LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(07)

 翌日の早朝5時、一行はファジルたちにお礼を述べて野営地を離れると、イルヤソールへの旅を再開しました。前日までの行軍でギュリスやセルダルにとって速足の行軍が負担になることを学んだ一行は、通常速度でニメット川右支流(PU地点)を目指します。

ヤナダーグ・プラト地方北部地図05

GM:
 PU地点に到着するのは8時になる予定ですね。では、そこに到達するまでの遭遇判定をどうぞ。

 リプレイでは省略してしまいますが、実際のプレイでは「遭遇の有無を決定する判定」「遭遇対象を決定する判定」「遭遇対象の状態を決定する判定」の3回の判定を行ったうえで、それらの判定すべてに不幸な結果が出てしまった場合にはじめて戦闘が発生することになっています。

 ちなみに、これから一行が進もうとしている見渡しの良い草原で戦闘が発生する頻度は、3日に1回程度なのですが……。

アゼル:
(コロコロ)うぉーッ! さっそく遭遇したッ!

イーサ&エルド:
(笑)

GM:
 ならば、続けて《ハンター、またはランド・ウォーカー技能レベル+知力ボーナス+2D》による索敵判定を行ってください。

イーサ:
(コロコロ)俺が一番高くて11だ。

GM:
 では、ニメット川右支流まであと100メートルを切ろうかという辺りまで進んできたところで、イーサは川の手前側に、黒と黄色が混じった体毛をまとう体長1メートルほどの犬のような動物の姿を4つ発見しました。

イーサ:
「みんな、止まれッ! 何かいるぞッ!」

GM:
 イーサに促されてその動物を視認した人は、動植物知識判定を行ってください。目標値は7・9・11の3段階です。

イーサ:
(コロコロ)13で成功。俺が最高値だな。

GM:
 そうすると、その動物が野犬リカオンであることがわかりました(と言って、リカオンのデータを公開する)。

リカオン
 カーティス王国以南の標高の低い草原や乾燥地帯、まれに砂漠にも生息する体長1メートルほどの野犬で、黄色と黒が不規則に混ざった体毛と丸い大きな耳が特徴です。戦闘レベルは2に過ぎず、狩りを行うときには主に年老いた個体や幼獣を狙います。そこまで高い戦闘能力を持たないリカオンですが、その一方で一度狙いを定めるとどんなに逃げようとも執拗に追跡する性質をもち、陸上肉食動物の中で最も高い狩りの成功率を誇ります。

GM:
 以前戦ったジャッカルよりも、さらにタチが悪い相手ですね。

イーサ:
 リカオンたちはこっちには気がついてないのか?

GM:
 リカオンたちがあなたたちの存在に気づいているのか、そうでないのかは不明ですが、なにやら地面に落ちている背負い袋の中身を漁るのに夢中になっているようですよ。

イーサ:
 背負い袋? 旅人でも襲われたのか?

GM:
 そのわりには近くに人の姿は見当たりません。背負い袋だけが転がっています。

イーサ:
 声を抑えて、皆に、「どうやら、リカオンたちは荷物を漁るのに夢中で、まだ俺たちには興味を示していないようだ。今のうちに大きく迂回して進むことにするか?」と持ち掛けてみるが……。

ギュリス(GM):
 ギュリスはイーサの提案に賛同します。
「いいんじゃない? 触らぬ神に祟りなしってね」

エルド:
「わざわざ回り道をして避けるほど厄介な相手ですか?」

イーサ:
「倒せない相手だとは思わないが、長い道中、無駄な戦闘は避けたほうがいいだろ? アルも以前そんなこと言ってたしな」

アゼル:
 まだこっちに気がついてないなら、“不意打ち”とかできないか?

GM:
 もし、“不意打ち”をするのであれば、ハンター技能を用いた判定を行ってもらうことになりますが、技能なしで野生生物に“不意打ち”を成功させるのは困難ですね。射撃武器などで先手を取ることくらいなら、あなたたちでもできるでしょうけど……。

アゼル:
 射撃武器は持ってないなぁ……。射撃武器の代わりに魔法で先制攻撃できないのか?

イーサ:
 それは難しいな。“エネルギー・ボルト”の射程は30メートルしかない。リカオンはレベル6相当の“聞き耳”ができるんだ。さすがにそこまで近づいたら気づかれるだろ……。

エルド:
 僕としては“不意打ち”なんてしなくても、リカオンと戦うのは望むところなんですけどね。
「リカオンたちを追い払えば、あの背負い袋の中身を入手できます。何かいいものが入っているかもしれないですし、ここは戦いましょうよ」

ギュリス(GM):
 ギュリスはエルドの意見にも同調します。
「まあ、たしかに、虎穴に入らずんば虎子を得ずとも言うしね」

イーサ:
 結局、お前の意見はどっちなんだよ(笑)!

GM:
 ギュリスとしては、どちらでもいいんですよ(笑)。どうぞ、皆さんが好きなほうを自由に選んでください。

 こうして、一行はリカオンに対してどう立ち回るべきかの相談を始めましたが、少しでも消耗を避けたいイーサと、好戦的で戦利品を欲しがるエルドとで意見が対立してしまい、その後しばらく方針をまとめられずにいました。そこで、膠着状態を嫌ったGMから一石が投じられます。

ギズリ(GM):
「それはそうと、あの背負い袋の持ち主はもうやられちまったのかな?」
 相談するあなたたちをよそに、ギズリがボソリと呟きました。

イーサ:
「ふむ。見たところ近くに人の姿はないようだし、きっと荷物を捨てて逃げたんだろう」

アゼル:
「うーん、たしかに近くに人の姿は見当たらないが、荷物を失って困っている人がいることには違いない。それに、このまま放っておけば、荷物を荒らし終えたリカオンたちがその人のことを追跡するかもしれないんじゃないか?」

イーサ:
「たしかに、その可能性は否定できないが……」

アゼル:
「よし! だったら、俺たちでリカオンを倒して荷物を取り戻そう!」そう言って、俺は自分の荷物を下ろして戦闘準備に入る。

セルダル(GM):
「ちょっと待てよッ」そう言って、セルダルが荷物を下ろそうとするアゼルの腕を掴みました。
「リーダーであるイーサが納得してねぇのに、1人で勝手にことを進めよーとしてんじゃねぇッ。リーダーにイーサを推したのはオマエ自身だろーがッ。だったら、その指示に従うのが筋ってもんだろッ」

アゼル:
「……それはそうだが……。それじゃ、お前は、荷物を失って困っている人がいたとしても、それを見過ごせって言うのかッ!?」

イーサ:
 うお……。こんな状況で言い争いなんて、勘弁してくれよ……。

GM:
 これまでの道中で彼らの仲違いをいさめることができませんでしたからねぇ(苦笑)。

イーサ:
 さて、どうしたもんかな……。アゼルの意見を却下して迂回するか、それとも戦闘するか……。
(しばらく考え込んでから)
 うーん。でも俺は、アゼルの困っている人を見捨てておけないっていうその心意気に心打たれたんだ……。きっと、そうなんだ……。

アゼル:
 なんだ、その言い訳がましい発言は(笑)。

イーサ:
「……仕方ない。ここでリカオンを見逃せば犠牲者がでるかもしれないからな。戦うことにするか……」

アゼル:
 じゃあ、「よし、行くぞッ!」と声をあげつつセルダルのことを見た。

セルダル(GM):
 セルダルは視線をそらして小さく舌打ちしつつも、両手剣を構えて戦いの準備を整えます。

エルド:
 これでよりいっそう、2人の間にある亀裂が深まりましたね(苦笑)。

イーサ:
 やれやれ。先が思いやられるな……。

アゼル:
 とにかく、リカオンに向かって走り出すぞ。

GM:
 では、ギズリとニルフェルは戦闘要員ではないので、その場に残ります。ですが、ギュリスはあなたたちと共に川岸に向かって走り出しました。

イーサ:
 おっ? てっきりギュリス嬢もその場に残ると思ったのに、ついてきたか。もしかして、ここでギュリス嬢がやられるとゲームオーバーなのか?

GM:
 別にゲームオーバーになるわけではないですが、まあ、一応、今の雇い主ですからね。守ってあげてください。
 さて、リカオンに近づいていくと、地形はこんな感じになっています(と言って戦闘マップを提示する)。リカオンは川岸にいます。戦闘マップの反対側にあなたたちのユニットを配置してください。

 こうして、プレイヤーたちは各々が好きなようにユニットを配置していきました。ギュリスを守らなくてはならないということから、防御力の高いアゼルとセルダルが彼女の前に位置をとります。

ニメット側右支流南岸

GM:
 まず、今のあなたたちの装備を教えてください。

アゼル:
 クルト・ソードとバスタード・ソードの二刀流。鎧はチェイン・メイル装備。

イーサ:
 俺は手持ちなしで、クロース・アーマー装備。

エルド:
 スタッフとクロース・アーマー装備です。

GM:
 了解しました。セルダルは両手剣にハード・レザー・アーマー。ギュリスはクロースの上に蜃気楼の外套を羽織っています。
 では、さっそく戦闘行動順に解決していきましょう。現在のところ、リカオンたちに変わった動きは見られません。

エルド:
 最初の行動は僕からですか……。行動順が早すぎると、どこにポジション取りするかの判断基準がなくて迷いますね……。とりあえず、“通常移動”でリカオンたちとの距離を詰めておきます。

イーサ:
(戦闘マップを見渡して)
 一気に距離を詰めたいところだが、茂みが邪魔だな。くそッ、これはGMの仕掛けたトラップだ。

GM:
 いやいや、トラップって(苦笑)。あなたたちは普段人が通らないような場所を進んでいるんですから、当然、茂みくらいありますよ。

戦闘マップの茂み
 戦闘マップ上にある茂みのマスは、侵入するのに2マス分の移動コストを必要とする他、助走を必要とする行動のための助走距離が茂みに入ったところでいったん失われてしまいます。また、茂みで“隠れる”や“カモフラージュ”を行うと、その達成値に+4のボーナスを得られます。

GM:
 では、エルドが走り寄っていくと、リカオンたちは耳をピクリと動かして、その視線を荷物からあなたたちへと移します。この段階で、リカオンたちに対する不意打ちのチャンスはなくなりました。

アゼル:
 まあ、それはわかってたことだ。一気に突っ込むぞ。“通常移動”で前進。最前線に立って敵を引き付けよう。

セルダル(GM):
 では、セルダルは“通常移動”でアゼルの横に並びます。

アゼル:
 お? さっきまで険悪な感じだったのに、並んでくるのか?

セルダル(GM):
 セルダルは日常のわだかまりを戦いにまで持ち込むようなタイプではありませんからね。ここは割り切って行動します。

イーサ:
 2人が並んだか……。俺はどうしようかな?

エルド:
「イーサさん、おとりになってリカオンたちを引き付けてください!」

イーサ:
 いやいや。さすがにアゼルたちの前に出るのはまずいだろ……。“迎撃移動”で2人の横につけて並んでおこう。

 こうして、だいたいの陣形が固まったところで、リカオンたちが襲い掛かってきました。リカオンたちは、人間の移動速度とは比べものにならないほど俊敏な動きで一気に間合いを詰めてきます。

イーサ:
 リカオンの動きは思っていた以上に速いな。

ギュリス(GM):
 ギュリスが警戒を促すように、「さあ、来たよッ!」と声を出しました。そして、リカオンAに対して“隙を見つける”を実行して、(コロコロ)成功!
「よしッ! あたしの正面にいるリカオンを狙って攻撃しなさいッ!」

 前回のアリゲーターとの戦いでも垣間見せていたように、ギュリスはコマンダー技能を有しています。ギュリス本人の戦闘能力は皆無ですが、彼女の近くにいる友軍は戦意を喪失しにくくなり、さらに彼女の助言を得れば、攻撃の命中精度や威力を向上させられるのです。その能力を活かすために、今回の戦闘にも加わったギュリスでしたが――

アゼル:
 回り込んできたリカオンCを自由にしておくと、次の行動でギュリスが攻撃されちゃうからな……。
(少し考えてから)
 それじゃ、“小移動”で1マス後ろに移動して、リカオンCに攻撃! (コロコロ)命中して7点の物理ダメージ!

エルド:
 ならば、僕はダメージを負ったリカオンCに“ファイア・ボルト”を放ちます。(コロコロ)クリティカルして16点の物理ダメージ、さらに……(コロコロ)3点の魔法ダメージです。

リカオンC(GM):
(コロコロ)うーん、その一撃でリカオンCは昏倒しました。

イーサ:
 だったら、俺はリカオンDを攻撃しておくか……。

ギュリス(GM):
「ちょっとッ! ちょっとッ! なんで誰もあたしが指示した奴に攻撃しないのッ!?」

一同:
(爆笑)

 この後もギュリスの“隙をみつける”の効果が発揮されることはなく、各自がそれぞれの判断でリカオンとの戦闘を続けていきました。とは言え、ギュリスのサポートを受けずとも、これまでの冒険で戦闘レベルが向上している一行にとって、戦闘レベル2のリカオンは格下です。エルドが2発の“ファイア・ボルト”で順調にリカオンを仕留めていき、戦闘は一方的なものになるかと思われました。ところが――

リカオンA(GM):
 次はリカオンAがアゼルに対して牙で攻撃してきます。命中値は(コロコロ)13です。

アゼル:
 剣でディフレクト。(コロコロ)あ……ディフレクト値10で失敗。

リカオンA(GM):
 それでは、リカオンAの牙によるダメージですが……。(コロコロ)クリティカルです! 14点の物理ダメージをどうぞ。

アゼル:
 ぐおッ! それは痛い。ダメージ減少値分を差し引いても7点抜けた。あと2点で士気判定突入だったぞ。

イーサ:
 そんなに威力あるのかよ。食らったのがアゼルじゃなかったらやばかったな(汗)。

 たとえ格下と言えども、肉食動物のあごの力を侮ってはいけません。ここに至って、ようやく皆の気が引き締まりました。そして、敵の数が減ったこともあり、ついにギュリスの“隙をみつける”の効果が発揮されることとなります。

ギュリス(GM):
 ギュリスはリカオンAに対して“隙を見つける”を実行。(コロコロ)成功しました。
「さあ、今度こそ、こいつを攻撃しなさいッ!」

アゼル:
 それじゃ、リカオンAに攻撃。(コロコロ)命中。ダメージは(コロコロ)12点。

ギュリス(GM):
 その攻撃に対してギュリスの“隙を見つける”の効果を上乗せしておきましょう。
「アゼルッ! リカオンの右から側頭部を狙いなさいッ!」
 ――ということで、ダメージにさらに1点加わります。

アゼル:
「わかったッ!」

リカオンA(GM):
 では、合計13点のダメージになりますね。(コロコロ)その一撃でリカオンAは絶命しました。

アゼル:
 え? 絶命しちゃったのか……。もしかして、ギュリスの指示にしたがってダメージが増えたせい?

GM:
 その可能性は否定できませんね(苦笑)。

 この直後、すでに戦意を喪失していたリカオンBが戦場から離脱し、最後まで抵抗を続けていたリカオンDも逃走に転じました。

セルダル(GM):
 リカオンDが後ずさったところで、セルダルが大きく息をつきます。
「どーやら、終わったみてぇだな」

GM:
 そんなところで戦闘を終了していいですか?

エルド:
 ちょっと待ってください。さっき“瞑想”した分のマナが余っているので、間に合うならリカオンDに“ファイア・ボルト”を撃ちこみます!

GM:
 あら。戦意喪失しても見逃してはくれませんか……。では、リカオンDが撤退するよりもエルドの行動のほうが早いので、次のエルドの順番まで進めていきます。

エルド:
 よしッ! それじゃ、“ファイア・ボルト”を発動。行使値は(コロコロ)10。

リカオンD(GM):
 リカオンDの魔法抵抗値は(コロコロ)13で、抵抗に成功です。

エルド:
 うーん、残念。これは逃げられてしまいますかね……。物理ダメージは(コロコロ)11点。魔法ダメージは(コロコロ)結構良い目が出て、5点です。

リカオンD(GM):
 それだと、抵抗成功のダメージ半減を適用しても生命点はマイナスですね。生死判定は(コロコロ)失敗したので、リカオンDは絶命しました。

エルド:
 やりました(笑)!

GM:
 では、動く敵がいなくなったところで戦闘終了とします。
 しかし、惜しかったですね。戦闘時間が30ウェイトをオーバーしてしまいました。あと少し早く撃退できていれば戦闘疲労が蓄積するのを免れられたんですが。

アゼル:
 なにぃ? まさかエルドが“ファイア・ボルト”を撃ち終わるまで戦闘を続けたからじゃないだろうな(笑)?

 そういうわけではありません(笑)。




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