LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(03)

GM:
 農道の終点にたどり着いたころにはすでに日も沈んでおり、徐々に闇があたりを包み込んでいこうとしています。

イーサ:
「農道もここまでか。とりあえず、今日はここで休むわけだが、ここから先はウルム樹海に沿って北上することになるのか?」

ギズリ(GM):
「そうだな。普通ならそうするところだ。だが、樹海沿いを進むと獣と遭遇する可能性が高まるうえに、目的地であるイルヤソールに対してちょいとばかり遠回りすることになる。それに、食料にあまり余裕はないし、旅慣れない奴もいる――」そう言ってギズリはギュリスとニルフェルに目を向けます。
「そういったもろもろの事情を考えれば、最短距離を進むのがベストだろう」

イーサ:
「たしかに最短距離を進めるならそれに越したことはないが、なんの目印もない広大な平原を迷わずに進めるものなのか?」

ギズリ(GM):
 ギズリはニヤリと笑みを浮かべて、荷物袋の中からこぶし大の水晶球を取り出しました。
「そこで、こいつの出番ってわけだ」

GM:
 水晶球の中には、小さな星がひとつだけ浮かんでいます。その星は水晶球の中心から少し外れたところに浮かんでおり、よく見ると彗星のように尾を引いています。

イーサ:
「そいつはいったい……?」

ギズリ(GM):
「この水晶球に浮かぶ星が常に北の方角を示してくれるんだ。遺産のひとつなんだが、オレは“風見星”って呼んでる」

GM:
 ここで神聖知識判定を目標値10でどうぞ。

イーサ:
(コロコロ)うッ……ホワイト・マジシャン技能を持ってるのに失敗してしまった……。

アゼル:
(コロコロ)11で成功!

GM:
 では、アゼルは白魔法の“コンパス”を知っています。風見星はそれに類似する効果を持っていると理解しました。

“コンパス”
 術者が現在向いている方角を正確に感知できるようになるレベル1白魔法です。

アゼル:
「まるで“コンパス”の魔法みたいだな。そいつがあれば、目印となるものがない場所でも迷わずに目的地を目指せるというわけか」

ギズリ(GM):
「まあ、そういうことだ」

GM:
 これまであなたたちはずっと街道沿いを進んできたので道に迷うことはありませんでしたが、目印となるものがないような場所を進む場合にはランド・ウォーカー技能などを用いた“方角認識”の判定が必要となり、それに失敗すると本来進もうとしていた方向以外の場所に進んでしまうことになります。ですが、今回は風見星がありますので、方角認識判定が免除されます。

アゼル:
 おお、それは凄いな。ギズリさんはそんな便利なアイテムを持ってたのか。完璧だ。

GM:
 ギズリは自他共に認める旅好きですからね。未開の地を旅するためにはこういったものも必要になるんでしょう。

エルド:
「お話し中のところすみませんが、早く休ませてもらえませんか? もうフラフラで……」

ギズリ(GM):
「ああ、そうだな。じゃあ、さっさと設営を終わらせて夕飯にするか」

GM:
 こうして、2つのテントを設営し終えると、皆でたき火を囲んで夕食をとることになりました。

ギズリ(GM):
 夕食の最中、「それで、見張り番はどうするんだ?」と、ギズリが話を切り出します。

アゼル:
「俺は疲労がたまっているだけだから、5時間ほど休めれば問題ない」

エルド:
「僕は精神点を回復させないことには戦力にならないので、できる限り長く休ませてもらいたいところです」

アゼル:
「そうだな。イーサとエルドはできるだけ寝とけ。特にエルドはすぐにでも寝ろ!」

セルダル(GM):
 そのアゼルの発言に、セルダルが口を挟んできました。
「それを決めんのはリーダーであるイーサだ。オマエが決めることじゃねぇだろ」そう言って、セルダルはイーサの判断を仰ぎます。

アゼル:
 うッ……その通りだ(苦笑)。

イーサ:
「そうだな……」
(少し考えてから)
「見張り番を決める前に、ひとつ提案しておきたいことがある。これからの道中、未開の平原を進むことになればこれまで以上に危険が伴う。カルカヴァンから離れることもできたし、ここでいったん腰を落ち着けて十分な休息を取ることにしたいが、どうだろう?」

アゼル:
「いいと思うぞ」

エルド:
「休めるなら従いますよ」

ギズリ(GM):
「おッ。そうやって仕切ると、なんだかリーダーらしいな。結構しっかりしたもんじゃないか」そう言って、ギズリは関心したようにうなずいてみせました。

GM:
 ほかの面々もイーサの提案に同意しました。

ギズリ(GM):
「それで、ここに腰を落ちつけるのはいいが、肝心の見張り番のほうはどうするんだ? 昼間はひとりでもいいだろうが、ここは樹海にも近いし、夜間は2人以上見張りについて欲しいところなんだが……」

イーサ:
「そうだな……」
 ニルフェルとギュリスは見張りに立たせられないだろうし、エルドには十分休んでほしいからな。
「それじゃ、見張り番は俺とアゼルとセルダルとギズリの4人が持ち回りで担当することにしよう」

アゼル:
「じゃあ、俺は先に5時間休ませてもらう。そのあとはずっと見張りに立つことにしてもらって構わない」
 でも、あまりセルダルと一緒に見張りには立ちたくないな。

ギュリス(GM):
 アゼルの発言にギュリスは眉をひそめました。そして、その視線をセルダルのほうへと向けます。

セルダル(GM):
 セルダルは厳しい表情をしながら、イーサの次の言葉を待っています。

 リプレイをご覧の方にはわかりやすいように、NPCの反応について解説しておきます。

 まずギュリスですが、彼女は緊急事態の場合を除き、相談なしに独断先行する者に対して好感度を下げます。逆に事前に相談を持ちかけられた場合には、たとえ不平不満を口にしたとしても好感度は下がらず、同意できる提案がなされたのであれば好感度が上がります。

 そして、セルダルは本当であればアゼルにリーダーを務めて欲しかったのですが、その責任をイーサに押し付けておきながら、なお場を仕切ろうとするアゼルに不満を感じています。

イーサ:
「それじゃ、まずは最初の3時間、セルダルとギズリに見張りを頼めるか? その次にギズリとアゼル、その次にアゼルと俺。これで9時間休もう。そのあとのことは各自の回復具合を確認してからまた決めるって感じでどうだ?」

セルダル(GM):
「了解だ」

アゼル:
「……わかった」

 先に5時間休むというアゼルの宣言をさりげなく却下しつつ、アゼルとセルダルが一緒に見張りに立たないオーダー割りにしたイーサでした。

GM:
 では、見張り番以外の人は自由に休み始めてください。

エルド:
 休む前に、今後のことを考えて魔法の入れ替えをしておきますね。

 ここでエルドは、これまでたびたび活用してきた“サウンド・キャリー”と“ティンダー”を外し、かわりに“ファイア・ボルト”と“アイス・ボルト”をスペルリングに記憶させました。アリゲーターのような物理防御力の高い相手との戦闘を想定して、魔法ダメージを与えることができる攻撃方法を選択したわけです。

 また、これにあわせてイーサも“ターン・アンデッド”と“ホーリー・ウェポン”を外して、“サニティ”と“カウンター・マジック”をスペルリングに記憶させました。どうやら、アンデッドモンスターは登場しないと踏んだようです。

ギュリス(GM):
 食事を終えると、ギュリスは荷物の中から戦盤を取り出して駒を並べ始めました。
「ねえ、誰か指さない?」

アゼル:
 戦盤はさせるが、俺は少しでも早く疲労を回復させるために休むぜ! ギュリスの言葉に反応せずにテントに向かう。

ギズリ(GM):
 アゼルがテントへと向かったのを確認したギズリは、またオレかッ!?といった表情で周りを見渡しました。

エルド:
 だったら、何気ない感じで、「あれ? アゼルさんは戦盤を指せるんじゃありませんでしたっけ?」とテントに入ろうとするアゼルさんに声を掛けます。

アゼル:
 うッ。そう言われても、早めに疲労を回復させておきたいからな……。ちなみに、戦盤って1局指すのにどれくらいの時間がかかるものなんだ?

GM:
 そうですね……だいたい30分から1時間ってところでしょうか。

アゼル:
 うーん。それくらいならいいか……。じゃあ……。
「戦盤か……。ならば俺が指そう」

エルド:
 まったく期待を裏切らない人ですね(笑)。

ギュリス(GM):
 ギュリスは値踏みするような目でアゼルを見ました。
「アゼルか……。まあいいけど。それじゃ、あなた先手でいいよ」

アゼル:
 では、勝負だ。(コロコロ)よし、12。

ギュリス(GM):
(コロコロ)ギュリスは13です。

アゼル:
 え? 12で負けた? やばいな……。

ギュリス(GM):
 次のギュリスの目は(コロコロ)同じく13。

アゼル:
 負けてたまるか! (コロコロ)うわッ、1ゾロ。

ギュリス(GM):
 優勢に立ったギュリスは、手を緩めることなく一気にアゼルの王駒を追い詰めていきます。(コロコロ)14です。

エルド:
 おお、凄いですね。ギュリスさんの目が輝いて見えます。

イーサ:
 ギュリス嬢、格好いいな。

アゼル:
(コロコロ)あー、13で届かず……。負けたー。

ギュリス(GM):
「これで詰み……だね」

アゼル:
「クッ……。なかなか強いな」

ギュリス(GM):
「そう? あなたが弱いだけでしょ?」

イーサ&エルド:
(爆笑)

アゼル:
 ぐぬぬ……。

エルド:
 アゼルさん、こんなこと言われておめおめと引き下がるつもりですか!?

アゼル:
「よしッ、もう一勝負だ!」

ギュリス(GM):
 ギュリスは、少し気だるそうな感じで「また?」と呟きます。
「うーん。だったら、もう少し気合いが入るように、なにか賭けてみる?」

アゼル:
「おッ、そうだな……。あまり賭け事は好きじゃないんだが……」

ギュリス(GM):
 アゼルの言葉に、ギュリスは鼻で笑いました。
「そんなこと言って、いったいギズリからいくら巻き上げたんだっけ?」

イーサ&エルド:
(爆笑)

アゼル:
 あれ? なんのことだっけかなぁ……(苦笑)。

ギュリス(GM):
「たしかギズリとは50銀貨の勝負を2回やってたんだっけか……。だったら、200銀貨を賭けた勝負ってことでどう?」

アゼル:
「200銀貨か……。わかった。受けて立とう」

ギュリス(GM):
 では、再戦です。
(コロコロ)11。(コロコロ)15。(コロコロ)11。(コロコロ)12。

アゼル:
(コロコロ)11。(コロコロ)8。(コロコロ)9。(コロコロ)9。
 あああああ……。全然出目が振るわない……。また負けた……。

エルド:
 弱い。弱すぎます。

アゼル:
「だめだ……。勝てない……」

ギュリス(GM):
「うーん。たしかにギズリといい勝負ってとこだね……。それじゃ、200銀貨ちょうだい」

アゼル:
 くぅ……。200銀貨を支払った。
「いまの俺じゃ、まだ勝てないようだな……」

ギュリス(GM):
「……まだ……ねぇ……。まあ、筋が悪いってわけじゃなさそうだけど……。なんていうか、短絡的で馬鹿正直な手が多すぎだよね。もう少し駆け引きを覚えてからじゃないと、あたしの相手は務まらないかな」

アゼル:
「なるほど……。精進しよう……」

ギュリス(GM):
 ギュリスは、「ニルフェル。あなたも少し指してみる?」と言って、戦局を見守っていたニルフェルにも戦盤の誘いを掛けました。

ニルフェル(GM):
「それじゃ、せっかくですから……」

アゼル:
 うおッ! これでニルフェルが勝ちでもしたら、兄としての威厳が……。

ニルフェル(GM):
「わたしは兄さんよりも弱いので、お手柔らかにお願いします」
 ニルフェルは戦盤を挟んでギュリスの対面に座ると、一礼してから駒に手をのばしました。

GM:
 こうして、ギュリスとニルフェルによる対局が始まりましたが、それは対局というよりも指導に近い内容となりました。

アゼル:
 じゃあ、2人の対局が始まったところで、「俺はそろそろ休ませてもらおう」と言ってテントの中に入って行こう。これで、ようやく休める。

 こうして、何事もなく夜が過ぎていきました。

GM:
 では、イーサが当初計画した9時間が経過して、翌日の午前5時半頃になります。最後の見張り番はアゼルとイーサだったので2人は起きています。そのほかに、寝ていたセルダルとギズリも目を覚ましました。

エルド:
 僕はまだ精神点が足りません。もっと休ませてください。

イーサ:
 俺もだな……。起きている面子に、もう少し休むことを断っておこう。
「すまないが、やはりもう少しここで休息を取ることにしたい。構わないか?」

ギズリ(GM):
 それを聞いたギズリは、「別にオレは構わないぞ。なんだったら、今日一日はここでキャンプしてもいいんじゃないか?」と言ってきます。

エルド:
 あまりのんびりしていると、ギュリスさんがごねそうですけどね(笑)。

アゼル:
「お前がリーダーだ。お前が決めろ」

イーサ:
「それじゃ、ここで丸一日休むことにする。今後のために俺もしっかり休んでおきたいから、今晩の見張りはセルダル、ギズリ、アゼルの3人で回してもらえるか?」

セルダル(GM):
「そーゆーことなら任せといてくれ」とセルダルはうなずきました。

アゼル:
「問題ない……。問題ない……」と2度言う(笑)。

 日中、ニルフェルとギュリスも起きだしてきたものの、エルドが心配していたようなギュリスの癇癪も起こらず、穏やかな時間が過ぎていきました。そしてふたたび夜を迎えます。

ギズリ(GM):
 夕食後、ギズリが切り出しました。
「さーて、それじゃ夜の見張り番を決めるとするか。オレ、最初に休ませてもらってもいいか? そのあとは明け方まで担当するからよ」

アゼル:
「あ……ああ……」

セルダル(GM):
 セルダルは無言です。

ギズリ(GM):
「じゃあ、頼んだぞ」そう言うと、ギズリは早々に横になってしまいました。

アゼル:
「あ……ああ……」

GM:
 ニルフェルとギュリスもテントの中に入っています。テントの中が明るいので、すぐに就寝したというわけではなさそうです。
 たき火を前にして起きているのはアゼルとセルダルの2人だけになりました。

セルダル(GM):
 見張り番の間、セルダルは自分から言葉を発しようとはしません。無言で周囲の警戒を続けています。

アゼル:
 俺も無言だな……。セルダルの非難に対して弁明するのは……俺には無理だ。これからの行動で示す!

GM:
 では、互いに無言のまま3時間が経過し、ギズリが起きだします。

エルド:
 そこで僕も起きます。

ギズリ(GM):
「お、エルド。もう起きていいのか?」

エルド:
「おかげさまで、ぐっすり休めました」
 精神点全快です。

ギズリ(GM):
「だったら、そろそろ護衛として働いてもらうとするかな。おい、アゼル、セルダル。オマエたち、もう休んでいいぞ」

アゼル:
「そうさせてもらう」
 ……ってことは、セルダルと同じテントで休むことになるのか?

エルド:
(笑)

GM:
 いえ、イーサがテントで休んでいるので、テントで休めるのはあとひとりだけです。

アゼル:
 あ、そうか。それじゃ、「セルダルはテントで寝てくれ」と、一応声を掛けておこう。

セルダル(GM):
 セルダルはアゼルがその言葉を言い終えるより先に、マントに身体を包んでそのまま横になってしまいました。そして、背中越しに言葉だけ返してきます。
「テント使いてぇなら好きにしろよ」

アゼル:
「……そうか。じゃあ、使わせてもらうとするか……」

エルド:
 結局自分でテントを使っちゃうあたり、やっぱりアゼルさんはお坊ちゃんなんですね。

GM:
 まあ、アゼルとセルダルの育ちを考えれば妥当なところでしょう。

 こうして、アゼルとセルダルのギクシャクした関係が補修されることもなく、ただ時間だけが経過していきました。




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