LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(14)

 野盗との戦いで満身創痍となり、昏倒した者の覚醒を終えたところでついに精神点も底をついてしまった一行は、残りの負傷者を時間をかけて治療することにしました。高いランド・ウォーカー技能を誇るギズリが、深手を負った者の治療をして回ります。

ギズリ(GM):
 ニルフェルのことを手当てしていたギズリが、「そう言えば、セルダルはどうした?」と口にします。

アゼル:
「ん? セルダル? そうだ。セルダルがいないじゃないか!」
 俺はセルダルが逃げたときにはすでに昏倒してたから、そのことを知らないんだよな。

エルド:
「セルダルさんだったら、橋を渡った向こう側に逃げたみたいですよ」

アゼル:
「なに? なら、すぐに後を追って連れ戻さねば……」
 セルダルのことを探しに川向こうに向かおう。

エルド:
「ちょっと、待ってくださいよ。1人で探しに行くのは危険じゃありませんか?」

アゼル:
「危険だとしても、親友を放ってはおけん」

エルド:
「イーサさん、どうします?」

イーサ:
「うーん。こっちを手薄にするわけにもいかないし、ここはアゼルに任せておこう」

GM:
 では、セルダルの後を追いかけたアゼルのシーンから解決していきましょう。


GM:
 アゼルはニメット川に架けられた橋を渡り、うっそうと茂るウルム樹海を右手の視野に入れつつ進んで行くことになります。

アゼル:
 セルダルの名前を叫びつつ、辺りを探してみる。

GM:
 先ほど蹴散らした野盗たちがまだ周辺に潜んでいる可能性もありますが、それでも声を張り上げて探しますか?

アゼル:
 ああ。張り上げる。必死に探してるから、きっと警戒してない。
「セルダルーッ!」

GM:
 了解です。では、捜索判定を行ってください。

アゼル:
(コロコロ)相変わらず出目が悪いなぁ……。7しかない。

GM:
 ならば、アゼルは無警戒に声を張り上げてセルダルのことを探すわけですが、捜索を開始してから十数分が経過しても、一向にセルダルの姿をみつけられずにいました。そんな中、突然、両手剣を構えた男が背後の茂みから飛び出してきます。アゼルはその存在を察知することができず、完全に不意を突かれてしまいました。

アゼル:
 うおッ。

セルダル(GM):
 アゼルが背後を振り返ったとき、そこで両手剣を振り上げていたのはセルダルでした。セルダルの顔は焦燥しきっており、大きく見開かれた瞳にあなたの姿を映すと、「ア……アゼル? オマエ、生きてたのか!?」と驚きの声を漏らしました。その言葉と同時に、振り上げられていた両手剣の刃先が力なく地面に落ちます。

アゼル:
「ああ。俺はこの通り無事だ。お前こそ大丈夫か?」

セルダル(GM):
「オレは……大丈夫だ……。それより、皆は……?」

アゼル:
「皆も大丈夫だ」

セルダル(GM):
「それじゃ、あの野盗たちを追い払えたってのか……?」

アゼル:
「まあ、なんとかな」
 ――とは言っても、俺はほとんど役になってなかったけどな(苦笑)。
「さあ、とにかく皆のところに戻ろう」

セルダル(GM):
 アゼルから皆のところに戻ろうと声をかけられたセルダルは、下唇を噛みしめるとその場でうつむいてしまいます。どうやら、敵前逃亡してしまったことで自責の念にかられているようです。

アゼル:
 あ……。うん……。敵前逃亡は俺も一度経験してることだが、何かと気まずいよな……。なんて声をかけたもんかな……。

セルダル(GM):
 苦悩の表情を浮かべるセルダルは、「……戻るって……いったいどんな顔して戻りゃあいいんだよ……?」と自問するように言葉を漏らしました。

アゼル:
「そいつは誰だって経験する試練だ。俺だってそうだった」
 なにせ、パーティーの中で真っ先に敵前逃亡したのは俺だからな(笑)。

シーン外のイーサ:
 それはそんな自慢げに言うようなことじゃないだろ(笑)。

セルダル(GM):
「……そーだったな……。あんとき、オレはオマエのことを笑った。だが、他人のことを笑っておきながら、自分自身が仲間見捨てて逃げてるんじゃ、ざまーねーよな……」

アゼル:
「そんなことはない。俺たちはまだ修行の途中だ。これも経験の1つだ。そんな経験をいくつも乗り越えて強くなってくしかないんだよ」

セルダル(GM):
 セルダルはうつむいたまま、片方の拳を固く握りしめました。
「上辺だけの言葉ばっか並べてんじゃねぇよッ! 口ではそんなこと言いながら、腹ん中じゃ逃げ出したオレのことを笑ってんだろッ!?」

アゼル:
「笑うわけないだろ……。お前には正直に言うが、俺だって戦いの最中いつも逃げ出したいほどの恐怖を感じてるんだ。だが、それを乗り越えなければ強くはなれない」

シーン外のエルド:
 なんだか、誰かさんが話していたことと似たようなことを言ってますね(笑)。

アゼル:
 アゼルはアルさんからそう学んだんだ(笑)!
「さあ、一緒に戻ろう」そう言って、セルダルの肩に手を――

セルダル(GM):
 セルダルはその手をはねのけます。

アゼル:
 はねのけられたーッ!?

シーン外のイーサ&エルド:
(笑)

シーン外のエルド:
 いまの偽善っぷりでまた好感度が下がりましたね(笑)。

GM:
 いえ、そういうわけではありません(苦笑)。いまので好感度が下がったのではなく、すでに好感度が低かったからはねのけられたのです。

セルダル(GM):
「いまさらなんだよッ! こんなときだけ友人面すんじゃねぇッ! それとも見下してんのかッ? オマエはオレの協力なんて要らねぇんだろッ!?」

アゼル:
「そんなこと言ってない……」
 言ってないぞ。たしかに、そういう扱いはしたけど……(苦笑)。
「いつだってお前の力は頼りにしている」

セルダル(GM):
「嘘言ってんじゃねぇッ! 畜生……。オレにはオマエが何を考えてんのか、ちっともわかんねぇよッ!」

アゼル:
 おう、そりゃそうだろう。何せ俺にもアゼルのことがわからんからな(笑)!

シーン外のイーサ&エルド:
(爆笑)

GM:
 なんと……。(思わず目を覆う)

 どうもアゼルの行動に一貫性がないと思っていたら、こんなところでとんでもないことをカミングアウトされてしまいました。すでにキャンペーンも第4話目。もはやキャラブレしている場合ではありません(苦笑)。

セルダル(GM):
「……」
 セルダルは無言でアゼルの次の言葉を待っています。

アゼル:
 駄目だ、どうやって収拾つけていいのか思いつかん……。今までの行動が行動なだけに、なにを言っても白々しくなりそうだ(苦笑)。
「とにかく皆のところに戻ろう」

シーン外のエルド:
 ええッ!? それで終わりなんですか? なんとかしてセルダルさんとの関係を改善しようとは思わないんですか? 知力19が泣いてますよ(笑)。

アゼル:
 そうは言っても、頭がいいからといって弁が立つとは限らないんだよ(笑)!

シーン外のイーサ&エルド:
(爆笑)

セルダル(GM):
「……もーいい……。わかったよ……。オレだって、こんなとこでガキみてぇに意地張るのが無意味なことくらいわかってる。……戻る。……戻るさ……」

アゼル:
「ああ。そうしてくれ」

セルダル(GM):
「だが、オマエと一緒には戻らねぇ……。先に1人で戻っててくれ」

アゼル:
「え……? そうは言っても、1人じゃ危険だろ?」

シーン外のイーサ:
 1人でセルダルのことを探しに来たお前がそれを言うか(笑)。

セルダル(GM):
「何かに襲われたとしても、逃げるだけなら1人のほーが都合がいい。それより、少し気持ちを落ち着かせてから戻りてぇんだ」

アゼル:
 うーん、ここはセルダルの言うとおりにしたほうがいいかな? 難しい。どうしたらいいんだ?

シーン外のイーサ:
 本当なら、セルダルの苛立ちを沈めてやるべきなんだろうけどな……。

アゼル:
 くぅ……。ダメだ。何も思いつかん。皆のいるところまではそんなに離れてないんだよな?

GM:
 まあ、徒歩十数分の距離ですから、せいぜい1キロ程度ですね。

アゼル:
 なら大丈夫か。
「落ち着いたら必ず戻ってこいよ……」と言って、そのまま皆のところに引き返していく。

セルダル(GM):
 では、セルダルは去り行くアゼルの背中をじっと見つめ、その姿が見えなくなるまで身じろぎせずに見送りました。

アゼル:
 ハァ……。どうもセルダルとの関係はうまくいかないな……。


GM:
 さて、アゼルがセルダルのことを迎えにいった一方で、残された面々の応急手当が一通り終わろうかといったところにシーンを移します。全員、馬車の周辺に集まっているものとします。

ニルフェル(GM):
 馬車の中には、意識を取り戻したギュリスの胸元に抱きついているニルフェルの姿がありました。
「ギュリスさん……。本当に……無事で……良かった……」
 ニルフェルの目からは大粒の涙がこぼれ、しゃっくり混じりの声は震えています。

ギュリス(GM):
 ギュリスは泣きじゃくるニルフェルの姿に困惑した表情を浮かべると、「大丈夫だって。まったく、心配し過ぎなんだから。こんなところであたしが死ぬわけないじゃないの」と言って、ニルフェルをなだめます。

エルド:
 キマシタワー!!!

ニルフェル(GM):
「でも……でも……」
 ニルフェルはクシャクシャの表情をギュリスに向けます。
「お願いですから……もう二度と……あんな危険なことは……しないでください……」

ギュリス(GM):
 その言葉に対してギュリスは「危険なことって言われても、あのときはあたしが盾になるのが最善だと思ったからやっただけなんだよね……」と言って頭を掻きます。

ニルフェル(GM):
 そうすると、ニルフェルは少し怒った顔をしてギュリスを睨み付けました。

ギュリス(GM):
「わかった……。わかったってば。エルバート神に誓って、二度とあんな真似はしません。そのかわり、あなたも1つ約束しなさい。あなたは未来のカーティス王妃を目指しているんでしょ? だったら、自分の感情をそのまま皆の前でさらけ出すようなことは今後一切よしなさい」

ニルフェル(GM):
 ギュリスの言葉にニルフェルはきょとんとします。

ギュリス(GM):
「特に不安や悲しみは周りに伝染しちゃうからね。まあ、もし何らかの効果を狙って感情を表に出すのであれば、それは構わないんだけど……」

一同:
 ……。

GM:
 ……。

エルド:
 えーと、百合百合しい会話はそれで終わりですか?

GM:
 ブッ(失笑)! いやぁ、そんなつもりではなかったんですが、そういう風に聞こえました? ……というか、途中でイーサとエルドから何らかの反応があるかなと思ってやってたんですが、会話に加わってきたりしませんか?

エルド:
 うーん。それじゃ、僕は百合百合しいですねぇと思いながら、川に血の汚れを落としに行きます。全身血まみれなんで。

シーン外のアゼル:
 会話に参加するんじゃないのかよ! クレーバーだな(笑)。

ニルフェル(GM):
 では、エルドが離れていくなか、ニルフェルは周囲の面々に対して「皆さんもこんな無茶なことは二度としないでください」と言います。

イーサ:
「すまない。俺の力が及ばなかったばかりに、皆をこんな危険な目にあわせてしまった」

エルド:
 少し離れた場所から、「いえいえ。僕としては楽しめたので別に問題ありませんよ」と答えておきます。

ギュリス(GM):
 ギュリスは立ち上がると、イーサに対して「まあ、言いたいことはたくさんあるんだけど……。とりあえず、あなたの癒しの魔法のおかげで傷はすっかり治ったみたい。ありがとね」と礼を述べます。
「さてと、それじゃあたしも川で汚れを落とそうかな……。ニルフェル、あなたも今のうちにその顔を洗っておいたほうがいいんじゃない? アゼルの奴が今のあなたの顔を見たら、凄く心配すると思うよ」

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは無言でうなずくと、ゆっくりと立ち上がりました。

GM:
 こうして、エルド、ギュリス、ニルフェルの3人は川で汚れを落とし始めました。
 さて、ここで確認しておきますが、あなたたちはまだ倒した野盗の荷物を回収していませんよね? 倒れているのは、絶命した魔法使いと野盗のリーダーの2つの遺体だけですが……。

エルド:
 まだですね。でも、汚れを落とし終えたら回収しますよ。

シーン外のアゼル:
 やっぱり回収するのかよ。やってることは野盗と同じだな。

イーサ:
 まあ、エルドはスカウト技能を所有してるしな。

シーン外のアゼル:
 盗賊めッ! この盗賊めッ!

エルド:
 何とでも言ってください(笑)!
 あらかた血を洗い流し終えたら、川を渡って倒れている魔法使いのところまで行って、おもむろに物色します。

ニルフェル(GM):
 では、ニルフェルは顔を洗っていた手を止めると、倒れた魔法使いに歩み寄っていくエルドへと視線を向けました。そして、エルドが何をしているのかを理解すると、「エルドさんッ、あなたいったい何をしてるんですかッ!」と声を荒げます。

エルド:
「何を……って、旅に役立つものがないかを調べているんですよ」

ニルフェル(GM):
 ニルフェルはスクッと立ち上がり、「どうしてそんなことができるんですかッ!? それじゃ、まるで追剥ぎじゃないですかッ」と、少しヒステリックな声を上げました。

イーサ:
 アゼルもこの場にいたら同じこと言いそうだよな。そういうところは兄妹って感じだ。

シーン外のアゼル:
 そうは言うが、実は俺も野盗のリーダーの装備をもらう気満々だったから、すでにキャラクターシートのアイテム欄に書き込んでるんだよなぁ(笑)。

イーサ&エルド:
(爆笑)

イーサ:
 だったら、さっきエルドのことを非難してたのはなんだったんだよ(笑)。とんでもない奴だ。そういうことをするのはエルドだけだと思ってたのに。

シーン外のアゼル:
 いや、でも、まだシーンとしては物色してないから……。
(キャラクターシートのアイテム欄に消しゴムをかけながら)悪い野盗を相手にしてのことだからいいかと思ったが、こんな展開になるんだったら装備はもらわないでおいたほうがいいよな……(苦笑)。

 展開に関わらず、自分の演じるPCのキャラクター性を考慮して行動して欲しいものです(苦笑)。

エルド:
 さてと……。ニルフェルさんにはなんて返したものですかね。うーん。

ギュリス(GM):
 ギュリスもエルドのほうへと視線を向けました。ただ、それは責めるような視線ではなく、エルドがどのように答えるのか興味本位のもののようです。

イーサ:
 俺も馬車からエルドたちのほうを眺めてる。なに言い争ってるんだって感じで。まあ、俺としてはエルドがかっぱらいするくらいなんとも思わないんだけどな。

エルド:
(しばらく考えを整理してから)
「どうしてそんなことができるんだと言われましても……。僕はいままでもこうやって生活してきたんです」

ニルフェル(GM):
 エルドの言葉にニルフェルはわなわなと身体を震わせました。
「そんな死者を冒とくするような真似が許されると思っているんですか?」

エルド:
「別に冒とくするつもりはありませんよ。ただ、何もしなければ放置されてしまうものを、せっかくなので有効活用させてもらおうというだけのことです。ただ、どう説明しようとも、奴隷の身を経験したことがないあなたに僕の考えは理解できないでしょうけどね……」

ニルフェル(GM):
 その言葉にニルフェルは表情をこわばらせました。そして、勢いに任せて反論を述べようとするのですが――

ギュリス(GM):
 そこにギュリスが割って入りました。
「ニルフェル……。ここは壁に守られた街の中じゃない。ひとつ間違えば、いつ死ぬかわからない場所なんだよ。そんな場所で、少しでも身の安全性を高められるものが獲られるというなら、あたしは死体漁りするエルドを咎められない……。もちろん、ニルフェルの言いたいこともわかるし、それを許す環境でならあたしもそうするべきだと思うけどね」

エルド:
 ギュリスさん、デレてきましたね(笑)。

GM:
 え……? これはデレとは言わないような……(苦笑)。

ギュリス(GM):
「ねえ、エルド。せめて、遺体を辱めることがないようにしてあげたら?」

エルド:
「もちろん、そのつもりです」

シーン外のアゼル:
 本当かぁ? そのまま野ざらしにするつもりだったんじゃないのかぁ?

エルド:
 失礼なッ! そんなことするわけないじゃないですかッ! ちなみに、カーティス王国では亡骸は土葬でいいんですよね?

GM:
 はい、土葬です。

エルド:
「必要なものだけ拝借したら、その後は少し離れたところに穴を掘って埋葬しておきますよ」

ギュリス(GM):
 エルドの答えを聞いてギュリスはうなずきました。
「そういうことだから。ニルフェル。ここは収めてくれないかな?」

ニルフェル(GM):
 ニルフェルはしばらくうつむいた後に、エルドのほうに顔を向けて、「では、せめて手厚く葬りましょう」と言います。

エルド:
「わかりました」と答えて、再びニルフェルさんに背を向けて魔法使いの物色を始めます。背中を向けてから、小さく鼻で笑いました。
(小声で)「まったく……」

 こうして、遺体を手厚く葬ることを約束することでニルフェルを納得させると、エルドは野盗たちの亡骸から戦利品をかき集めました。




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