LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(16)

GM:
 では、翌日の朝の4時まで時間を進めます。まず、前回の判定から12時間が経過したので、赤毛の女性の毒進行判定を行ってください。《2D+2》で目標値3の判定です。

アゼル:
 まだ、1ゾロ以外は成功か。全員、“可能性”使い切っちまったし、ここは俺が代表で判定しよう。(コロコロ)成功。

赤毛の女性(GM):
 判定に成功したのであれば、夜の間うなされていた赤毛の女性は明け方になって薄らと目を開き、誰にともなく「デミルコル……」と小さく呟きます。視力を失っているのか、彼女の瞳があなたたちの姿を捉えることはありません。

アゼル:
「心配するな。いま、デミルコルに向かっているところだ」

赤毛の女性(GM):
 アゼルの言葉を聞くと、彼女はかすかにうなずくような動きをみせ、再び気を失ってしまいました。

イーサ:
「よし。それじゃ、そろそろ出発するとしよう」

エルド:
 馬車の外に出てみますが、空模様はどんな感じですか?

アゼル:
 俺も外に出て“天候予測”をしておく。(コロコロ)11。

GM:
 昨日の雨はすっかり上がり、現在の天候は雲一つない晴天です。アゼルは少なくともお昼頃までは晴天が続くだろうと思いました。

アゼル:
「晴れる。晴れ渡る。澄み渡る」

イーサ:
 デミルコルまではあと30キロか……。残り精神点に不安はあるが、一晩休んで疲労もすっかり回復したし、晴れているうちに一気に進むことにしよう。

 こうして一行は朝早くに行軍を開始すると、そのまま休憩を挟むことなく30キロを踏破し、13時半に地方集落デミルコルへと到着しました。途中のルートはあまり人の往来がある場所ではなかったため、モンスターとの遭遇確率はそこそこ高かったのですが、幸いなことに行軍の途中で敵に襲われることはありませんでした。

ヤナダーグ・プラト地方北部地図07

アゼル:
 ランダム遭遇の確率って結構低いのな。

GM:
 まあ、交易路として確立されているところなら10日に1回、それ以外の地域でもせいぜい3日に1回戦闘が発生する程度ですね。世界設定上、あまり頻繁に戦闘が発生することにしてしまうと、交易が存在すること自体に無理が生じてしまいますから……。ちなみに、敵との戦闘がお望みのようであれば、聖域やそれに並ぶ秘境と呼ばれる地域に足を踏み入れることをお勧めします。そういう場所であれば、移動する毎に戦闘できますよ。

アゼル:
 いや、それは遠慮しておこう(笑)。

イーサ:
 そうは言っても、アゼルはこれからモノケロースを狩るために聖域に向かうつもりなんだろ(笑)?


GM:
 さて、それでは、ようやくたどり着いたデミルコルの村について説明していきましょう。デミルコルは辺境の小さな村であり、その外周にイスパルタやカルカヴァンのような強固な防壁は備えていません。野生生物を寄せ付けないための、木の柵が張り巡らされているだけです。村の中には木造1階建ての小さな建物が散見されます。そのなかで、村の中央にある少し小高くなった丘の上にぽつんと1軒だけ大きな屋敷が建てられているのが目に入ります。

イーサ:
 周囲を見渡して、人の姿は見つかるだろうか?

GM:
 デミルコルは鉱夫と猟師の村ですので、昼間は閑散としています。それでも、周辺に点在する小さな畑の中に、農作業をする人の姿をまばらに見つけることはできました。農夫たちにとってはよそ者が珍しいのか、チラチラとあなたたちに目を向けて者もいるようですが、積極的に近づいてこようとする者はいません。

 GMとしては、村人たちと会話してもらうことで、デミルコルという村の雰囲気や近頃の出来事を知ってもらおうと目論んでいましたが、イーサたちは村人とは会話せずに村の中央にある大きな屋敷を直接訪ねることにしました。

GM:
 では、あなたたちが屋敷の正面玄関をノックすると、使用人らしき中年男性が姿を見せます。

使用人(GM):
「どちら様でしょうか?」
 突然現れた来訪者に、使用人は幾分いぶかしげな表情をしています。

エルド:
「僕たちは旅の者です。旅の途中で偶然負傷した女性を見つけて介抱したのですが、その女性からデミルコルのユセフ様のところまで連れて行って欲しいと頼まれまして、ここまで足を運びました。ただ、その女性は毒にも侵されていたようで、先日からずっと意識を失ったままなんです……」

使用人(GM):
「その女性の方はどちらに?」

イーサ:
「彼女なら、今は馬車の荷台で横になっている」

アゼル:
 それじゃ、俺が馬車から抱きかかえて連れて来よう。

使用人(GM):
 使用人は、赤毛の女性の顔を確認すると眉を小さく動かし、「こちらで少々お待ちください」と言い残して、屋敷の中へ姿を消します。そして、さほど時間をかけずに戻ってくると、「旦那様が皆さまとお会いなさるそうです。申し訳ございませんが、そちらの女性をそのままお連れいただいてもよろしいですか?」と言って、扉を大きく開きました。

アゼル:
「ああ。わかった」

使用人(GM):
「では、こちらに」そう言って、使用人はあなたたちを屋敷の中へと案内していきます。使用人はまず空き部屋へと向かうと、その部屋の寝台に赤毛の女性を横たえさせました。

エルド:
「ちなみに、使用人さんはこの人の症状に心当たりはありませんか?」

使用人(GM):
「残念ながら思い当たるところはございません……。ですが、今しがた村の薬師を呼びに使いを出したところです。薬師であれば、何らかの見立てもできることでしょう」

アゼル:
「そうか。俺たちが発見してから、すでにかなり時間が経過している。一刻も早く診てやって欲しい」

使用人(GM):
「承知いたしました。薬師にはそのように申し伝えておきましょう。では、他の方々はこちらへどうぞ」そう言うと、使用人はあなたたちを応接室へと案内します。

 応接室へと通されたイーサたちは、そのまましばらくの間待たされることになりました。そして、30分ほど経過したところで、40代くらいの男性が姿を現します。

ユセフ(GM):
「長らくお待たせした。私がここの主のユセフだ。君たちが彼女を介抱し、ここまで連れてきてくれたのか。まずはそのことに対して礼を述べておこう。心から感謝する」そう言って頭を下げたユセフは、随分と落ち着いた雰囲気の人物です。

エルド:
「ユセフ様はあの人とお知り合いなのですか?」

ユセフ(GM):
 その問いに、ユセフは表情をこわばらせました。
「……申し訳ないが、その質問に答える前に、まず君たちの素性を検めさせてもらいたい」

アゼル:
「と言うと?」

ユセフ(GM):
「言葉通り、君たちが何者であるか確認したいということだよ。表に停めてある馬車は、王宮御用達のものであるようだが、どうやら君たちは王宮の使者というわけでもなさそうだ。そのあたりも踏まえて説明してもらえるとありがたいが……」

エルド:
「ああ、そのことですか。あの馬車は国家測量士のファジル様から借りた物なんですよ――」と切り出して、王宮の馬車を借りることになった経緯について説明します。

GM:
(ファジルの声色で)この街道計画はヤウズ王子が戴冠した後に正式に開示されるものなのじゃから、それまでこのことは他言無用じゃぞ……。他言無用じゃぞ……。他言無用じゃぞ……。

アゼル:
 あーあ、やっちまったな、エルド(笑)!

エルド:
 そんなこと、僕には関係ありません。別に気にしませんよ。

ユセフ(GM):
 エルドの説明を聞いたユセフは深くうなずきました。
「なるほど……。そのようなことがあったのか。たしかに、そういうことであれば馬車のことについては合点がいった。……それで、君たちはいったい何者なんだ?」

アゼル:
 それじゃ、クルト・ソードにつけられている紋章を見せて、「自分はクルト氏族のアゼルという者です」と名乗っておこう。

ユセフ(GM):
「ほう。では、ジャフェルのところの? 彼とは久しく会っていないが、変わりないか?」

アゼル:
 おお。伯父さんと面識があるのか。よかった、よかった。
「ええ。ジャフェルは自分の伯父ですが、どのようなご関係で?」

ユセフ(GM):
「ジャフェルとは王都にいるときに交流があったのだ。互いに似たような立場であったこともあり、ずいぶんと親しくさせてもらった」

アゼル:
「そうでしたか。実は、ここにいるニルフェルは、そのジャフェルの娘であります。それと、隣にいるのはお供のセルダルです」

ユセフ(GM):
「なるほど。それで、それ以外の者は?」

イーサ:
「俺は、たまたま旅の目的地が同じだったから同行することになったイーサという者だ。小さな村の出身だし、身分を証明するようなものはないんだが……」
 そういえば、故郷の村の名前、まだ決まってないんだよな。何ていう名称の村なんだろう?

GM:
 せっかくですから、この機会にイーサの故郷の村の名前を決めてしまいましょう。

 相談の結果、イーサの故郷の名前はカダッシュ村ということで落ち着きました。

イーサ:
「故郷はカダッシュっていう名前の村だ」

エルド:
 それじゃ、次は僕が名乗っておきましょう。
「僕はエルドと言います。南方諸国の出身です。自分の身分を証明できるものといえばこれくらいしかないのですが……」と言って、袖を肩までめくり上げて、解放奴隷の証である焼印を見せます。

 こうして、一人づつ自分が何者であるかを述べていき、最後にギュリスの番となりました。

ギュリス(GM):
 自分が名乗る番になると、ギュリスは困ったような表情を浮かべ、手を頭に当てて髪をクシャクシャとかき乱しました。

アゼル:
 そういや、ギュリスは身分を隠してたんだっけ。なんて名乗るか見ものだな(笑)。

ギュリス(GM):
 そして、ギュリスは諦めたようにため息をひとつつくと、突然姿勢を正し、折り目正しくお辞儀します。
「ご無沙汰しております。ユセフ様。ギュリス・イスパルタです」

アゼル:
 おっ!?

ユセフ(GM):
「おお。どこか見覚えのある顔立ちだと思ったら、やはりギュリス様でしたか。しばらく見ない間に美しくなられた」そう言うと、ユセフは目を細めました。

ギュリス(GM):
 ギュリスはためらいがちに目を伏せると、「ユセフ様。どうか、わたくしがここに来たということは、イスパルタ家の者には秘密にしておいていただけませんか?」と、柄にもなくしとやかな口調でそう言いました。

ユセフ(GM):
 その申し出に、ユセフは不思議そうな顔をします。
「何かあったのですか?」

ギュリス(GM):
「実は――」と、ギュリスは自分がイスパルタ家を出てきた経緯をかいつまんでユセフに説明しました。

ユセフ(GM):
「なるほど。話はわかりました。そういうことであれば、ギュリス様がここへ来たことは決して口外しないと約束しましょう。そして、その他の者たちについても、信用できる人物であるということは十分にわかりました。これで、私も隠し立てすることなく話ができます」ギュリスに対してそう言うと、ユセフはイーサたちのほうへと視線を向けます。
「ではあらためて、君たちが連れてきた女性と私が知り合いではないかという質問に対しての答えだが、彼女は私がある仕事を依頼していた者たちのうちの1人だ。その名をセルピルと言う」

エルド:
 ようやく名前が出てきましたね。まあ、知ってましたけど(笑)。

イーサ:
「そうだったのか……。それじゃ、やっぱり彼女の言っていたデミルコルのユセフというのは、あなたのことで間違いないようだな。実は、そのセルピルからあなたに渡して欲しいと言われて預かっていたものがあるんだが……」そう言って、バリスの聖印を取り出してユセフさんに渡した。

ユセフ(GM):
「これはバリスの聖印……。彼女がこれを私に……?」
 バリスの聖印を手にしたユセフは驚いています。

イーサ:
「ああ。俺たちもそれをあなたに渡してくれとしか聞いてなくて、扱いに困っていたんだ。何せ、あのバリス教団の聖印だ。おまけに、それを俺たちに託したあのセルピルという娘は、首からハルヴァの聖印を提げていた……。これはいったいどういうことなんだ?」

ユセフ(GM):
「なるほど。そのような状況にあったのであれば、疑問を抱くのもわからなくはない……。たしかにセルピルはハルヴァ神を信仰しているようだ。そのことについては、私も気づいていた。まあ、よろずの仕事を請け負う者の中には、国が信仰を禁じている古の神を、隠れて崇めている者も珍しくはないからな。もっとも、彼女はそのことを隠そうともしていなかったが……」そう言うと、ユセフは軽く苦笑してみせました。
「ただ、彼女がバリスの聖印を私に届けようとしていた理由については、今のところ私にも見当がつかない……」

イーサ:
「そうか……。俺はまた、バリス信者であるあなたのもとへ聖印を届けるように頼まれたものだと思っていたが……」

アゼル:
 おいおい。その発言はまずいだろ(笑)。それじゃまるで、ユセフ様のことを過激な宗教の信者だと思ってましたって言ってるようなもんじゃないか(笑)。

ユセフ(GM):
 それにはユセフも苦笑しました。
「いいや、私はれっきとしたエルバート神の信者だよ」

イーサ:
「それは失礼した」
 まあ、ハルヴァ信者に仕事を依頼するくらいの人だ。これくらいの発言は許してくれてるだろ(苦笑)。
 ちなみに、セルピルとバリスの聖印を無事にユセフさんに届けたってことは、これでこのミッションはクリアしたことにしていいのか? 俺としては、やるべきことは達成したって気分なんだが(笑)。

GM:
 まだ何も達成できていませんよ(苦笑)。第4話に設定されている本来のミッションは「ギュリスを無事にイルヤソールに送り届ける」もしくは「セルピルの命を救う」というものなので、どちらかを達成するかそれに並ぶほどの問題を解決しない限り、ミッションクリアとは言えません。

イーサ:
 アゼルとエルドはどうなんだ? もともと、俺はセルピルを救うことにそこまで乗り気じゃなかったんだが……。

アゼル:
 俺としてはセルピルの毒が治るまでは付き合いたいな。とりあえず、さっき薬師に診せるって言ってたから、その結果を聞いてから今後どうするかを決めればいいんじゃないか?

エルド:
 僕はどっちでもいいですよ。

イーサ:
 ふむ。じゃあ、もう少し突っ込んでおくか。
「そういえば、セルピルの容体はどうなんだ? 薬師を呼んだと聞いたが……」

ユセフ(GM):
 イーサの質問に、ユセフは神妙な面持ちをすると、「薬師が症状を診てはいるのだが、すぐには彼女を侵しているのがどのような毒なのか判断できないそうだ……。なんとか、容体が回復に向かうと良いのだが……」と述べます。
「……ところで、君たちはこれからどうするつもりだ? もし不都合がなければ、今晩はこの屋敷で休んでいくといい。彼女と聖印を無事に届けてくれた礼に、心ばかりのもてなしをさせてもらうとしよう」

イーサ:
「ふむ……。せっかくのご厚意だ。そういうことであれば、今晩はご厄介になるとするか」

エルド:
 これでようやくゆっくり休めますね。

GM:
 ええ。今晩は環境ランクの高い上質なベッドで休むことができますよ(笑)。
 では、他に話がなければ、ユセフのところで一晩厄介になるということで時間を進めてしまいます。




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