LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(08)

GM:
 それでは、翌日の朝になります。空にはまだ雲が張っていますが、ひとまず雨は止んでいます。イーサとセルダル、それとセルダルの看病を続けるニルフェルが宿で待機し続けているあいだ、ほかの2人はなにかしますか?

アゼル:
 俺は7時に起きて剣の稽古をする。

エルド:
 僕は8時になったら起きて、外出します。

アゼル:
 エルドがその時刻に宿屋から出てくるなら、ちょうど俺が宿屋の前で剣の稽古をしているところだな。

エルド:
「アゼルさん、おはようございます。なんだか、外から変な声が聞こえると思ったら、アゼルさんだったんですね。僕はこれから朝食を食べてきます」

アゼル:
 それじゃ、俺もエルドと一緒に朝飯でも食いに行くかな……。

GM:
 経験点を入手するつもりであれば3時間以上続けて訓練する必要があるのですが、途中で止めてしまって構いませんか?

アゼル:
 あ、そうか。だったら俺は残ってエルドを見送ることにしよう。
「俺はもう少し稽古を続けたいから、ひとりで行ってきてくれ」

エルド:
「そうですか。なんだったら、アゼルさんの稽古が終わるのを待っていてもよかったんですが、そう言うのであればひとりで行ってきますね」

GM:
 では、エルドはひとりで街へと出て行きました。


GM:
 さて、街に出たエルドはどこに行きますか?

エルド:
 インサンラールで朝食を。

GM:
 なるほど。早速の再利用ですね。
 エルドがインサンラールへ足を運ぶと、店員がスマイルで迎えてくれます。

エルド:
 昨日、タルカンさんから貰ったこれを使ってみましょう。店員に対して、チラッとプレートを見せてみます。

インサンラール店員(GM):
「会員の方ですね。では、こちらへどうぞ」そう言って、店員はエルドのことを2階席へと案内しました。エルドが席に着くと、メニューを手渡してくれます。

シーン外のアゼル:
 昨日、死人がでた場所に連れて行かれたわけだ(笑)。

GM:
 さすがにテーブルも新調され、昨日の形跡は残されてませんけどね(苦笑)。

エルド:
 メニューの内容はどんな感じですか?

GM:
 朝食メニューは、「朝の採れたて野菜サラダ」と「季節のフルーツ盛り合わせ」、その2つをあわせたハーフ&ハーフなど、朝食用の軽い内容にドリンクが付いて、価格はそれぞれ5銀貨です。
 ちなみに、エルドは何気なく朝食を食べに出てきましたけど、以前にも説明したとおり、この国では昼夕の2食だけで済ますのが一般的ですので、朝食用メニューを出しているお店は珍しいです。

エルド:
 値段も手頃でいい感じですね。それじゃ、ハーフ&ハーフを頼みます。

インサンラール店員(GM):
 注文を受けると、さほど時間を置かずに店員が料理と飲み物を運んできました。
「お飲み物はおかわり自由となっておりますので、ご遠慮なくお申し付けください。それでは、ごゆっくりお召し上がりくださいませ」

GM:
 きっと、ドリンクのおかわり自由とかは、会員限定のサービスでしょう。

エルド:
 これが、プレートの力でしょうか? 凄いですね。プレートをマジマジと見つめています。

GM:
 まあ、VIPというほどの扱いではありませんけどね(笑)。
 料理自体も特別美味しいというわけではありませんでしたが、十分値段に見合ったものでした。

エルド:
 朝食を終えたら、真っ直ぐ宿に戻ります。


GM:
 寄り道しないで帰るなら、まだアゼルが宿屋の前で稽古を続けている時間ですね。

アゼル:
 汗だくになって剣を振っている。

エルド:
「あ、アゼルさん。まだやってたんですか? 僕はこれからまたひと眠りするので。それでは」と言って宿屋の中に入っていきます。
(小声で)「まったく、汗臭いったらありゃしない」

アゼル:
「あ、ああ……」
 結局、起きてるのは俺ひとりだけになってしまったな……。とりあえず、稽古が終わったら水で汗を洗い流して、それから部屋に戻るとしよう。

GM:
 部屋に戻ると、相変わらずセルダルは眠り続けています。ニルフェルは濡れた布切れを丁寧に絞り、それをセルダルの身体に当てて患部を冷やしています。

アゼル:
「ニルフェル。セルダルの様子はどうだ?」

ニルフェル(GM):
「少し熱がでてきたみたい。セルダルさんは強がっていたけど、思っていたより深い傷だったから……」

アゼル:
「そうか……」
(少し考えてから)
「そろそろ昼だし、セルダルが寝ているあいだに食事にでも行かないか?」

ニルフェル(GM):
「セルダルさんを置いては行けないよ……」そう言って、ニルフェルはその誘いを断ります。
「そうだ、もし出かけるのなら、なにかセルダルさんが目を覚ましたときに食べられそうなものを買ってきてくれないかな?」

アゼル:
「ああ。わかった。なにがいい? 肉か? 魚か?」

シーン外のエルド:
 肉か魚かの2択だなんて、完全に肉食系ですね(笑)。

アゼル:
 アゼル自身が食いたいものを挙げただけだからな。

ニルフェル(GM):
「そうだな……。それじゃ、川魚なんてどうかな?」

GM:
 イスパルタの近場には海や大きな川がなかったので、魚は珍しいんですよね。

アゼル:
「よし、川魚だな。じゃあ、さっそく街に出てくる。そのあいだ、セルダルのことを頼んだぞ」

 こうして川魚を買いに出ることになったアゼルは、宿屋の主人から中央広場で開かれているバザーでならば鮮度の良い川魚を買えるという情報を聞きつけ、昼前のバザーへと出かけることにしました。


GM:
 では、アゼルはバザーが開かれているカルカヴァン中央広場を訪れました。昼前のバザーは特に盛況で、イスパルタとは比べ物にならないくらいの混雑振りです。大通りの両サイドには数え切れないほどの露店が軒を連ねており、それぞれの店主が通りを歩く買い物客に向かって、さまざまな商売文句を謳っています。

アゼル:
 魚を扱っている店はすぐに見つかるかな?

GM:
 そうですね……。魚専門店ではありませんが、肉と共に魚を扱うお店であれば見つけることができました。

肉屋の主人(GM):
「さあ、らっしゃい! らっしゃい! 活きのいい肉はどうだい!」
 ガタイの良いオヤジが、大声で客引きをしています。そんな店の主人の足元には、縄で縛られた豚がブヒブヒ鳴いています。

アゼル:
 活きがいいって、生きたままの豚が売られてるのかよ(笑)。それじゃ、そこの店主に話しかけよう。
「すまない。魚が欲しいんだが……」

肉屋の主人(GM):
「魚ね! あるよ、あるよ。なんの魚がいいんだ?」

アゼル:
「オススメはなんだ? できれば、生きているやつじゃなくて、調理済みのものがいいんだが……」

肉屋の主人(GM):
「オススメはこいつだな。塩焼きでいいならここで焼いてやるよ。手間賃込みで1尾銀貨3枚だ。あとは、そのまま食えるもんっていうと干物くらいだな。干物も銀貨3枚だよ」

アゼル:
「じゃあ、塩焼き2つと干物を1つ頼む」

肉屋の主人(GM):
「あいよ。毎度」そう言って店主は魚を串で刺すと、その場で塩焼きにしてくれます。

八百屋の女主人(GM):
 魚が焼けてきて煙がモクモクと立ち始めると、隣で野菜や果物を売っている店の女主人が、「ちょっと、こんなところで煙立てないでおくれよ! こっちの商品が台無しになっちまうじゃないか!」と、苦情を言ってきます。

肉屋の主人(GM):
「うっせぇ、ババアッ! こうやって匂いを立てたほうが客の集まりがいいんだよ!」

八百屋の女主人(GM):
「なにがババアだッ! あんた、うちの商品を燻製にでもするつもりかいッ!」

アゼル:
「まあまあ。こっちの果物も美味そうだな。これもひとつもらえないか?」
 ここは気を使って、話題をそらすとしよう。

八百屋の女主人(GM):
「あら、その果物だったらひとつ銀貨2枚だよ」

GM:
 そんな感じでアゼルが買い物をしていると、なにやら遠くのほうから笛や太鼓の奏でる賑やかな音楽が聞こえてきました。

アゼル:
「ん、なんだ?」と言って、音のするほうを見てみる。

GM:
 では、アゼルが音のするほうへと目を向けると、そこには赤・青・黄色の派手な色で飾り立てられた異様な恰好をした一団が、大きな身振り手振りで舞を踊り、ビラを撒き散らしながら、中央通りを東から西へと行進している姿がありました。買い物客たちは一団の進路を邪魔せぬように大通りの左右によけて、興味津々といった様子で一団へと視線を向けています。

アゼル:
「なんだ、あのけったいな格好の奴らは?」

八百屋の女主人(GM):
 果物をアゼルに手渡そうとしていた八百屋の女主人が、「ありゃ、見世物小屋のすぐ傍に来てる旅芸人の一座だよ。1日1回、宣伝のためにこうやって市中を練り歩くのさ。きっとなにか面白いことをするだろうから、しばらく見ていてごらん」と説明してくれました。

アゼル:
 旅芸人一座とかって、イスパルタにも来てたんだろうか?

GM:
 ここまで大きな規模ではありませんでしたが、イスパルタにもたまには来ていましたよ。旅芸人がイスパルタの街を訪れたときには、あなたもセルダルやニルフェルと連れ添って観に行ったりしたんじゃないですかね。
 そうこうしているうちに、旅芸人一座の行進はアゼルの目の前まで迫ってきました。一団の先頭を歩く道化師の格好をした人物のほかに、露出度の高い刺激的な格好をした美しい踊り子たちや、鞭を手に獣たちを従える男、その獣使いに従う7頭のロバなどが目に入ります。そして、先頭にいる道化師が笛の音を大きく3度鳴らすと、一団の行進がピタリと止まりました。唯一、ロバたちだけがその場で足踏みを続け、それまで鳴らされていた笛や太鼓の音のかわりに、足並みを揃えたロバの蹄の音があたりに響き渡ります。パッパカ、パッパカ、パカパカパッパカ♪ パッパカ、パッパカ、パカパカパカラ♪ それは、まるでタップダンスのようです。

肉屋の主人(GM):
 それを目にした肉屋の主人は、「ほう。ロバをここまで仕込むたぁ、大したもんだな」と、感心したような声をもらしています。

アゼル:
 俺も驚きの声を上げておこう。
「おお、凄いな! ニルフェルのやつも連れてきてやればよかった」

GM:
 さて、人々の視線を釘付けにしているロバたちのタップダンスでしたが、よくよく見ると1頭だけ上手く足並みを揃えられずにいるようです。というより、1頭だけは明らかにタップダンスをしていません。しばらくして、道化師がふたたび笛を鳴らすと、ロバたちは一斉に足の動きを止めるのですが、やはり1頭だけはダラダラと足を動かしています。

アゼル:
「なんだ、あいつ? どうかしたのか?」

肉屋の主人(GM):
「はんっ。1頭だけマヌケがいやがる。やっぱり、ロバはロバだなぁ」そう言って、肉屋の主人が笑いました。

GM:
 ロバたちのタップダンスが終了すると、今度は小気味良い音楽の演奏が始まり、それにあわせて踊り子たちが扇情的なベリーダンスを踊り始めました。踊り子たちは買い物客たちのそばまで接近してきて、特に男性客に狙いを定めて誘うような仕草を繰り返します。

アゼル:
 セルダルがここにいなくてよかった(苦笑)。

肉屋の主人(GM):
 踊り子たちのダンスを食い入るように見ていた肉屋の主人が、景気づけの指笛を鳴らします。
「いいね! いいね!」

八百屋の女主人(GM):
 八百屋の女主人は、そんな肉屋の主人に冷ややかな目を向けながら、「まったく、男共ときたら。若い娘がちょっと肌を晒せばすぐにこれだ」と呆れた声を漏らしました。

アゼル:
 俺もちょっと顔をしかめている。
「女性がああいう格好をするのはちょっとな……。やはり、女性はあまり肌を見せるものではない」

八百屋の女主人(GM):
 アゼルの呟きに、八百屋の女主人も同調します。
「そうだよねぇ。あの娘たちが舞っている踊りだってさ、もともとはカーラ神に捧げるために踊られていたものなんだよ。それを、見世物に利用するなんて、褒められたもんじゃないよねぇ……」

GM:
 現在のカーティス王国においてはエルバート神への信仰のみが認められているので、元々ヤナダーグ・プラト地方の神であったカーラ神に対する信仰はタブーなのですが、八百屋の女主人はそれでも踊り子たちの扇情的な舞はカーラ神に対する不敬だと眉をひそめています。

アゼル:
「カーラ神に捧げていた踊りとはいえ、それを見世物にするのはな……」

八百屋の女主人(GM):
「この踊りを除けば最高の催し物なんだけどねぇ。特に動物の芸なんかは見物なんだよ」

アゼル:
「たしかに、さっきのロバのタップダンスは素晴らしかったな。1頭だけ変なのがいたが」

肉屋の主人(GM):
 そこで、アゼルと八百屋の女主人とのやり取りを聞いていた肉屋の主人が口を挟んできます。
「そういえば、去年の巡業のときには、動物が逃げ出して大騒動になったっけな」

八百屋の女主人(GM):
「あー。たしか、そんなこともあったねぇ。そのせいでしばらくバザーが中止になったりもしたっけ。さすがにあれは二度と勘弁してもらいたいけどね」

GM:
 そんなことを話しているうちに、魚の塩焼きが焼きあがりました。

肉屋の主人(GM):
「はいよ。お待ち」そう言って、肉屋の主人は大きな植物の葉で包んだ状態で、魚の塩焼きを渡してくれます。

アゼル:
 それを受け取って、「ありがとう」と言って金を払う。

GM:
 さて、踊り子たちがベリーダンスを踊り終えると、今度は道化師が大声を張り上げました。

道化師(GM):
「さあさあ、紳士淑女の皆様、ホンのしばらくお耳を拝借! バスカン一座の公演は、見世物小屋の直ぐ隣で絶賛公演中だよー! 今回の公演も、残すところあと7日! まだ、ご覧になっていない方はお見逃しなく! すでにご覧になった方ももう一度! 驚きと興奮の舞台をぜひご覧くださーい!」

GM:
 その口上が終わると、旅芸人一座の行進はふたたびビラを撒き散らしながら大通りを西へと進み始めます。

アゼル:
 それを見送ってから、落ちているビラを1枚拾って持って帰ろう。ニルフェルにも見せてやらないとな。

GM:
 アゼルが手に取ったビラには、大きな文字で「アリ・バスカン一座」と書かれていました。「究極の大脱出! 美女ははたして無事に生還できるのか? 乞うご期待!」というあおり文句も添えられています。

シーン外のエルド:
 ぜひ、主催者名をチェックしてください。タルカンって書いてありませんか(笑)?

一同:
(笑)

 このエルドの発言は、面白い案であるとともに妙に説得力のある内容だったので、もともとそのつもりではなかったのですが、少し手を加えて採用することにしました。

GM:
 こうして、アゼルは買い物を済ませ、12時ごろには竜のねぐら亭へと戻ってきました。


GM:
 アゼルが部屋に戻ってみると、上半身を起こしたセルダルがニルフェルと談笑しています。

アゼル:
「おっ、セルダル、起きていたのか。調子はどうだ?」

セルダル(GM):
「まあ、まだ少し痛みはあるが、そんなに悪くはねぇ。あと半日も休んでれば起き上がれそーだ」

アゼル:
「そうか、そいつはよかった。それより、腹が減ってるだろ?」
 セルダルにはあとで干物をやろうと思っていたが、起きているなら仕方ない。セルダルとニルフェルに魚の塩焼きを渡そう。
「これが、いま旬の魚だそうだ」

セルダル(GM):
「おお! サンキュー! ちょーど腹が減ってたところだったんだ」その言葉にあわせて、セルダルの腹が大きな音を鳴らします。
「その分の代金はオレの小銭袋の中から――」

アゼル:
「気にするな。これはおごりだ。あと、この果物もな」

セルダル(GM):
「なんだか、完全に見舞いの品って感じだな(笑)。まあ、傷を治すには栄養が一番だもんな。ここは遠慮なくもらっておくことにするわ」そう言うと、セルダルは早速、魚と果物にがっつき始めます。

ニルフェル(GM):
 その隣で、ニルフェルも焼き魚に口をつけています。
「美味しいね!」

アゼル:
「そうだろう。今獲れる魚の中では一番のオススメだって言ってたからな」
(なにかに気がついたようにしてから)
「そうだ、その魚は中央広場で開かれていたバザーで買ってきたんだが、そこで旅芸人一座の宣伝行進を見かけたぞ」そう言ってビラをニルフェルに渡した。

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは、ビラを手に取ると、「『アリ・バスカン一座。究極の大脱出! 美女ははたして無事に生還できるのか? 乞うご期待!』だって」と声に出して読み上げました。

GM:
 こうしないと、セルダルは文字が読めませんからね。

ニルフェル(GM):
「旅芸人一座か……。そういえば、昔、みんなで観にいったよね」

アゼル:
「ああ。だが、このアリ・バスカン一座ってのは、イスパルタで観たのよりも、かなり大きい規模みたいだぞ」

ニルフェル(GM):
「公演はあと7日だって。もし、明日になってセルダルさんの具合が良いようだったら、観にいってみようか?」

アゼル:
「そうだな。動物の芸が凄いらしい……」
 セクシーダンスのことは伏せておこう(苦笑)。

セルダル(GM):
「そうゆーことなら、気合入れて完全回復させねぇとな!」そう言って、セルダルはふたたびび横になりました。

GM:
 さて、その後、アゼルはどうしますか?

アゼル:
 うーん。じゃあ、日のあるうちに街中をぶらぶらしてくるか。それで、2時間ほどぶらついたら、ほかには特にすることもないから、宿屋に戻ってゆっくりしている。ひとりじゃなにもしようがないな……。

シーン外のエルド:
 ニルフェルさんを誘っても、セルダルさんの看病優先で断られてしまいますからね(笑)。




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