LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(29)

 地下水道を使ってカルカヴァンの外へ出ようとしていた一行の前に、地下水道のヌシが立ちはだかりました。それは、昨年旅芸人一座のもとから逃げ出し、カルカヴァン市民を恐怖のどん底へと突き落としたアノ生物……。

 暗く、狭く、足場の悪い中で、命がけの決戦が始まります。

イーサ:
 まず、補助魔法で戦力を強化しておこう。“瞑想”を開始する。

GM:
 では、そちらの準備が完了する前に、こちらから攻めて行きましょう。水の中を大きな黒い塊がスーッと滑るように進んできて、アゼルに隣接しました。その体長は少なくとも3メートルは超えています。

アゼル:
 くぅ……。先に動かれてしまったか。こうなると、俺のうしろにいるメンバーは前に出られないな……。

エルド:
 ――というか、僕のいる位置だと、先頭でなにが起こっているのかもわかりません(苦笑)。“迎撃移動”でギズリさんと同じところまで出ておきます。

ギュリス(GM):
 前方が見えないのはギュリスも同じで、彼女は「敵なのッ!?」と声をあげました。

イーサ:
 敵の攻撃が来る前に、アゼルに“プロテクション”をかけておこう。

エルド:
 あ、僕も“プロテクション”をアゼルさんにかけようと思ってました。僕は“エンチャント・ウェポン”が使えないので、イーサさんにはそっちをお願いしてもいいですか?

イーサ:
 そうか。それなら、ここは“エンチャント・ウェポン”にしておこう。(コロコロ)発動。

GM:
 その魔法の選択は運命の分かれ道だったかもしれませんね……。“プロテクション”の準備が完了する前に、水の中からザバーンッ!と大きな音を立てて、巨大な生物がアゼルに襲いかかってきました。

アゼル:
「うわーッ!」

GM:
 ここで動植物知識判定を行ってください。目標値は6・8・10です。

エルド:
(コロコロ)7です。

アゼル&イーサ:
(コロコロ)完全成功。

GM:
 では、エルドはアゼルに襲いかかってきた生物がアリゲーターであることがわかりました。戦闘レベル4のワニです。それ以外の2人はアリゲーターの能力ランクまでわかりました。「その巨大な顎の圧力は陸上動物最強クラス。特に、一度噛み付いたあとの“デスロール”を受けた生物はほぼ確実に息絶える――」ということなので、“デスロール”まで持っていかれないように注意してください。“牙攻撃”を受けたあとの筋力判定に負けると“ホールド”されたことになり、その次の攻撃で“デスロール”を食らうことになります。まあ、“牙攻撃”だけでも十分死ねるんですけど(笑)。

一同:
(苦笑)

アリゲーター(GM):
 では、お待ちかねのアリゲーターの“牙攻撃”です。(コロコロ)命中値は11。

アゼル:
 “ディフレクト”! (コロコロ)13で成功!

 アリゲーターと正面切って戦うこととなったアゼルは3回連続でアリゲーターの攻撃を避けることに成功しました。足場の悪い場所での戦闘ですが、“ディフレクト”にはペナルティがつかないため、“回避”を選択するよりはいくぶん有利なのです。しかし、レベル的に格上のアリゲーターの攻撃をいつまでも避け続けられるわけもなく……。

アリゲーター(GM):
 アリゲーターのアゼルに対して“牙攻撃”は(コロコロ)命中値11です。

アゼル:
 その値だったら“ディフレクト”で……(コロコロ)あッ! 10で失敗だ……。

アリゲーター(GM):
 ならば、(コロコロ)15点のダメージをどうぞ。ガブガブッ!

アゼル:
 痛い、痛い、痛い、痛い。一気に7点抜けた。

 さすがは陸上動物最強クラスの“牙攻撃”。クリティカルしなくとも致命的威力です。一般人ならばいまの攻撃で倒れていたことでしょう。

エルド:
 危険ですね……。事故死しないように手を打っておきましょう。アリゲーターに対して“バインディング”を唱えます。

アリゲーター(GM):
 こちらの魔法抵抗値は(コロコロ)11です。

エルド:
 行使値は(コロコロ)10。うーん、及ばずですか。でも、この値なら……。“可能性”を消費して行使値を12にします。

アゼル:
 おおッ! 有効的な“可能性”の利用だな。

アリゲーター(GM):
 では、エルドの放った魔法の紐がアリゲーターの身体に絡みつき、その動きを阻害します。以後、効果時間中はアリゲーターの命中力・回避力にそれぞれ-2のペナルティが発生します。また、移動もウェイト3消費しての“小移動”しかできなくなりました。

アゼル:
 やった! これで死ぬ確率がぐんと減ったぞ。

 この“バインディング”が成功したことによって、一行はかなり優位に戦闘を進められるようになりました。アリゲーターの攻撃は空を切り、アゼルの攻撃が一方的にアリゲーターを捕えます。後方からはエルドも矢継早に“エネルギー・ボルト”を撃ちこんでいきました。しかし、何度攻撃を当ててもアリゲーターの厚い鱗の前に阻まれてしまい、なかなか有効打を決められません。そんな状況で……。

アリゲーター(GM):
 アリゲーターがアゼルに対して“牙攻撃”を試みます。(コロコロ)命中値は12。

アゼル:
 こっちのディフレクト力は7だからな。その程度なら避けられる。(コロコロ)って、あらら……。10でディフレクト失敗……。

アリゲーター(GM):
 では、ダメージを……。(コロコロ)おッ、ここでクリティカル発生!

一同:
 なにぃーッ!

アリゲーター(GM):
(コロコロ)合計ダメージは25点! アリゲーターの牙が金属鎧をものともせず、アゼルの身体に深々と突き刺さりました。そのままアゼルの肉体は圧倒的な力で押しつぶされ、あるいは引き裂かれます。

アゼル:
「ああああああああああああああああッ!」
 生命点、ぴったり0。その一撃で倒れた。これでパーティーも絶体絶命だ。終わった……。完全に終わった……。

GM:
 まあ、まだ死んだと決まったわけではありませんから。とりあえず生死判定を行ってください。残り生命点が0であれば、目標値は7です。

アゼル:
(コロコロ)生死判定は10で成功。

GM:
 倒れるときになにか言っておくことはありますか?

イーサ:
 俺の屍を越えていけッ!

一同:
(爆笑)

アゼル:
 いやいや、そうじゃなくて……。
「ニルフェルーッ!」と叫んで、バタリ。

GM:
 さて、この段階でアリゲーターにはまだ選択しなくてはならないことが残されています。それは、このまま動かなくなったアゼルを“ホールド”するか、それとも放棄するかという選択です。当然、アゼルは昏倒しているので、“ホールド”は無条件に成功します。そうした場合、次の行動でアゼルに対して“デスロール”を実行して、確実に息の根を止められるわけですが……。

アゼル:
 うわッ! この鬼ッ! 悪魔ッ!

アリゲーター(GM):
(しばらく考え込む)
 アリゲーターはアゼルのことを“ホールド”せずに、首を振って投げ捨てました。

 さすがにシビアで融通の利かない性格を自負するGMも、ここでは仏心を……だしたわけではありません。このときすでにアリゲーターの生命点が半分近くまで減っていたため、一刻も早く後方からの魔法を止めるべきだと判断したのです。また、“ホールド”を発生させると、アリゲーターの回避力にペナルティが発生してしまうので、それも避けておきたいところでした。

GM:
 さて、アゼルを口から放したアリゲーターではありますが、ほかに手近な攻撃対象がいなければ、またアゼルを噛むかもしれませんね……(ニヤニヤ)。

イーサ:
 くッ……。ここは前に出てアリゲーターを引き付けるしかないか……。

 アリゲーターの手番を使わずに獲物を呼び寄せる。これこそ鬼や悪魔と呼ばれるに相応しい非情の一手です。しかし、アリゲーターがアゼルを再度攻撃する可能性は確かにあるものの、GMがそれを匂わせてPCの行動を誘導したのは少しやり過ぎだったかもしれません。

イーサ:
 “小移動”でアリゲーターに隣接して、ダガーで斬りつける! (コロコロ)うわぁッ! やっちまったーッ! ここで1ゾロかよッ!

アゼル:
 ははははは……。こりゃ全員、アリゲーターの餌かな?

ギュリス(GM):
 イーサが前に出たところで、空いたスペースにギュリスが入ってきます。

アゼル:
 ん? 前に出てくると危険じゃないか?

イーサ:
 きっと、この状況を打開できる遺産かなにかを持ってるんだろ。

アゼル:
 だったら最初からなんとかしてくれよ~。

エルド:
 アゼルさんは相変わらず他力本願ですね(笑)。

 ギュリスが一発逆転のアイテムでも所持していれば楽だったのでしょうが、そうそう都合よくことは進みません。アゼルが倒れたことで危機感を抱いたギュリスは、なんとか状況を打開しようと決死の覚悟で前に出てきたのです。しかし、残念ながらこの状況でギュリスにできることといえば前衛へのわずかな支援だけでした。

ギュリス(GM):
 ギュリスは大声で、「弱気になって諦めちゃダメッ! なんとしても、こいつを倒すよッ!」と叫びあなたたちを鼓舞します。そして、そんなギュリスの取った行動は、“隙を見つける”です。(コロコロ)判定は成功。ギュリスはアリゲーターの隙を見つけました。

イーサ:
「ああ、わかったッ!」

アゼル:
 はっはっはっ。安心しろ。俺は逃げない、逃げられない!

 この後、イーサが“全力回避”でアリゲーターの攻撃を避け、エルドが“エネルギー・ボルト”で少しずつアリゲーターの生命力を削るという、綱渡りの展開が延々と続きました。アゼルですら耐えられなかった攻撃をもしイーサが受けてしまうようなことがあれば、ひとたまりもありません。

 幸か不幸か、この状況においてイーサは短剣攻撃の命中判定で2度、威力判定で1度、計3度1ゾロを振りました。これが回避判定のときに出ていたのであれば、その瞬間にパーティーの敗北が決定していたことでしょう。

 イーサが回避判定に失敗するのが先か、あるいはエルドが“エネルギー・ボルト”でクリティカルを発生させるのが先か、勝負の行く末はダイスの神様に委ねられました。そして、その勝負に勝利したのは、これまでにも幾度となくその運の強さをみせつけてきたエルドでした。

エルド:
 “エネルギー・ボルト”のダメージは……。(コロコロ)やりましたッ! ついに、クリティカル! (コロコロ)ダメージは20点です!

アゼル&イーサ:
 おーッ!

アリゲーター(GM):
 さすがに、それを食らうとアリゲーターの残り生命点も半分を切ってしまいますね。士気判定が入ります。

イーサ:
 頼む……。頼むから逃げてくれ……。

アリゲーター(GM):
(コロコロ)

一同:
(ゴクリッ)

アリゲーター(GM):
 士気判定成功! アリゲーターは撤退しません。

イーサ:
 嘘だーッ(悲鳴)!

 エルドの放った“エネルギー・ボルト”はたしかに痛烈でしたが、イーサの願いも虚しく、アリゲーターはその痛みに屈しませんでした。傷つけても、傷つけても、なお士気判定に成功し続けます。そうこうしているうちに、エルドの精神点も底が見えてきました。エルドの精神点が尽きてしまえば、いよいよ万事休すです。
 しかし、さしものアリゲーターもやはり生物に過ぎず、全員が焦燥しきり、敗北をも覚悟したところで、ついに……。

エルド:
 アリゲーターに“エネルギー・ボルト”を放ちます。行使値は(コロコロ)13です。

アリゲーター(GM):
 アリゲーターの魔法抵抗値は(コロコロ)13で抵抗成功。

エルド:
 うーん、また抵抗されてしまいましたか……。ダメージは(コロコロ)12点です。

アリゲーター(GM):
 抵抗に成功しているので、通ったダメージは1点です。士気判定は(コロコロ)あッ! ……ここでついに失敗しました。アリゲーターは戦意を喪失します。

一同:
 やったーッ!

GM:
 そうすると、次の行動でアリゲーターは逃げて行こうとするわけですが、撤退を許しますか?

イーサ:
 こっちも満身創痍だ。ここは見送ろう……。

GM:
 了解です。ではここでアリゲーターとの戦闘を終了します。

 こうして80ウェイト以上に渡る長い戦いがついに決着しました。




誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。