LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話(31)

GM:
 さて、アゼルが街中へと戻った時点では、まだあたりは真っ暗です。これからどうしますか?

アゼル:
 夜中ではあるが、そのままイスパルタ別宅に向かおう。

GM:
 アゼルがイスパルタ別宅の前まで行くと、そこにはイスパルタ私兵の姿がありました。

イスパルタ私兵(GM):
 アゼルの姿に気がついたイスパルタ私兵は、「ん? き、貴様はアゼルとか言ったな!? いったい今まで何をしていた!?」と言って、あなたのことを拘束しようとします。

アゼル:
 ここは抵抗せずに拘束されよう。

イスパルタ私兵(GM):
 では、イスパルタ私兵はアゼルのことを拘束すると、そのままイスメトの前まで連れて行きます。

アゼル:
 拘束って縛り上げられてるんだろうか?

GM:
 いえ、そこまではされていませんね。私兵に片腕を後ろ手にねじ上げられている状態です。

イスメト(GM):
 イスメトは部屋に連れてこられたあなたのことを一瞥すると、冷ややかな声を発しました。
「てっきり逃げ出したのかと思っていたが……まさか戻ってくるとはな……。いったいいままでどこでなにをしていた?」

アゼル:
 いま、俺は凄く堂々としている。なにせ、あのアリゲーターをひとりで倒してきたんだからな(笑)! イスメトの質問には答えず、手紙を取り出した。
「まずはこれに目を通してもらおう」

イスメト(GM):
「なんだそれは?」イスメトはそう口にしたものの、手紙の封印を目にして、すぐに誰からの手紙か察したようです。そして、アゼルの手から手紙を奪い取ると、その文面に目を落とし、やがてワナワナと身体を震わせだしました。
「これはどういうことだ……」

アゼル:
「それと同じ文面の手紙を仲間が持っている。そして、あなたがこちらの要求を受け入れない場合には、仲間がその手紙をタルカンのもとに届ける手筈になっている」

イスメト(GM):
「この私のことをだましていたのか!」

アゼル:
「そういうわけではない。ただ、ギュリスの訴えを聞いて彼女に協力しようと思っただけだ。ギュリスにも自分の人生を選ぶ権利があるだろう?」

イスメト(GM):
「ふざけるなッ!」そう言って、イスメトは手に持っていた手紙を握りつぶしました。これまで、ほとんど崩れなかった彼の表情が怒りに歪んでいます。

アゼル:
 ちょっと怖いぜ(笑)。こいつ、きっとアリゲーターよりも強いんだろ?

イスメト(GM):
「高い立場にいる者がその役目を果たさずに、己が願望を優先させようなどとはッ! そんな無責任なことが許されるとでも思っているのかッ!? キサマも氏族長の甥であれば、それくらいの分別は心得ているのだろうッ!?」

アゼル:
 うーん。なんて返したもんかな……。
(しばらく考えてから)
「彼女もひとりの人間だ。自分の人生を生きる権利がある」

シーン外のイーサ:
 それとほぼ同じことをさっきも言ったよな?

シーン外のエルド:
 まあ、大事なことですから、2度言っておかないと。

一同:
(爆笑)

アゼル:
 いい台詞が思いつかなかったんだよ(笑)!

イスメト(GM):
「そんな戯言をのたまわっているから、クルト氏族は滅びようとしているのだッ!」

アゼル:
「たとえ滅びることになろうと、俺は自分の心に従うまでだ」

イスメト(GM):
 イスメトは唇を噛みしめて身体を震わせています。

アゼル:
「では、こちらからの要求だが……。まず、シシュマンたちを解放してもらおう。そして、もうひとつ。あんたには私兵を引き連れてイスパルタまで戻ってもらう。それが確認できたらこちらも手紙を破棄しよう。心配しなくとも、こちらは約束を守る。ギュリスも、できればその手紙を公の目に触れさせたくないと言っていたからな」

イスメト(GM):
 イスメトは首をうなだれて、「馬鹿が……。あの馬鹿めが……」と呻きます。そして、そのままの格好でイスパルタ私兵に対して、「シシュマンたちを解放してやれ……」と命じました。

イスパルタ私兵(GM):
「しかし、このような時刻に……」と、イスパルタ私兵が言葉を返すと――

イスメト(GM):
「いますぐにだッ!」とイスメトは怒号を響かせます。

イスパルタ私兵(GM):
 イスパルタ私兵は慌てた様子で姿勢を正し、急いで部屋を出ていきました。

GM:
 この段階でアゼルの拘束も解かれました。

アゼル:
 おー、イスメト怖えー。ここでキレられて斬りかかってこられたら、絶対に適わないだろうからな……。

GM:
 そんなことをしても、イスメトにとっては自分の首を絞めることになるだけで、なにひとつメリットがありませんよ(苦笑)。

イスメト(GM):
 イスメトは固く握った拳を震わせながら、ゆっくりと顔を上げます。
「わがまま娘のたわごとに付き合うなどとは……。ずいぶんとお優しいことだな、クルトの者はッ!」

アゼル:
 うーん。それには無言でいよう。いい台詞が思いつかないから無言! 実際優しいかどうかも微妙なところだしな。

イスメト(GM):
「日が明けたら、我々もイスパルタに向けて引き返すことにしよう。それでいいな?」

アゼル:
「ああ……」

イスメト(GM):
 イスメトは荒ぶる気持ちを落ち着かせるように深く呼吸しながら、アゼルを睨み付けます。
「……この私を裏切ったこと……あとで後悔するなよ?」

アゼル:
「……後悔などしないさ……」

GM:
 つい最近も、アゼルに恨みを抱いて去っていった人がいましたけど、またしてもNPCの恨みを買いましたね(笑)。

アゼル:
 ブッ(失笑)! だ、大丈夫だ。アゼルはこの路線を突っ走る! でも、これでクルト氏族は終わったかもしれないな(苦笑)。
 もう、シシュマンたちは解放されたんだよな? だったら、そろそろ俺もイスメトの前から立ち去ろう。

イスメト(GM):
 では、その場を立ち去ろうアゼルがイスメトに背を向けたところで、イスメトはハッとなにかに気がつき、「ま、まて……」と言ってアゼルのことを呼び止めました。
「ひとつだけ確認しておきたいことがある。たしかキサマたちはタルカンとも接触していたな?」

アゼル:
「ん? それがどうかしたのか?」
 足を止めてイスメトのほうを振り向いた。

イスメト(GM):
「タルカンはこのことをどこまで知っている? あの男にどこまで話したのだ?」そう問いただすイスメトの表情からは焦りが感じられます。

アゼル:
「安心しろ。タルカンは核心にまでは至ってない」

イスメト(GM):
 そのアゼルの言葉を聞いたイスメトの顔に、わずかではあるものの安堵の表情が浮かんだのがわかりました。

アゼル:
 それじゃ、あらためてイスメトの前から立ち去る。

GM:
 了解です。では、アゼルはイスパルタ別宅前まで出て行ったところで、解放されたシシュマンたちと再会します。


アゼル:
 じゃあ、シシュマンさんに、これまでの経緯をかいつまんで話しておこう。
「実は――ということがあったんだ」

シシュマン(GM):
 アゼルの説明を聞いたシシュマンは、深くうなずきました。
「なるほどな。やけに時間がかかっていると思ったら、そんなことになっていたのか。そういうことであれば、仕方ないな」そう言って、シシュマンはサブリに目を向けます。
「ワシらはワシらでクゼ・リマナを目指すこととしよう」

アゼル:
「シシュマンさん、サブリさん。本当にすまない」

シシュマン(GM):
「いや。今回の件、なにもお前さんに非があるわけじゃない。あまり気に病むな」

サブリ(GM):
 理解を示すシシュマンの隣で、サブリはその憤りをギズリへとぶつけています。
「許せねぇのはギズリの野郎だ! あいつが俺たちを巻き込んだせいで、結局、ここで一週間近くも足止めを食らったんだぞ!」

アゼル:
「サブリさんが怒っていたってことはギズリさんにも伝えておこう」

サブリ(GM):
「……それは、そうとして……。言っておくが、クゼ・リマナまで護衛を務めないんだから、約束してた2万銀貨の成功報酬はなしだからな。それで今回の件はチャラってことにしといてやる! 俺も器の大きい男だからな!」

一同:
(笑)

アゼル:
「ああ。そうしてもらえると助かる。あんたの商売がうまくいくことを祈ってるよ」
 サブリさんとの話を終えたら、今度はニルフェルとセルダルのほうに顔を向ける。
「すまない……。そういうことで、少し計画が変わってしまった……」

ニルフェル(GM):
 そんなアゼルの言葉に、ニルフェルは少し顔をうつむかせて考えを巡らせたあと、「兄さんの話はよくわかった……。たしかにギュリスさんのことを放っておくわけにはいかないものね……」と言います。

アゼル:
 うむ。よくできた妹だ(笑)。

セルダル(GM):
 その一方で、セルダルはアゼルに対してずっとにらみ付けるような厳しい視線を向けています。

アゼル:
 あ、あら……?

シーン外のエルド:
 捜索を開始するときの一件もありましたが、それに加えて、ニルフェルさん以外の女性を助けることを優先したわけですからね。かなり怒ってるでしょう。

セルダル(GM):
 セルダルはアゼルをにらみ付けたまま、ニルフェルに向かってこう言います。
「安心しろよ、ニルフェル。どの道を行くことになろーが、オレが必ずオマエのことを王都まで送り届けてやるから」

アゼル:
 え? 呼び捨て……?

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは心配そうな顔をして、対峙する2人の姿を交互に見ています。

アゼル:
 アゼルもそのセルダルの視線に少し気圧されてる。

セルダル(GM):
 セルダルはさらに1歩アゼルに詰め寄ります。そして、強い口調で、「オレの意志は曲がらねぇよ。誰かさんとは違ってな」と言い放ちました。

アゼル:
 うッ……。アゼルはセルダルを前にして、無言で微動だにできずにいる……。

GM:
 ――といったところで、宮国紀行の第3話を終了します。お疲れさまでした。

一同:
 お疲れさまでした。




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