LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第3話 ティータイム

 紆余曲折あった宮国紀行の第3話「自由になりたい!」でしたが、ようやく完結しました。

 3回繰り返したのでお気づきの方も多いと思いますが、各話のタイトルはセッション中に登場した印象的な言葉を抜き出してつけています。今回のタイトルはギュリスが口にした台詞からとりましたが、PCとしてもまさに早く自由になりたい!といった内容だったと思います。

 つい自由になりたい気持ちが強すぎてアルダ街道を離れて進むことになってしまいましたが、今後の旅路はどうなるんでしょうか? また、アゼルとセルダルのあいだに生じた亀裂はどうなっていくんでしょうか? 宮国紀行もいよいよ慌ただしい展開となってきました。しかし、そうは言ってもまだまだGMの敷いたレール上の展開に過ぎませんので、今後プレイヤー主体でGMの想定を上回る展開が紡ぎだされていくことに期待しつつ、GM側からもさらなる発破を仕掛けていきたいと思います。

 さて、今回は一行がようやく城塞都市カルカヴァンに到着したということで、直球ど真ん中を狙ってシティ・アドベンチャーのシナリオを用意しました。城塞都市カルカヴァンの雰囲気が少しでも感じ取れる内容になっていたのであれば幸いです。

 少し補足しておくと、遷都して間もないカルカヴァンは近代的な都市であり、とても衛生的な生活が営まれています。衛生管理が厳しいのには、国民の神に対する信仰心が薄いため病の治療を行える白魔法使いがあまり存在しない、といったカーティス王国特有の事情も少なからず影響しています。治療が望めないのであれば予防を強化しようというわけです。

 今回のセッションではカジュアルレストランや指名制クラブ、連れ込み宿など、世界観的に違和感を覚える施設もいくつか登場しましたが、それらはノリと勢いでつい組み込んでしまったものです。まあ、あそこまで露骨ではないにしても、似たような施設があったとしてもおかしくはないかなということで目を瞑ってもらえると助かります(汗)。また、逆に今回のセッションで登場しませんでしたが、カルカヴァンには黒魔法学院も存在しています。白魔法使いと黒魔法使いの人口比率は、およそ1対1といったところでしょうか。

 それと、重要な施設のひとつとして貧民街も登場させました。そこに暮らしているのは、実力主義のカーティス王国において切り捨てられようとしている敗者たちです。まだキャンペーンの序盤ということもあり、描写はマイルドなものに抑えておきましたが、第2話に登場したカダ・ハージ兄妹とあわせて、カーティス王国の暗部として記憶に留めておいて欲しいところです。

 このように、いくつかの意図を込めて用意されたカルカヴァンの各施設をPCたちにはできるだけ多く回って欲しかったため、第3話は潜伏するギズリたちを探して街を歩き回るというものになりました。この方針は第2話開始時には定まっていたので、第2話には第3話に向けての前振りがたくさん仕込んであります。鋭い人になると、第2話が終了した段階でジェザことギュリスが女性であることを見抜いていたようですが、やはり無言のキャラクターが性別を偽っているというのはお約束でしょうか。

 ジェザの正体のこともそうですが、第3話はどこかで見たことのあるお約束展開てんこ盛りで構成されています。無実の罪を着せられた主人公たちがその疑いを晴らすために事件解決に挑むというのは王道ですし、たまたま街を訪れていたサーカス団は当然のように事件に関する情報を握っています。逃亡者がモーテルに潜伏しているのは言わずもがな、地下水道に巣食う怪物といったらアリゲーターが大本命でしょう。細かいところまで挙げるとキリがありませんが、洋画を好んで観る方であれば同様のシチュエーションが登場する作品のタイトルをいくつも思いつくことでしょう。オリジナリティあふれる展開というのも良いですが、今回は先の展開を読みやすくすることでプレイヤーが主導権を握りやすいようにと考えてこのようにしました。

 ただ、地下水道に生息していたアリゲーターの登場のさせ方については、唐突過ぎたかなと反省しています。登場前に、もう少しその存在を臭わせておきたいところでした。一応、旅芸人一座でその話題に触れていれば詳しい情報を得ることもできましたが、それ以外にもアリゲーターと接触する前に、何者かに食い散らかされて砕かれた動物の骨が落ちている、などの前振りがあったほうが話の流れとしては良かったかもしれません。

 第3話に登場した主要NPCについても触れておきましょう。今回、PCが加担すべき対象として、イスメト、タルカン、ギュリスという3人のNPCが登場しますが、その誰もが一癖も二癖もある濃いキャラクターとなっています。

 特にアスラン商会ナンバー3のタルカンはプレイヤーたちにかなり強い印象を残したようで、その後のセッションでも、タルカンの口調を真似て「アナタ、馬鹿じゃないの?」と言うのがプチ流行しています。わたし個人としては、高飛車に構えているもののなんだかんだで人の話を聞いてあげてしまうイスメトの優しさに、中間管理職的な悲哀と彼の根幹にあるまっすぐな人間性を感じるのですが、プレイヤーたちからの評判はあまり良くなかったようです。それに比べて、ギュリスはあの性格であの外見なのですが、ただ女性であるというだけであの優遇っぷり……。わたしは貧民街の少年シナン君の意見に賛同します(笑)。

 戦闘に関しては今回はシチュエーション重視でした。個人的に特に気に入っているのは、ギズリを捕縛しようとイーサとエルドが追いかける戦闘です。逃げるNPCをただ捕まえるだけというものでしたが、あの場面であれほど思考を巡らし盛り上がれるシステムをわたしはLOST以外に知りません。そもそも、ほかのシステムの場合、あの場面を戦闘処理で解決しようとは考えないでしょう。ウェイトターン制であり、“離脱阻止”や“範囲支配”などZOCの概念を取り入れたルールのあるLOSTだからこそ活きたシーンだったと思います。

 また戦闘と言えば、登場のさせ方が悔やまれたアリゲーターとの2度にわたる戦いも、かなり緊張感のあるものとなりました。あのとき、すでにエルド以外の“可能性”は底をついていたため、事故が発生すればPCの絶命も十分ありえました。

 第1戦は“エネルギー・ボルト”で削り切った格好となりましたが、投じた“エネルギー・ボルト”の半分以上がアリゲーターの厚い鱗の前に阻まれていました。その一方で、あまり目立ってはいなかったものの、アゼルの片手剣による攻撃は着実にアリゲーターにダメージを与えていたので、もし序盤から“隙を見つける”などを選択してアゼルをサポートすることができていたのであれば、消耗をもう少し抑えられていたことでしょう。

 第2戦はダイスの神様の気まぐれというほかありません。この戦闘自体がシナリオ作成時のGMの想定に入っておらず、アゼルがアリゲーターとの再接触の可能性を示唆したことで、たしかにそれもあり得ない話ではないなと流れに任せてしまいました。しかし、このイレギュラーな戦闘が発生したことで、これまで失敗続きで見せ場のほとんどなかったアゼルが、ようやくそのうっ憤を晴らす活躍をみせることができました。これを切っ掛けとして、アゼルには一皮むけて欲しいところですが……はたしてどうなることやら。ここからのアゼルの成長に期待しましょう。

 ――といったところで、第3話のティータイムも終了です。まだまだ回収されていない伏線が多く残されているこのキャンペーン。次回以降どうやってそれを回収していこうか……。また、新展開の伏線をどうやって張っていこうか……。暇を見つけてはそんなことを考えているGMです。そろそろ導火線に火をつけて、大きな事件を発生させてもいい頃でしょうか。あと、1話あたりのボリュームが大きすぎるので、もう少しコンパクトにしなくては……。




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