LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(28)

GM:
 では、20時ごろになると螺旋階段亭にふたたび全員が集合しました。

エルド:
 宿屋に帰ってきたら、すぐに着替えを済ませておきます。

アゼル:
 そうだな。俺とイーサはまだいいとしても、エルドはいつまでも女装のままってわけにいかないしな(笑)。俺は地下水道に降りるまでは、いま着ている服のままにしておく。チェイン・メイルは目立つし音もうるさいからな。

ギュリス(GM):
 では、宿屋であなたたちの帰りを待っていたギュリスが報告を求めてきます。
「それで、首尾はどうだったの?」

イーサ:
「タルカンさんのほうはなんとか上手くいった」

ギュリス(GM):
「本当に!? あのタルカンが納得して引き下がったの?」

イーサ:
「ああ。せんべつにこの衣装までくれたよ」

ギュリス(GM):
「へー」
 まさか本当にうまく運ぶとは思っていなかったとばかりに、ギュリスは意外そうな顔をしました。
「だとすると、タルカンにはあとでお礼のひとつでも言っておかないとね……。でも、あなたたち、そこまでタルカンに貸しがあったの?」

イーサ:
「貸しか……。いや、どちらかというと借りのほうが多くなったかな」

アゼル:
 いやいや。借りもなにも、もう二度と来るなと言われただろ(笑)。

エルド:
 それは違いますよ。タルカンさんは正門はまたがせないって言ったんです。あれはイスパルタ兵に気づかれないように裏口から出ていきなさいっていうタルカンさんの心遣いですよ。

アゼル:
 おお、あれはそういう意味だったのか。

イーサ:
「それで、アゼルのほうはどうだったんだ?」

アゼル:
「こちらも、ミマールを見つけた。地下水道の案内の約束も取り付けた」

アル(GM):
「ミマールは本当に実在したんだな……」とアルが口にします。

アゼル:
「おいおい。ミマールの話を持ち出したのはアルさんだろ?」

アル(GM):
「いやぁ、飲みの席で泥酔した奴が漏らした話だったからな。半信半疑だったんだ」

アゼル:
「ミマールからは、今晩日付が替わる時刻に鍛冶屋通りの2つ東側にある裏通りの点検口まで来いって言われた」

ギズリ(GM):
「ああ、あそこか」と言って、ギズリがうなずきました。
「鍛冶屋通りっていうのは、武器屋と防具屋を結ぶ通りのことだ。あそこの通りには鍛冶屋が連なってるんだ。その2本東側の通りだな。そこならわかるぞ」

イーサ:
「よし、それじゃ、0時近くなったらここを出るとしよう」

エルド:
 待ち時間のあいだに、アゼルさんとイーサさんの2人だけに聞こえるように話をしておきます。
「ここを出る前にお2人に話しておくことがあります……。ギュリスさんの目的地というのは、おそらくイルヤソール本家ですよ」

アゼル:
「ん? なぜイルヤソール本家がギュリスの目的地だと思うんだ?」

エルド:
「イルヤソール本家のボレン夫人が、ギュリスさんの叔母にあたる人なんですよ」

イーサ:
「イルヤソールといえば、ここから200キロほど北上したところにあるマーキ・アシャス地方の小都市だな」

アゼル:
「……北か……。それなら、ニルフェルは俺たちと一緒に連れていけるんじゃないか?」

エルド:
「ええ。クゼ・リマナとは方向が異なるのでサブリさんとは別れることになりますが、王都を目指すニルフェルさんとセルダルさんの2人には、僕たちと一緒にイルヤソールを目指してもらってもいいかもしれませんね」

ギュリス(GM):
「さっきからなにコソコソ話してんの? まさか、いまさらイスメトのほうにつく算段してるんじゃないよね?」
 あなたたち3人の密談に気づいたギュリスは、怪訝そうに声を発しました。

アゼル:
「そんなことはないから安心してくれ。そうじゃなくて……」
(少し考えてから)
「ギュリス。あなたの目的地はマーキ・アシャス地方のイルヤソールなのか? イルヤソール夫人はあなたの叔母なんだろ?」

ギュリス(GM):
 ギュリスは鼻で息をつきます。
「なんだ……知ってたんだ……。そうだよ。目的地はイルヤソール」

アゼル:
「やはりそうか。ならば、俺たちと一緒にニルフェルとセルダルも同行させることにする。王都を目指すぶんには、イルヤソールを経由してもそこまで遠回りにはならないからな」

ギュリス(GM):
 アゼルの発言を聞いたギュリスは、眉をピクリと動かしました。

アゼル:
「セルダルは剣の腕が立つから護衛としても役立つぞ」

ギュリス(GM):
「あたしはそれでも構わないけど……」そう漏らしたギュリスの表情からは、わずかに苛立ちが感じられます。
「……まあいいや。いまは勘弁しといてあげる」

アゼル:
「なにか問題でもあるのか?」

ギュリス(GM):
「まあいいって言ったでしょ? しつこいよ」

アゼル:
 あれ? 俺、なにかまずいこと言った?

ギズリ(GM):
「人数が増える分にはオレも賛成だ」と、話を聞いていたギズリも割って入ってきました。

イーサ:
「そうだな。人が多いほうが安全だ。しかし、当初の計画とはだいぶ変わってしまったな」

アゼル:
「ああ……。またセルダルに小言を言われそうだ……」
 むしろ、ニルフェルに怒られるか(苦笑)?

 こうして、一行はニルフェルとセルダルも一緒にイルヤソールに連れて行くことに決めると、あとは螺旋階段亭で時間が過ぎるのを待ちました。そして、日が変わる少し前にアルに別れの挨拶をすると、鍛冶屋通りを目指して宿屋をあとにしました。


GM:
 深夜になると街の北側からは街灯以外の明かりが消え、人の姿も見当たらなくなります。あなたたちはイスメトやタルカンの手の者に感づかれないように十分に警戒して、鍛冶屋通りの東側2本隣りの裏路地にある地下水道の点検口までたどり着きました。

アゼル:
 それじゃ、点検口の蓋を4度叩こう。コン、コン、コン、コン。

GM:
 すぐに反応が返ってきました。コン、コン、と中から2度蓋が叩かれた音が聞こえます。

エルド:
 周りを見渡してみますが……。

GM:
 人っ子ひとりとして見当たりませんね。

アゼル:
 よし。2度蓋を叩く。コン、コン。

GM:
 すると、蓋に刻まれた真ん中の模様が金属のこすれる音を立てながら回り始め、半周ほどしたところで止まりました。そして、蓋がゆっくりと上に押し上げられます。

案内人(GM):
 点検口の中から男が顔を出すと、「急いで入って蓋を閉めろ」と言って、すぐに点検口の奥へと姿を消しました。

イーサ:
 それじゃ、急いで中に入ろう。

GM:
 点検口の縦穴は20メートルくらいの深さがあり、その側面に取り付けられた鉄の梯子を使って下まで降りることになります。降りる途中で、点検口から差し込んだ月明かりによって下の様子が薄ぼんやりと見えたのですが、そこには幾人かの人がいるようでした。点検口の蓋が閉められると、わずかに見えていた人の姿も確認できなくなり、手さぐりで下まで降りることとなります。
 全員が梯子を降り切ったところで、老人の声が聞こえました。アゼルにはそれがミマールの声であることがわかります。

ミマール(GM):
「これより地下水道を案内するにあたり、おぬしらには1本のロープを握った状態で目隠ししてもらう。あとは、ロープの動きにしたがって進むのじゃ。決して手を放すでないぞ」

アゼル:
「了解した。それと、いまのうちに話しておくことがある。俺たちのうちひとりは、一度街の外に出たあとでまた街の中に戻る必要があるんだ。その帰り道の案内も頼む」

ミマール(GM):
「それくらいのことであれば、よいじゃろう」と、ミマールは帰り道の案内も承諾してくれました。
「では、目隠しを……」ミマールがそう言うと、あなたたちは全員目隠しをされ、その手にロープを握らされます。そして、それらの準備が完了すると、ミマールは「行くぞ」と声を発しました。

GM:
 ミマールの合図と共に、ロープが一方へと引かれていきます。ときには水路を渡ることもあるようで、その都度ミマールが注意を促し、膝まで水につかることになりました。
 その順路は、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、斜め左手に折れて、長い直線を進んで、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、階段を下って、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって――

アゼル:
 この順路は重要なのか?

イーサ&エルド:
(笑)

GM:
 ――右手に曲がって、階段を上って、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、階段を下って、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、階段を下って、左手に曲がって、左手に曲がって――

アゼル:
 まだ続くのか……(汗)。

GM:
 ――左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、階段を上って、右手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、階段を下って、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、階段を上って、左手に曲がって、左手に曲がって――

アゼル:
 おいおい、どんだけ続くんだよ……。

GM:
――右手に曲がって、右手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、左手に曲がって、右手へと進んだところでロープの動きが止まりました。体感的にはここまで約2時間といったところです。

 カルカヴァン地下水道の迷宮は、神々の遺跡を除いた人工的な迷宮としては世界最大規模です。せっかくなので、その片鱗を味わってもらいました。

アゼル:
 しまったな。これ、書き留めておけば、あとでまたここを通ることもできるんじゃないか?

GM:
 書き留めておくことはできないので、記憶しておくことができれば……ですね。“記憶術”で達成値20以上を出せるのであれば、順路を覚えていたことにしても構いませんよ。

イーサ:
 たとえ曲がり角の順番を覚えたとしても、途中何度か同じところをグルグルを回ってカモフラージュしてたような気がするけどな……。

ミマール(GM):
 さて、全員が足を止めたところで、ミマールが、「スイッチを」と声を発しました。

GM:
 それに応じるようにガチャンと機械音が聞こえて、続けて、ゴゴゴゴゴゴ……と重い物体が動く音が響き渡ります。

ミマール(GM):
「いま、隠し通路の扉を開いたところじゃが、これはしばらくすると閉じてしまう。こちら側で操作する者がいなければ、外側からは開けられぬゆえに、ワシらはここで待つとする。ふたたび戻るときには、周辺の壁を叩いて音を鳴らすといい。この先を道なりに行き、突き当りを左手に折れて進めば、カルカヴァンの外に続く井戸に出られる。さして距離もないから迷うこともなかろう」

アゼル:
「わかった。よろしく頼む」

ミマール(GM):
「もし、丸1日経って誰も戻らぬようであれば、ワシらはここを去る」

アゼル:
「うむ。すぐ戻るつもりだが、もし戻らない場合にはそうしてくれ」

GM:
 こうして、あなたたちが了解すると、目隠しがとられます。周囲に明かりはまったくなく、真っ暗です。

ミマール(GM):
「このまま前方に進めば、隠し通路の扉の外側に出る。扉が閉まる音が聞こえ終わったら明かりをともして構わんぞ」

イーサ:
 それじゃ手さぐりで前に進もう。

GM:
 全員がある程度前に進んだところで、背後からふたたび重い物体の動く音が聞こえました。

アゼル:
 よし、明かりをつけよう。って、誰か明かりになるものを持ってきているのか? できれば万が一消えても対応できるように、2つ明かりをつけておきたいところだが……。

GM:
 ギズリが旅道具を持ってきていますので、松明をともしておきましょう。

アゼル:
 明かりをつけてるあいだに、俺はチェイン・メイルに着替えておこう。さすがにこの先は危険そうだ。地下水道だから、大ネズミのたぐいが出てきそうだしな。

GM:
 では、松明に火がともされ、アゼルも着替え終えました。
 明るくなった周りを見渡すと、後方は行き止まりになっており、前方はすぐに左手に折れているようです。通路の幅は3メートル程度あり、その足元中央に幅1メートル、深さ50センチ程の水路が走っています。

イーサ:
 この先も一直線ってわけじゃないのか。

アゼル:
 とりあえず、ミマールの指示にしたがって道なりに進んで行こう。

GM:
 進み始める前に、隊列と明かりを誰がもつのかをを決めておいてください。

 相談の結果、一行は先頭から、アゼル、イーサ、ギズリ、ギュリス、エルドの順で1列に並び、明かりはアゼルとギズリの2人が持つこととなりました。

GM:
 では、道なりに進むと、途中で道が左手に折れて、右手に折れて、右手に折れて、左手に折れて、右手に折れて……といった感じでうねっています。途中で分岐するところもありましたが、ここでは割愛しておきます。そのように順路を進んだ先で、あなたたちは10平方メートル程のホールへと出ました。そこは複数の水路が合流する地点となっており、中央はため池となっています。
 ここで、聞き耳判定をどうぞ。目標値は12です。

エルド:
(コロコロ)13で成功しました。

GM:
 では、ため池の奥のほうからパシャンッと水が跳ねる音が聞こえました。

エルド:
「いま、なにか水に入る音が聞こえませんでしたか?」

アゼル:
「なに?」
 松明を前方にかざして、見える範囲で確認してみる。

GM:
 すると、アゼルは前方の水面が揺らいで波立っていることに気づきました。それに気づくのとほぼ同時に水面下に黒い影が走ります。

アゼル:
「おいッ! なにか水の中にいるぞッ!」

GM:
 では、各自ユニットを配置してください(と言って戦闘マップを提示する)。

地下水道

GM:
 水路と通路が混在しているところで運動系の判定を行った場合、《1D》で2以下を出すと水路に入っているとみなされて、移動距離半減と回避力-2のペナルティを受けるので注意してください。

アゼル:
 幅1メートルの水路を移動できて地下水道に生息しているといえば、やっぱりアリゲーター的なモンスターだよな。

GM:
 知名度判定は敵が姿を現してから行ってもらいます。ですが、皆さん覚えていますか? これまでに街の人たちやバスカン一座のアリ座長が話していたことを。

アゼル:
 あー。なるほど。こいつが以前旅芸人一座のところから逃げ出して街を騒がせた動物ってわけね。そうなると旅芸人一座が連れまわすような動物で、地下水道で長期間生存し続けられる奴なんだろ? それってやっぱり、アリゲーターじゃん!

GM:
 では、戦闘スタート!




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。