LOST ウェイトターン制TRPG


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宮国紀行 第4話(13)

 エルドの放った“エネルギー・ボルト”で魔法使いを仕留めることができなかった一行は意気消沈します。そして、“ディジィ・クラウド”の効果で身動きが取れなくなっているアゼルとセルダルに対して、ここぞとばかりに両手剣を装備した野盗の子分C・D・Eたちが“渾身の一撃”を連発してきました。

イーサ:
 くそッ。こいつら、一人ひとりはたいして強くないくせに、連携すると厄介だぞ……。

GM:
 ふっふっふっ。これが組織力というものですよ(ニヤリ)。

野盗の子分D(GM):
 野盗の子分Dがセルダルに対して“渾身の一撃”を放ちます。(コロコロ)命中して、13点の物理ダメージ!

セルダル(GM):
 その一撃で、セルダルの生命点は半分以下になりました。士気判定には、ギュリスがいるので、“士気向上”のボーナスが入って……。(コロコロ)あーッ! それでも失敗ッ!

一同:
 えーッ!

 不運にも、早々にセルダルが戦意を喪失してしまいます。しかも、野盗たちの猛攻はそれだけでは終わりませんでした。

野盗のリーダー(GM):
 野盗のリーダーがアゼルのことを側面から攻撃します。(コロコロ)命中値は12です。

アゼル:
 くぅ。もう方向を変えることもできないし、ペナルティを受けた回避しかできない……。(コロコロ)回避値は4。ダメだ―。

野盗のリーダー(GM):
 トライデントのダメージは(コロコロ)クリティカル! 物理ダメージ20点!

アゼル:
 うおぉぉぉー! 13点通って、生命点が半分切った。士気判定だ……。

ギュリス(GM):
「アゼルッ! 怯むなッ!」と叫ぶギュリスの声が聞こえました。コマンダー技能による“士気向上”の効果で、士気判定に+2のボーナスが入ります。

アゼル:
(コロコロ)なら、ボーナス入れて13で成功。危ねぇ。“士気向上”がなかったら戦意喪失してたぞ……。しかし、堪えはしたが、これはもう終わったっぽいな……。

 このとき、アゼルのPCとしての戦意は喪失しなかったものの、プレイヤーからは敗北宣言とも受け取れる言葉が漏れ始めました。

イーサ:
 たしかに、このまま戦ってもじり貧だ。やっぱり、ここは一度時間を稼いで立て直しを図ろう。“ダークネス”を生撃ちする。(コロコロ)発動。

 野盗有利の状況を憂いたイーサが、何とかして立て直しを図ろうと“ダークネス”を唱えて戦場を暗闇で包みますが、敵側もそうそう思い通りにはさせてくれません。

魔法使い(GM):
 では、攻撃魔法を唱えようとして“瞑想”していた魔法使いでしたが、“ダークネス”によってターゲットを失ってしまったので、代わりに“ライト”を唱えて“ダークネス”を消滅させます。

イーサ:
 うおー! なんだそれー! せっかく唱えた“ダークネス”が即効で消されるとか……。最悪だ……。

 こうして、PCたちが絶体絶命のピンチを迎える中、NPCたちもまた窮地に陥ろうとしていました。実は、イーサが唱えた“ダークネス”によって目標を失った野盗の1人が馬車の後方に回り込み、“ダークネス”の効果範囲外にいたニルフェルに目を付けていたのです。

野盗の子分E(GM):
 馬車の後ろに回り込んだ野盗の子分Eが、「おッ! 馬車の中には他にも女がいるぞッ!」と興奮したような声を上げました。

ニルフェル(GM):
 それに続いて、「キャーッ!」とニルフェルの悲鳴が響きます。

アゼル:
 あッ! まずい、まずいッ!

ギズリ(GM):
 野盗の子分Eの接近に気がついたギズリが、“小移動”で荷台の後方に移ってニルフェルの前に立ちます。
「くッ、来るなッ! それ以上、近づくんじゃねぇッ!」そう言い放つギズリですが、戦闘能力のない彼はおよび腰です。

ギュリス(GM):
 後方からの声を聞いたギュリスは、慌てた様子で身にまとっていた蜃気楼の外套に手を当てると“ミラー・イメージ”を発動させます。(コロコロ)成功。ギュリスの周囲に2体の幻影が現れました。

野盗の子分E(GM):
 ギズリと対峙した野盗の子分Eは、「男はすっこんでろッ!」と叫んでギズリに斬りかかるのですが――

ギュリス(GM):
 そこで、ギュリスが“身代わり”を実行して、その一撃を受けます。(コロコロ)“ミラー・イメージ”の効果によって、幻影1体が掻き消えたものの、ギュリス自身は無傷で済みました。

エルド:
 おおッ! さすがはギュリスさんですね。

イーサ:
 たしかに急場凌ぎにはなったが、それも時間の問題だろ……。

 もちろん、ギュリスのこの行動はただの時間稼ぎにすぎません。それも、“ミラー・イメージ”によってダメージを受けずに済む確率は60%程度に過ぎず、運が悪ければ直接攻撃を受けることになります。しかし、前衛で戦うPCたちを信じて、少しでも長い時間持たせようと、ギュリスも必死の抵抗を続けます。

 なお、後々になって考えてみると、自ら攻撃の“身代わり”になろうとしてるときに“ミラー・イメージ”が有効に働くのは不自然な処理でした。なので、これはこのシーンだけの特別処置と考えてください。

野盗の子分E(GM):
「なんだ、この女ッ? 魔法でも使ってるのかッ!?」
 リーダーから女への攻撃を止められていた野盗の子分Eですが、幻影によって自分の攻撃を避けたギュリスに対して再度攻撃を試みてしまいました。

ギュリス(GM):
 それに対して、ギュリスはもう一度幻影による回避を試みます。(コロコロ)あッ! 直撃してしまいました。

アゼル:
 おいおい。勘弁してくれよ……。

野盗の子分E(GM):
(コロコロ)野盗の子分Eの攻撃による物理ダメージは7点です。

ギュリス(GM):
 その攻撃でギュリスの生命点は半分を切りました。士気判定は(コロコロ)ギリギリ成功。

ニルフェル(GM):
「ギュリスさんッ! もう十分です、やめてくださいッ!」
 飛び散るギュリスの鮮血を目の当たりにしたニルフェルが、悲鳴にも似た叫び声をあげました。

ギュリス(GM):
 しかし、「ここであたしが倒れるわけにいかないでしょうがッ!」とギュリスは血を流しながらも気丈に振る舞います。

 再びシーンをPC側に戻すと、その時点でイーサは独り言を呟きながら遅疑逡巡するのみ、アゼルに至っては自分たちが不利になったと感じるや捨て鉢になってしまい、この2人ではもはや戦況を打開できそうにありませんでした。そんな中、“ダークネス”の効果が残っている間に敵魔法使いとの距離を詰めていたエルドが意地をみせます。

魔法使い(GM):
 ここが魔法使いにとっての勝負どころですね。距離を詰めてきたエルドに対して、敵の魔法使いは“ファイア・ボルト”を生撃ちします。ここでエルドを倒しておかないと、野盗側が勝ったとしても魔法使い自身はエルドに倒されてしまう可能性が高いですからね。

エルド:
 よくわかってるじゃないですか(笑)。

魔法使い(GM):
(コロコロ)行使値12で“ファイア・ボルト”発動。

エルド:
 魔法抵抗値は……。(コロコロ)よしッ! 15で抵抗成功です!

魔法使い(GM):
(コロコロ)物理ダメージ7点と魔法ダメージ5点。

エルド:
 耐えたッ! 耐えましたッ! それじゃ、お返しに“エネルギー・ボルト”を生撃ちです。(コロコロ)抵抗されましたが、物理ダメージ10点です。

魔法使い(GM):
 それで魔法使いは倒れました。(コロコロ)絶命です。

アゼル&イーサ:
 おおッ!

 こうして、なんとか一番厄介な敵であった魔法使いを倒すことに成功しました。これで、少しはPC側が持ち直すかと思われましたが、その矢先――

野盗の子分D(GM):
 野盗の子分Dがアゼルに“渾身の一撃”を放ちます。(コロコロ)命中値は9。

アゼル:
 それくらいなら側面回避でも……。(コロコロ)あッ! 7で失敗。

野盗の子分D(GM):
(コロコロ)物理ダメージは9点です。

アゼル:
 うッ……。落ちた……。

イーサ:
 え? 落ちたって……まさか……?

アゼル:
 ピッタリ生命点0。生死判定は(コロコロ)成功。気絶した。

 なんと、早々と士気判定に失敗していたセルダルが戦場から逃走するより先に、アゼルが倒れてしまいました。

野盗のリーダー(GM):
 アゼルが倒れたところで野盗のリーダーが、「それ以上抵抗するんじゃねぇッ! 抵抗を続けるなら、こいつを串刺しにしてぶっ殺すぞッ!」とアゼルの首もとにトライデントの穂先を突きつけて大声を張り上げます。

野盗の子分A(GM):
 野盗の子分Aもイーサに対して、「おらッ! 仲間を殺されたくなければ、大人しく武器を捨てやがれッ!」と迫ってきました。

アゼル:
 終わった……。下手すりゃセルダル1人くらいは死ぬことになるかと思ってたけど、こりゃ全滅だな……。

エルド:
 え? 何言ってるんですか? アゼルさんが人質にされたって、そんなの僕には関係ありませんよ。野盗のリーダーに“ファイア・ボルト”を撃ちます。

GM:
 でしょうね(苦笑)。エルドの性格だったら、きっとそうするだろうと思ってましたよ。

アゼル&イーサ:
(笑)

エルド:
 期待は裏切りません(笑)。

野盗のリーダー(GM):
 では、野盗のリーダーの魔法抵抗値は(コロコロ)9です。

エルド:
(コロコロ)よしッ! 行使値は13で成功。まず物理ダメージ。(コロコロ)1回クリティカルして、19点ダメージです。次は魔法ダメージ。(コロコロ)またクリティカル!

アゼル&イーサ:
 おおッ!

アゼル:
 エルドはここぞって時にいい目を出すよな。

エルド:
(コロコロ)うーん、クリティカル1回で止まってしまいました。(少し考えてから)ここで、最後の“可能性”を使ってダイスを振りなおします。(コロコロ)ありゃ……。逆に出目が下がってしまいました。それじゃ、振りなおす前の値を採用して、魔法ダメージは7点です。

野盗のリーダー(GM):
 物理ダメージ19点に魔法ダメージ7点ですか……。(コロコロ)……。
「おいッ! こいつを殺されなくなかったら――」
 ズバーンッ! ドサッ! 絶命。

一同:
(爆笑)

アゼル:
 うわぁ……。エルドの奴、たった一撃でリーダーを仕留めやがったよ。

エルド:
 リーダーが倒れたのであれば、残った野盗たちに、「あなたたちのリーダーは倒れたようですが、まだやりますか?」と脅しをかけます。

野盗の子分A(GM):
 それに対しては野盗の子分Aが、「テ、テメェらこそ満身創痍のくせしやがってッ! 降伏するなら今のうちだぞッ!」と返してきます。

GM:
 野盗はまだ半壊していませんし、残り戦力数では野盗のほうが優っている状態ですから、降伏勧告は受け入れられません。戦闘続行です。

エルド:
「あなたたちが引かないというのであれば、戦い続けるまでです。ですが、もう人質をとれば戦いが終わるなどといった勘違いはしないでください。他の人がどうなろうとも、僕は自分が死ぬまで戦い続けます」

アゼル&イーサ:
 おー。

野盗の子分A(GM):
「だったら、テメェから倒すまでだッ! さっきから魔法の使い過ぎで、ろくに余力も残ってないくせによッ!」
 野盗の子分Aはすでに戦意を喪失しているセルダルを放置して、エルドに向かって突進してきます。

エルド:
 ここからが正念場ですね……。

GM:
 さて……。野盗の子分Aがエルドに向かって行ってしまうと、セルダル包囲網が崩れることになります。そうすると、士気判定に失敗しているセルダルとしては――

セルダル(GM):
「このままじゃ殺されるッ。……いやだッ! オレは、まだ死にたくねぇッ!」
 セルダルは、包囲網の隙間を抜けて一目散に逃げ出します。そして、橋を渡り対岸のほうへと駆けて行きました。

アゼル:
 あー。この期に及んでついにセルダルが逃走しやがった……。

 こうしてエルドの孤軍奮闘によって一進一退の戦いが続く中、NPCたちも必死の抵抗を続けていました。

野盗の子分E(GM):
「このアマが、いい加減にしやがれッ!」
 苛立った野盗の子分Eがギュリスに攻撃しました。

ギュリス(GM):
 ギュリスは残った1体の幻影によって攻撃を回避しようとします。(コロコロ)あらら……。野盗の子分Eの繰り出した一撃は、再びギュリス本人を直撃しました。

野盗の子分E(GM):
(コロコロ)野盗の子分Eの攻撃による物理ダメージは8点です。

ギュリス(GM):
 これでギュリスの生命点はマイナスに突入しました。

アゼル:
 あーッ! ついにギュリス嬢も逝ったーッ!

ギュリス(GM):
 生死判定は(コロコロ)……なんとか成功。両手剣の一撃を受けたギュリスは意識を失い、そのまま崩れ落ちました。

ニルフェル(GM):
「ギュリスさんッ!」
 辺りにニルフェルの悲痛な叫び声が響き渡ります。

野盗の子分E(GM):
「おっと、あんまり抵抗するもんだから、ついやり過ぎちまった。まあ、女は他にもいるみてぇだし、この状況じゃ事故が起きてもしかたねぇよな……」そう言って野盗の子分Eは酷薄な笑みを浮かべます。

ニルフェル(GM):
 ギュリスが切り落とされるのを目の当たりにしたニルフェルは、顔面蒼白で身を震わせながら必死に声を絞り出します。
「も、もう許してください……。あなたたちの言うとおりにします……。だから、どうか命だけは……」

ギズリ(GM):
 そのとき、恐怖に屈しようとするニルフェルの振るえる手を、ギズリが力いっぱい握りしめました。
「ダメだッ! 諦めるなッ! まだあいつらは戦っている。それなのに、オレたちが先に屈しちゃダメだッ!」

アゼル:
 おおッ! ギズリさん、男前だな。

 この後、ギズリは野盗の子分Eの攻撃を2度も耐えてみせました。そして、野盗の子分Eが満身創痍となったギズリに対してトドメとばかりに放ったもう一撃は、ニルフェルが“身代わり”となって食らいました。まさに、出せる力を余すところなくすべて出し切った総力戦です。

 こうして、長く続いた戦いは、やがてどちらかの陣営の戦力があと1人倒れれば戦力半壊となるというところまで行きつきました。そんな極限状態で――

イーサ:
 野盗の子分Dに対して“急所狙い”で攻撃する。(コロコロ)よしッ、命中ッ! ダメージは1回目が無条件クリティカルで(コロコロ)出目10ッ! もう一丁、こいッ!(コロコロ)あー、出目7で止まった……。

アゼル:
 出す順番が逆なんだよッ! 逆ッ!

エルド:
 まだ、“可能性”で振りなおすチャンスもありますよ。

イーサ:
 そうか。それじゃ、ここで“可能性”を使っておこう。2回目の威力ロールを振りなおして(コロコロ)あー、出目が下がった……。仕方ない。もう1回“可能性”を使おう!

アゼル:
 おお、やる気だな。

イーサ:
(コロコロ)あはは……。ダメだぁ。全然いい目が出ない(泣)。さらにもう1回“可能性”を使う。(コロコロ)くはッ、出目7……。ここまで来たら最後の“可能性”も投入する!(コロコロ)ぐおぉぉぉッ! 結局、物理ダメージ13点で変わらず。

野盗の子分D(GM):
 では、その攻撃を受けた野盗の子分Dは、生命点が半減して(コロコロ)士気判定に失敗。逃走を開始します。

アゼル:
 ああッ! 完全に“可能性”の無駄遣いだったな(笑)。

イーサ:
 ……まあ、こればかりはやってみないことにはわからないし……。しかし、4回振りなおして出目が全部7以下って……。

エルド:
 7の壁を越えられませんでしたね。

アゼル:
 まったく、今日好調なのはエルドだけだな(苦笑)。

 さすがに、ここで“可能性”を4回使い切ってしまったのは大きな痛手でした。切羽詰まった状況だったこともあり、イーサも冷静さを欠いていたようです。しかし、この攻撃で深手を負った野盗の子分Dが逃亡したことで、残った野盗たちも散り散りに退散していきました。

イーサ:
 終わったのか……?

GM:
 はい。動ける野盗たちは全員逃走していきました。残されたのはリーダーと魔法使いの亡骸だけとなります。

アゼル:
 おおーッ! 勝ったッ! 大金星だ。エルドの活躍がなかったら確実に全滅してたな。

エルド:
 敵の魔法使いが厄介でしたね。でも、その分、戦利品としていったいどんなアイテムが手に入るのか楽しみですよ。

アゼル:
 物欲パワー恐るべしだな。すげぇーよ(笑)。

エルド:
「イーサさん。とりあえず、なんとかなりましたね」

イーサ:
「ああ。ボロボロだがな。ニルフェル、そっちは大丈夫か?」
 馬車のほうに行ってみるが……。

GM:
 馬車の幌の中では、ギズリとニルフェルが互いにもたれかかった状態で動けずにいます。

アゼル:
 本当にボロボロだな。

イーサ:
 ああ。犠牲者がでなかったのが不思議なくらいだ。さてと、とりあえずは倒れてるアゼルとギュリス嬢から癒していくとするか。

 こうしてギリギリの戦いを終えた一行は、“キュア・ウーンズ”と“手当て”によって昏倒した者を覚醒させると共に、傷を負った者の止血を進めていきます。しかし、そんな一行の中に、戦いの最中に逃走してしまったセルダルの姿は見当たりませんでした。




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