LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(15)

GM:
 シーンは、アゼルとイーサがトゥルナゴル邸から出てきたところに移ります。時刻は19時半をまわり、あたりは暗くなっています。

エルド:
「いやぁ、アゼルさん、とんでもない目にあいましたね」

アゼル:
「本当だ(苦笑)。さて、イーサと合流しないとな……」とは言ったものの、しまったな。別行動取るときに合流方法について伝えてなかった。

GM:
 以前にも同じようなことがありましたね(苦笑)。今後は同じ失敗をしないように気を付けましょう。

エルド:
「とりあえず、イスパルタの別宅に戻りましょうか。イーサさんもそのうち戻ってくるでしょうし」

アゼル:
「そうだな。もしかすると先に戻ってるかもしれない」
 それじゃ、イスパルタの別宅に戻る。

GM:
 ならば、2人がイスパルタの別宅に戻ってきた段階では、まだイーサは帰ってきていないようです。

イスメト(GM):
 屋敷に戻ってきた2人をイスメトが出迎えました。
「戻ったか。では夕食の準備をさせよう。今晩は報告の義務を課していなかったが、せっかく戻ってきたのだ、食事の席で捜索状況の報告も聞かせてもらうとしよう。それと、屋敷内では武装は解除してもらう。使用人に預けて入ってくれ」

GM:
 イスメトの指示を受けて、使用人があなたたちの武器と防具を預かります。

アゼル:
 夕食はタルカンのところで食べてきたんだが、そのことは言わないでおきたいから、また食べるとするか……。

GM:
 さて、ちょうどその頃、イーサはアルと別れたわけですが、その後はどうしますか?

イーサ:
 そろそろ腹も減ったしな……。俺もイスパルタ別宅に戻るとしよう。

GM:
 そうすると、アゼルたちと同じく、屋敷に入るときには武装を解除させられました。そして、食事のために通された部屋で、アゼルたちと合流することになります。もちろん、イスメトも同席しています。

イーサ:
「お。お前たちも戻ってきてたのか。思ったより早かったな」

アゼル:
「ああ。まあな」

イーサ:
 とりあえず、話をする前に食事を済ませておこう。

アゼル:
 うーむ。食いすぎで腹がいっぱいだ……。

イスメト(GM):
 皆が食事を終えたころを見計らって、イスメトが言葉を発します。
「それでは、今日の首尾について報告してもらおうか」

アゼル:
 それじゃ、俺たちの方から……。
「今日は見世物小屋の周辺を探してみたんだが、残念ながらこれといった成果は得られなかった……」

エルド:
「まあ、捜索に出た時間も遅かったですしね」

イスメト(GM):
「いくら捜索に出たのが遅かったとはいっても、お前たちが戻るまで3時間以上の時間があっただろう。その間、見世物小屋の周辺以外は捜索しなかったというのか?」

アゼル:
(悪びれる様子もなく)「ああ。見落としがないようにくまなく探していたからな」

イスメト(GM):
「そうか……。キミたちはこの時間までずっと見世物小屋周辺の捜索を行っていたわけだな……」イスメトはもう一度、念を押すようにそう繰り返しました。

アゼル:
「ああ、もちろん――」

イーサ:
(アゼルの言葉に割って入って)「いやいや、確かに捜索したのは見世物小屋周辺だけだったが、その後でタルカンさんと出くわして、アゼルとエルドの2人は屋敷に連れていかれただろ。まったく、相変わらずアゼルは説明下手だよな。あまり誤解を招くような言い方するなよ」

イスメト(GM):
「タルカン? タルカンとは、あのアスラン商会のタルカンか?」イスメトはアゼルとエルドに対して確認するかのようにそう言いました。

イーサ:
「ああ、そうだ」と、2人がボロを出す前に俺が答えておく。それで、2人には話をあわせるように目くばせをしておこう。

アゼル:
「あ……。ああ、そうだった……。戦盤の誘いを受けて、無碍に断ることもできず、それで無駄な時間を費やしてしまったんだ」

イスメト(GM):
「ほう。それで、タルカンとはどんな話を? いや、その前に、キミたちはタルカンと面識があるのか?」

エルド:
「ええ。先日たまたま足を運んだ料理店にタルカンさんも来ていて、そのときタルカンさんに襲い掛かってきた暴漢を僕たちが撃退したんです。今日は戦盤を指すのが目的で声をかけられたので、世間話以上のことは話しませんでしたが、タルカンさんは、ここ最近、街中をイスパルタ私兵が慌しく駆け回っていることを気にかけているようでしたよ。はっきりとは口にしていませんでしたが、何か感づいているのかもしれませんね」

イスメト(GM):
「まあ、これだけ街中を動き回っているのだ。目をつけられていたとしても仕方ないか……。ふん。目ざといだけの金の亡者め」

エルド:
「あの……。タルカンさんは評判の悪い方なのですか?」

イスメト(GM):
「タルカンに限らず、アスラン商会の商人どもは金があれば何でもできると考えている卑しいクズばかりだ。あの人買いの成り上がり風情が」そう漏らしたイスメトは、苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべました。

GM:
 今は亡きアゼル王は、国家平定の折に地方豪族から私財としての土地を取り上げると、土地を管轄するだけの立場にしてしまいました。それによって、地方豪族の地場への影響力は大きく低下しました。このとき、地方豪族に成り代わって台頭してきたのが、資本を武器に伸し上がってきた大商人たちです。地域によって多少の違いはありますが、高い確率で両者の間には対立関係が生じています。
 イスメトは、由緒正しい豪族であるイスパルタ本家の三男ですので、彼がアスラン商会を快く思っていないとしてもなんら不思議なことではありません。
 ちなみに、第1話でもチラリと触れましたが、アスラン商会とヤナダーグ・プラト総督であるハイダールは癒着しているのではないかという噂もあり、地方豪族対大商会といった単純な二元対立関係ではないようです。

アゼル:
 それじゃ、俺もクルト本家の男としてアスラン商会とは対立しておくべきかな?

GM:
 以前にも言った通り、アゼルはクルト本家の人間ではなく分家の人間ですね。それに、もともとクルト家にはアスラン商会と対立できるほどの力もありませんでしたので、気にしなくていいです。

アゼル:
 そ、そうか……(汗)。

イスメト(GM):
「しかし、アスラン商会の情報網は侮れんからな。奴らを利用する分には接触をもっても構わんが、こちらの情報は決して漏らすなよ」

アゼル:
「ああ。もちろん心得てる」

イスメト(GM):
 アゼルとエルドの行動について確認し終えたイスメトは、続いてイーサのほうへと顔を向けました。
「それで、2人がタルカンのところにいるあいだ、キミは何をしていたのかね?」

イーサ:
「ああ。俺は酒場に行ったり、通りで聞き込みをしてみたり、街をだいたい一回りしてみたんだが、これといった情報は得られなかった」

イスメト(GM):
「まあ、聞き込みに関してはそうであろうな。我々とて、イスパルタ私兵団を名乗ってようやく情報を得られるのだ。それであっても、なおアスラン商会の息のかかった者たちから情報を引き出すのは難しい」

アゼル:
「そういうことであれば、アスラン商会方面の情報収集は俺たちに任せてくれ。望んで得たものではないが、俺たちにはタルカンとのつながりがあるからな」

エルド:
「タルカンさんを暴漢から助けたときに、こういうものも貰っていますしね」そう言って、服のポケットの中からプレートを取り出して、イスメト様に見せます。

イスメト(GM):
「ん? なんだそれは?」

エルド:
「タルカンさんが言うには、これをアスラン商会系列のお店で見せれば、色々と融通を利かせてもらえるそうです。これを見せて回れば、アスラン商会系列のお店でも、情報を聞きやすくなると思いますよ」

イスメト(GM):
「そんなものがあるのか……。しかし、身内の者だけを特別扱いしようなどとは、卑しいアスラン商会の商人どもが考えそうなことだ」

アゼル:
「まあ、そういうことだから、俺たちは明日からアスラン商会系列の店を回ることとしよう」
 イスメトのほうから何か聞かれることがなければ、報告することはそれくらいか。

GM:
 了解です。では、食事と報告が終わると、イスメトはあなたたち用に3人部屋を用意してくれました。

エルド:
 部屋に入ったら、早速イーサさんが仕入れてきた情報を聞きたいところですね。キャラクターとしては、どうしてイーサさんがタルカンさんと僕たちの関係をおおやけにしようとしたのか、まだわかっていませんから。

イーサ:
 説明したいのはやまやまなんだが、はたしてイスメトが用意した部屋で話をしても大丈夫なんだろうか? 盗聴されていたとしてもおかしくないと思うが……。

GM:
 さて、どうでしょうね? 最初にシシュマンたちと共に入れられた部屋とは違い、部屋の中にイスパルタ私兵が立っているということはありませんが、少なくとも部屋の外には見張りの兵が控えていたようですよ。

アゼル:
 部屋の中で小声で話してれば“聞き耳”でも聞き取れないだろ?

イーサ:
 いや、問題なのは“聞き耳”よりも“サウンド・キャリー”による盗聴だ。エルドがよく使う手口だろ。だから、まずは自分にだけ聞こえる程度の小さな声で“センス・マジック”を唱える。(コロコロ)発動。部屋の中を見回してみる。

GM:
 了解です。では、イーサの眼には床の真ん中にある黒い光源が映りました。

イーサ:
 やっぱりな。2人にアルとの会話内容を伝えたいが、今は筆談できるものもないんだよな……。今日はこのまま休んで、また明日伝えることにしよう。
「久々に歩き回ったんで疲れたな。今日のところはぐっすりと休むことにしよう」

エルド:
 イーサさんが“センス・マジック”を唱えたことは僕たちにもわかりましたよね? そうであれば、それを察して、何も詮索せずに休みます。それで、明日の7時に起きてここを出ることにしましょう。

アゼル:
 それは構わないが、なんで7時なんだ?

エルド:
 もちろん、インサンラールで朝食をとるためです!

GM:
 エルドは随分とインサンラールを気に入ったようですね(笑)。
 では、それから7時まで睡眠をとったとして、精神点の自然回復を3回行ってください。ちなみに、用意された部屋のベッドは身体を優しく包み込む上質のものなので、自然回復量が多くなります。

 こうして名門イスパルタ本家の客用ベッドで休んだ一行は、これまでにないほど良い睡眠環境を得たことで、生命点と精神点をともに最大値まで回復させることができました。

 翌日、使用人に預けておいた装備を受け取ると、一行は朝食をとりにインサンラールへと向かいます。

インサンラールの店員(GM):
「いらっしゃいませ。あ、あなた方は! いつもご利用いただきましてありがとうございます」

アゼル:
 顔パスになりつつあるな(笑)。

エルド:
 僕が利用しておいたおかげですからね。さて、今日のお客さんの入りはどの程度でしょう?

GM:
 朝食という習慣がないなかでは賑わっているほうです。特に女性客の姿が目に付きます。この調子だと、今後カルカヴァンに暮らす女性のあいだで、インサンラールでの朝食が流行するかもしれませんね(笑)。

エルド:
「このお店は相変わらず盛況ですね」

インサンラールの店員(GM):
「ありがとうございます。これもタルカン様のおかげです」

アゼル:
「朝食を食べに来たんだ。席まで案内してもらえるか」

インサンラールの店員(GM):
「はい。それではこちらへどうぞ」そう言って、店員はあなたたちを2階席へと案内しました。

 前回はエルドひとりで楽しんだ朝食でしたが、今回は3人で慣れぬ朝食を楽しみました。

アゼル:
「ふむ。朝、食事をするってのも悪くないな」そう言いつつ、料理を平らげた。

イーサ:
 それじゃ、一通り食事を終えたところで“センス・マジック”を唱える。預けておいた装備に魔法がかけられているかもしれないからな。(コロコロ)発動。自分たちの装備を見てみる。

GM:
 イーサの推測どおり、あなたたちの装備している帯剣用ベルトがそれぞれ黒く光っています。

イーサ:
 ちなみに、俺たちが店の中に入った後に、イスパルタ私兵っぽい人間が店の中に入ってきたりしただろうか?

GM:
 あなたたちのあとにお店に入ってきたのは、女性、あるいは子供連れの客だけで、それらしい人物は入ってきていませんね。

イーサ:
 そうか。店の外からでも俺たちの動向を知ることができて、長時間持続する魔法となると、やはりかけられているのは“サウンド・キャリー”なんだろうな。それ以外で条件を満たす魔法を俺は知らない。

エルド:
 イーサさんの行動から、なんとなく状況を察してこう言います。
「さて、今日はアスラン商会系列のお店を回るってことですが、どうせならギズリさんの似顔絵を用意して、それを持って聞き込みをしてみませんか? きっと、そうしたほうが口であれこれ説明するよりも早いと思います」

アゼル:
「そうだな」
 それじゃ、早速店員を呼び寄せて、銀貨を10枚渡して紙を数枚と書くものをもってきてもらおう。

GM:
 10銀貨ですか……。であれば、インサンラールの店員は紙を4枚と羽ペンとインクを持ってきます。紙はあげますが、10銀貨だと用意してもらったものすべての買取価格には足りませんので、羽ペンとインクは返却してくださいね。

アゼル:
 ぬお。筆記具って意外に高いんだな。

 もちろん、羽ペンとインクは現代の鉛筆などと比べれば高価なものですが、そもそも銀貨10枚は1,000円相当の価値しかないのです。その金額で特別なサービスを頼むだけでなく筆記用具まで買い取ろうとしたのですから、これには店員も苦笑いです(笑)。プレイヤーたちが貨幣価値を正確に認識できていないため、このようなシーンがたびたび発生します。

エルド:
 では、まず1枚目の紙にギズリさんの似顔絵を描きます。

GM:
 似顔絵を描くのであれば、《スカウト技能レベル+器用度ボーナス+2D》での判定を行ってください。

エルド:
(コロコロ)10です。

GM:
 その値だと、ちょっと絵が上手い素人レベルの出来栄えですね。

イーサ:
「上手く描けたか? ちょっと俺にも見せてくれ」そう言って、何も書かれていない紙を1枚と、ペンを手に取った。
「ここはもう少し、こんな感じじゃなかったか?」と言いながら、サラサラと文字を書く。アルと出会ったこと。自分たちに尾行がついていること。帯剣ベルトにおそらく“サウンド・キャリー”がかけられていること。昨晩休んだ部屋にも黒魔法がかけられていたこと。そして、その紙をアゼルとエルドに見せた。

アゼル:
 よし。これで状況を把握した。

エルド:
 イーサさんに対してうなずいてから、「なるほど。それじゃ、これと同じものをあといくつか用意して聞き込みをしましょう」と言って、ほかの紙にも似顔絵を描いていきます。それで、描き終わったらそれをここの店員に渡して、見かけたことがないかを聞いてみます。尾行がついていたとしても、ギズリさんを見つけないことには先に進めませんからね。

GM:
 インサンラールの店員は似顔絵を持ってお店のスタッフ全員に聞いて回ってくれたのですが、残念ながらその絵の人物に見覚えがあるという人は見つかりませんでした。

エルド:
 うーん。ここはダメでしたか。次はどこに行きましょう?

イーサ:
 そうだな。できればアスラン商会系列の店を回りたいところだが、どこが系列店かわからないしな……。一軒一軒聞いて回るのも面倒だし、やはりここはタルカンさんのところを訪ねて教えてもらうべきか。

アゼル:
 ハァ……。またあいつのところに行くのかぁ……。

エルド:
「そういえば、イーサさん。昨日タルカンさんが、次に来るときはぜひともイーサさんを連れてきてくれと言ってましたよ」

イーサ:
「そうか。ちょうどアスラン商会系列の店を教えてもらいたいところだったしな。行ってみるか」
 それじゃ、さっそくタルカンさんの屋敷に向かおう。

エルド:
 あの……。言い出しておいてなんなんですが、このまますぐに向かってしまうと、“サウンド・キャリー”の効果が持続しているあいだにタルカンさんと話すこととなりますが、それはいいんですか?

アゼル:
 すでにイスメトにはタルカンとの関係も話してるし、特に問題はないだろ。

GM:
 ……では、あなたたちはインサンラールでの朝食を済まし、朝8時過ぎにはトゥルナゴル邸へと到着しました。

執事(GM):
 トゥルナゴル邸の門の前に行くと年配の執事が出てきて、「どのようなご用件でしょうか?」と言ってあなたたちに対応します。

アゼル:
「タルカンさんはご在宅か?」

執事(GM):
「失礼ですが、お名前を頂戴できますか?」

アゼル:
「俺はアゼル・クルトだ」

執事(GM):
「お約束はございますか?」

アゼル:
「いや、約束はしていないんだが……」

執事(GM):
「でしたら、ご用件をお教えいただけますか? 確認をとってまいりますので」

アゼル:
「用件は……。話があるとだけ伝えて欲しい」

執事(GM):
「承りました。それでは、こちらで少々お待ちください」そう言って、執事はアゼルの不明瞭な答えに嫌な顔ひとつも見せず、折り目正しく対応してくれます。
 こうして、あなたたちを門の前に残して屋敷の中へと姿を消した執事は、しばらくして戻ってくると、「主人より言伝を仰せつかりました。本日の12時に時間を作るので、それくらいの時刻にもう一度いらして欲しいとのことです」とあなたたちに告げます。

アゼル:
「では、昼にあらためさせてもらうことにしよう」
 仕方ない。いったん出直しだな。さて、これから昼までのあいだ、何をしたもんか……。

 たまたまアゼルたちがトゥルナゴル邸を訪れた時間が、あらかじめ予定されていたタルカンの執務スケジュールとぶつかったために出直すことになったわけですが、これは怪我の功名でした。

 アゼルは“サウンド・キャリー”の効果時間内にタルカンと会話しても問題ないだろうと発言していますが、もしタルカンから、「それで、イスメトの動きはどうなの?」などと切り出されていたらどうなっていたことでしょう。むしろタルカンが知りたがっていたことはそのことなのですから、当然でてくる発言だと考えられます。

 隠し事をしたり、嘘をついて上手く立ち回ろうとするのであれば、それ相応の注意を払いましょう。それができないようであれば、正直に行動するのが無難です。




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