LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(14)

GM:
 さて、アゼルとエルドがタルカンの屋敷に連れていかれた一方で、ひとりその場に残ったイーサはその後どうしますか?

イーサ:
 うーん。せっかく別行動をとれたんだから、なにか収穫を得ないとな……。
(しばらく地図を眺めてから)
 まずは高級酒場のほうへ行って聞き込み調査でもしてみるか。

GM:
 では、高級酒場のある通りへと向かったイーサですが……この時刻だと、まだ高級酒場は準備中で開いていません。通りを行き交う人の姿もまばらです。

イーサ:
 それじゃ、そのまま大衆酒場のほうへと歩いていく。大衆酒場ならこの時間でもあいてるだろ? それで、適当な店に入ってみる。

GM:
 了解です。では、《1D》を振ってください。

イーサ:
(コロコロ)5。

GM:
 大衆酒場の5ですか……。
(手元に用意されたイベント表を確認して)
 ふむふむ。では、店の主人が「いらっしゃい。おひとりならカウンター席にどうぞ」とあなたを迎え入れます。

イーサ:
 カウンター席に座って、エールを注文してから主人に話しかける。
「オヤジさん、ちょっといいか? 最近、ここらへんでロバを連れた2人組を見かけなかったか? ひとりはボサボサ頭の男で、もうひとりはフードを目深に被った男なんだが」

酒場の主人(GM):
 イーサの質問に対して、酒場の主人は洗い物を片付けながら、「さあねぇ……」とさも興味なさそうに返してきました。

(イーサからのリアクションがないことを確認してから)
 そして、少し間をあけてから片眉をあげてイーサの顔を伺うと、「お客さん、そういった詮索めいたことはやめてくれないか? ウチみたいな客商売は信用第一なんだよ」とハッキリとした物言いで情報提供を拒否しました。

イーサ:
「そうか、すまなかった」
 そういえば、アゼルが宿木亭にアルを訪ねにいってたときも、かなり警戒されてたっけ……。聞き込みするのも結構たいへんだな。
 それじゃ、注文したエールを飲み終えたらこの店をでて、今度は宿屋方面に足を運んでみる。

GM:
 イーサが酒場を出るころには、空の色がオレンジ色から紫色へと変化してきます。宿屋方面で聞き込みをするのであれば、《1D》を振ってください。

イーサ:
(コロコロ)2。

GM:
 宿屋の2……は、先ほどと似たようなやり取りになるので割愛しますが、やはりこれといった情報は得られませんでした。

イーサ:
 うーむ。闇雲に探し回らず、ギズリたちが足を運びそうなところに向かうべきか? となると……。
(少し考えてから)
 次は雑貨屋のほうに向かってみる。

GM:
 では、イーサは雑貨屋通りへと移動しました。時間は19時になります。一応、人の往来はありますが、もうすぐ店が閉まる時間ですので、その数はまばらです。聞き込みを行うのであれば、《1D》の判定をどうぞ。

イーサ:
(コロコロ)今度は6だ。これならなにか情報を得られるかもしれないな。よし、通行人に声をかけてみよう。
「すまない、少し聞きたいことが――」

通行人A(GM):
「どいたッ、どいたッ! こっちは急いでんだッ! 邪魔すんなッ!」
 通行人の男は、イーサの言葉に耳を貸すことなく足早に去っていきました。

イーサ:
 くっ……忙しそうな奴はダメだな。ゆっくりと買い物をしている奴に目星をつけて声をかけてみよう。
「あー、ちょっとすまない――」

通行人B(GM):
 雑貨屋の店先で買い物をしていた女性は、あなたの姿をチラリと見ると目を逸らして、無言のままそそくさとその場をあとにしました。

イーサ:
 くそぉ……。都会の人間は世知辛いなぁ……。

シーン外のエルド:
 きっと、イーサさんの魅力値が低いからですよ(笑)。

GM:
 いやいや、日暮れどきに人通りの少ない道端で見知らぬ男から声をかけられることを想像してみてください。魅力値に関わらず、警戒して当然ですよ。

イーサ:
 そういうところ、このセッションはリアル志向でゲームっぽくないよな。ゲーム的な行動をとると、だいたい失敗する(苦笑)。

 万事が万事そうだというわけではありませんが、だいたいその通りです(笑)。

 システムに従った処理はどうしてもゲーム的にならざるを得ませんが、それ以外の部分に関しては、より多くの人が共感できるように現実性の高い内容を選択しています。ただし、重要視しているのはより多数の共感ですので、誰もが納得できるほどの説得力を持つ事象やそれに類するお約束などは、現実性のいかんに関わらず採用しています。

GM:
 さて、そんな感じで街の人々に警戒され、ろくに聞き込みもできずにいたイーサでしたが、その耳に突然、硬貨が石畳の上に落ちて跳ねる金属音が飛び込んできました。

イーサ:
 ん? とっさに音のするほうに目を向けた。

GM:
 音のしたほうへと目を向けると、銀貨が1枚、通りの隅の石畳が敷かれていないところまで転がっていくのが見えました。銀貨は土の上で小さく数度円を描くと、勢いを失ってその動きを止めます。

イーサ:
 追いかけていって、それを拾い上げてみよう。

GM:
 あなたが銀貨を拾い上げようとして手を伸ばすと、その手が銀貨に届く前に、目の前の土の上に棒で引いたような線が現れました。線は次々と引かれ、共通語で書かれた短い文章を作っていきます。

イーサ:
 え? なんだ? 伸ばした手を止めて、どんな文章が書かれたのかを読んでみる。

GM:
 地面には、次のような文章が書かれました。

 魔法感知にて自己確認
 魔法あり → 2時間後に再確認
 魔法なし → 市壁沿いを時計回り
 アル

GM:
 文章の最後につけられた「アル」のサインが書き終わると、直後に土がはらわれて文字が掻き消されました。

イーサ:
「アル……?」
 いまのはアルからのメッセージか?

シーン外のエルド:
 きっと、ダイイング・メッセージですよ。アルさんの魂が、自分を殺害した犯人を見つけだしてほしいと訴えかけているんです!

シーン外のアゼル&イーサ:
 いやいやいやいや(笑)。

イーサ:
(考え込んでから)
 ふむ。とりあえず、指示に従ってみるか……。“瞑想”して“センス・マジック”を発動させる。(コロコロ)成功。まず、銀貨を見てみる。

GM:
 銀貨に目を向けても、魔法が付与されている形跡はみられません。

イーサ:
 ふむ。一応この銀貨は拾っておこう。続けて周りを見渡してみるが、魔法がかかったものは見当たるだろうか?

GM:
 えーと……。
(少し考えてから)
 現在見える範囲では、特に見当たりませんね。

イーサ:
 了解。それじゃ、自分自身を見てみる。持ち物の中身までくまなく念入りに。ダガーも鞘からだして刃に魔法がかけられていないか確認してみる。

シーン外のアゼル:
 いまのイーサの一連の行動って、傍目に見るとかなり怪しいよな。そりゃ、街の人も警戒するわ(笑)。

イーサ:
 だったら、ちょっとごまかしておくか。
「あれ? なんだかチクチクするな……。もしかして、棘でも刺さったか? ん~、何もないな……。気のせいか(棒)」

シーン外のアゼル:
 雑な演技だな(笑)。

イーサ:
 ほっとけ(笑)!

GM:
 念入りに確認してみましたが、指に嵌めている白魔法と黒魔法の記憶媒体の指輪以外に反応はないようです。

イーサ:
 よし、魔法がかかってないのが確認できたなら、メッセージにしたがって市壁沿いを時計回りに歩いてみるか。ここからだと、エルバート寺院のあるエリアに向かえばいいんだな。

GM:
 では、イーサはエルバート寺院のほうへと歩いていきます。もう太陽は完全に沈んでしまい、街灯に火が灯されはじめます。寺院の周辺には夜間営業の店はありませんので、点灯夫以外の人の姿は見当たりません。

イーサ:
 なにもなければ、そのまま防具屋のエリアに。

GM:
 防具屋のある通りに進んでも、人の姿は見当たりません。しかし、周囲には何者の姿も見当たらないものの、聞き覚えのある声がイーサのすぐ隣から聞こえてきました。その声の主は間違いなくアルです。

シーン外のエルド:
 アルさんは“インヴィジビリティ”の魔法も使えたんですか。凄いですね。

GM:
 まあ、伊達に魔法剣士を自称しているわけではないってことですね。

アルの声(GM):
(押し殺した声で)「そのままゆっくり歩き続けろ。話すときは極力声を殺してな」

イーサ:
(小声で)「わかった」と言いつつ、何事もなかったかのように歩き続ける。

アルの声(GM):
「どうやら、イスパルタ私兵団の奴らが俺を含めたシシュマン隊商の面子を探しているみたいだが、お前らなにかしでかしたのか? いまも尾行されてるぞ」

イーサ:
「そうだったのか……」そう言って、背後を確認――

アルの声(GM):
「よせ、馬鹿ッ! なんのためにこんな面倒な方法で接触したと思ってるんだ。尾行してるのは素人じゃないんだ。下手な動きをみせたら気づかれるぞ」

イーサ:
 む、そういうことであれば、背後の確認はしないでおこう……。

シーン外のアゼル:
 なあ、これまで俺たちは尾行されていることにまったく気がつけなかったのか?

GM:
 こちらでシークレット判定を行っていましたが、あなたたちの中で、スカウト、もしくはハンター技能のレベルが最も高いのは、スカウト技能レベル1のエルドですからね……。駆け出しの斥候相手ならいざ知らず、一人前の斥候相手にはかないませんよ。

シーン外のアゼル:
 そうか……。やっぱり、セルダルの力が必要だったのか?

 アゼルはセルダルを置いてきたことを悔やんでいましたが、そのセルダルのハンター技能もレベル1に過ぎませんので、結果は変わらなかったでしょう。

イーサ:
 それじゃ、前を向いて歩きながらアルと話し続けよう。
「さっきの質問に対する答えだが、実はギズリとジェザがイスパルタ家の家宝を盗んで逃亡中らしい。その2人を追って、イスパルタ本家三男のイスメトって奴が自ら私兵団を率いてこの街に来てるんだ。ギズリたちと共に旅していた俺たちにも共犯の嫌疑がかけられていてな。すでに、シシュマン隊商の参加者のうち、ギズリ、ジェザ、そしてアル以外の面子は全員イスパルタ私兵団に捕えられた。それで、俺とアゼルとエルドの3人は、少しでも早く解放してもらうため、ギズリの捜索に協力してるってわけだ」

アルの声(GM):
「なるほど、そういうことだったのか……」

イーサ:
「俺のことを尾行してるのも、おそらくイスパルタ私兵だろうな。きっと、俺たちがギズリと通じているんじゃないかと思って見張ってるんだろ。ギズリ捜索への協力は許されたものの、あまり信用されてる感じじゃなかったからなぁ……(苦笑)」
(少し間をおいてから)
「しかし、アルはよくいままで捕まらずにいられたな」

アルの声(GM):
「ああ。たまたま、イスパルタの奴らが俺のことを探しに来る前に宿を替えてたんだ。それで、あとになってから元の宿に泊まっていた奴らが、俺のことを探し回ってる連中のことを教えてくれたってわけだ。探索者は同業者くらいしか頼れるものがないからな。こういうときの相互協力は頼りになる」

イーサ:
「へぇ。どうりでイスパルタの奴らが見つけられなかったはずだ。……それで、アルはギズリたちの行方に心当たりはないか?」

アルの声(GM):
「心当たりと言われても、商人ギルドで別れて以降、アゼル以外の奴とは一切接触してないからな……。予定じゃ、お前たちは今朝にはこの街を出発することになってたはずだろ? すでに街の外に出てるんじゃないのか?」

イーサ:
「いや、その可能性は低いだろうな。数日前から市門には検問が敷かれてるって話だし、検問が敷かれる前に街の外へ出た記録もなかったそうだ」

アルの声(GM):
「そうか……。しかし、街中にいるとしても、この街には身を隠せるところが多いからな。商人ギルド系列の店にでも出入りしてれば、すぐに情報提供があるだろうが、まあ、ギズリだってギルドの一員だったんだから、そんな下手は打たないか……」

イーサ:
「たしかにな……。ん? まてよ……。ってことは、ギズリたちの行方を追うなら商人ギルド系列以外の店をあたったほうがいいわけだ」

アルの声(GM):
「それはそうかもしれないが、ギルド系列以外の店にとっては、商売敵であるシシュマンたちが不利益を被るのは願ったり叶ったりなんじゃないのか? お前たちじゃ、そんなところからの情報提供は望めないだろ?」

イーサ:
「いや、それだったら当てがある。少し光明が見えてきたな……」

シーン外のアゼル:
 タルカンとのつながりはこのためのものだったんだな。

イーサ:
「ああ、それとアル。ちょっと引っかかってることがあるんだ。実は、イスメトの奴がギズリとジェザは必ず一緒に行動してるはずだって言ってたんだ。ジェザがギズリに代わってなにかすることなどありえないとも断言していた。これがいったいどういうことだか判るか?」

アルの声(GM):
「うーん」
(しばらく間を空けてから)
「そうだな……。なんていうか、その言い方だと、2人のあいだには一方的な主従関係があるような感じがするな」

イーサ:
「やっぱりそう感じるか? そうなんだよな……。イスメトの奴、まるでジェザにギズリが仕えてるかのような口ぶりだったんだ。たしか、ギズリはジェザのことを相方だと言っていたはずだが、イスパルタ私兵団からの追跡を逃れるために、身分を偽っていたってことなのか……?」
(腕組みをして考え込む)

アルの声(GM):
「そういえば、道中ジェザが後方をやたらと気にしてるってエルドが言ってたっけな。いまになって思えば、あれはイスパルタ私兵団の追跡を警戒してのことだったのか」

イーサ:
「だろうな。そうなると、この街についてから別行動を取るって言い出したのも、こうなることを予期してのものだったってわけだ……」

アルの声(GM):
「なんだ、あいつらそんなことも言ってたのか?」

イーサ:
 あ、そういえば、アルはギズリたちが隊商から抜けたことを知らなかったのか……。
「ああ、そうなんだ。アルがいなくなってすぐに、ギズリとジェザは隊商を抜けたんだ。護衛が力量不足の俺たちだけじゃ不安だから、これ以上一緒に旅を続けられないって言ってな」

アルの声(GM):
「はぁ? 隊商を抜けるときにわざわざそんなこと言ったのか? 仮に本音はそうだったとしても、普通はもっと無難な理由ですませるもんだぞ。そんなこと言ったら、お前たちからの反感を買うだけじゃないか」

イーサ:
「ああ。まあ、俺自身はそう言われても仕方ないと思ってたんだが、その物言いを聞いたサブリの奴はかなり怒ってた。だが、ギズリのほうも一刻も早くグネ・リマナに行きたいみたいで、相当焦っている様子だったからな……。体裁を繕ってる余裕がなかったんじゃないか?」

アルの声(GM):
「ん? グネ・リマナ? あいつら、グネ・リマナに行くつもりだったのか?」

イーサ:
「ああ。隊商を抜けるときにそう口走ってた」

アルの声(GM):
「そうか……なるほど……。お前たちを力量不足だとなじったうえで、グネ・リマナに行くって口走ったのか……」
 アルはなにか考え込んでいるようで、しばらく押し黙りました。

イーサ:
「どうかしたのか?」

アルの声(GM):
「ギズリたちの立場になったつもりで考えてみろよ。追っ手が迫りつつある中、隊商はこの街で数日の休息をとることになってる。追いつかれるのはほぼ間違いない。その状況で、隊商の面々に喧嘩を売って、自分たちの目的地を口走って隊商から抜ける。その目的はなんだ?」

イーサ:
「……?」
(しばらく考えてから)
「あッ! まさか、かく乱? グネ・リマナは本当の目的地じゃないってことか!?」

アルの声(GM):
「……それで、お前たちはイスパルタのボンボンに、ギズリたちはグネ・リマナに行くつもりだったって話したのか?」

イーサ:
「ああ。それを聞いたイスメトは、グネ・リマナにも私兵を割くことにしたと言っていた」

アルの声(GM):
「ってことは、ギズリの打った布石は有効に働いたようだな。そのおかげで、いまのところ街中の捜索人員は手薄になってるわけだ」

イーサ:
「なるほど。あれはそういうことだったのか……。それじゃ、俺たちはまんまとギズリの片棒を担いじまったんだな」

アルの声(GM):
「まあ、いくつか考えられる可能性のうちのひとつにすぎないけどな。ただ、ギズリが嘘の情報を流したんだとしたら、それはそう簡単には街の外にでられないってことを予想してたからだろう。だとすれば、ギズリたちが街の中にいる可能性はぐっと高まるな」
(一呼吸おいてから)
「ひとつ忠告しておくが、もしあいつらのことを探し出したいんだったら、街の外に逃げられる前になんとかしろよ。ここら辺はイスパルタ周辺とは違って、街道を外れて進むこともできる。一旦街の外に出られたら、あいつらの目的地がどこであろうと、容易には見つけられなくなるぞ」

イーサ:
「ああ。どのみち、あいつらを見つけられなきゃ、俺たちはずっとこの壁の中だ……」

アルの声(GM):
「……さてと。とりあえず一通りの状況は飲み込めた。ありがとな」

イーサ:
「アルはこのまま身を隠し続けるのか?」

アルの声(GM):
「ああ。厄介ごとに巻き込まれるのはごめんだからな」

イーサ:
「もし、アルのほうでギズリたちに関する情報を入手するようなことがあったら、教えてもらえないか? 連絡手段については、そっちの都合のいい方法で構わない」

アルの声(GM):
「そうだな。その程度のことなら手を貸してやらないこともない。俺としても、この状態が長く続くのは困るからな……。じゃあ、俺のほうから伝えたいことがある場合は、今回みたいに魔法で姿を消して接触する。もし、お前のほうから連絡を取りたい場合は、12時から13時までのあいだにエルバート寺院で礼拝をしててくれ。それでいいか?」

イーサ:
「ああ、わかった。よろしく頼む」

アルの声(GM):
「それじゃ、俺はそろそろ行くとする。頑張れよ」
 その言葉を最後に、アルの声は聞こえなくなりました。

GM:
 こうして、アルとの会話が終わったころには、イーサは武器屋のあるエリアまで歩いてきていました。

イーサ:
 ひとりで街を歩き回っても大した情報は得られないかと思っていたが、思いがけない収穫があったな。

シーン外のアゼル:
 また、アルさんに頼ることになってしまったけどな(苦笑)。




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