LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(05)

GM:
 さて、イルヤソールを目指して平原を進むあなたたちは、15時ごろになってQU地点に入ったところで、眼前に白い円錐状の物体を視界に入れることとなります。近づくにしたがって、それがテントであることがわかりました。大型のテントが3つ並んで張られています。

アゼル:
 周りに人の姿とかは見当たらないか?

GM:
 まだ、大型のテントが遠目にやっと確認できる距離ですから、人の姿は見つけられませんね。そのかわり、テント近くに止められている馬車の存在には気がつきました。

イーサ:
 道のない平原なのに馬車が止められているのか。隊商なのか?

エルド:
「イーサさん、どうします? 近づいてみますか?」

イーサ:
「そうだな。とりあえず、人が確認できるくらいの距離まで行ってみるか」

GM:
 では、距離を詰めていくと、やがてテントの周囲にいくつかの人の姿を確認できました。そのうち何人かは金属鎧を装備しているようです。それと共に、テントにつけられた紋章も目に入ってくるのですが……アゼル以外の人は名声知識判定を行ってみてください。目標値は10です。

イーサ:
(コロコロ)ピッタリ成功。

GM:
 ならば、イーサはその紋章がカーティス王室の使者を示すものであることがわかりました。そのことは、アゼルも第1話の時点で判定を成功させているので知っています。

エルド:
「イーサさん。あの紋章はなんですか?」

イーサ:
「あれは、カーティス王室の使者を示す紋章だな」
 馬車にも同じような紋章はあるんだろうか?

GM:
 そうですね。さらに近づけば、馬車にも同じ紋章がつけられていることはわかります。テントのそばには、4輪幌馬車と4輪荷馬車がそれぞれ2台ずつ止められています。

エルド:
 王室の使者がこんな道もない場所で、いったいなにをしているんでしょうね?

アゼル:
 なにをしてようが俺たちには関係のないことだし、面倒事に巻き込まれるのもなんだから、迂回していかないか?

イーサ:
 さすがに迂回までする必要はないだろ。そんなことしたら逆に怪しまれかねない。俺たちにとっても通り道なんだから、堂々と突っ切ればいい。まっすぐ歩いて行く。

GM:
 了解です。さらに近づくと、相手の人数や格好も確認できるようになります。どうやら相手側は、甲冑を身に着けた騎士が4人、ローブを羽織った者が3人、それと従者4人で形成された一団のようです。
 ローブを羽織った3人は、互いに100メートルほど離れた場所に立ち、地面に木の棒を突き立てています。

イーサ:
 まさか、怪しい魔法の儀式を行ってるんじゃないだろうな?

GM:
 ローブを羽織った者たちの恰好は、魔法使いというより学者っぽくみえますね。
 彼らは従者たちに身振り手振りで指示を送り、木の棒を地面から抜かせ、また違う場所に突き立てるといった行為をさせています。そして、手に持った用紙になにやら書き込んでいるようです。

イーサ:
 あ、測量でも行ってるのか?

GM:
 では、ここで《ランド・ウォーカー、もしくはスカラー技能レベル+知力ボーナス+2D》による“地図製作”の判定を行ってください。目標値は10です。

アゼル&エルド:
(コロコロ)成功。

GM:
 ならば、アゼルとエルドは学者たちが測量しているということがわかりました。

エルド:
「どうやら測量してるようですね」

アゼル:
「そうだな。こんなところを測量してどうするつもりなんだろう?」
 プレイヤーとしてはイーサが真っ先にわかってたのに、キャラクターとしてはわからないんだな(笑)。

イーサ:
「な、なるほど。測量ってのはああやってするものなのか……」

アゼル:
「このあたりにまで農道を延長するつもりで測量しているのか?」

イーサ:
「そうかもしれないな」

GM:
 あなたたちが相手側の様子を把握できるほどの距離に近づいたあたりで、相手側の騎士たちもあなたたちのことを少し警戒するような動きをみせはじめます。

エルド:
「イーサさん。どうやらあちらは警戒しているようですが、どうしますか?」

イーサ:
「そうだな……。まあ、やましいことがあるわけでもないし、特に気にしなくていいだろ」
 そのまま通り抜けようとするが、なにかあるだろうか?

GM:
 はい。あなたたちがさらに距離を詰めたところで、騎士のひとりが声を張り上げました。

騎士(GM):
「そこの者たち、その場で止まれ! おまえたちは何者だ!?」

イーサ:
「我々は旅の者だ! そちらの邪魔をするつもりはない! ただ、脇を通り抜けるだけだ!」

騎士(GM):
 イーサの返答に、相手の騎士は明らかに不愉快そうな表情をしました。

イーサ:
 お?

ギュリス(GM):
 ギュリスが呆れた感じでぼそりと呟きます。
「あの騎士、王室の使者が伴ってるってことは宮廷騎士だよ……。そんな相手にタメ口を利くだなんて、イーサもたいしたご身分じゃない」

GM:
 宮廷騎士とは、地位的にも実力的にも優れたエリート中のエリートのみがなれる特別な職務です。
 前回登場した地方豪族の子飼いに過ぎないイスパルタ私兵は、総督府付きの地方騎士に頭が上がりませんが、その地方騎士の上に本国付きの王国騎士が存在し、その王国騎士よりもさらに上に宮廷騎士が存在します。つまり、カーティス王国の騎士と名のつく役職の中では頂点に位置する存在です。

アゼル:
 こいつらが王直属部隊?

GM:
 あ、違いますよ。王直属部隊は今度新設されるのであって、現時点ではまだ存在しません。
 宮廷騎士はあくまでも王臣を守る役目を担っているだけで、命令系統としては、重臣たちで構成される御前会議の下に位置します。ですので、王が自由に動かせる組織というわけではありません。

アゼル:
 なるほど。どちらにしても相当身分が高い相手であることは間違いないんだな。アゼルはやばいと感じて戦々恐々としている。ランク的にいったら俺はイスパルタ私兵のさらに下だからな。

イーサ:
 宮廷騎士? それって偉いのかよ? そんなこと知らんわッ! こちとら、ずっと田舎暮らしだったんだ。田舎者に礼儀作法を期待するんじゃないッ(笑)!

エルド:
 うわっ、危ない、危ない(笑)。ここはイーサさんに代わって、非礼を詫びておきましょう。
「あ、すみません。うちのリーダーは口の利き方がなっていなくて。失礼しました」

アゼル:
「自分からも非礼をお詫びいたします。自分はクルト氏族のアゼルという者です。怪しい者ではありません。自分たちはイルヤソールを目指して旅をしている途中なのです」

GM:
 クルトの名前を出しましたか。であれば……(コロコロ)。

騎士(GM):
「クルト? ああ、たしかサイラス王国との国境線近くにある辺境の……」

アゼル:
「ええ、ええ。そうです」

騎士(GM):
「ふむ。しかし、イルヤソールへ向かうというのに、このあたりを通るというのも奇妙な話だな?」
 どうやら、騎士はまだあなたたちのことをいぶかしんでいるようです。

アゼル:
 えーと、なんて言ったらいいんだ? 急いでるから近道しようとしたっていうのは変なのか?

エルド:
 カルカヴァンまで同行していた隊商と仲違いをしたので別のルートを選んだというのはどうでしょう?

一同:
(しばらくどう言い繕うかを相談を続ける)

GM:
 そんなやりとりをしていると、騎士の背後から学者風の格好をした老人が近づいてきました。老人の腰骨は曲がり、頭髪と整えられた口髭は真っ白です。

学者風の老人(GM):
「これこれ。いったいどうしたというんじゃ?」

騎士(GM):
「これは、ファジル様。怪しげな輩がおりましたので警戒していたのですが、どうやらクルト氏族の者のようです。どうしてこのような場所にいるかを問いただしていたところだったのですが……」

ファジル(GM):
「ほう。クルトか。クルトというと……ジャ……ジャ……ジャ……」

アゼル:
「氏族長のことであれば、ジャフェルです」

ファジル(GM):
「おう。そうじゃ、そうじゃ。たしか、ジャフェル・クルトが今の氏族長じゃったな。この歳になると、どうも物忘れが酷くてかなわんわい」ファジルはそう言って頭へと手を当てました。そして、騎士のほうへと顔を向けると、「しかし、いくら警戒するのがオヌシらの役目とはいっても、あちらには若いお嬢さん方もおるのじゃから、あまり高圧的な態度をとるのもどうかと思うぞ」とやんわりとたしなめました。

アゼル:
 おお。どうやらファジルさんは話のわかる人らしいな。

騎士(GM):
 ファジルにたしなめられると、騎士はあなたたちに対して「失礼した」と言って頭を下げます。

アゼル:
「いえいえ」

ファジル(GM):
「して、実際のところ、なぜにこの未開の地を行こうとしておるのじゃ? 街道を通らず、この平原を突っ切ってイルヤソールを目指すというのは少々危険が過ぎるじゃろう」

一同:
 ……。

ファジル(GM):
「おや? 詮索してはまずいことじゃったかな?」

アゼル:
「まあ、いろいろと理由がありまして……」
 んー、なんて言ったもんかな?

ファジル(GM):
「あー。よいよい。無理に言う必要はない。イルヤソールまではここから100キロは離れておる。平原には危険な獣も多いから、十分に気を付けるのじゃな」そう言うと、ファジルは測量作業に戻るため、その場をあとにしようとします。

アゼル:
「あの、もし差支えなければお聞きしたいことがあるのですが?」

ファジル(GM):
 その声にファジルは足を止めて振り返りました。
「ん? なんじゃ?」

アゼル:
「見たところ測量をされているようですが、このような場所を測量してどうなさるつもりなのですか?」

ファジル(GM):
「ふむ……」
 ファジルは少し困ったような顔をして、頭を掻きました。
「実は、王都とカルカヴァンを直接結ぶ街道を敷く計画があっての。ワシらはその事前調査として、王都からここまで測量を続けてきたのじゃよ」

アゼル:
「ほう。王都からここまでですか。それはたいへんでしたね」

ファジル(GM):
「――と話してしまったが、この街道計画はヤウズ王子が戴冠したのちに正式に開示される予定じゃから、それまでこのことは他言無用じゃぞ?」そう言って、ファジルは自分の口の前に人差し指を立ててみせました。

アゼル:
「わかりました」

ファジル(GM):
「そうじゃ。オヌシらはカルカヴァンを通ってきたのじゃろう? カルカヴァンからここまではどれくらいの距離があったのかわかるか? 王都側からの計測によれば80キロ程度のはずなんじゃが……」

イーサ:
 だいたいそれくらいだな。
(地図を確認して)
 正確には70キロか。

アゼル:
「70キロといったところです」

ファジル(GM):
「70キロ。そうか……」そう呟くと、ファジルは自分の懐から地図を取り出し、「やはりこの地図には誤差があったようじゃな」と言ってうなずきました。

アゼル:
「では、我々も先を急ぎますので、これで失礼します」そう言って、アゼルは一礼した。

イーサ:
 話が終わったなら、ふたたび歩き出そう。さすがにアゼルは氏族長の甥だけあって礼儀作法を身につけているんだなと感心している。

アゼル:
 あまり礼を逸したことをすると、氏族名に傷をつけることになるからな。

ギズリ(GM):
 イーサが歩みを進めようとしたところで、ギズリがなにやら思いついたようで、「今日はここで野営するのもありなんじゃないか?」と提案してきました。

イーサ:
「ここでか?」

ギズリ(GM):
「ああ。あの連中の近くなら、なにかあっても安全だと思うぞ」そう言って、ギズリは騎士のほうに目を向けました。

イーサ:
 たしかに、これだけ大所帯の近くで休めば、野生動物に襲われる危険性も減るか。
「そうだな。じゃあ、少し早いが、ここで野営することにするか」

エルド:
 僕もその提案に賛成です。

アゼル:
「異論はない」
 とはいえ、失礼しますと言った手前、あまり近くで休みたくないけどな(笑)。

ギュリス(GM):
 全員一致で話がまとまりそうなところでしたが、「えーッ?」とギュリスが不満気な声をあげました。

イーサ:
 またかよ。うるせーな、まったく(溜息)。

アゼル&エルド:
(爆笑)

アゼル:
 だんだんとイーサがギュリスのことをどう思ってるかが漏れてきたな(笑)。

 ギュリスのわがままにいいかげんうんざりしてきたイーサですが、男と旅するよりも女と旅するほうがいいという理由で、サブリを見捨ててギュリスに同行しようと発言したのはほかでもないイーサ自身です(笑)。

イーサ:
「ギュリス――じゃなくて……嬢ちゃんも疲れてるだろ? ちょっと早いが休息しよう」
 心の中で、ロバに乗ってたんだから疲れてねーくせに、と思いつつそう言った(笑)。

ギュリス(GM):
 すると、ギュリスは不服そうな顔をして、「ここ数日、汗を流してなくて気持ち悪いから、川で水浴びしたかったんだけど……」と呟きました。

エルド:
(突然身を乗り出して)
「イーサさん、一刻も早く川に行きましょう! そして、水浴びさせてあげましょうよ!」

アゼル:
 うおッ、珍しくエルドが食いついたな(笑)!

エルド:
 僕も健康的な16歳の男子ですからね! 長い旅を続ける途中には目の保養が必要なんですよ! きっとギュリスさんだけでなく、ニルフェルさんも水浴びしますよ! これは“カメレオン”を活用するまたとないチャンスです!

アゼル&イーサ:
(爆笑)

エルド:
「イーサさん、水浴びしましょうよ~」

ギュリス(GM):
 さらにギュリスはファジルのほうにチラリと目を向けて、こう続けます。
「それにさ。うちのこと知ってる人とあまり接触したくないんだよね。面倒なことになると嫌じゃない」

アゼル:
 そういえば、ギュリスは俺たちの中で一番身分が高いはずなのに、さっき名乗り出ようとはしなかったもんな。そういうことか……。

イーサ:
「なるほど……」

アゼル:
 ギズリとギュリスのどちらの意見をとるか……。これは難しい選択だな。

ギズリ(GM):
 ギズリは引きつった笑みを浮かべて、イーサがどう判断するのか見守っています。

イーサ:
 たしかに、もしファジルさんにこっちのことを詮索されるようなことになったら面倒ではある……。だが、安全のためにはここで休むのが一番だ。
「なあ、嬢ちゃん。1日くらい我慢してもらえないか? 野生動物に襲われたら、水浴びどころの話じゃなくなる。なあに、川は逃げはしない。明日になれば思う存分水浴びできるさ」とギュリスに言ってみる。

アゼル:
 おお。正論で攻めたな。でも、ギュリスは納得しないだろ(ニヤニヤ)。

ギュリス(GM):
 ギュリスはきつい目つきでイーサをにらみつけてから、「フンッ!」と不服そうにそっぽを向きましたが、それ以上の反論はしませんでした。

アゼル:
 あら。意外に反応薄かったな……。

イーサ:
「それじゃ、野営の準備を進めるか」
 荷物を下ろしてテントを張り始めよう。

GM:
 では、あなたたちが設営作業を開始すると、しばらくしたところでさきほどの騎士が走り寄ってきました。

騎士(GM):
「キミたち、ちょっといいか?」

アゼル:
「なんでしょうか?」

騎士(GM):
「ファジル様が、もしキミたちがここで野営するつもりならば我々のテントに来てはどうかと仰っている。我々のテントであればキミたちを招いたとしても十分余裕があるし、湯浴みなどもできるが、どうするね?」

アゼル:
 チラリとイーサを見る。リーダー、どうする?

イーサ:
 そうだな。せっかくの申し出を断るのもなんだな……。湯浴みできるみたいだし……。

エルド:
 ギュリスさんの反応はどんな感じでしょう?

ギュリス(GM):
 ギュリスは複雑な表情をしています。

イーサ:
 よし、受けることにしよう。アゼルにうなずいてみせた。

アゼル:
「では、そのお申し出、ありがたくお受けいたします」

騎士(GM):
「そうか。では案内するから荷物をまとめてついてきたまえ」そう言うと、騎士はあなたたちを自分たちの野営地へと案内してくれます。

GM:
 騎士に案内されるままに野営地の中心付近へと歩いていくと、ファジルがあなたたちのことを出迎えてくれました。

イーサ:
 あらためて考えると、ファジルさんは随分身分の高い人みたいだよな……。

GM:
 まあ、宮廷騎士を従えているようですから、ただ者でないことはたしかですね。

ファジル(GM):
「どうやら、ここで休むことにしたようじゃの」

アゼル:
「はい。お申し出、ありがたくお受けしようと思いまして」

ファジル(GM):
「そうか、そうか。まあ、ここであったのもなにかの縁。ゆっくりと足を休めるとよい。では、あらためて挨拶させてもらうとするかの。ワシは国家測量士のファジル・カーティスじゃ」

イーサ:
 カーティスって、まさか王家の人間なのか!?

GM:
 カーティス氏族の一員であることはたしかなようですが、カーティス姓を名乗る者は数千人と存在しますから、必ずしも王家の人間であるとは限りませんよ。

エルド:
 せっかくですから僕も名乗り返しておきましょう。
「僕はエルド・シャルルといいます」

アゼル:
 え? エルドは姓を持ってたのか!? てっきり、ただのエルドかと思ってたが……。

ファジル(GM):
「シャルル……? シャルルというと、南方諸国にある一部族の名じゃな」

エルド:
「よく御存じですね。僕は王直属部隊へ志願するために王都を目指しているんですよ」

イーサ:
 俺も名乗っておくか……。偉い人みたいだから言葉づかいに注意しないとな。
「私は小さな村の出身でイーサといいます」

GM:
 では、順々にほかの面々も簡単な挨拶をすませていきます。ただし、ギュリスはこれまでも使っていたジェザという偽名を名乗って、それ以上話しませんでしたけどね。

ファジル(GM):
 一通りの挨拶が終わると、ファジルは「オヌシらには、ワシが使っているあのテントで休んでもらうとしよう」と言って、ひときわ豪華なテントを指さしました。

アゼル:
「ありがとうございます」

ファジル(GM):
「でじゃ……。できれば、夕食のときにでも、ここからカルカヴァンまでの道のりについて、話を聞かせてもらえると助かるんじゃがな」

アゼル:
「はい。自分たちでお役に立てることがあるのであれば」

GM:
 こうして、あなたたちはファジルの誘いを受け、カーティス王国の測量団と共に一晩を過ごすことになりました。




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