LOST ウェイトターン制TRPG


宮国紀行イメージ

宮国紀行 第4話(19)

GM:
 翌朝4時頃、屋敷の広間に、あなたたちに加え、ユセフ、テジー、ハルク、セルダル、ギュリス、ニルフェル、ギズリの計10人が集まりました。

ユセフ(GM):
 まず、最初にユセフが口を開きます。
「君たちにばかり危険な仕事を押し付けるような形になってしまい、すまないな……」

アゼル:
「いえ、自分たちから言い出したことです。気になさらないでください。それに、人の生き死にが懸かっているのですから当然のことです」

エルド:
(小声で)「そのおかげで、こちらの命も危険にさらされることになるわけですけどね……」

アゼル&イーサ:
(苦笑)

ユセフ(GM):
 ユセフはテジーへと視線を向けると、「森に入るまでの移動用に馬を用意しておいた。それと、1週間分の食事も揃えてある。では、案内よろしく頼むぞ」と言って、目で合図します。

テジー(GM):
 テジーは無言のまま、ユセフにうなずき返しました。

アゼル:
 必要なものを用意してもらえたのはありがたいが、1週間も探索してたら、馬車の返却が間に合わなくなって、俺たち罪人になっちゃうぞ(苦笑)。

イーサ:
(少し考えてから)
「出発の前に、ユセフさんにひとつ頼んでおきたいことがある。もし、オレたちが4日以内に戻ってこなかった場合、借り物の馬車を国家測量士のファジルさんに返しておいてもらいたい」

アゼル:
 おお、そうか。馬車の返却を頼んでおけば、モノケロースの探索にかける日数を気にしなくてすむな。

GM:
 よかった。出発前に気がついてくれたようで安心しました(笑)。

ユセフ(GM):
 イーサの申し出に、ユセフは「ああ。あの馬車のことか。わかった。君たちが4日で戻らなければ、そのように手配しよう」と約束してくれました。

ギュリス(GM):
 それを受けて、ギュリスはスッと前にでると、「そのときには、わたくしが責任をもってファジル様のもとへ馬車をお返しいたします」と言って、ユセフとイーサにそれぞれうなずいてみせます。

イーサ:
 とりあえず、これで一安心だな。

テジー(GM):
「他に何もなければ出発する」そう言ってテジーはあなたたちを見ます。

アゼル:
 じゃあ、俺はニルフェルの頭に手を置いて、「では、行ってくる」と言って笑顔で――

エルド:
 すかさず、ニルフェルさんがその手を払いのけますッ!

アゼル:
 ぬおッ!?

GM:
(苦笑)

ニルフェル(GM):
 ニルフェルは手を払いのけるようなことはしませんでしたが、そのかわりに表情を曇らせました。
「いってらっしゃい……」

ギズリ(GM):
「まあ、あとのことはオレに任せて、せいぜい頑張ってこいよ!」と、ギズリが緊張感のない声で見送りの言葉を掛けてきます。

アゼル:
 真面目な顔をしてギズリに、「ああ。よろしく頼む」と返しておこう。

GM:
 では、あなたたちが屋敷の外へでると、そこには5頭の馬が用意されています。

テジー(GM):
 テジーは軽やかに馬にまたがると、「オマエたちは、どの程度馬を操れる? 走らせられるようであれば、そうするが」と尋ねてきました。

イーサ:
「乗ることはできるが、走らせる訓練は受けてない」

テジー(GM):
「そうか……。ならば、速足で10キロ先の森の入り口まで進む。遅れそうなときには声をかけてくれ」

 こうして、テジーが先導する形で、ウルム樹海に沿って馬を進めていくことになりました。デミルコルからボルグヒルド山麓にかけては、採掘された鉱石を運ぶための小道が続いており、一行はそこを通って1時間ほどで何事もなくLY地点に到着します。

テジー(GM):
「さて、ここから森に入る。馬はこの辺りに置いて行こう」そう言ってテジーは馬を降りました。

イーサ:
「こんなところに置いていって、野生動物に馬が襲われることはないのか?」

テジー(GM):
「大丈夫だ。自由に動けるようにしておけば、そうそうやられることはない」

アゼル:
「自由にしておいたら逃げられるんじゃないか?」

テジー(GM):
「安心しろ。乗馬用に育てた馬はちゃんとしつけてある。獣に襲われたり、食べ物が尽きたりしなければ、この辺りでワタシたちの帰りを待っていてくれる」

イーサ:
「ほう。賢いもんだな……」

テジー(GM):
「では、森の中に入る。うまくモノケロースに出くわせると良いのだが……」そう言って、テジーは森の中へと足を踏み入れて行きました。

GM:
 テジーは慣れた足取りで、森の中を奥へ奥へと進んでいきます。樹海と呼ばれるだけあり、木々の密集度は非常に高く、さらにうっすらと広がる霧の影響もあって、百メートル進んだ段階で、森の出口が見えなくなってしまいました。

 一行は、ときおりどこからともなく聞こえてくる鳥の鳴き声を耳にしながら、数時間の間、無言で森の中を進み続けました。とは言っても、ここまではフィールドマップ上での移動だったため、実際のセッションでは遭遇判定を1回行っただけですが(笑)。

ヤナダーグ・プラト地方北部地図08

GM:
 さて、森の中を10キロ進んで、8時頃にNZ地点に足を踏み入れたところからが本番です。そこまで来たところで、まずあなたたちの目に入ってきたのは、直径10メートル程度の小さな泉でした。ここで、聞き耳判定を目標値10で行ってください。

イーサ&エルド:
(コロコロ)成功。

GM:
 では、イーサとエルドの耳は、「ワオーンッ、ワオーンッ」というかすかな遠吠えを捕えました。どうやら、遠く南西の方角から聞こえてくるようです。そして、聞き耳判定に成功した2人は、続けて目標値6・8・10 の動植物知識判定を行ってください。

エルド:
(コロコロ)6です。

イーサ:
(コロコロ)10。

GM:
 ならば、2人とも、その遠吠えがグレイウルフのものであるとわかりました。イーサは判定に完全成功したので、グレイウルフの戦闘データを渡しておきますね。

グレイウルフ
 体長1メートルを超える灰褐色の狼で、戦闘レベル3と下級騎士並みの戦闘力を有しています。最大1000平方キロに及ぶ縄張りのなかで、10頭前後の群れを形成し、遠吠えによって互いに意思疎通を図り、高度な組織的行動をとります。

テジー(GM):
 泉の前まで来ると、「ここを起点として捜索していく」と言って、テジーは目印となる布を縛り付けた杭を地面に打ち込んでいきました。どうやら、テジーは狼の遠吠えに気がついていないようです。

エルド:
「あの、テジーさん。グレイウルフの遠吠えが、遠くのほうから聞こえてくるようですが……」

テジー(GM):
 テジーは作業の手を止めると、しばらく耳を澄ませたあとで、「良い耳をしているな。この森にはグレイウルフが多く生息している。群れで狩りをする手強い相手だ。この時季、グレイウルフは繁殖期に入っている。巣穴の近くに足を踏み入れると、容赦なく襲ってくるから、移動する際には気を付けたほうがいい」と言いました。

エルド:
「それじゃ、時季が悪かったですかね?」

テジー(GM):
「いや、モノケロースを探すのなら今の季節がいいはずだ。ワタシはこれまでに3度モノケロースを目にしたが、いずれも晩春だった。それ以外の時季、モノケロースはもっと森の奥深く、ボルグヒルド山の麓にいるそうだ」

エルド:
「ボルグヒルド山というと、毒の霧が充満しているというあの山ですか?」

テジー(GM):
「ああ。毒が充満しているのは山の上のほうだそうだが。もしかすると、モノケロースは毒霧の中でも平気なのかもしれない」
 テジーは目印となる杭を打ち込み終えると、今度は荷物袋の中から羊皮紙とペンを取り出して、周囲の地図を描き始めました。

ウルム樹海NZ地点拡大地図1

GM:
 現在、あなたたちがいるのは泉のあるB-1地点です。この地図の1マスは、およそ2キロの距離があります。マスの中央に書かれた数字が高低差を現したもので、差が2以上ある地点への移動には登攀判定が必要となるので注意してください。それと、このマップ上での移動は基本的に行軍ルールに従いますが、縮尺が異なるので、時間経過と疲労に関してはこのようになります(と言って、移動種類と移動時のオプションが記載された表を出す)。

【移動種類】
徒歩・鈍足:90分/1マス、疲労なし
徒歩・通常:60分/1マス、疲労+1
徒歩・速足:50分/1マス、疲労+2(※足跡追跡、警戒探索不可)

【移動時のオプション】
索敵:移動時間に30分追加
足跡追跡:移動時間に30分追加
警戒探索・低:移動時間に30分追加
警戒探索・中:移動時間に60分追加
警戒探索・高:移動時間に90分追加

GM:
 ちなみに、深い森の中なので、駆足・疾走による移動は行えません。一応、走れはしますが、足を取られたり迂回することになったりするため、結果的に速足で移動したのと同じ扱いになります。

テジー(GM):
「この周辺には、ここを含めて4つの泉がある。これまでワタシがモノケロースを見た3度のうち、2度は泉の水を飲んでいるところだった。泉を重点的に探してみるのがいいと思う。それに、泉周辺の土は柔らかい。ここには見当たらなかったが、数日以内にモノケロースが立ち寄っていれば、足跡が残っているだろう。丸太型の足跡があったら、それがモノケロースのものだ」

アゼル:
「なるほど……」

エルド:
「それじゃ、どの泉から回りましょうか?」

アゼル:
「それは、もちろん近いところからだろ。ここから4キロ程度南東に向かったところか」

 一行は移動種類と移動時のオプション担当の割り振りを相談し、警戒レベルを最大にして、2キロあたりの移動に2時間半の時間をかけて、D-3地点にある泉へ向かうことにしました。実際には、1マス移動する毎に足跡追跡や警戒探索の判定を行っていますが、リプレイでは割愛します。

GM:
 では、あなたたちが森の中を進んで行くと、やがて前方に泉が見えてきました。しかし、その泉の水は淀んでおり、多くの水草によって水面が覆われています。

セルダル(GM):
(コロコロ)そんな泉の周辺で足跡を探していたセルダルが、「ん、これは?」と声をあげます。

イーサ:
「何か見つけたのか?」

GM:
 セルダルの視線の先にあったものは、まさしく丸太を押し付けたような直径30センチ程度の円形の足跡です。そして、その足跡は1.5メートル間隔で残されていました。

テジー(GM):
 テジーも顔を近づけてその足跡を確認すると、「オマエたち、運が良いな。これがさっき話したモノケロースの足跡だ」と言って、間違いないとうなづきました。

アゼル:
「想像していたよりもでかいな……」

エルド:
「まだ、この近くにいますかね?」

テジー(GM):
「見たところ、そこまで新しいものではなさそうだ」

アゼル:
 足跡から移動していった方向はわかるのか?

GM:
 先ほどのセルダルの足跡追跡では、そこまではわかりませんでした。

テジー(GM):
 テジーはモノケロースの足跡に手のひらを重ねると、「大きさのわりに深いな……」と呟きました。

イーサ:
「とにかく、この数日の間にモノケロースがここに来たことは確からしい。これで可能性が見えてきたな」

エルド:
「ええ。ですが、それはともかく、そろそろお昼にしませんか?」

 ここで一行は昼食をとり、疲労を回復させます。

 なお、12時間が経過したのでセルピルの毒判定を行うタイミングとなったのですが、モノケロース狩りの最中にセルピルの生死が判明してしまうと興ざめなので、この判定は再びデミルコルに戻ったときにまとめて行うことにしました。

エルド:
「ちなみに、テジーさん。森の中では、夜どうやって過ごせばいいんですか?」

テジー(GM):
「可能であれば、泉の近くで野営する」

エルド:
 やっぱり、泉の近くですか……。森の中では暗くなるのも早いんですよね?

GM:
 そうですね。なにせ、昼間でも薄暗く感じるくらいですから。森の中では8時から16時までが日中扱いで、それ以外は夜間扱いになります。

エルド:
「たとえば、野営地で火をたいた場合、その灯りにつられてモノケロースが近づいて来ることはあるんでしょうか?」

テジー(GM):
「モノケロースの習性についてはよくわからない……。だが、野生の動物が好んでたき火に近づいて来るようなことはほとんどない」

エルド:
「そうですか」
 このまま次の泉を目指して進んだ場合、途中で夜になってしまいますよね……。どうしましょうか?

アゼル:
 仮に灯りをつけて森の中を移動した場合、どんなペナルティがあるんだ?

GM:
 通常の行軍ルールと同じですよ。夜間は敵との遭遇確率が高くなり、索敵の範囲もかなり狭くなります。もちろん、灯りが消えた時には暗所戦闘ルールが適用されます。

アゼル:
 そうなると、下手に夜間移動しないほうがいいのか……?

イーサ:
 だが、それをあまり気にしすぎると、今度は捜索する時間が足りなくなるだろ? 8時から16時まで行動したとして、今のペースだと1日に4マスしか移動できないぞ……。こんなことなら、移動速度をもう少し速めにしておいたほうがよかったか……?

アゼル:
 そうだな。泉の周りは警戒を強めるにしても、それ以外の場所はもう少しあっさり進んだほうがいいだろ。

エルド:
 それじゃ、途中の警戒レベルを下げて、今日のうちにD-5の泉まで移動してしまいますか。まあ、そこでモノケロースと遭遇する可能性もあるわけですが……。

アゼル:
(マップを覗き込んで)D-5は一番奥にある泉だしなぁ。モノケロースいそうだなぁ。……まったく、なんで最初の移動で警戒レベルを最高にしちゃったんだろうな……(苦笑)。

GM:
 まあ、普通に考えたら、森の奥に進むにしたがって警戒を強めていったほうがよさそうですよね。それなのに、最初だけ警戒を強めて、奥に行くにつれて徐々に気を抜いていくとか……。まさに、失敗するときの典型的なパターンじゃないですか(笑)。

一同:
(笑)

 こうして、一行はあらためて移動計画について相談し直し、C-4地点まで警戒レベルを下げたまま通常速度で移動した後に、警戒を強めてD-5地点に向かうことにしました。しかし、警戒レベルを下げた矢先、それまで好調だった移動時の判定のダイス目が悪くなってきてしまいます。

テジー(GM):
 テジーの警戒探索は……(コロコロ)達成値8です。

GM:
 案の定、ここにきてダイス目が落ちてきましたね(苦笑)。
 周囲には木々がうっそうと茂っており、辺りはさらに暗くなっていきます。頭上の木の上からは、「ホーホー」というフクロウの鳴き声が聞こえてきました。

アゼル:
 じゃあ、そろそろ灯りをつけておくか。荷物袋から松明を取り出して火をつける。

GM:
 了解です。では、あなたたちは足を止めて荷物袋の中から松明を取り出し始めるわけですが、その様子を離れた場所から見ている存在がいることには、誰一人として気づいていませんでした……。

アゼル:
 うおッ!? なんかいるのか? こりゃまずい。急いで灯りをつけよう。

GM:
 まあ、PCは気づいてないことなので、そのつもりでプレイしてください。

イーサ:
 光源が1つだけだと心許ないだろ。“ライト”も唱えておこう。自分の短剣の刃とアゼルの片手剣の刃に、それぞれ“ライト”をかけておく。(コロコロ)発動。

アゼル:
 おや? 俺の剣にもかけてくれるのか。じゃあ、さっきつけた松明は消してもいいか?

エルド:
 松明は僕が持ってますよ。どうせ普段から片手は空いてますし。

テジー(GM):
 では、テジーが魔法を唱えたイーサのことをマジマジと見ました。
「オマエはまじないを使うのか」

イーサ:
「まじない? ああ、黒魔法のことか。それがどうかしたか?」

テジー(GM):
「いや……。こんなに間近でまじないを見たのは初めてだ。やはりモノケロースを狩ろうと言うだけあって、何かしら技は持っているということなのだな」

アゼル:
 俺は、なんの技も持ってないけどな(笑)。

イーサ:
 まあ、アゼルは盾役として敵を押さえつけててくれさえすれば、それで十分だ。

エルド:
 それでは、続けてC-4地点に移動します。

GM:
 では、足跡追跡と警戒探索の判定をどうぞ。

アゼル:
(コロコロ)

 この判定でもダイス目はふるいませんでした。とある生物の痕跡に、誰も気づけません。

GM:
 うーん。では、索敵担当のアゼル。ここで索敵判定をどうぞ。

アゼル:
(コロコロ)10。

GM:
 10ですか……。ということは――

セルダル(GM):
 セルダルが、「ん? この足跡は……」と言ったのと――

テジー(GM):
 テジーが、「この音はッ!」と言ったのと――

GM:
 アゼルがその獣の存在に気がついたのは、ほぼ同時のできごとでした。では、戦闘マップにユニットを配置してください(と言って戦闘マップを提示する)。

ウルム樹海C-4



誤字・脱字などのご指摘、ご意見・ご感想などは メールアイコン まで。