LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(20)

 翌日、一行は常に宿に2人以上が待機した状態で、ギズリが罠にかかるのを待ち構えました。しかし、昼時を過ぎてもハイローを訪ねてくる人物はおらず、PCたちは焦り始めます。そんな中、ようやく動きがあったのは夕方になってからのことでした。

GM:
 16時過ぎ。牡牛の角亭のカウンターにとある人物が姿をみせます。

シーン外のアゼル:
 ついにキター!

少年(GM):
「あのー、この宿にハイローさんは泊まってますか?」宿屋の主人にそう話しかけてきたのは、10歳くらいの少年でした。

シーン外のアゼル:
 キ、キター?

牡牛の角亭の主人(GM):
「ああ、ハイローじゃな。たしかにうちに泊まっとるが、いったいなんの用じゃ?」

少年(GM):
「ボク、ハイローさん宛てのことづてを頼まれてきたんだ」

牡牛の角亭の主人(GM):
「ふむふむ。なるほど……」
 まさか年端もいかない子供がハイローを訪ねてくるとは思いもよらなかった宿屋の主人は、どうしたものかと思案した挙句、「すまないんじゃが、ちょいとここで待っとってくれ」と言って、少年を待たせたままあなたたちの部屋へと向かいました。
 そして、あなたたちの部屋の扉をノックします。

アゼル:
 扉を開けて顔を出そう。
「なにかあったのか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「実は、ハイロー宛てのことづてを頼まれたという10歳くらいの少年が来たんじゃが、その子もこの部屋に案内したほうがいいんじゃろうか?」

アゼル:
「少年?」
 さすがに警戒して本人が来ることはなかったか? それとも魔法で顔だけじゃなく、姿そのものも変えられるのか?
「ちなみに声は子供のものだったか?」

牡牛の角亭の主人(GM):
「そりゃ、もちろん、子供の声じゃったと思うが……」

 2部屋に分かれて待機していた一行は、いったん集まって相談を始めました。

エルド:
「その少年はただのメッセンジャーなんじゃありませんかね。イーサさんはどう思います?」

イーサ:
「そうだな。自分自身で来るのは危険だと考えて、そこらへんにいた少年にことづてを頼んだんだろう」

アゼル:
「よし、それならその少年と直接話をしてみよう」
 少年のところまで行ってみる。

GM:
 では、アゼルが宿の入り口まで行ってみると、エントランスに置かれた椅子にちょこんと座っている少年をみつけました。

アゼル:
「ハイローさんを訪ねてきたのは君か? いま、ハイローさんは不在で、俺がその代理を任されているんだが、ことづてというのはいったいなんだ?」

少年(GM):
 少年は、代理人を名乗るアゼルが現れたことで少し戸惑った表情をするのですが、「んー、まあ、代理の人でもいいかぁ……」と漏らして、次のように話しました。
「それじゃ、これから言うことをちゃんとハイローさんに伝えてよね。えーと、『北門前の広場で待ってる。キングはクイーンに挟まれる』だって」

アゼル:
「キングはクイーンに挟まれる?」

少年(GM):
「うん。そう伝えれば、誰からのメッセージかわかるんだってさ」

アゼル:
「そのことづては、誰から頼まれたんだ?」

少年(GM):
「えーとね、よくわかんない人」

アゼル:
「なんだそれは?」

少年(GM):
「だから、知らない男の人だよ」

アゼル:
「その男の顔立ちは覚えてるか?」

少年(GM):
「フードをかぶってたし、よくわかんなかった」

アゼル:
「ほかになにか特徴はなかったか?」

少年(GM):
「んー、駄賃の払いはよかったよ」そう言って、少年はアゼルの顔を伺います。

アゼル:
「いや、そういうことじゃなくてな……。それじゃ、その男はひとりだったのか?」

少年(GM):
「……ひとりだったと思うけど……」

アゼル:
「ほかにもうひとり一緒にいなかったか?」

少年(GM):
「……そんなのよくわかんないよ!」
 アゼルの再三の質問に、少年は明らかに苛立ってきました。
「だいたい、なんでボクがそんなことを逐一覚えてなくちゃならないのさ! 頼まれたことは果たしたんだから、もういいでしょ! ボクが言ったこと、ちゃんとハイローさんに伝えてよね!」

アゼル:
 うわっ、キレられた! 怖~い。いまどきの若者怖~い(笑)。

イーサ&エルド:
(失笑)

少年(GM):
「それじゃ、ボクはもう帰るからね!」そう言うと、少年は椅子からぴょんと飛び降りて、小走りに去っていってしまいました。

アゼル:
 うーん、結局誰から頼まれたのかわからなかった。しかし、キングはクイーンに挟まれるってどういう意味だ? それに、メッセージには時間の指定がない。なにか隠された意味でもあるのか?
(腕組みして長考し始める)

イーサ:
 キングとクイーンね……。戦盤の駒を並べるとなにかわかるとか?

一同:
 ……。

アゼル:
 うーん、ダメだ。わからん。(サイコロを握って)アゼルに何か思い至ることがないか判定する。

GM:
 えーと……。それなら、《知力ボーナス+2D》で目標値7の判定をしてみてください。

アゼル:
(コロコロ)よしッ! 13。

GM:
 では、アゼルは「キングはクイーンに挟まれる」というのはことづてを頼んだ人間が誰であるかをハイローに知らせるためのただの符牒だと思いました。それ以上の意味はなさそうです。

アゼル:
 ふむ。それじゃ、それを皆に話そう。
(意気揚々と)「つまり――ということだな」

エルド:
 いや、さっきの少年が説明していたことを、そんなドヤ顔で繰り返されても……(苦笑)。

アゼル:
 そ、そうだったな……(汗)。
「それじゃ、さっそく北門に行ってみるか!」

イーサ:
「ああ。ギズリはまず間違いなく変装してるだろうから、“センス・マジック”で魔法が付与された人物がいないか片っ端から確認しないとな」

アゼル:
 じゃあ、宿屋を出て北門前まで――。

エルド:
「ちょっと待ってください。どうも引っかかるのですが、本当にギズリさんは北門にいるんですかね?」

アゼル:
「いまさらなんだよ。そりゃ、北門前の広場で待ってるって伝えてきたんだから当然いるだろ」

エルド:
「もちろん、その線は濃厚だと思います。でも、もし僕がギズリさんの立場ならば、ハイローさんの存在を確認できるまで直接表に出るようなことはしないと思うんですよ。ギズリさんが牡牛の角亭への出入りを押さえられることを警戒して少年をメッセンジャーとしてよこしたのだとしたら、当然そのメッセージがハイローさん以外の者の手に渡ることも考えて行動しているのではありませんかね? そう考えると、北門で待ってるというのも疑わしくありませんか?」

アゼル:
「なるほど……。ギズリさんはグネ・リマナに向かうって嘘をついたこともあったしな。北門に俺たちを誘導しているという可能性もあるのか……」

エルド:
「まあ、確証があるわけではありませんが……。アゼルさんとイーサさんはどう思います?」

イーサ:
(しばらく考えてから)
「俺はやっぱりギズリは北門にいるんじゃないかと思う。もし、本物のハイローが戻ってきていたとしたら、さっきの少年のメッセージを聞いて北門に向かうはずだ。それなのに北門にギズリがいなかったらおかしなことになるだろ」

アゼル:
「俺もギズリさんは北門にいると思ってるぞ。少年が伝えたメッセージは嘘ではないと思う」

イーサ:
「あれ? お前、さっきはエルドの推測に納得してなかったか?」

アゼル:
「まあ、なくもない話だとは思ったが、北門にギズリさんがいる可能性のほうが高いだろう。それに、メッセージが嘘だったとして、だったらどうするっていうんだ?」

イーサ&エルド:
「……」

アゼル:
「よし、それじゃ北門に行くことは決定だ。あとは北門に行ったときにどうやってギズリさんより先に相手を見つけるかってことだ。フードをかぶって人ごみに紛れればいけるか?」

イーサ:
「いまのところ、その程度しか思いつかないな……」

アゼル:
「ふむ。ならば、あとは北門の様子を確認してから考えるとしよう」
 とりあえず北門の近くまで行ってみる。

GM:
 では、北門前の広場を目指して宿屋をあとにしたところで、《スカウト技能+知力ボーナス+2D》の判定を行ってください。(コロコロ)目標値は11です。

エルド:
(コロコロ)僕が一番高くて12です。

GM:
 ならば、エルドは宿屋の周辺にいた通行人たちが、怪しまれないように装いながら、あなたたちのほうへと視線を向けていたことに気がつきました。

エルド:
 そのことをアゼルさんとイーサさんにも小声で伝えておきましょう。
「いま、宿屋の近くにいた通行人のうちの数人が、僕たちの動きを監視していましたね」

アゼル:
「む。そうか。きっとイスパルタ私兵だな……」
 一応、そいつらの存在も頭の中に入れておこう。

GM:
 さて、宿屋のあるエリアから北門のあるエリアへと向かうには、雑貨屋を通るルートと中央広場を通るルートがあるのですが、どちらを通りますか?

イーサ:
 ん? それは重要なことなのか?

GM:
 大したことではありませんが、描写が異なるので……。適当に決めてしまってください。

イーサ:
 それじゃ、ランダムで……。(コロコロ)中央広場を経由した。

GM:
 そうすると、北門を目指して街中を進んでいたあなたたちは、中央広場を通ったときにアスラン商会の隊商を目にしました。どうやら南門から入ってきたようで、総督府近くにあるアスラン商会の本部へと向かっているようです。

アゼル:
 特に気にせず、北門に向かう。

GM:
 では、宿屋を出てから30分ほどで北門前に到着しました。そこには、北門の出入りを管理している役人たちの姿や、その周辺で遊んでいる少年たちの姿があります。それ以外には人の姿はあまりありません。なにせ、北門から外にでても墓地や農地が広がっているだけで、人の出入りが多い場所ではありませんからね。

アゼル:
 俺とエルドは少し離れたところで身を隠しているから、イーサはギズリさんがいないか魔法で確認してくれ。

イーサ:
 了解だ。それじゃ、“センス・マジック”を唱える。(コロコロ)発動。周りを見回すが、それらしき反応はあるだろうか?

GM:
 ざっと見渡した限りでは、魔法の反応はありません。もし細かいところまで見て回るのであれば、30分費やしてください。

イーサ:
 ぱっと見てみつけられない段階で、なんとなく北門にはいないような気もしてきたが、確認しないわけにはいかないよな……。30分かけて探してみる。

エルド:
 そのあいだ、僕たちのほうでもギズリさんらしき人物を探すことはできますか?

GM:
 エルドは魔法感知できないので、怪しげな人物を探すというだけになってしまいますが、それでよければ《スカウト技能+知力ボーナス+2D》での判定を行ってください。

エルド:
(コロコロ)14です。

GM:
 了解です。では、まずイーサが魔法感知してみた結果ですが、30分かけて魔法が付与された者がいないか探してみたものの、北門周辺にそれらしき人物を見つけることはできませんでした。
 そしてエルドのほうですが、こちらもギズリらしき人物を見つけることはできませんでした。ですがそのかわりに、先ほど宿屋の周辺で見かけた人物たちの姿をここでも見つけることができました。それも、北門の周囲を囲むように10人ほど配置されています。

エルド:
「どうやら北門周辺にギズリさんはいませんね……。ですが、かわりにイスパルタ私兵らしき人たちの姿があることはわかりました」

アゼル:
 まだギズリさんがこの場所に来てないだけなのか……。それとも……。

イーサ:
 メッセージには時間の指定がなかったんだぞ。そんなメッセージを届けておいて、限られた時刻にだけ姿を現すなんてことは考えにくいだろ。

アゼル:
 どうだろう……。あのメッセージの中にハイローさんにだけ伝わるヒントが隠されていたとしたら……。「北門前の広場で待ってる。キングはクイーンに挟まれる」か……。
(腕を組んで悩み始める)

GM:
 ストップ! ストップ! そのメッセージについてはすでに知力判定して、他意はないってことになったじゃないですか。根拠のない謎解きのためにプレイ時間を費やすのはやめておきましょう。

アゼル:
 そ、そうか(汗)。だったら、これからどうするかな。

イーサ:
 しばらくここで“センス・マジック”を続けておくか?

エルド:
 まだギズリさんが来ると思ってるんですか?

アゼル:
 それはわからないが、ほかにあてもないしな……。

GM:
 ちなみに、あと少しでイスメトへの報告の時間になりますので、それも忘れないでくださいね。

エルド:
 だったら、報告へは僕が行きます。
「あの、そろそろイスメトさんのところへ行かなくてはならない時間ですよね。今回は僕が行ってきますよ」

アゼル:
「ああ。よろしく頼む。俺たちは引き続きここに残ってギズリさんを探すことにする」

 こうして、エルドはイスメトへの報告へと向かい、無難に報告を終えました。エルドからの報告を聞いているあいだ、イスメトは隠しきれないほどの苛立ちを感じているようでした。

 そして、北門でギズリが現れるのをひたすら待ち続けていたアゼルとイーサでしたが、日が暮れるまで粘ったものの、ついにギズリがその姿を見せることはありませんでした。


GM:
 さて、アゼルとイーサが北門でギズリが現れるのを待ち続けていたころ。とある場所では――。

ギズリ(GM):
「いやー。まったく。あなたが予想していた通りでしたよ。直接、牡牛の角亭に行かなくて大正解でした」と、目の前の人影に対して、嬉々として日中の出来事を報告するギズリの姿がありました。

シーン外のアゼル:
 あら……。ってことは、俺たちまんまと出し抜かれたのか……。

ギズリ(GM):
「まあ、ある程度予想はしてましたが、ハイロー帰還の情報はまったくのでまかせでした。そのかわり、牡牛の角亭にはエルドだけでなく、イーサとアゼルの姿もありましたよ。噂の出所はおそらくあいつらでしょうね。使いの少年が帰ったあとに、揃いも揃って北門に向って出て行きました。いやぁ、こちらの思い通りに動くあいつらの姿といったら傑作でしたよ」

人影(GM):
 人影は浮かれるギズリをたしなめて、報告を続けさせます。

ギズリ(GM):
「ああ。あと、それ以外にもずっと宿屋の周囲をうろうろしてる怪しい連中もいました。一般人を装ってはいましたが、あれはイスパルタの私兵で間違いないと思います。イーサたちと連携してるって感じじゃありませんでしたから、イスメト様も完全にイーサたちを信用してるってわけじゃないみたいですね。しかし、こうも固められると、さすがにハイローとの接触はあきらめたほうがいいかもしれませんよ……」

人影(GM):
 言葉を止めて考えを巡らせるギズリに対して、人影が助言を送りました。

ギズリ(GM):
「ああ、なるほど! それだったら安全にことを進められそうですね! じゃあ、さっそくその方向で動いてみます」そう言って、ギズリは人影のほうに顔を向けてにんまりと笑みを浮かべました。

シーン外のアゼル:
 くっそーッ! そういうことかよ!

シーン外のイーサ:
 ギズリの話を聞く限りだと、エルドの推理がずばり正解だったみたいだな……。

シーン外のアゼル:
 あ、そうだな。すごいなエルド。

シーン外のエルド:
 いやぁ、たまたまですよ。それに確信もなければ、捕まえる方法までは思いついていませんでしたから。

 ――というわけで、ギズリは少年にことづてを依頼すると、牡牛の角亭の入り口が見える離れた場所から宿屋に出入りする人の動きを監視していたというのが正解でした。これならば、宿屋からハイロー本人が出てきた場合には追いかけて接触を取ればよく、ハイロー以外が出てきた場合には罠だと判断できるというわけです。

 ともあれ、こうして一行は2度目のギズリを捕えるチャンスも棒に振ってしまいました。




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