LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(04)

GM:
 さて、精神力を全快させたうえで昼食まで済ませると、時刻は14時半を回ります。

イーサ:
「長い時間休ませてもらってすまないな。そろそろ出発するか」

ギズリ(GM):
 ギズリはなまった体をほぐすためにストレッチをしています。
「そうだな。のんびり休んだ分、気合い入れて行ってみるか」

アゼル:
 あまり疲れてなかった俺は、「行こう! よし、行こう! ここから頑張ろう!」って言ってる。

イーサ:
「ここからは道がなくなるから、これまで以上に注意していかないといけないな」

アゼル:
「ああ。心して行こう」

ヤナダーグ・プラト地方北部地図03

 一行はまず水を補給できるニメット川の右支流(PU地点)を目指して進むことにしました。このとき、まだ水の残量には余裕があったのですが、給水できる地点まで進まなくては不安だということから速足での強行軍を選択します。しかし、セルダルとギュリスはその速度についていけず、彼らの歩みは徐々に集団から遅れ始めました。

イーサ:
 ギュリスは名門氏族の箱入り娘だからこんなもんなんだろうが、セルダルの疲労耐性も低いのか……。ちょっと意外だったな。

GM:
 別にギュリスやセルダルが虚弱だということではありません。一般人としてはそこそこ頑張っているほうです。むしろ、速足を維持して10キロ走破してもほとんど疲れを感じさせない、あなたたちの身体能力が優れているということを自覚してください。

アゼル:
 セルダルも一般人扱いなのか?

GM:
 そうですよ。あなたたちがPCを作成するときには能力値が高くなるようにボーナスを与えましたが、セルダルや他のNPCの能力値は一般人と同じ方法で作成されています。

アゼル:
 そうだったのか……。

GM:
 ちなみに、セルダルの疲労耐性はギュリスよりもひとつ高く、ニルフェルと同等ではあるのですが、荷物と装備が重い分セルダルのほうが疲れやすくなっています。

アゼル:
 それじゃ、俺はニルフェルに対して「大丈夫か?」と声を掛けつつ、遅れている奴らの速度にあわせて歩くようにする。

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは、「わたしは荷物も少ないから大丈夫だけど……」と言ってセルダルのほうへと視線を向けました。

セルダル(GM):
 セルダルは革鎧を身にまとい、両手剣を背負ったうえに荷物を持っています。泣き言は漏らさないものの肩で大きく息をついており、セルダルが疲れているのは誰の目にも明らかです。

ギュリス(GM):
 その一方で、ギュリスは公然と不満をぶちまけ始めました。
「ちょっとッ! ペース速すぎるんじゃないッ? もっと配分ってものを考えたらどうなの? そもそも、あなたたちがテントを持ってきたせいで、あたしまで歩く羽目になっちゃったんだからねッ!」

アゼル:
「そうか、すまない……。だがまあ、テントのことは仕方ないだろ……」

ギュリス(GM):
「仕方なくなんかないッ(怒)!」

一同:
(苦笑)

イーサ:
 どうする? 少しペースを落としたほうがいいか?

アゼル:
 でも、ペースを落とすと次の地点につくころには日が暮れるぞ? ペースを落として夜間行軍するくらいなら、いっそここで野営して明日早めに出たほうがいいんじゃないか?

エルド:
 ちなみに、これから設営を開始すると、夕食をとり終えたころにちょうど日没になりますね。

イーサ:
 うーん、時間的にそうしたほうがよさそうか。
「よし、それじゃ今日のところはここで休むことにしよう」

ギュリス(GM):
「はぁ? まだ日がある時間帯なのに? だったらなんで最初からもっとゆっくり歩かないのッ? もうッ、これだから計画性のない連中ってのは……」
 休むことになっても、ギュリスの悪態はしばらく収まりそうにありません。

一同:
(苦笑)

ギュリス(GM):
 あなたたちが設営作業を続けているあいだ、ギュリスは「それくらい、あなたたちだけでやりなさいね!」と言って、離れた場所で足を休めています。

イーサ:
(半ば呆れ気味に)「ああ。まあ、休んでいてくれ」

ギズリ(GM):
(小声で)「悪いな。お嬢さんの分はオレがやるから、勘弁しといてくれ」と、ギュリスに代わってギズリが頭を下げます。

エルド:
 なんだか、ギズリさんが可哀想にみえてきました。きっと、僕たちが知らないあいだも、ギュリスさんにこき使われてきたんでしょうね(苦笑)。

GM:
 さて、それからしばらくはゆっくりできるわけですが、夜の見張りが始まるまでのあいだになにかやっておきたいことはありますか?

イーサ:
 そうだな。精神点も全快したし、せっかくだからアルからもらったスクロールを覚えることにするかな。

GM:
 了解です。では、“スペル・ラーニング”を行使してください。目標値11の判定に成功すれば、自分の所持する白魔導書に“エントラスト”を書き込むことができます。

イーサ:
(コロコロ)12で成功。

GM:
 “スペル・ラーニング”に成功するとスクロールは消失し、そこに書かれていた“エントラスト”の術式がイーサの持つ白魔導書の白紙のページに浮かび上がりました。以後、スペルリングに記憶させれば“エントラスト”を使えるようになります。

アゼル:
 おお。じゃあ、さっそく“可能性”を分けてくれよ。

イーサ:
 うーん。もう少し親密になるか、必要に迫られることがあったらな。

アゼル:
 まだダメなのか……。くそー。いったい俺はいつになったら“可能性”を回復させられるんだよ……。

 こうして、一行はSV地点で夜を迎えることになりました。

ヤナダーグ・プラト地方北部地図04

 そして、2人1組の見張りが立てられるなか、エルドが同じ時間に当番となったセルダルに切り出します。

エルド:
「セルダルさん、ちょっといいですか? 最近、なにやらアゼルさんと険悪な感じですが、どうかしたんですか?」

GM:
 ついにそこに触れてきましたか(笑)。

エルド:
 触れますとも! 僕はそういうところで空気を読まないキャラクターですから(笑)。

セルダル(GM):
 セルダルは、「別になんでもねぇよ……」と答えるのですが、少し落ち着かない様子で両手剣を鞘から抜いたりしまったりを繰り返しています。

エルド:
「もしかして、アゼルさんが捜索メンバーを選んだときのことが原因ですか?」

シーン外のアゼル:
 直球だな(笑)。

セルダル(GM):
「そんなこと聞かれても、いったいなんのこと言ってんのかわかんねぇんだけどな」とセルダルは白を切りました。

エルド:
「……そうですか。セルダルさんがわからないというのであれば、これ以上聞くのも野暮ってものですね……。僕はただ、ギスギスした状態でこのまま旅を続けるのもどうかなと思っただけなんですけど……」

セルダル(GM):
「別にギスギスなんてしてねぇだろ?」
 セルダルはエルドに視線をあわせようとせずに、両手剣をいじり続けています。

エルド:
「まあ、セルダルさんがそう言うのであれば、それも僕の気のせいだったんでしょう。変なことを聞いてしまってすみません……。さて、僕はそろそろ交替の時間なんで、イーサさんのことを起こしてきます」

GM:
 真っ先に斬り込んだわりには、意外とあっさりと引きましたね(笑)。

エルド:
 問題ありません。あとはイーサさんが引き継いでくれます。イーサさんのことを起こすときに、そっと耳打ちしておきます。
(小声で)「少したきつけておきました」

シーン外のアゼル&イーサ:
(爆笑)

GM:
 沈静化するならまだしも、たきつけておいて人任せですか(笑)!

 エルドに替わってイーサが見張り番につきます。

イーサ:
 じゃあ、俺は木片を片手にたき火の前に座って木彫りを始める。

GM:
 お? クラフトマン技能でも取得するつもりですか?

イーサ:
 今のところはまだ独学の手遊びだけどな。

GM:
 それでは、せっかくですから木彫りの出来栄えを判定してみましょうか。イーサはクラフトマン技能を取得していないので、《器用度ボーナス+(2D-2)》での判定ですね。

イーサ:
(コロコロ)出目3は自動失敗か。
「なかなか難しいな……」

シーン外のアゼル:
 イーサはいったいなにを作ろうとしてるんだ?

イーサ:
 いまの腕前じゃ、なんだかよくわからないものになってる。

シーン外のアゼル:
 自分がなにをつくってるのかもわからないのかよ(笑)。

イーサ:
 いや、決めてはいるが、いまの段階ではまだ公にしない。
 で、木を削りながらセルダルに話しかける。
「このところ、アゼルの奴とうまくいってないみたいだな」

セルダル(GM):
 セルダルはまたかよといった顔をして反論します。
「別にいつもと変わんねぇだろ? オレたちは前からこんな感じだ」

イーサ:
「ふむ……」
 そう返してくるか……。これは、アゼル本人になんとかしてもらわないとダメだな……。

シーン外のエルド:
 イーサさん、逃げちゃダメですよ! もっと踏み込まないと!

イーサ:
 いや、そうは言っても、これはアゼルとセルダルの信頼関係の問題だろ?

シーン外のエルド:
 そうかもしれませんが、このまま2人の仲違いを放置しておくと、将来的にセルダルさんを敵に回すことになってしまうかもしれませんよ!

イーサ:
 うーん。それは困るが……。
(しばらく考え込む)
 この問題を解決するためには、セルダルのアゼルに対する信頼を回復させればいいんだよな。なら、これまで日和見であるように思えたアゼルの行動も、視点を変えてみれば納得できるものだってことをセルダルに伝えられれば、信頼を回復できるかもしれない……。つまり、アゼルのこれまでの行動を良く言えばいいんだ……。アゼルのいいところ……。いいところ……。いいところ……?

シーン外のアゼル:
 いいところが見当たらない(笑)?

イーサ:
 おかしいな……。そもそも、俺はなんでアゼルと一緒に行動しようと思ったんだっけ? たしか、「見ず知らずの者のために命を懸けようとするなんて凄い奴だな!」って思ったはずなんだが、あれだけ命懸けで助けるっていってたはずのサブリのことも、結局見捨てることになったしな……。おかしいぞ……。どうしてこうなった?
(唸りながら長時間考え込んだ挙句)
 ふぅ……。ダメだな。もう少し成り行きを見守ることにしよう……。無言で木を彫り続ける。

シーン外のアゼル&エルド:
(爆笑)

 セルダルと直接会話する機会を持ったエルドとイーサでしたが、どちらもセルダルの硬化した態度を和らげることはできませんでした。そして、そのまま翌日の出発の時刻を迎えます。

イーサ:
 出発の前に、ギュリスに話しかけておこう。
「そうだ、ギュリス。昨日はずいぶんと疲れた様子だったな。今日はロバに載せてる水袋も軽くなったことだし、ロバに乗ったらどうだ?」

ギュリス(GM):
 その言葉にギュリスは眉をピクリと動かし、イーサのことをにらみつけます。
「はぁ? 別にあなたのロバってわけじゃないんだから、わざわざ言われなくてもそうするに決まってるでしょ? あと、ついでに言っておくけど、あたしのことを気安く呼び捨てにするのやめてくれる?」

イーサ:
 むッ……。
「だったら、なんて呼べばいい?」

ギュリス(GM):
「それくらいのことも自分で考えらんないの?」

エルド:
 こうなったら、「お前」って呼びましょうよ(笑)!

アゼル:
 いや、「小娘」って呼べ(笑)!

イーサ:
 好き勝手なこと言うなよ。実際にそんな呼び方したらめちゃくちゃ怒りだすだろ……。たしかになにか言ってやりたいところではあるが、すでに報酬の前払いとして高価な短剣をもらってる手前もあるし、なによりこれ以上不和が生まれるのは避けたい……。
「そうだな……。呼び捨ては失礼だった。次からは気を付けよう……」

ギュリス(GM):
 ギュリスはイーサに一瞥をくれると無言でロバにまたがりました。

イーサ:
「ふぅ……。それじゃ、出発するか」

アゼル:
 出発前だっていうのに、すでにイーサはちょっと疲れた感じだな(笑)。

エルド:
 僕は少し離れたところでその様子を眺めながらギズリさんに話しかけてます。
「ギズリさん。これまであのお嬢さんと一緒に行動するの、たいへんじゃありませんでしたか?」

ギズリ(GM):
「まあ、わがまま放題だからな……。高額の報酬を約束されてなかったら、オレだってここまで我慢できてねぇよ」

エルド:
「あー、やっぱりそうでしたか。イーサさんも手を焼いているみたいですが、それでも強く出ないのは、やっぱり報酬の前払いとして高価な短剣を渡されてるからなんでしょうかね……」

 こうして、一行は微妙な人間関係を形成しつつも、イルヤソールを目指して着実に歩みを進めていきました。そして、カルカヴァンを脱出してから4日目の夕方に、とある集団と遭遇することとなります。




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