダネス・アドベンチャー主体のシナリオでした。乾燥地帯に走る南アルダ街道。その周辺の渇いた風景。その街道を旅するために、どのような準備が必要なのか。その道程がどれほど危険なのか。そういったものがリプレイを読んだ方にも伝わっていれば、目的の3分の1は達成できたことになります。アゼルたちは戦闘レベル1のジャッカルを雑魚扱いしていましたが、それでも街道を往来する商人たちにとってジャッカルの群れは紛うことなく死の使者となりうる存在ですし、数十回往復するあいだに1回でもライオンの群れと遭遇する可能性があるのであれば、それはまさに命懸けの旅だと言えるでしょう。

 実は、今回の話でウィルダネス・アドベンチャーを行うにあたり、ランダム遭遇戦闘だけのセッションにするという構想もあったのですが、それだとさすがにリプレイとして書き起こしたときの展開が地味になってしまうだろうということから、一味加えるために妨害者のエピソードを詰め込んでみました。妨害者の存在により旅の行程に支障が出る。徐々に険悪になっていく旅人達の関係。裏切り者はいったい誰なのか?――といった展開は王道でしょう。

 想定ではもっと早い段階でハージに疑いがかかり、彼女が犯罪に手を染めていった経緯が段階的に明らかにされていく予定だったのですが、実際のセッションでは最後まで真相に迫ることがなかったので、ハージがみずから駆け足でことの経緯を語ることになってしまいました。自分でやっておいてなんですが、ハージが自分からこれ見よがしに不幸話、およびネタばらしをする姿はいささか滑稽です。おまけに、一気に説明せざるを得なかったので、端折った部分が多く説明不足になってしまいました。ハージを疑うヒントとなる情報は、もう少しそれとわかりやすく提供するべきだったかもしれません。

 ストーリーについてもう少しだけ触れておきます。カダとハージの兄妹は、恵まれたアゼルとニルフェルとの対比として登場させたものであり、今回はそこを軸として展開させたつもりでした。しかし、セッションを終えてから振り返ってみると、そちらよりもイーサとハージの関係のほうがメインだったような気がします。特に、イーサの、「あんただったらもっと華やかな、キラキラしたもののほうが似合うんじゃないか?」とか、ハージとの最後の会話で口にした、「……そうか……信じてなかったのか……」とか、「小さな恋が崩れ去ってしまったような気がする」などの発言は個人的にツボでした。戦闘での活躍や失態は運に左右されがちですが、こういった演出・描写は紛れもないプレイヤーの実力です。次回以降、イーサのさらなる活躍に期待です。

 さて、リプレイを読んでいくつか疑問に感じた方も居るかもしれないので、セッション中には明らかにできなかった、今後、回収できそうにない情報を、GMの自己納得と自己満足の範囲で以下に補足しておきます。これらの情報は、主に第2話終了後の反省会にてGMからプレイヤーに対して公開した内容となります。一応、これらの補足がなくても、話として成り立っているとは思うのですが……。

  • イスタス廃墟でハージが見ていた壁の傷ってなんだったの?
    ⇒幼い頃のカダとハージが背比べをしてつけたものです。ハージに兄がいることを暗示すると共に、アゼルとニルフェルのオープニングシーンに重ねたシーンでした。
  • 行軍2日目に馬が捻挫したのは偶然だったの?
    ⇒ハージが1日目の夜にレベル1白魔法の“ファティーグ”を使って馬の疲労を蓄積させていました。実際に捻挫するのか、骨折するのか、はたまたほかの結果となるのかは、そのときのダイス任せでした。なお、“ファティーグ”は一般的な宗教では使用が禁じられている魔法です。セッション中、イーサがハージに対して、「熱心に祈りを捧げるあんたの姿を見てるうちに――」と話していましたが、GM側からハージが神に祈りを捧げる姿を描写したのは、最後のシーンだけです。敬虔な信者であるはずなのに祈る姿を見せないことが、ハージを疑うためのヒントのひとつでした。
  • 行軍3日目に馬車が脱輪したのは偶然だったの?
    ⇒3日目の出発前に周囲を散歩するフリをしていたハージが留め具を抜きました。幼い頃からカダと一緒に窃盗を繰り返していた彼女は、スカウト技能レベル2を持っています。そんな彼女は、第1話でもスカウト技能を活かして監視役として登場(?)しています。
  • 3日目の夜にラーテルが巨大砂蟻を連れてきたのは偶然だったの?
    ⇒馬を襲わせることを目的として、ハージがレベル3白魔法の“ファミリアー”を使って引き連れてきました。PCたちより年上であるハージは、それ相応の経験をつんでいるのです。
  • カラーラに到着した日、街中でエルドと合流することになったハージは本当に寺院に立ち寄っていたの?
    ⇒寺院には行っていません。これは寺院の記名帳を確認すれば判明することでした。カダと接触し、今後の作戦を相談していたところでエルドに見つかってしまったという流れです。
  • いかつい男がハージに対して呼んだヒュリアってなんなの?
    ⇒ハージが街娼をしていたときに使っていた偽名です。トルコ語で夢想という意味らしいです。ほかの登場人物の名前にもそれなりの意味があります。あのいかつい男、結構重要な人物だったはずなんですが、完全スルーでしたね……。
  • ハージのイヤリングってなんだったの?
    ⇒母親の形見です。さらに言うと、母親が父親からはじめてもらったプレゼントです。職を失い酒に溺れた父親にかわって働きに出た母親は過労死しました。
  • カダとハージの父親は野盗になったの?
    ⇒なりませんでした。そのかわり、子供たちに売りをさせて生計を立てていました。『ベルセルク』ではよくある話です。
  • それじゃ、父親はどうして死んだの?
    ⇒仕打ちに耐えかねたカダが殺しました。まだ幼かったカダとハージは、親殺しの犯罪者として逃亡生活を始めました。『ベルセルク』ではよくある話です。
  • カダとハージは奴隷になれば良かったんじゃ?
    ⇒カーティス王国では誰でも奴隷になれるというわけではなく、才能のある者だけが奴隷として召抱えられます。また、奴隷に自由はありませんが、待遇は比較的良いです。使用人と考えると良いでしょう。犯罪者であるカダとハージは奴隷にすらなれませんでした。

 最後にキャンペーン全体に関する話となりますが、今回のキャンペーンに多数登場するNPCにはそれぞれ好感度が設定されています。セッション中のPCの行動により、その人物に対するNPCの好感度が変動しているわけです。その意味で、セッション中にアゼルの言っていた「アゼル株」「イーサ株」というのは実際に存在しています。さて、第2話が終了したところで、それぞれの株はいったいどれくらいの値をつけているのか。今後のNPCたちの反応にもご注目ください。

「兄さん……この傷のこと、覚えてる?」

「ごめん、覚えていない」




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