LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(16)

アゼル:
 しかし、タルカンとの約束の時刻まで、ただ時間をつぶすってのもなんだなぁ……。

エルド:
 いまさらなんですが、アスラン系列のお店の名前と場所くらいであれば商人ギルドででも教えてもらえたんじゃありませんか?

アゼル:
 確かに言われてみればそうだな……。でも、まあ、もうタルカンとの約束を取り付けたあとだしな。

GM:
 執務で忙しいタルカンがわざわざ時間を作ってくれるというのに、それをすっぽかしたらさすがに怒られるでしょうね(笑)。

アゼル:
 だよなぁ……(苦笑)。まあ、ここは昼までのあいだ、適当な店で聞き込みをして時間をつぶすことにしよう。

エルド:
 了解です。あと、次のイスメト様への報告は誰が担当します? タルカンさんとの約束が12時になったので、バッティングしちゃうんですよね。

イーサ:
 約束を取り付けたアゼルが行くのは当然として、タルカンさんは次に来るときには俺のことも連れてくるようにと言ってたんだろ? そうなると、捜索状況の報告にはエルドに行ってもらうしかないんじゃないか?

エルド:
 それもそうですね。わかりました。

 こうして、お昼頃までの時間を武器屋と防具屋での聞き込みに費やすと、アゼルとイーサはタルカンと会うためにトゥルナゴル邸へ、エルドは捜索状況をイスメトに報告するためにイスパルタ別宅へとそれぞれ向かったのでした。


GM:
 では、トゥルナゴル邸のほうから先に解決しますね。
 タルカンに会うために屋敷へと向かったアゼルとイーサは、執事に案内されて昨日と同じ食堂へと通されました。食堂ではタルカンとその妻アーニャ、そして豪華な昼食があなたたちを出迎えます。

タルカン(GM):
「いらっしゃい。お昼はまだなんでしょう? 食事でもしながらお話しましょう」そう言って、タルカンはアゼルとイーサに食事をとるよう促します。

イーサ:
「それじゃ、ありがたくいただきます」
 勧められるまま食事に手を付けていこう。

タルカン(GM):
 しばらく食事を堪能したところで、タルカンが話を切り出しました。
「それで、あなたたちからのお話って何なのかしら?」

アゼル:
「まずは、お忙しいところお時間を作っていただきありがとうございます。実はアスラン商会の系列店の名前と所在の一覧が必要となったのですが、教えていただけないでしょうか?」

タルカン(GM):
「あらあら。それは例のことでうちの系列店をまわって聞き込み調査をしたいってことなのかしら?」

アゼル:
 相変わらず察しがいいな。
「ええ、おっしゃる通りです」

タルカン(GM):
「なるほどね」
 タルカンは軽くうなずくと、手を鳴らして使用人を呼び、筆記具を持ってこさせます。そして、巻物のような紙に自らの手で何やらしたためていきました。

GM:
 タルカン直筆の巻物は、使用人の手を介してアゼルへと渡されました。巻物に目を通してみると、そこにはアスラン商会系列店の名前と場所の一覧と、この書状を持つ者の調査への協力を促す一文がタルカンのサイン入りでしたためられていました。

アゼル:
 うおっ、なんて良い人なんだ!

GM:
 清々しいまでの手のひら返しですね(笑)。

一同:
(爆笑)

アゼル:
 うむ。今でも苦手な相手だが、良い人だとは思う(苦笑)。どうも、あの話し方がダメなんだよなぁ。

タルカン(GM):
 巻物に目を通しているアゼルに対してタルカンは、「それをお店で見せれば聞き込みも円滑に進むでしょう? それは先行投資といったところよ。そのかわり、昨日の約束のこと、よろしくね」と言って、意味深にほほえみました。

アゼル:
「そ、そうですね……(汗)。お手間をとらせてしまい申し訳ない。ありがとうございました。それではこれからさっそく聞き込み調査がありますので、これで失礼します」

タルカン(GM):
「あら、ずいぶんと急ぐのね。それじゃ、また何かあったら遠慮せずにいらっしゃい」そう言って、タルカンはあなたたちを見送りました。

GM:
 こうして、アゼルとイーサは首尾よくタルカンからアスラン商会の系列店の一覧を入手することに成功しました。

 その一方で、イスメトへの報告のためにイスパルタ別宅を訪れたエルドでしたが、こちらもつつがなく報告を終え、ふたたび3人が合流します。ちなみに、エルドはイスパルタ別宅に行った際に荷物を一時的にイスパルタの使用人に預けたことで、何やらまた細工をされてしまいました。


エルド:
「どうやら、無事にアスラン商会系列店の一覧を入手できたようですね。それで、これからどうしますか?」

アゼル:
 ちょっと待ってくれ。これからの方針を決める前に確認しておきたいんだが、タルカンからもらった巻物に書かれた店にはどんなものがあるんだ?

GM:
 そうですね……。宿屋、酒場、雑貨屋、武器屋、防具屋、見世物小屋など、さまざまなお店が名を連ねていますよ。

エルド:
 その中には娼館とか奴隷市場なども含まれているのでしょうか?

GM:
 その2つは含まれていないようです。

エルド:
 へー。意外と健全なんですね。
「昼間から身をひそめられるとしたら、宿屋や見世物小屋といったところでしょうか?」

イーサ:
「そうだな。潜伏するなら宿屋が一番可能性が高そうだし、とりあえずは宿屋をまわってみるか」

GM:
 了解しました。聞き込み調査を行うのであれば、1時間当たり最大3軒の宿をまわれることにします。聞き込み調査を行った店ごとに、《2D》の判定を行ってください。

イーサ:
 それじゃ、1軒目の宿屋。(コロコロ)5。

GM:
 では、あなたたちがタルカンのしたためてくれた書状を持って聞き込みを始めると、宿屋の主人は快く応じてくれました。しかし、残念ながらそこの宿屋では、似顔絵を見せてもそれらしい情報はつかめませんでした。
 さて、この調子でどんどん聞き込み調査を進めていきましょう(と言って某刑事ドラマの曲を口ずさむ)。

 こうして、聞き込み調査が始まりました。処理としてはダイスを振るだけなのですが、GMはそれこそ某刑事ドラマのようにカットの連続で一気に時間が経過し、地道な調査の果てにようやく小さな手がかりをつかむという展開を想定していました。ところが――。

エルド:
 じゃあ、3軒目は僕が振りますね。(コロコロ)6ゾロです。

GM:
 ブッ(失笑)! 展開的には2桁近くのお店をまわって欲しかったのに、こんなにあっさりと……。

イーサ:
 まあ、エルドは想定外のことをあっさりとやってのける奴だからな(笑)。

GM:
 恐るべし、エルド……。
 では、気を取り直して……。調査に進展があったのは、あなたたちが3軒目に訪れた牡牛の角亭という宿屋にて、かなり年老いた主人と入口近くのカウンター越しに会話しているときのことです。

牡牛の角亭の主人(GM):
 牡牛の角亭の主人は、あなたたちから手渡されたギズリの似顔絵をじっと眺めたあとで、「この似顔絵の男が来たとしたら、ここ数日の話なんじゃろ? ワシも客商売をして長い。人の顔と名前を覚えることにかけてはちょいと自信もあるが、この顔には見覚えがないなぁ……」と答えました。

エルド:
「うーん。そうですか……。もしかして、似顔絵の出来が悪かったですかねぇ……」

アゼル:
「ちなみに、フードを目深に被ったひげ面の男にも覚えはないか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「そこまであからさまに怪しいモンを見かけたなら、逆に忘れようもないんじゃがな。力になれずにすまないが……」そう言って主人は首を横に振りました。

GM:
 さて、全員ここで、《スカウト技能レベル+知力ボーナス+2D》による“記憶術”の判定を行ってください。目標値は10ですが、アゼルだけは判定に+2のボーナスを加えてかまいません。

アゼル:
 お? なんのボーナスだろうな? (コロコロ)ボーナス込みでピッタリ10だ。

GM:
 どうやら成功したのはアゼルだけのようですね。では、アゼルはカウンター奥の棚の上に置かれている馬の形をした木製の駒にふと目が留まりました。あなたはその駒に見覚えがあります。馬のたてがみの一部が削りすぎて欠けているところなどは、旅の途中でギズリが作っていた戦盤の駒の特徴とピッタリ一致します。

アゼル:
 あー。そういや野営中、そんなもんを作ってたっけな。
「おや? オヤジさん。そこにある戦盤の駒、どうしたんだ?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「ああ、こいつか?」
 老主人は棚のほうを振り向いて駒を手に取ると、「こいつはどうやら誰かが落としていった物らしくてな。ついこのあいだ、ちょうどお前さんらが立ってるところに落ちてたんじゃよ」と言いつつ、カウンター越しにあなたたちの足元を指さしました。

アゼル:
「間違いない。その駒はギズリさんが自作してたやつだ。オヤジさん。ついこのあいだってのは具体的にいつの話だ?」

牡牛の角亭の主人(GM):
 老主人は指を折って数えると、「たしか4日前じゃな」と答えます。
「てっきり宿泊客の落とし物かと思って、いま泊まっているモンにはひととおり確認してみたんじゃが、どうやら違ったようでな……。仕方なくここに置いておいたんじゃ。目立つところに置いておけば、落とし主本人の目に触れるかもしれんじゃろ?」

エルド:
「いま泊まっている人以外の落とし物だとすると、4日前にチェックアウトした人のものじゃありませんかね? その日にチェックアウトした人の名前は調べられますか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「そりゃ、もちろんわかるが……」そう言って老主人は台帳を開いたのですが、一目見るとすぐにそれを閉じてしまいました。
「その日にチェックアウトした客はおらんな」

イーサ:
「ダメか……」

牡牛の角亭の主人(GM):
「いや……。確かに、チェックアウトしたモンはおらんかったが、そういえば、客を訪ねてきたモンならひとりおった。たしかシジルとかいう名前の50歳くらいの男じゃったな」

エルド:
「シジル……ですか……。聞き覚えのない名前ですね。そのシジルという人はどなたを訪ねてきたんですか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「そいつは……」と口にしたところで、老主人はいったん言いよどむのですが、「まあ、タルカンさんの紹介なら構わんか」と小さく漏らしてから、「ハイローのことを訪ねて来ておった」と答えました。

一同:
「ハイロー?」

アゼル:
 なんだかすごく聞き覚えのある名前だな(笑)。

 ハイローとは、聖域の探索者というタイトルの別のセッションで登場したPCの名前です。

牡牛の角亭の主人(GM):
「ハイローは仕事に出ておって、しばらく戻ってこんじゃろうと伝えたら、シジルという男はまた来ると言っておった」

イーサ:
「そのハイローってのは何者なんだ?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「なんじゃ。お前さんらはハイローを知らんのか? このあたりではかなり名の知れた遺跡探索者じゃよ」

アゼル:
「なるほど。探索者か……。それで、その人はいつごろ戻ってくる予定なんだ?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「それはわからんよ。遺跡探索をしてる連中は行き先や日数を告げずに出ていくことが多いからな。部屋は取ったままじゃから、いずれ戻ってくるつもりなのは間違いないじゃろうが、数週間戻ってこないこともざらじゃよ。まあ、半年も戻らなけりゃ、部屋に残った荷物はこっちで処分しちまうがね」

エルド:
「うーん。どうもそのシジルという人物が怪しそうですね。偽名を使ったギズリさんでしょうか?」

アゼル:
「どうかな? でも、ギズリさんが50歳に変装するのは難しいんじゃないか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
 あなたたちの会話を聞いていた主人が口を挟みます。
「ありゃ変装とかそんなもんじゃなかったぞ。ワシはこれまで何十万人という人の顔を見てきたんじゃ。顔のシワをみりゃ、それが本物か偽物かくらい見分けがつくわい」

アゼル:
 かなり自信がありそうだな。そうなると変装でないのは確定か……?

エルド:
「ともかく、ギズリさんが持っていたはずの戦盤の駒を、そのシジルって人が持っていた可能性が高いんです。ぜひその人と直接話をしてみたいところですね……」

イーサ:
「また訪ねてくるって話だしな。誰かひとりこの宿に残って見張り続けてれば、そのうち顔を出すんじゃないか?」

エルド:
「見張りをするなら、僕が残ったほうがいいですかね。いざとなったら魔法も使えますから」

アゼル:
「よし、そうしよう。俺とイーサは夜の報告の時間まで別の店をまわって聞き込みをしてくることにする。エルド、ここは頼んだぞ」

エルド:
「わかりました。任せてください」




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