GM:
さて、それでは3人それぞれのシーンなのですが、まずはエルドから解決していきますか。
エルド:
了解です。では牡牛の角亭の主人のところまで行って、さっそく部屋を取ります。
「すみません、3人で泊まりたいんですが、部屋は空いていますか?」
牡牛の角亭の主人(GM):
「おや、泊まってくのか。あいにくと偶数人数の部屋しかないんじゃが、4人部屋で構わんか?」
エルド:
「そのことなんですが、2人部屋は2つ空いてませんか? ひとつはできるだけ奥側で、もうひとつは逆に手前側の部屋だと都合がいいんですが」
牡牛の角亭の主人(GM):
「……まあ、その条件にあう部屋がないわけじゃないが……。いかにもなにかありそうな注文じゃな」
エルド:
「もし、なにか面倒なことが起きても、そのときはすべてこちらで処理しますから、お願いしますよ」そう言って、主人に部屋代とは別に100銀貨渡しておきましょう。
「それで、もし次にハイローを訪ねてくる人がいたら、僕たちの泊まっている奥側の部屋まで案内してきてもらえませんか?」
牡牛の角亭の主人(GM):
「ははーん。そりゃ構わんが、まったく関係のないもんまで通しちまってもいいんじゃろうか?」
エルド:
「ええ。相手の容姿に関わらず、訪ねてきた人は全員案内してください。あとはこちらでなんとかします」
牡牛の角亭の主人(GM):
「そういうことなら……」そう言って、主人は顔をにやけさせながら100銀貨を受け取りました。
シーン外のアゼル:
なんだか、悪人の取引みたいだ(苦笑)。
それにしても、100銀貨出すとはエルドも太っ腹だな。
エルド:
言っておきますが、この100銀貨は必要経費としてあとで清算しますからね。
シーン外のアゼル:
前言撤回(笑)。
エルド:
ああ、そうだ。宿屋の主人にこれもお願いしておきましょう。
「あの……、それと筆記具を貸しておいてもらえませんか?」
今後も盗聴対策として筆談することがあるでしょうからね。
GM:
了解です。では、宿屋の主人は筆記具一式をエルドに貸してくれました。
GM:
次はイスメトへの定期報告のためにひとりでイスパルタ別宅を訪れたアゼルのシーンです。
アゼルはいつものように武装を解除させられた状態で部屋へと通されます。もちろん、夕食も振る舞われます。そして、アゼルが食事を終えたころあいを見計らってイスメトが姿を現しました。
イスメト(GM):
イスメトは部屋に入ってくるなり単刀直入に話を切り出しました。
「今回はキミひとりか。で、何か進展はあったか?」
アゼル:
「ああ。牡牛の角亭という宿屋で、ギズリさんが自分で作っていた戦盤の駒を見つけた」
イスメト(GM):
「ほう! では、その宿屋にギズリたちが潜伏しているということか?」
アゼル:
「いや、宿屋の主人に確認をとってみたんだが、その宿屋にギズリさんが泊まっていた形跡はなかった。そのかわり、どうもその宿屋に泊まっているハイローという人物を訪ねてきた男が戦盤の駒の落とし主らしいということがわかった」
イスメト(GM):
「ハイローか……。その名前には私も聞き覚えがある。たしか、カルカヴァンで最も名の知れた遺跡探索者だったな」
アゼル:
「うむ。実は今日の昼過ぎにもその宿にハイローさんを訪ねてきた男がいた。ちょうどその場に居合わせたエルドによると、その男は顔つきや髪形こそ違えども、ギズリさんによく似た声質だったたらしい。それで、エルドは男のことを追いかけたが、男は逃げるように人ごみの中に姿を消してしまったということだ。俺たちは、そのハイローさんを訪ねてきた男こそ変装したギズリさんなんじゃないかと考えている」
イスメト(GM):
「……なるほどな。そうなると、あいつらはハイローの協力を仰いで逃亡するつもりなのか……」
アゼル:
「今後、俺たちは牡牛の角亭で張り込んでみようと思う。だから、夜もここには戻ってこないつもりだが、構わないか?」
イスメト(GM):
「ああ。報告を欠かさないのであればそれは構わない。少しは収穫があったようだな。引き続き捜索にあたってくれ」
アゼル:
「わかった」
報告を終えたら牡牛の角亭に向かう。
GM:
あれ? ハイローの出入記録を調べてくれるようにイスメトにお願いするんじゃなかったんですか?
アゼル:
あ……そうだった……。ま、いまさらだし、いいや。そのことは言わずに戻る。
GM:
……了解です。では、イスパルタ別宅を出るときに、ふたたび預けていた装備を受け取ってください。
アゼル:
はぁ……。また、盗聴魔法をかけられたのか。面倒だな……。
GM:
さて、そんなふうにして溜息混じりにイスパルタ別宅をあとにしたアゼルでしたが、屋敷の中からそんなアゼルの背中に視線を向けるイスメトの姿がありました。
イスメト(GM):
離れていくアゼルの姿を眺めつつ、背後に控える兵士に対してイスメトが声を発します。
「どうやら報告内容に間違いはないようだな。皆に声をかけて準備をさせておけ。ここであいつの身柄を押さえるぞ」
イスパルタ私兵(GM):
「はッ!」
直立不動の姿勢を取っていた兵士は、イスメトに対して敬礼してから小走りで部屋を出ていきました。
イスメト(GM):
窓の外に目を向けるイスメトが、誰もいなくなった部屋の中でぼそりと独りごちます。
「ようやくか……。まったく、ずいぶんと手を焼かせてくれたものだ。だが、もう好き勝手にはさせんぞ……」
GM:
では、最後にハイロー帰還の偽情報を流そうとしているイーサですが、どうやって噂を流しますか?
イーサ:
そうだな……。貧民区でアゼルに群がってた子供たちに噂を流すってのはどうだ?
シーン外のエルド:
それならアゼルさんにやってもらったほうがいいんじゃありませんか?
GM:
一応言っておきますが、貧民区の子供たちは市壁の中には入ってこれませんよ。街の外で噂を広めても期待する効果は得られないんじゃありませんか?
イーサ:
そうか。それもそうだな。じゃあ歓楽区に行って高級酒場で噂を流すとするか。適当に店を決めて入ってみる。
GM:
了解です。では、イーサが高級酒場に足を踏み入れようとすると、その入り口で正装姿の男性に呼び止められました。
高級酒場の従業員(GM):
「お客様。当店への入場は前金制となっております。50銀貨お支払いただけますか?」
イーサ:
「ああ。わかった」
入店だけで50銀貨か。高級酒場というだけあって、やっぱり高いな……。
高級酒場の従業員(GM):
「当店のご利用ははじめてですか? 当店では、同席させていただく子をご指名いただくこととなっております。もしご指名がないようであれば、こちらでお勧めの子をお付けいたしますが……」
イーサ:
「ああ。ここの利用は初めてなんだ。適当によろしく頼む」
GM:
では、従業員の案内にしたがって、イーサは店の中へと入っていきました。ボックス席に通されて、そこでしばらく待っていると、お店の女の子がイーサの隣につきました。その女の子は容姿はいささか微妙ですが、見たところかなり若いです。
シーン外のアゼル:
ちなみに、店の作りとか客入り具合はどんな感じなんだ?
GM:
そうですね。広いホールに十数席のテーブルがあり、それぞれのテーブルが低い敷居で区切られていて、ある程度のプライバシーが確保されています。客入りはポツポツといったところで空席が目立ちますね。
高級酒場の娘(GM):
同席することとなった娘は、席に座るなり飲み物のオーダーを聞いてきました。
「こんばんは~。お飲み物はどれにします~。これなんてお勧めですよ~」そう言って飲み物のメニューを手にした彼女が指さしたお酒の値段は100銀貨です。ちなみに、そのメニューに記載されているお酒だと100銀貨が最も安くて、100銀貨刻みで500銀貨のお酒まであります。
イーサ:
なん……だと……。
シーン外のエルド:
イーサさん、ここは絶対500銀貨のお酒を注文しておくべきですって! ここのきっぷの良さで女の子の反応もかわりますよ(笑)!
GM:
少し離れたテーブルからは「よーし、2,000銀貨の奴を頼むとするかな」「はいッ! いつもありがとうございますッ! 2,000銀貨入りましたーッ!」というような声も聞こえてきます。どうやらメニューに書かれていない超高級酒もあるようですね。
イーサ:
な、なるほど……。
「じゃあ、あいだをとって250銀貨で頼む」
GM:
いやいやいや、100銀貨刻みって説明したじゃないですか! メニューにないものを頼むなら、せめて500銀貨以上にしてくださいよ! それに、250銀貨って、全然あいだとれてないですからね? 100銀貨と500銀貨のあいだをとるなら300銀貨になるはずでしょう!? あー、もう! 突っ込みどころが多すぎる!
一同:
(爆笑)
高級酒場の娘(GM):
イーサの注文を聞いた娘は、想定外の注文に一瞬ポカンとします。そして気を取り直すと、「も~、やだ~。250銀貨のお酒なんておいてませんよ~。お客さん面白~い」といってイーサの胸をポンと叩きました。
イーサ:
「あはははははー。えーと、それじゃ300銀貨のやつで……」
GM:
では、しばらくすると300銀貨で頼んだ小さなボトルに入ったお酒が運ばれてきます。
高級酒場の娘(GM):
同席している娘がそれをグラスに注いで出してくれました。
「はい、お兄~さん。ど~ぞ」
イーサ:
「ありがとう」
高級酒場の娘(GM):
「わたしも同じものをいただいてもいいですか~?」
イーサ:
「ああ、どうぞ」
高級酒場の娘(GM):
イーサがそう答えると、娘は店の男性従業員に向かって、「同じものを追加でご注文いただきました~!」と声を張り上げます。
イーサ:
え? 俺のボトルから飲むんじゃないの!?
GM:
ということで、ボトルがもうひとつ運ばれてきますので、追加で300銀貨支払ってください。
シーン外のアゼルとエルド:
(爆笑)
イーサ:
……なんてこった……。
(しばらく固まってから)
いや、過ぎてしまったことは仕方ない。気を取り直して当初の目的をはたしておこう。娘に対して、「ところで、ハイローって人のことを知ってるか?」と話を振ってみる。
高級酒場の娘(GM):
「ええ、もちろん! すごく有名な方ですよ~。うちにも何度か来てくれてますし~」
イーサ:
「ついさっき聞いたことなんだが、そのハイローが探索から戻ってきたらしいじゃないか」
高級酒場の娘(GM):
「えッ! そうなんですかッ!?」
イーサ:
「ああ。俺も人づてに聞いたんだがな……。ハイローって奴はずいぶんと腕が立つんだろ? 機会があれば、俺も一度会ってみたいと思ってるんだが……。そうか、この店にも来るのか……」
高級酒場の娘(GM):
「きっとお客さんもうちに通い続けていれば、そのうちハイローさんに会えますよ~!」
イーサ:
「う~ん、そうだな。じゃあ、また来てみるとしようかな」
高級酒場の娘(GM):
「だったら、次に来るときにはわたしのことを指名してくださいね~」そう言って、彼女は自分の名前が書かれたカードをイーサに渡しました。
イーサ:
そんな感じで、それとなくハイローが帰ってきたって話をして、あとは適当に酒を飲んで店を出る。
くそッ、これだけのために650銀貨の出費か……。痛すぎる。
しかし、1軒だけじゃなんだから、普通の酒場にも行って同じように情報を流しておこうかな。
GM:
了解です。特別変わったことをするのでなければ、普通の酒場のシーンは割愛しておきます。エール1杯分の1銀貨を支払っておいてください。
イーサ:
えッ!? 普通の酒場なら銀貨1枚で済んでたのかよ! 300銀貨の酒ってどんだけいい酒だったんだ!?
シーン外のエルド:
そこは、お酒の値段じゃなくてお店の値段なんだと思いますけど……。ファミリーレストランで飲むお酒とクラブで飲むお酒を値段で比べても無意味ですよ。
イーサ:
ふむ。そんなもんか……。しかし、銀貨1枚で済むなら、普通の酒場はもっと回りたいな。ひとつの店で1時間費やすとして、あと2軒くらいはいけるかな?
GM:
それくらいならば時間的にも問題ないでしょう。では、今回イーサが流した情報がどれくらいの速さで広まるのかを決定します。《スカウト技能+知力ボーナス+2D》の判定を行ってください。合計4軒のお店で噂を流したので、判定に+3のボーナスを加えてください。
イーサ:
(コロコロ)おっ、結構いい値が出たな。達成値は13だ。
GM:
良い値ですね。それならば効果に期待できそうです。
こうして、イーサの流した情報は一晩のうちにカルカヴァンの街中に広まっていきました。
このシーンには特に深い意味もなかったのですが、イーサの反応が面白かったのでついノリで長めにプレイしてしまいました。リプレイではカットすることも考えましたが、イーサのうぶさを出しておきたかったのでそのまま掲載しておきます。